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第2章 天界と魔界
第34話 付与強化
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「あれが天使か。なるほど、可愛いじゃねえか」
フィールちゃんを見て声をあげるグダス。その視線を嫌がったグラフさんが、彼女を隠すように体で隠す。
彼女はひょこっとグラフさんの体から顔を出してグダスを見る。
「天使は俺には勝てそうにないな。ってことは魔王様が言っていたのはこっちの赤ん坊ってわけか」
「魔王が僕の事を?」
グダスが声をあげながら僕を見つめてくる。その声に僕が首を傾げるとグダスは姿を消してきた。
高速で動くことで一瞬で消えたように見えた。そして、刹那の瞬間。”黒い体”になったグダスが僕の目の前に現れる。
「一瞬で冷やしたか。魔王様が言うだけはある」
赤い体が一瞬で黒い体に変化したことで気が付くグダス。自分の両手を見つめて嬉しそうに口角をあげる。
僕は自分の周囲を冷やしていた。グダスの接近を許したら危険だったからやっておいたんだ。狙い通り、グダスの熱は脅威じゃなくなってくれた。
「俺の姿を確認できてたわけだ。普通の人間じゃ俺のスピードについてこれずに熱で溶かして終わり。つまらねえもんだ。だが! 今、俺はすげぇ嬉しいぜ!」
話しながら僕から少し離れるグダス。声をあげるとともに体の体温をあげてくる彼。本当に嬉しそうだ、喧嘩相手が欲しかったのかもしれないな。
「アキラ様をいじめないで!」
フィールちゃんが声をあげるとともに光を僕に注いでくる。光に触れると体が軽くなる感覚を受ける。
両手を見つめてニギニギと指を閉じたり開けたりして見た。彼女からの光はどうやら力を強くすることもできるようだ。
力が強くなったことで体が軽くなったってわけか。これなら……
「あ? 天使の魔法か? な!? 消えた!?」
「こっちだよ」
「!?」
フィールちゃんの光の魔法に首を傾げていたグダス。再度僕に視線を戻した刹那、彼と同じように一瞬で彼の背後へと回る。
驚くグダスの顔に氷を纏った拳をぶつける。赤ん坊の拳でも氷で大きくなっているからだいぶダメージは入るだろう。そんな軽い気持ちで出した拳だった。
だけど、威力は凄まじく、グダスは少し離れた先にある森までぶっ飛んで、森の木々をなぎ倒していく。元々の僕の力にフィールちゃんの付与がかかって威力が上がってしまったみたいだ。
「……静かになっちゃった」
流石の威力に僕は茫然と声を漏らす。夜の草原、風が草を鳴らすだけの静寂。
一向に現れないグダス。プラナとウルドが起き上がって、確認に向かうがいなくなっているとのこと。
どうやら、逃げていったみたいだ。それはそれで困った。
「だ、大丈夫なのかアキラ?」
「怪我は?」
「大丈夫だよ二人とも」
グラフの作った家に帰ってくるとレッグスとエミが心配してくれる。二人を落ち着かせてフィールちゃんを見つめる。
「戦ってた彼の名前はグダス。目的は【天使】であるフィールちゃんだった」
「え!? 私を……それで私を見ると嬉しそうにしてたんですね」
僕は机に乗ってみんなに椅子に座ってもらうと話始める。お行儀悪いけど、この方が話しやすいんだよね。
「そこで有力な話が聞けた。【天界】への道を作らなければいいらしい」
『天界?』
天界の話をすると三人は首を傾げる。グラフがこほんと咳ばらいをすると代わりに話し始めてくれる。
「天界とはこの次元とは違う世界の事です。魔法都市でも解明できなかった。【魔界】は私が確認しているので次は【天界】を確認しようと思っていたところにこの話が来たので驚きました」
僕の本当の目的を話すわけにはいかないのでグラフが代わりに話してくれたみたいだ。僕だと墓穴を掘りそうだもんな。
でも、いつかは話さないとな。だって、今世の両親だから。
「そんな話になっていたのね」
「じゃあ、サダラーンの魔王っていう人に聞けばすぐにでも天界がどういうところかわかるんじゃないのか?」
エミが頷くとレッグスがもっともなことを話し始める。
確かにそうだ、グダスは何も聞いていない様子だった。魔王っていう人にあったら天界の話を聞けるはずだ。
「危険です! グダスのような奴があと三人、更に魔王がいるところに行くなど! それに別の大陸に行かなくてはいけませんし、自ら赴くなど!」
グラフさんがそう言って反対する。そう言えば四天王って言ってたっけ。あんなのがごろごろいるのか。
戦力は完全に人の国よりもいそうだな。ブラックゴーレムに戦々恐々している人たちだったしね。
ん? でもおかしいな。それならなんで魔族達は人間の国を攻め滅ぼさないんだ?
