最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)

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第2章 天界と魔界

第49話 レッグスとエミ

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 時は遡り、アキラが魔国へと転移した日。レッグスとエミはレグルスエイドへと急いだ。
 村は教会からも狙われている。フィールやグラフは村に残ってもらうことにした。

 プラナが召喚されたままだということでアキラの無事を確認できる。更にプラナがかすかに感じるアキラとのマナを感知。彼が飛ばされた方角は魔国だと確信した。
 

「「レグルス様」」

 レグルスエイドにプラナに抱きかかえられてやってきた二人。
 プラナが天使になり空を飛べるようになったことでレグルスエイドに早くたどり着けた。
 早速、二人はレグルスの屋敷にやってきて、声を上げる。

「どうしたんじゃ?」

 執事に案内されてレッグスとエミが食堂で待機していると、レグルスがやってきて声を上げた。
 二人は事のあらましを説明する。

「な!? 魔王が!? 連れ去った!?」

 レグルスは話を聞きながら驚愕に顔をゆがめる。

「魔国とは敵対しているわけではない。しかし、無断で王がエレービア王国内を闊歩するとは。これは明確な条約違反。エレービアの王には私が話を通しておこう。すぐに旅立ちなさい」

「「ありがとうございます!」」

 レグルス様は執事の出した紅茶を一口口に含み頭を抑えながら二人に告げる。
 彼は感謝する二人にニッコリと微笑むと話を続ける。

「なに、お礼を言うのは儂の方じゃ。我がレグルスエイドを守ってくれてありがとう。アキラも含めてお主たちがいなかったら何もできずに滅んでいたじゃろう。アキラは大丈夫じゃよ。儂よりも強い子なのだから」

「あ、ありがとうございます」

 レグルスの言葉に二人は涙を流して握手を交わす。その際にレグルスが二人に何かを手渡す。それはレグルスエイドの紋章が刻まれた短剣。

「これは?」

「船が必要になるだろう。その時に軍艦を使えるようになるはずじゃ。貴族は有事の際に使える船を用立てているのじゃよ。一隻しかないが使ってやってくれ」

 レグルス様はそう言うと二人を見送った。感謝してもしきれないと言った様子の二人は何度もお辞儀をして屋敷を後にした。

「アキラと共に帰ってきたらレグルス様と一緒に食事をしよう」

「そうね……」

 プラナに再度抱き上げられて二人は港町へと飛び立つ。

「マスターの父上。私ならば海を越えることも容易ですが」

「海には死肉を狙う翼竜やその竜を食べる龍がいるんだ。プラナなら勝てると思うが俺達を抱えたままじゃ危険だ」

 プラナの言葉にレッグスが答える。アキラの予想していた通り、海は陸よりも危険なようだ。

「さすがはマスターの父上。博識ですね」

 レッグスの説明を聞いて、納得するようにプラナは呟く。
 彼は褒められて恥ずかしそうにエミの顔を見やる。彼女はそんな恥ずかしそうにしているレッグスにクスッと笑った。

「見えてきました」

 プラナがそう言うと海が見えてきた。港町は夕日に照らされて赤く輝く。

「暗くなってきた。今日はここで泊まる好しかないな」

「え! 船の中で過ごせば?」

 港町の前に降り、レッグスの声にエミが声を上げる。

「急ぎたいのは俺も同じだ。だけどな、さっきも言ったが海は危険なんだ。夜に海に出ると日中とは比べ物にならない。急に目の前に海龍のような魔物が現れることもあるんだ。わかってくれ」

 彼女に言い聞かせるように声をかけるレッグス。言い終わると抱きしめて落ち着かせた。
 
「マスター……。私だけで行ってはダメですか?」

「悔しいが、そうした方がいいのか、とも思ってる。だけどな、これは国と国の話になりかねない。出来るだけ、王国の人間として接しないといけないんだ……」

 プラナの呟きにレッグスが悔しさをにじませる。プラナを繋ぎとめるだけの言葉、都合のいい話だ。
 アキラのためだけならば、レグルスにエレービアの王へ話を通すだけでいいのかもしれない。
 レッグスは親として助けに行きたい、という一心で、我がままで動いているだけ。
 
「親心。大切な心ですね」

「……すまない」

 それを見透かすようにプラナは呟く。優しいプラナは大きく首を横に振ってこたえた。

「では私は外で待機しています」

 人よりも大きなプラナは町の外で待機することになる。それにも罪悪感を感じるレッグスは小さく頷いて答える。

「俺はなんて弱いんだ」

「レッグス!」

 宿屋の一室に入ると自分を責めるレッグス。エミはそんな彼を慰めるように抱きしめる。

「アキラが転移するとき、俺は何もできなかった」

「それは私も同じよ。みんなも同じ」

 自分を責め続けるレッグスにエミは慰めの声を上げる。

「強さを求めるなんていつ以来だろうな」

「村を出た時かな。Sランク冒険者になるとか言っていたあのころ」

 抱き合いながら優しく声を掛け合う二人。自然と唇が重なる。

「落ち着いてくれた?」

「ああ、エミがいてくれてよかった」

「私も、レッグスがいてくれてよかったよ」

 二人は落ち着きを取り戻した。
 魔国への道は困難を極めることになるのだが。
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