28 / 60
第2章 天界と魔界
第28話 勝利
しおりを挟む
レッグスは僕にそのグラフの魔石を差し出してくる。僕が首をかしげているとレッグスは微笑む。
「エルダートレントなんて使役できない。アキラに任せる」
「バブ!」
苦笑いのレッグスに答えて手を伸ばす。魔石を受け取ると二つの魔石が重なっていく。あらかじめ二つの魔石にしていたんだな。用心深いというかなんというか。
「させん!」
すると声が上がる。声の主はネタフ、バルトロと鋭い視線を向けてくる。
「エルダートレントと言ったら最上の戦力となる。そんなものを隣国に! それもすでにかなりの戦力を持っていることがわかった国にやるものか!」
槍を向けてくる兵士達。ネタフの声でじりじりと僕らに近づいてくる。
「マスターに何かするつもりか?」
「死にたいらしい」
ウルドとプラナが威嚇すると兵士達は後ずさる。ネタフに視線を向けるとバルトロが大きなため息をついた。
「王、懸念はわかります。しかし、我々では食い止めることはできません。あの赤ん坊たちの活躍を見ていたでしょう!」
「バルトロ! 何を行っておる! これは一大事なのだぞ! 今止めねば!」
「なので提案がございます。エレービアと同盟を結ぶのです。それが不可能であるならレッグス殿達と取引を。彼らは我が国の食料に対して大変ご興味があると伺っています」
バルトロの提案でネタフは考え込む。僕らを見つめてくるから頷いて答えてみる。彼らにもずっと見張られてたってことか。なんだか食い意地が張ってるみたいではずかしいな。
するとネタフは深く考え込んで大きく頷いた。
「両方検討したい。どうか、我らと融和を考えていただきたい」
ネタフ王はそれほど馬鹿ではないみたいだ。現状の戦力を考え、握手の手を差し出してくる。レッグスは気持ちよくそれにこたえて握手を交わす。
「……マスターと呼べばいいのか?」
「ふんっ! お前はアキラ様と呼べ。新入りなのだから」
やっと話がある程度まとまった。僕は安心してグラフの魔石にマナを注ぐ。
するとグラフは跪いて聞いてくる。ウルドが腕を組んで答えると助けを求めるようにグラフが僕を見つめてくる。僕は頷いて答えてあげた。
「お父様は新入り? じゃあ、私の方が先輩かな?」
「ふぃ、フィール?」
指を咥えて疑問を口にするフィールちゃん。グラフは不安に狩られて声を漏らす。
「冗談だよ。でもお母さまを殺したことは許してないから」
「……すまない。あ~、その話だが。彼女は私に愛想を尽かして故郷に帰ったんだ。エレービアにな」
「え!? もしかしてそれでエレービアを憎んでいたの?」
笑顔で話し合う二人。まさかの私情で国落とし? どうしようもないお父さんだ。
「で、ではレッグス様。奥の部屋で話を伺いたいのですが」
「わかりました。ではウルドついてきてくれ」
「うむ、マスターの父上。了解した。では行ってまいりますマスター」
バルトロに連れられて玉座の間の奥に入っていくレッグスとウルド。一人だと不安だったんだろうな。まだ完全に信用しきっていないからね。
「腕が折れた」
「こんな争い二度とごめんね」
怪我をした貴族たちがそう呟いて僕らを見つめてくる。僕らというよりもグラフだな。彼はいたたまれない様子。
回復魔法も学ばないとな。そう思っているとフィールちゃんが彼らに駆け寄っていく。
「お父様がごめんなさい。手を」
「え?」
フィールちゃんは特殊な魔法のようなものを使う。普通の回復魔法は手をかざして光で包んで回復させる。
彼女は手をつないだ人を光で包んで回復させてる。一人一人丁寧に回復させてあげてる。優しい子だ。
改めて彼女を助けられてよかった。お父さんのグラフはとんでもないやつだけどね。
「……私は間違っていたな」
「バブ!」
「ははは、赤子に頭を撫でられるとは。私はこの子よりもずっと子供だったのだな」
プラナに抱き上げてもらって悲しそうにしてるグラフの頭を撫でてあげる。
彼は涙目の視線をフィールに向ける。僕らに完膚なきまで負けて改心してくれたかな? それならよかった。
「バルトロ様の命令で迎えに上がりました。お帰りは馬車で。どうぞこちらです」
兵士さんがそう言って敬礼する。僕らはキョトンとしてしまう。レッグスは帰れないのか。
「レッグスはどうなるんですか?」
「話し合いは夜も続くそうなので迎えに来たんですが……」
そんなに長い会議になるのか。レッグスもウルドも大変だな。
「私も残ろう。ネタフ王への謝罪もしたい。もちろん、すべての被害者にも」
「お父様、私も」
「いや、フィール。お前に責任はない。アキラ様と一緒に屋敷で休んでいるといい」
グラフはそう言って玉座の間の奥の部屋に入っていく。フィールは不安そうに彼の背中を見つめてる。
「お父様大丈夫なのかな?」
「ふふ、大丈夫よ。あの顔は決意した目だったもの。レッグスが私と結婚を決めた時の表情と一緒だった」
不安を口にするフィールちゃんにエミが答える。優しく彼女の頭を撫でてあげるエミ。安心したように体を預けてるフィールちゃん、二人を見てると安心するな。
僕らはレッグス達を置いて屋敷に帰る。
馬車の中で御者の兵士さんに聞いたんだけど、あの屋敷は僕らのものになるらしい。いつでも来てくれってこと見たい。
なんだか一瞬でお金持ちになってしまった。
