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第2章 天界と魔界

第37話 帰宅

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「困ったらすぐに呼ぶんだぞ~」

「レグルス様~、静かに見送らなくては意味が~」

 みんなとお風呂に入って次の日。朝早くにレグルスエイドを後にする。
 見送ってくれてるレグルス様が大きな声で叫ぶから執事のお爺さんが周りをキョロキョロみて心配してくれてる。
 馬車から周りを見て見るけど、怪しい人は見えないな。パーティーがあるから帰らないと思われてるんだろう。レグルス様の策略が成功してるんだろう。

「よし、無事に町を出れたっと」

 馬車が門をくぐり声をあげるレッグス。とりあえずは安心といった感じかな。

「人目が無くなったらすぐにウルドとプラナを呼ぶね」

「おう、早く帰りたいからな」

 城壁が見えなくなったらすぐに二人を呼んで馬車を運んでもらう。グラフさんとフィールちゃんは自分で走っても早いから馬車から出て走ってる。元気な親子だ。

「元夫と娘が強くなってて何だか悲しいわ」

 プラナが馬に変わって馬車を引く。その馬車の中でフラムさんが悲しそうに呟く。彼女も強くなって一緒に走りたいのかもしれないな。

「お? 帰ってきた! みんな~、レッグス達が帰ってきたぞ~」

 ルインズに帰ってきた。見張り台からライリーが声をあげてるのが見える。
 村を出る時よりも早く帰ってこれた。これもフィールちゃんの付与のおかげだ。プラナにあの光魔法を使ってもらって突っ走った結果、一日もかからずに帰ってこれた。
 グダスとの戦いのときも凄い効力だった。調べるとステータスが2倍になる魔法みたい。僕のステータスが2倍なんて恐ろしすぎる。

「おかえり~! 無事に帰ってきてくれてよかった!」

 馬車から降りるとライリーが迎えてくれる。エンリャさんも遠くからゆっくり歩いてくるのが見える。

「元気そうでよかったよ。おや? 人数が増えてるね」

「はは、そうなんです。こちらグラフさん、フィールちゃん、フラムさんです。こちらはエンリャさんとライリー」

 エンリャさんが嬉しそうに迎えてくれる。彼女の疑問にレッグスが自己紹介していく。自己紹介していると村の人達も出てきた。みんなにも紹介すると歓迎会をしてくれた。中央のウィドの家に集まって宴を開く。
 レグルスエイドでもパーティーをやってるんだろうけど、こういう歓迎会の方がいいな。

「あははは~、いや~最高だなここは。よお、アキラ!」

「ウィド、飲み過ぎじゃない?」

 僕は少しだけ歓迎会に参加して家に戻ってきた。エミに連れられて帰ってきたんだけど、窓から村を見ているだけで楽しかった。
 そんなところにウィドが酔っぱらった顔で現れる。彼は奴隷になったというのにとても楽しそうにしてる。

「盗賊になった時は自暴自棄で何でもやってやろうとか思ってたけどよ。ほんとここに来てよかった。お前みたいな赤ん坊にも会えたし、守るものも出来たしな」

「……」

 自暴自棄で村を襲う盗賊になられちゃ困る。それもウィドは二つ名がつくほどの達人。レッグスが居たから捕まえることが出来たけど、彼みたいな強い人が居なかったら普通にやられちゃう。
 被害が広がる前に僕らに出会えててよかった。犯罪者になってからじゃ遅いもんな。

「……聞かないのか?」

「え?」

「話せるようになったら聞かれるんじゃないかって思ってたんだ。俺の過去の話。レッグスもライリーも聞いてこないからさ」

 窓の下に座り込んで聞いてくるウィド。何のことかと首を傾げていると鼻をすする音が聞こえてくる。

「俺、駄目な奴でよ。親父の才能の一つも受け継げなかった。冒険者になってAランクの冒険者になって図に乗ってたんだ。一人でダンジョンを攻略なんて無理だって言うのに、俺は……」

 ウィドは涙を流しながら自分の過去の話を始める。元々は冒険者だったんだな。彼のお父さんは偉大な人だったのかな。十分ウィドは強いと思うけどな。まあ、僕の足元にも及ばなくなったけど。

「ダンジョンから命からがら逃げた。家に帰るのは恥ずかしくてできなかった。あてもなく街道を幾日も歩いてた。それで襲ってきた盗賊に命を委ねようと思った。だけど、俺は死ねなかった。体が勝手に盗賊をのしちまった。あの時俺は死んじまえばよかったんだ……」

 ウィドは話し終わると手に持っていたお酒を一気に飲み干す。

「生きててよかった」

「は? どこが良かったんだよ。盗賊になってお前達を襲ったんだぞ?」

 思わず慰めの言葉をかけると声を荒らげて否定するウィド。思わず出た言葉だけど、今は本当に良かったと思ってる。だって、

「ウィドが居てくれたから僕らはオーランスに行けたんだ」

「は?」

「畑も大きくできたのはウィドとライリーのおかげ。もちろん、レッグスお父さんも」

 今まで村の為にしてくれたことを話す。ウィドは見張り台の補修や家々の補修もやってくれてた。エンリャさんも褒めていたし、村のみんなも頼りにしてる。
 今じゃいなくちゃいけない人になってる。長い間、僕らは留守にしていたから、ウィドには頼ってばかりだった。

「すべてを許すとは言わないけどさ。完璧な人なんていないよ。むしろ少し道を外れた人の方が誰かの為に働けるんじゃないかな? 失敗を知っている人の方が色んな人に道を示せると思う」

「……そういうもんかね。赤ん坊に諭されちまうなんて道を外れてるな。すまねえ、酔い過ぎた。エミ姉さんにどやされちまう。そろそろ帰るわ」

 知ったような口で言葉をかけるとウィドは後ろ手に手を振って帰っていく。小さな声で『ありがとう』と聞こえてきたけど、聞こえないふりをしておいた。恥ずかしそうに耳まで真っ赤にしていたから。

 エリートだった彼の過去。そのせいで盗賊に落ちてしまった彼。それならそんな過去捨ててしまえばいい。悩む必要なんてないんだよな。
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