上 下
29 / 60
第2章 天界と魔界

第29話 希望?

しおりを挟む
「バブバブ!」

「アキラ様? 召喚について知りたいのですか?」

 あの戦いから2日程が経った。レグルスエイドにはすぐに帰らずに予定通りの日程を守ってもらった屋敷で過ごしてる。あと2日程ゆっくりする予定だ。

 城から帰ってきたレッグスとグラフはとても疲れていたので一日は何も聞かずに寝かせてあげた。
 1日待ったので早速召喚について話を聞こうと思って声をあげるとウルド達と同じように僕の声が聞こえるみたいだ。
 従魔になってくれると僕の声を聞いてくれる。ありがたいな~。

 僕は長机に座って、前世の記憶を持っていること、前世の世界に帰りたいと思っていることを伝える。
 するとグラフは厨房で昼食の準備をしてるエミや庭で素振りをしてるレッグスに一度視線を向ける。

「二人を置いて戻ってしまうつもりですか? 私が言うのもなんですが。今の家族を大事にするべきでは? 私と違っていい両親なのですから」

 まさかの言葉がグラフから告げられた。僕は言葉がなくなる。前世のお母さんを大切に思っているあまり、二人をお母さんお父さんと呼べていないんだ。
 僕は二人を友達とかそういった間柄だと思っている、んだと思う。僕にもよくわからない。
 まだ言葉をしゃべれないから、それを理由にして親しくならないようにしているのかも……。ほんとにわからない。

「では説明いたします。確かに黒い世界【魔界】と言われている世界は全ての世界とつながっていると言われています。ですが戻れたという話は聞いたことがありません。戻ったらこちらには戻ってこないのですから当たり前ですね」

 グラフはそう言って俯く。
 確かな答えではないから残念に思っているのかな。
 確かに戻れたことを報告に危険な道を戻ることはないよな。たぶん、死ぬことと同義なことをしないといけないはずだから。

「【魔界】に入るなら、私やフィールのように魔物になれば入れます。フィールは既に魔界に入っているはず。聞いてみましょう。フィール、こちらでアキラ様に話をしてくれるか?」

「あ、は~い。エミ様、ちょっと行ってきます」

 厨房でエミの手伝いをしていたフィールちゃん。初めて会った時よりも感情豊かになってとても微笑ましい。
 彼女は魔物になった時に黒い世界に戻されてるらしい。
 グラフはまだ戻っていないからわからないのか。一度彼にも入ってほしいな。

「どうしたのお父様? アキラ様?」

「アキラ様は魔界、黒い世界について話をしてほしいそうなんだ」

「黒い世界? あ、お父様に閉じ込められたところかな?」

「あ、ああ。あの時はすまなかったな」

 フィールちゃんは僕の前の椅子に座ると指を口につけて考えながら話す。まだ彼女は魔界についてはあまり知らないみたいだな。グラフは申し訳なさそうに謝る、彼女は首を横に振ってほほ笑んだ。

「今があるからいいの。お父様が生きていてくれるだけで。それにお母さままで生きているって聞いたら俯いてなんていられない。それもこれもアキラ様のおかげ、私のわかることはすべて話します」

 フィールちゃんは微笑みながら話す。彼女の希望に満ちた瞳は僕にも力をくれる。

「黒い世界は真っ暗で見える範囲全てが黒いの。それでも歩くことが出来て、同じ方向に歩いてると見えない壁に当たりました」

 フィールちゃんは淡々と教えてくれる。僕はあの世界で恐怖で動くことはできなかった。フィールちゃんはとても強い子だな。探求心も高い。

「壁に沿って歩いてると指と同じくらいの赤い蝋燭がありました。蝋燭だから明かりをつけて使おうと思ったら、壁に張り付いているから外せなくて。そのまま壁に沿ってまた歩き出して、そうしたら色違いの蝋燭がもう一つあって。もちろん、取れないから無視して歩いて」

 蝋燭? 蝋燭がいくつもある黒い世界?
 それが別の世界に関係があるのかな?

「……原初の火ということでしょうか?」

「バブ?」

「天地が開けた始まりの火」

「??」

 グラフの言っていることが全然わからない。ようは世界の元となった火ってことかな?

「世界が蝋燭とは思いませんがその火が道しるべとなって黒い世界を案内してくれるのかもしれません」

 グラフは推測を話し、顎に手を当てて考え込む。難しい話だな~。
 でも、フィールちゃんは取ることが出来なかったって言っていたぞ。それじゃ案内はできないよな~。

「私が見たのは5本の蝋燭でした」

「5? 更に謎が……。いや、世界は無限に存在しているはず。もしかしたら魂が覚えている前世の数? ……ということはアキラ様!」

「バブ!」

 フィールちゃんの声に考え込むと嬉しそうに声をあげるグラフ。確かな証明もないのに喜ぶべきじゃない、だけど、少し光明が見えたような気がする。前世の数なら必ずその蝋燭が前世の世界に通ずる何かになるはずだ。
 憶測の域を出ない話に一喜一憂する。何もわからなかった状況から少しは前に進めた。嬉しいに決まってる。
 
 でも、僕が魔界に入る方法を見つけられてない。魔物になるわけにはいかないし、どうしたものか。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

処理中です...