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第2章 天界と魔界
第45話 暗闇
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「これだけ離れれば大丈夫かな」
しばらくまっすぐ進んで町から離れた。村を二つほど通り過ぎてるからかなりの距離を走ったと思う。次に村か町を見つけたら話をして地図か、エレービア王国のある方角をおしえてもらわないと。
別の方角に進んでいたら一生たどり着けなくなる。それだけは困る。
「マスター! マスタ~! どこにいるんですか~」
かなり走ってきて安心していると背後から大きな声が聞こえてくる。まだまだ離れているけど、ウルドはしつこく追いかけてきてるみたいだ。
彼女に掴まったら何をされるかわからない。まったく、ビーズとか言うサキュバスの能力は厄介だな。赤ん坊の僕には効かないけど、ウルドには効果てきめんすぎる。
ビーズを見かけたらすぐに気絶か何かして始末しないといけないな。
「しばらくこの洞窟で隠れるしかないな」
ウルドは敏捷性の回避タイプの魔物だ。僕よりも早い可能性がある。このまま、外を歩いていると彼女に掴まってしまうだろう。街道をまっすぐ走ってきたのは失敗だったな。
たまたま見つけた洞窟に入って身をひそめる。しばらく隠れているとウルドの声が横切る。明らかにいつもの彼女の声じゃない。いつもの冷静な彼女からは想像もできない声。完全に彼女の黒歴史となったな~。
「もう少し洞窟の奥に隠れよう……」
艶のある声が怖くて洞窟の奥に避難することにした。綺麗な彼女に抱きしめられるだけなら、僕も男の子なので嬉しいんだけど。無理やり求められるのは怖すぎる。
洞窟に奥に入ると真っ暗になる。外は夕日が落ちてきていたからそろそろ夜になっちゃうだろうな。
「光の球を作って」
【クリエイトライト】の魔法を使う。光の球を作り出して洞窟の中を進む。風の流れがある? 進めば別の出口があるってことかな。
ウルドに見つからないように出るにはそっちの方がいいか。方角もサダラーンの方角ではないはず、完全に反対方向に向かってるはず。洞窟に入ってからまっすぐ進んでいるからね。
「あ、あれ? ライトが消える?」
クリエイトライトで作り出した光の球が消えちゃう。何度も魔法を唱えてもすぐに消える。しまいには光の球が作れなくなった。どうなってるんだ?
「真っ暗になっちゃった……」
魔法が使えなくなって狭い真っ暗な空間に一人になっちゃった。僕は寒気を感じて両手で肩を抑える。
「こ、怖い……あの時みたいだ」
前世で死んだ時に白い空間に入った。その後に黒い空間に襲われた時のことだ。あの時は一瞬だったけど、僕のトラウマになるのには十分な時間だった。
あの時と違って今は一生続くような気分にさせられる。目を瞑ってるのか瞑っていないのか分からない状況。僕は恐怖で目を瞑っているのかもしれない。
立っているのか、座っているのか、はたまた横になっているのか。それすらも恐怖で考えることが出来ない。目を瞑っていないのかもしれないのに目が回る。
「アキラ? どうしたの?」
混乱していると僕を呼ぶ声が聞こえてくる。僕はこの声を知ってる。
「お母さん?」
背後から聞こえて声に振り向く。そうだよ、この声だ。この声は前世のお母さん、【アライ フミコ】の声だ。
振り向いた先が真っ暗は洞窟の風景から白い病室に変わる。忘れもしない、僕の思い出の部屋だ。高橋さんもいる……。
「アキラ君!? どこか痛いの?」
「大丈夫?」
高橋さんとお母さんが心配して僕の体を擦ってくれる。僕はいつの間にか涙を流していたみたいだ。僕の体はいつの間にか赤ん坊のものじゃなくなって、10歳の少年の体になってる。
そうか、僕は怖い夢を見ていたんだ。僕が死んでしまう夢、異世界に行ってしまう夢を……。よかった、僕は夢から覚めたんだ。
「大丈夫だよお母さん。ほら! 立ち上がることだってできる」
僕は信じられないほど元気になった。ベッドの上で立ち上がることが出来る。お母さんと高橋さんはその姿を見て大喜びしてくれる。
二人はすぐに医師の先生を呼んでくれる。僕は晴れて退院という流れになった。夢にまで見た病院じゃない部屋に戻ることが出来た。
「……何か忘れてるような」
僕は自分の家に戻ってきて、ベッドに横たわりながら呟く。
何か、重要なことを忘れているような気がするんだ。だけど、それがなんなのかすらわからない。
「ごめんねアキラ。元の家は入院費のために売っちゃったの。こんな小さな部屋になっちゃった」
考え事をしているとお母さんが俯いて謝る。僕のために家を売っちゃってたのか。
あの時は病院にずっといたから知らなかった。こんな狭いアパートの一室で苦労してたんだな。
「ううん。お母さんは僕のためにしていたことでしょ。謝らないで。そんなことよりもありがとうお母さん。これからは僕も働いて少しでも稼げるように頑張るよ」
「ふふ、なに言ってるの。10歳の子供が働けるわけないでしょ。さあ、今日はもう寝なさい。母さんは仕事に行ってくるから」
僕の言葉にお母さんはクスッと笑い答える。そうか、僕は10歳の子供だった……なんだかもっと長い間生きていたような気がする。体ももっと小さくて? あれ? なんで長く生きていたのに小さい体なんだ?
