【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章

第21話 裏切り?

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「みんな無事だったか!」

 兵士詰め所に着くと僕を椅子に座らせて、お父さんはみんなに抱き着いて喜んでる。
 誰一人欠けずに会えるとは思っていなかったお父さんが泣きながら笑ってる。みんなもそれにこたえるように抱き返してる。

「嬉しいぞ。また会えて」

「ライナさま!」

 領主のライナもこの詰め所で療養していたようでベッドに横になっていた。
 ライナ様はみんなにも優しい領主様だからお父さんも嬉しそうだ。

「ウラスでは歓迎されていないらしい。こんな詰め所に我々を追いやってきた。それもしばらくの間だけだ。すぐに外へと追いやるらしい。ランネローゼ様が抗議してくれたのだがそれも時間の問題だ」

「そんな、じゃあ」

「ああ、出来れば我々を住まわせてくれるか? 農場の話は聞いているぞ」

 にっこりと微笑んだライナ様がお父さんの肩に手を置いた。人懐っこい笑顔で優しい人っていうのが伺える。
 お父さんは頼られたのが嬉しいのか笑顔で返して頷いた。
 僕らの農場に仲間が増える。それも領主様とは凄い話だな~。

「農場に行くのはいいんですが魔物の群れは魔法を使ってこなかったんですか? 嬉しい誤算でしたが死人が出ていないのがおかしな感じで」

「ああ、そのことか。それは王にも言われたよ」

 お父さんの疑問にライナ様は俯いて話した。

「内通しているから死人が出ていないんじゃないかって言われたよ」

「そんな! 命をかけて戦っていたのにそんなことをいわれたのですか?」

 叫ぶように言ったお父さんにみんな頷いてこたえた。ランネローゼ様が何とかしてくれると思うけど、そんなことを言われたのか。愚王っていうのは本当なんだな~。
 ランネローゼ様も大変だろうな。

「ランネローゼ様だけが私の言葉を信じてくれていたよ」

「あの方は我々の味方ですよ。アーリーを可愛がってくれています」

「面識があるのか?」

「ほぼ毎日遊びに来ています」

「毎日?」

 お父さんと返答に首を傾げるライナ様。兵士のみんなも首を傾げて変な顔になってる。
 王族であるランネローゼ様が遊びに来ているのがおかしいんだろうな。なんだか楽しい。

「キャッキャ」

「アーリーとはあの子か。なんだか逞しくなったんじゃないか?」

「そうですか?」

 みんなの様子を見て笑うとみんな僕を見つめてきた。微笑ましく見つめてくるみんな。本当に無事でよかったね。

「では後程伺うよ。その時に今後の事を話し合おう」

「はい。お待ちしてます」

 ひとしきり僕を見つめるとみんな満足したみたい。
 お父さんが僕を抱き上げてこの場を後にする。手を振って別れを告げるとみんなも振ってくれた。いい人たちでよかった。

「どうだった?」

 詰所から出て大通りを通るとグライアスさんが待ってた。魔法を使ってこなかったっていう話を聞きたいんだろうな。

「少なくともオクライナの城壁戦では魔法をつかってこなかったらしい。それで領主のライナ様は内通しているんじゃないかって王様に疑われてる」

「う~ん。内通っていうのは本当にないのか?」

「え?」

「だってそうだろ? 魔物が本気出さないことなんてあるのか?」

 街を出て農場に向かいながらそんな話を続ける。ここなら話を誰かに聞かれることもない。
 グライアスさんの言っていることはわかる。魔物って本能に忠実だから、あんまり手加減なんてしないんだよね。まあ、知能のあるやつが上にいるとシデンさんにしたように楽しむやつもいるけど、大抵は本気でかかってくる。
 僕も森で狩りをしているときに熊やイノシシの魔物と戦うけど、見るなり獲物だと思って攻撃してくるからね。話すよゆうもない感じだもん。あれが普通の魔物なんだろうな。

「言いたいことはわかる。しかし、ライナ様はとてもいい方なんだ。今も傷ついてる仲間を看病しているし、お金のない貧しい人を養ったりしている。そんなお方が」

「だからだろ」

「え?」

「この国の王は愚王。愚かな王だ。だから、裏切って滅ぼそうとしてる。うまくやって王だけを仕留められれば」

「な、なにを馬鹿なことを」

 グライアスさんの言葉にお父さんはたじろぐ。言いたいことはわかるけど、無理があるよ。
 王以外の人を殺さずに仕留めるなんて無理だよ。

「商会は俺の商会だけ、あとは住民。城の者だけにすればそれほど難しくはないだろ」

「グライアス。この話はもうやめよう。ライナ様がそんなことをするはずがない」

「なんでだ? 可能性はあるだろ?」

「ないんだよ。ウラス王はライナ様の命の恩人だからね」

「命の恩人?」

 命の恩人? お父さんの言葉に僕は首を傾げた。
 愚王と言われている人に命を助けられているってことか。そうなると確かに恩をあだで返すようなことは。

「今回と同じように魔物が街を襲ったんだ。若かりし頃のウラス王はライナ様を魔物から助けて王都へと逃げてきた。今回のライナ様のようにね」

「そうだったのか……それならあり得ないのかもな」

 絶対とは言い切れないけど確かにそれなら。
 グライアスさんは納得したようで何度か頷いた。

「なんだか悪いことをしたな。じゃあ、俺は街に戻るよ。また、何かあったら知らせろよ。必要なものがある時もな」

「ああ、こちらこそ悪い。その時は頼んだ」

 硬い握手をしてグライアスさんは街へと帰っていった。
 なんだか男の友情って感じでいいな。
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