「魔王は自分の国から出ないからな~。会うにはこちらから行くしかないと思うが」
「え? どうして?」
「ん? ああ、この世界を守るためとかなんとか理由をつけていてな。人の王は『怖気ついたんだ』と決めつけて勇者を称えたとか。本当のところはわからないがな」
世界を守る……それが天界と関係あるのかな? グダスよりも強いとなると怖気づいているようには思えない。
僕は強くなりすぎたと思っていたけど、もっともっと強くならないといけないっていうのがよ~っくわかった。自重せずに強く成ろ~っと。
「ふぁ~……。とりあえず寝ようぜ。夜更かしは子供に悪い影響を及ぼす」
「そうね……。話は帰り道でしましょ」
大きなあくびをするレッグス。エミが僕を抱き上げてベッドに運んでくれる。フィールちゃんも目をこすり始めていたし、致し方ない。
しかし、魔国サダラーンか。魔王と話してみたいな。特に天界についてね。
フィールちゃんを見て声をあげるグダス。その視線を嫌がったグラフさんが、彼女を隠すように体で隠す。
彼女はひょこっとグラフさんの体から顔を出してグダスを見る。
「天使は俺には勝てそうにないな。ってことは魔王様が言っていたのはこっちの赤ん坊ってわけか」
「魔王が僕の事を?」
グダスが声をあげながら僕を見つめてくる。その声に僕が首を傾げるとグダスは姿を消してきた。
高速で動くことで一瞬で消えたように見えた。そして、刹那の瞬間。”黒い体”になったグダスが僕の目の前に現れる。
「一瞬で冷やしたか。魔王様が言うだけはある」
赤い体が一瞬で黒い体に変化したことで気が付くグダス。自分の両手を見つめて嬉しそうに口角をあげる。
僕は自分の周囲を冷やしていた。グダスの接近を許したら危険だったからやっておいたんだ。狙い通り、グダスの熱は脅威じゃなくなってくれた。
「俺の姿を確認できてたわけだ。普通の人間じゃ俺のスピードについてこれずに熱で溶かして終わり。つまらねえもんだ。だが! 今、俺はすげぇ嬉しいぜ!」
話しながら僕から少し離れるグダス。声をあげるとともに体の体温をあげてくる彼。本当に嬉しそうだ、喧嘩相手が欲しかったのかもしれないな。
「アキラ様をいじめないで!」
フィールちゃんが声をあげるとともに光を僕に注いでくる。光に触れると体が軽くなる感覚を受ける。
両手を見つめてニギニギと指を閉じたり開けたりして見た。彼女からの光はどうやら力を強くすることもできるようだ。
力が強くなったことで体が軽くなったってわけか。これなら……
「あ? 天使の魔法か? な!? 消えた!?」
「こっちだよ」
「!?」
フィールちゃんの光の魔法に首を傾げていたグダス。再度僕に視線を戻した刹那、彼と同じように一瞬で彼の背後へと回る。
驚くグダスの顔に氷を纏った拳をぶつける。赤ん坊の拳でも氷で大きくなっているからだいぶダメージは入るだろう。そんな軽い気持ちで出した拳だった。
だけど、威力は凄まじく、グダスは少し離れた先にある森までぶっ飛んで、森の木々をなぎ倒していく。元々の僕の力にフィールちゃんの付与がかかって威力が上がってしまったみたいだ。
「……静かになっちゃった」
流石の威力に僕は茫然と声を漏らす。夜の草原、風が草を鳴らすだけの静寂。
一向に現れないグダス。プラナとウルドが起き上がって、確認に向かうがいなくなっているとのこと。
どうやら、逃げていったみたいだ。それはそれで困った。
「だ、大丈夫なのかアキラ?」
「怪我は?」
「大丈夫だよ二人とも」
グラフの作った家に帰ってくるとレッグスとエミが心配してくれる。二人を落ち着かせてフィールちゃんを見つめる。
「戦ってた彼の名前はグダス。目的は【天使】であるフィールちゃんだった」
「え!? 私を……それで私を見ると嬉しそうにしてたんですね」
僕は机に乗ってみんなに椅子に座ってもらうと話始める。お行儀悪いけど、この方が話しやすいんだよね。
「そこで有力な話が聞けた。【天界】への道を作らなければいいらしい」
『天界?』
天界の話をすると三人は首を傾げる。グラフがこほんと咳ばらいをすると代わりに話し始めてくれる。
「天界とはこの次元とは違う世界の事です。魔法都市でも解明できなかった。【魔界】は私が確認しているので次は【天界】を確認しようと思っていたところにこの話が来たので驚きました」
僕の本当の目的を話すわけにはいかないのでグラフが代わりに話してくれたみたいだ。僕だと墓穴を掘りそうだもんな。
でも、いつかは話さないとな。だって、今世の両親だから。
「そんな話になっていたのね」
「じゃあ、サダラーンの魔王っていう人に聞けばすぐにでも天界がどういうところかわかるんじゃないのか?」
エミが頷くとレッグスがもっともなことを話し始める。
確かにそうだ、グダスは何も聞いていない様子だった。魔王っていう人にあったら天界の話を聞けるはずだ。
「危険です! グダスのような奴があと三人、更に魔王がいるところに行くなど! それに別の大陸に行かなくてはいけませんし、自ら赴くなど!」
グラフさんがそう言って反対する。そう言えば四天王って言ってたっけ。あんなのがごろごろいるのか。
戦力は完全に人の国よりもいそうだな。ブラックゴーレムに戦々恐々している人たちだったしね。
ん? でもおかしいな。それならなんで魔族達は人間の国を攻め滅ぼさないんだ?
「魔王は自分の国から出ないからな~。会うにはこちらから行くしかないと思うが」
「え? どうして?」
「ん? ああ、この世界を守るためとかなんとか理由をつけていてな。人の王は『怖気ついたんだ』と決めつけて勇者を称えたとか。本当のところはわからないがな」
世界を守る……それが天界と関係あるのかな? グダスよりも強いとなると怖気づいているようには思えない。
僕は強くなりすぎたと思っていたけど、もっともっと強くならないといけないっていうのがよ~っくわかった。自重せずに強く成ろ~っと。
「ふぁ~……。とりあえず寝ようぜ。夜更かしは子供に悪い影響を及ぼす」
「そうね……。話は帰り道でしましょ」
大きなあくびをするレッグス。エミが僕を抱き上げてベッドに運んでくれる。フィールちゃんも目をこすり始めていたし、致し方ない。
しかし、魔国サダラーンか。魔王と話してみたいな。特に天界についてね。
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