おかしなことを考えながらお母さんを見送る。外は夕日が落ちてきている真っ最中。バーのアルバイトもしてるっていってたっけ……早く大人になりたいな。そうすれば、働くことが出来るから。
「……前にもこんなことを思ったような気がする」
心で呟いた言葉が引っ掛かり考え込む。
それでも答えはでない。僕は気にしてもしょうがないと思い、布団を頭までかぶって眠りについた。
しばらくまっすぐ進んで町から離れた。村を二つほど通り過ぎてるからかなりの距離を走ったと思う。次に村か町を見つけたら話をして地図か、エレービア王国のある方角をおしえてもらわないと。
別の方角に進んでいたら一生たどり着けなくなる。それだけは困る。
「マスター! マスタ~! どこにいるんですか~」
かなり走ってきて安心していると背後から大きな声が聞こえてくる。まだまだ離れているけど、ウルドはしつこく追いかけてきてるみたいだ。
彼女に掴まったら何をされるかわからない。まったく、ビーズとか言うサキュバスの能力は厄介だな。赤ん坊の僕には効かないけど、ウルドには効果てきめんすぎる。
ビーズを見かけたらすぐに気絶か何かして始末しないといけないな。
「しばらくこの洞窟で隠れるしかないな」
ウルドは敏捷性の回避タイプの魔物だ。僕よりも早い可能性がある。このまま、外を歩いていると彼女に掴まってしまうだろう。街道をまっすぐ走ってきたのは失敗だったな。
たまたま見つけた洞窟に入って身をひそめる。しばらく隠れているとウルドの声が横切る。明らかにいつもの彼女の声じゃない。いつもの冷静な彼女からは想像もできない声。完全に彼女の黒歴史となったな~。
「もう少し洞窟の奥に隠れよう……」
艶のある声が怖くて洞窟の奥に避難することにした。綺麗な彼女に抱きしめられるだけなら、僕も男の子なので嬉しいんだけど。無理やり求められるのは怖すぎる。
洞窟に奥に入ると真っ暗になる。外は夕日が落ちてきていたからそろそろ夜になっちゃうだろうな。
「光の球を作って」
【クリエイトライト】の魔法を使う。光の球を作り出して洞窟の中を進む。風の流れがある? 進めば別の出口があるってことかな。
ウルドに見つからないように出るにはそっちの方がいいか。方角もサダラーンの方角ではないはず、完全に反対方向に向かってるはず。洞窟に入ってからまっすぐ進んでいるからね。
「あ、あれ? ライトが消える?」
クリエイトライトで作り出した光の球が消えちゃう。何度も魔法を唱えてもすぐに消える。しまいには光の球が作れなくなった。どうなってるんだ?
「真っ暗になっちゃった……」
魔法が使えなくなって狭い真っ暗な空間に一人になっちゃった。僕は寒気を感じて両手で肩を抑える。
「こ、怖い……あの時みたいだ」
前世で死んだ時に白い空間に入った。その後に黒い空間に襲われた時のことだ。あの時は一瞬だったけど、僕のトラウマになるのには十分な時間だった。
あの時と違って今は一生続くような気分にさせられる。目を瞑ってるのか瞑っていないのか分からない状況。僕は恐怖で目を瞑っているのかもしれない。
立っているのか、座っているのか、はたまた横になっているのか。それすらも恐怖で考えることが出来ない。目を瞑っていないのかもしれないのに目が回る。
「アキラ? どうしたの?」
混乱していると僕を呼ぶ声が聞こえてくる。僕はこの声を知ってる。
「お母さん?」
背後から聞こえて声に振り向く。そうだよ、この声だ。この声は前世のお母さん、【アライ フミコ】の声だ。
振り向いた先が真っ暗は洞窟の風景から白い病室に変わる。忘れもしない、僕の思い出の部屋だ。高橋さんもいる……。
「アキラ君!? どこか痛いの?」
「大丈夫?」
高橋さんとお母さんが心配して僕の体を擦ってくれる。僕はいつの間にか涙を流していたみたいだ。僕の体はいつの間にか赤ん坊のものじゃなくなって、10歳の少年の体になってる。
そうか、僕は怖い夢を見ていたんだ。僕が死んでしまう夢、異世界に行ってしまう夢を……。よかった、僕は夢から覚めたんだ。
「大丈夫だよお母さん。ほら! 立ち上がることだってできる」
僕は信じられないほど元気になった。ベッドの上で立ち上がることが出来る。お母さんと高橋さんはその姿を見て大喜びしてくれる。
二人はすぐに医師の先生を呼んでくれる。僕は晴れて退院という流れになった。夢にまで見た病院じゃない部屋に戻ることが出来た。
「……何か忘れてるような」
僕は自分の家に戻ってきて、ベッドに横たわりながら呟く。
何か、重要なことを忘れているような気がするんだ。だけど、それがなんなのかすらわからない。
「ごめんねアキラ。元の家は入院費のために売っちゃったの。こんな小さな部屋になっちゃった」
考え事をしているとお母さんが俯いて謝る。僕のために家を売っちゃってたのか。
あの時は病院にずっといたから知らなかった。こんな狭いアパートの一室で苦労してたんだな。
「ううん。お母さんは僕のためにしていたことでしょ。謝らないで。そんなことよりもありがとうお母さん。これからは僕も働いて少しでも稼げるように頑張るよ」
「ふふ、なに言ってるの。10歳の子供が働けるわけないでしょ。さあ、今日はもう寝なさい。母さんは仕事に行ってくるから」
僕の言葉にお母さんはクスッと笑い答える。そうか、僕は10歳の子供だった……なんだかもっと長い間生きていたような気がする。体ももっと小さくて? あれ? なんで長く生きていたのに小さい体なんだ?
おかしなことを考えながらお母さんを見送る。外は夕日が落ちてきている真っ最中。バーのアルバイトもしてるっていってたっけ……早く大人になりたいな。そうすれば、働くことが出来るから。
「……前にもこんなことを思ったような気がする」
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