「エルダートレントなんて使役できない。アキラに任せる」
「バブ!」
苦笑いのレッグスに答えて手を伸ばす。魔石を受け取ると二つの魔石が重なっていく。あらかじめ二つの魔石にしていたんだな。用心深いというかなんというか。
「させん!」
すると声が上がる。声の主はネタフ、バルトロと鋭い視線を向けてくる。
「エルダートレントと言ったら最上の戦力となる。そんなものを隣国に! それもすでにかなりの戦力を持っていることがわかった国にやるものか!」
槍を向けてくる兵士達。ネタフの声でじりじりと僕らに近づいてくる。
「マスターに何かするつもりか?」
「死にたいらしい」
ウルドとプラナが威嚇すると兵士達は後ずさる。ネタフに視線を向けるとバルトロが大きなため息をついた。
「王、懸念はわかります。しかし、我々では食い止めることはできません。あの赤ん坊たちの活躍を見ていたでしょう!」
「バルトロ! 何を行っておる! これは一大事なのだぞ! 今止めねば!」
「なので提案がございます。エレービアと同盟を結ぶのです。それが不可能であるならレッグス殿達と取引を。彼らは我が国の食料に対して大変ご興味があると伺っています」
バルトロの提案でネタフは考え込む。僕らを見つめてくるから頷いて答えてみる。彼らにもずっと見張られてたってことか。なんだか食い意地が張ってるみたいではずかしいな。
するとネタフは深く考え込んで大きく頷いた。
「両方検討したい。どうか、我らと融和を考えていただきたい」
ネタフ王はそれほど馬鹿ではないみたいだ。現状の戦力を考え、握手の手を差し出してくる。レッグスは気持ちよくそれにこたえて握手を交わす。
「……マスターと呼べばいいのか?」
「ふんっ! お前はアキラ様と呼べ。新入りなのだから」
やっと話がある程度まとまった。僕は安心してグラフの魔石にマナを注ぐ。
するとグラフは跪いて聞いてくる。ウルドが腕を組んで答えると助けを求めるようにグラフが僕を見つめてくる。僕は頷いて答えてあげた。
「お父様は新入り? じゃあ、私の方が先輩かな?」
「ふぃ、フィール?」
指を咥えて疑問を口にするフィールちゃん。グラフは不安に狩られて声を漏らす。
「冗談だよ。でもお母さまを殺したことは許してないから」
「……すまない。あ~、その話だが。彼女は私に愛想を尽かして故郷に帰ったんだ。エレービアにな」
「え!? もしかしてそれでエレービアを憎んでいたの?」
笑顔で話し合う二人。まさかの私情で国落とし? どうしようもないお父さんだ。
「で、ではレッグス様。奥の部屋で話を伺いたいのですが」
「わかりました。ではウルドついてきてくれ」
「うむ、マスターの父上。了解した。では行ってまいりますマスター」
バルトロに連れられて玉座の間の奥に入っていくレッグスとウルド。一人だと不安だったんだろうな。まだ完全に信用しきっていないからね。
「腕が折れた」
「こんな争い二度とごめんね」
怪我をした貴族たちがそう呟いて僕らを見つめてくる。僕らというよりもグラフだな。彼はいたたまれない様子。
回復魔法も学ばないとな。そう思っているとフィールちゃんが彼らに駆け寄っていく。
「お父様がごめんなさい。手を」
「え?」
フィールちゃんは特殊な魔法のようなものを使う。普通の回復魔法は手をかざして光で包んで回復させる。
彼女は手をつないだ人を光で包んで回復させてる。一人一人丁寧に回復させてあげてる。優しい子だ。
改めて彼女を助けられてよかった。お父さんのグラフはとんでもないやつだけどね。
「……私は間違っていたな」
「バブ!」
「ははは、赤子に頭を撫でられるとは。私はこの子よりもずっと子供だったのだな」
プラナに抱き上げてもらって悲しそうにしてるグラフの頭を撫でてあげる。
彼は涙目の視線をフィールに向ける。僕らに完膚なきまで負けて改心してくれたかな? それならよかった。
「バルトロ様の命令で迎えに上がりました。お帰りは馬車で。どうぞこちらです」
兵士さんがそう言って敬礼する。僕らはキョトンとしてしまう。レッグスは帰れないのか。
「レッグスはどうなるんですか?」
「話し合いは夜も続くそうなので迎えに来たんですが……」
そんなに長い会議になるのか。レッグスもウルドも大変だな。
「私も残ろう。ネタフ王への謝罪もしたい。もちろん、すべての被害者にも」
「お父様、私も」
「いや、フィール。お前に責任はない。アキラ様と一緒に屋敷で休んでいるといい」
グラフはそう言って玉座の間の奥の部屋に入っていく。フィールは不安そうに彼の背中を見つめてる。
「お父様大丈夫なのかな?」
「ふふ、大丈夫よ。あの顔は決意した目だったもの。レッグスが私と結婚を決めた時の表情と一緒だった」
不安を口にするフィールちゃんにエミが答える。優しく彼女の頭を撫でてあげるエミ。安心したように体を預けてるフィールちゃん、二人を見てると安心するな。
僕らはレッグス達を置いて屋敷に帰る。
馬車の中で御者の兵士さんに聞いたんだけど、あの屋敷は僕らのものになるらしい。いつでも来てくれってこと見たい。
なんだか一瞬でお金持ちになってしまった。
430
お気に入りに追加
857
あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる