最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)

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第2章 天界と魔界

第50話 海上戦

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「敵襲! 敵襲だ!」

 ロドリックと契約をして、早速海賊の元へと駆け付けた。
 船に気づいた海賊船から声が上がっているのが聞こえてくる。
 
「面舵いっぱい、大砲をいつでも撃てるようにしておけ。じゃあ、頼んだぞ」

 舵を切ってロドリックはウルドへと視線を向ける。彼女は頷いて答えて空へと飛び立つ。

「なんか飛んでくるぞ! 武器を構えろ!」

 海賊船へと飛び立つウルド。それに気が付いた時はもう遅い。
 ウルドは一人また一人と海賊を気絶させていく。

「ははは、海賊は犯罪奴隷として売れるからな。大事にしてくれてありがたいぜ! 報酬は弾むから期待してくれ!」

 子供の僕に何故か親切に説明してくれるロドリック。ウルドの僕に対する接し方を見て、彼は選んだんだろうな。そうした方がいいとね。

「3艘の船をすべて終わらせた。あとは陸地だ」

「おお~! ご苦労さん。あとはうちの者がやっておく。出番だぞ、おめぇら!」

 ウルドが帰ってきて報告してくる。ロドリックは嬉しそうに答えて部下の船乗りを向かわせる。
 小さな船を2艘見送ると葉巻に火をつけるロドリック。ニカッと僕を見つめると話し出した。

「【隷属の首輪】これをつけちまえば海賊だろうが何だろうがいうことを利かせられる。奴隷商しか持てない決まりになっているわけだが、なぜ俺が持っているかというとだな。奴隷商も兼任しているからだ」

 刻印のされた首輪をみせてくるロドリック。説明をして煙を空へと吐く。

「僕らにつければ言うこと利かせられるんじゃない?」

 僕は疑問に思って質問する。すると彼は『がはは』と笑った。

「そうだな~。普通のガキや女ならそうかもな。だが二つ間違ってる。一つは俺が魔国に認可されている奴隷商で船乗りだっていうこと。二つ目にお前らが普通のガキや女じゃねえってことだ」

 ロドリックは得意げに説明すると僕を見つめてきた。

「奴隷商っていうのはその者の能力が見えないと商売にならねえ。持っていない奴もいるが俺は持ってる。【鑑定眼】をな」

「【鑑定眼】?」

 ロドリックはそう言って葉巻を吸い始める。吸いながら僕の声に頷いて答えると煙を空へはいた。

「レベルはもちろん、スキルやステータスを見ることができる。自分で見ることは誰でもできるわけだが、隠す奴もいるだろ? 奴隷商なんてやってると嘘ばかり吐くやつとよく合うのさ。持ってねえ奴はそう言うやつに騙されて金をだまし取られる」

「なるほど、それで我々のステータスを見て?」

 ロドリックの話を聞いてウルドが納得するように頷く。するとロドリックは首を横に振る。

「いんや……。まったく見えなかった」

 得意げにニッコリとわらいながら答えるロドリック。僕とウルドは思わず首を傾げた。

「こんなこと初めてだったから俺も驚いたぜ。魔王はもちろんのこと、四天王だって俺は鑑定眼で見てるんだぜ? それなのにお前さん達は見えなかった。ってことは見て来たものの頂点にいると俺は読んでる。だから依頼を任せてみようって思ったわけよ」

 更に胸を張って煙を吐くロドリック。嬉しそうにニカッと笑ってくる。

「なるほど。鑑定眼とはある程度の実力差を上回って能力を見ることが出来る。それ以上の差になると見えなくなるというわけか」

「たぶんな。俺も初めてだからわからねぇけど」

 ウルドの推測の話に頷いて答えるロドリック。僕もそれには同意だな。そうじゃないと魔王と四天王が見えたのに、僕らが見えなかったのが謎だもんな。って僕は分かるけど、ウルドも魔王達よりも強いのか。ってことはプラナもそうなるよな。

「親分! 陸地から更に船が来てます!」

「ん? おう、了解だ。任せるぜ」

 ロドリックの部下から声があがる。すると彼がウルドにウインクして声をあげる。ウルドが怪訝な表情になるけど、頷いて船へと飛んでいく。

「お前さん達なら海龍も倒せるんじゃねぇか? そうしてくれれば大白銀貨を出してもいいんだが?」

「魔王も手を出さなかった魔物でしょ? そこまでする意味は僕にはないよ」

 魔王でも勝てるかわからない相手と見てるんだろう。そんな相手と戦うなんてやってられない。それに今は僕らが帰れればいいだけだしね。

「そうか、残念だな。まあ、俺達はどちらでも得出来るからいいが」

 ロドリックはそう言って僕の頭を撫でてくる。

「おい、マスターに触れるな」

「おっと、すまねえ。甥っ子と重ねちまった」

 ウルドが帰ってきてロドリックを睨みつける。僕は別にいいんだけど、ウルドは束縛系なのかな?

「ん? そいつは【ライド】か!?」

 ロドリックはウルドが抱えている男に気が付いて声をあげる。

「ボスと言われていたから持ってきた」

「やっぱり雷のライドか!? 本当に一人で海賊を討伐しちまうとは、あんたらに任せてよかったぜ!」

 ロドリックは大喜びで首輪をウルドの持ってきた男に着ける。つけると同時に目を覚ますライド。僕らに気が付くと怯えた表情になる。

「ひぃ!? ま、魔族共がなんで攻めてくるんだよ!」

「あ? そういえば、お前は人族か。なんで俺達魔族が攻めてこないと決め込んでんだ?」

「そ、それは……」

 ライドの言葉にロドリックが首を傾げる。ライドの胸ぐらをつかんでロドリックが質問すると彼は口ごもる。

「答えろ! 何でだ?」

「う、隷属の首輪!? うう、サターン様の命令で……」

 ロドリックが再度問いかけると隷属の首輪が効果を表す。首輪が光るとライドは苦しみながらも答えていく。魔王の名前を聞いてロドリックは再度首を傾げた。

「なんで魔王様が? それも答えられるか?」

「うう、人族の国との距離を保つため」

「あ? それってどういう?」

 ロドリックの問いかけに更に答えていくライド。ロドリックと一緒に僕らも首を傾げる。距離を保つ必要があったのかな?

「人族と近しくなると問題が生じる。人と魔族が交わると困ることになる。そう言っていた」

 ライドは更に答えてくれた。仲良くすることを嫌がってるってこと? それってもしかして天界と関係してるのかな?

「よくわからねえ。まあ、とりあえずお前らの土地は今日から俺達のものだ。いいな?」

「ダメだ! ダメなんだよ」

 ロドリックが考えるのをやめて声をあげるとライドが顔を青くして叫ぶ。なんだか必死な様子だな。

「何がダメだってんだ? 今まで周りの人を困らせておいて!」

「ダメなんだよ! サターン様の言う通りにしないと……か、海龍が」

 ロドリックがライドを睨みつけながら声をあげる。睨みつけられながらもライドは危険を知らせてくる。ライドの声のあと、すぐに僕らの目の前に大きな塔が現れた。
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