21 / 23
第1章
第21話 裏切り?
しおりを挟む
「みんな無事だったか!」
兵士詰め所に着くと僕を椅子に座らせて、お父さんはみんなに抱き着いて喜んでる。
誰一人欠けずに会えるとは思っていなかったお父さんが泣きながら笑ってる。みんなもそれにこたえるように抱き返してる。
「嬉しいぞ。また会えて」
「ライナさま!」
領主のライナもこの詰め所で療養していたようでベッドに横になっていた。
ライナ様はみんなにも優しい領主様だからお父さんも嬉しそうだ。
「ウラスでは歓迎されていないらしい。こんな詰め所に我々を追いやってきた。それもしばらくの間だけだ。すぐに外へと追いやるらしい。ランネローゼ様が抗議してくれたのだがそれも時間の問題だ」
「そんな、じゃあ」
「ああ、出来れば我々を住まわせてくれるか? 農場の話は聞いているぞ」
にっこりと微笑んだライナ様がお父さんの肩に手を置いた。人懐っこい笑顔で優しい人っていうのが伺える。
お父さんは頼られたのが嬉しいのか笑顔で返して頷いた。
僕らの農場に仲間が増える。それも領主様とは凄い話だな~。
「農場に行くのはいいんですが魔物の群れは魔法を使ってこなかったんですか? 嬉しい誤算でしたが死人が出ていないのがおかしな感じで」
「ああ、そのことか。それは王にも言われたよ」
お父さんの疑問にライナ様は俯いて話した。
「内通しているから死人が出ていないんじゃないかって言われたよ」
「そんな! 命をかけて戦っていたのにそんなことをいわれたのですか?」
叫ぶように言ったお父さんにみんな頷いてこたえた。ランネローゼ様が何とかしてくれると思うけど、そんなことを言われたのか。愚王っていうのは本当なんだな~。
ランネローゼ様も大変だろうな。
「ランネローゼ様だけが私の言葉を信じてくれていたよ」
「あの方は我々の味方ですよ。アーリーを可愛がってくれています」
「面識があるのか?」
「ほぼ毎日遊びに来ています」
「毎日?」
お父さんと返答に首を傾げるライナ様。兵士のみんなも首を傾げて変な顔になってる。
王族であるランネローゼ様が遊びに来ているのがおかしいんだろうな。なんだか楽しい。
「キャッキャ」
「アーリーとはあの子か。なんだか逞しくなったんじゃないか?」
「そうですか?」
みんなの様子を見て笑うとみんな僕を見つめてきた。微笑ましく見つめてくるみんな。本当に無事でよかったね。
「では後程伺うよ。その時に今後の事を話し合おう」
「はい。お待ちしてます」
ひとしきり僕を見つめるとみんな満足したみたい。
お父さんが僕を抱き上げてこの場を後にする。手を振って別れを告げるとみんなも振ってくれた。いい人たちでよかった。
「どうだった?」
詰所から出て大通りを通るとグライアスさんが待ってた。魔法を使ってこなかったっていう話を聞きたいんだろうな。
「少なくともオクライナの城壁戦では魔法をつかってこなかったらしい。それで領主のライナ様は内通しているんじゃないかって王様に疑われてる」
「う~ん。内通っていうのは本当にないのか?」
「え?」
「だってそうだろ? 魔物が本気出さないことなんてあるのか?」
街を出て農場に向かいながらそんな話を続ける。ここなら話を誰かに聞かれることもない。
グライアスさんの言っていることはわかる。魔物って本能に忠実だから、あんまり手加減なんてしないんだよね。まあ、知能のあるやつが上にいるとシデンさんにしたように楽しむやつもいるけど、大抵は本気でかかってくる。
僕も森で狩りをしているときに熊やイノシシの魔物と戦うけど、見るなり獲物だと思って攻撃してくるからね。話すよゆうもない感じだもん。あれが普通の魔物なんだろうな。
「言いたいことはわかる。しかし、ライナ様はとてもいい方なんだ。今も傷ついてる仲間を看病しているし、お金のない貧しい人を養ったりしている。そんなお方が」
「だからだろ」
「え?」
「この国の王は愚王。愚かな王だ。だから、裏切って滅ぼそうとしてる。うまくやって王だけを仕留められれば」
「な、なにを馬鹿なことを」
グライアスさんの言葉にお父さんはたじろぐ。言いたいことはわかるけど、無理があるよ。
王以外の人を殺さずに仕留めるなんて無理だよ。
「商会は俺の商会だけ、あとは住民。城の者だけにすればそれほど難しくはないだろ」
「グライアス。この話はもうやめよう。ライナ様がそんなことをするはずがない」
「なんでだ? 可能性はあるだろ?」
「ないんだよ。ウラス王はライナ様の命の恩人だからね」
「命の恩人?」
命の恩人? お父さんの言葉に僕は首を傾げた。
愚王と言われている人に命を助けられているってことか。そうなると確かに恩をあだで返すようなことは。
「今回と同じように魔物が街を襲ったんだ。若かりし頃のウラス王はライナ様を魔物から助けて王都へと逃げてきた。今回のライナ様のようにね」
「そうだったのか……それならあり得ないのかもな」
絶対とは言い切れないけど確かにそれなら。
グライアスさんは納得したようで何度か頷いた。
「なんだか悪いことをしたな。じゃあ、俺は街に戻るよ。また、何かあったら知らせろよ。必要なものがある時もな」
「ああ、こちらこそ悪い。その時は頼んだ」
硬い握手をしてグライアスさんは街へと帰っていった。
なんだか男の友情って感じでいいな。
兵士詰め所に着くと僕を椅子に座らせて、お父さんはみんなに抱き着いて喜んでる。
誰一人欠けずに会えるとは思っていなかったお父さんが泣きながら笑ってる。みんなもそれにこたえるように抱き返してる。
「嬉しいぞ。また会えて」
「ライナさま!」
領主のライナもこの詰め所で療養していたようでベッドに横になっていた。
ライナ様はみんなにも優しい領主様だからお父さんも嬉しそうだ。
「ウラスでは歓迎されていないらしい。こんな詰め所に我々を追いやってきた。それもしばらくの間だけだ。すぐに外へと追いやるらしい。ランネローゼ様が抗議してくれたのだがそれも時間の問題だ」
「そんな、じゃあ」
「ああ、出来れば我々を住まわせてくれるか? 農場の話は聞いているぞ」
にっこりと微笑んだライナ様がお父さんの肩に手を置いた。人懐っこい笑顔で優しい人っていうのが伺える。
お父さんは頼られたのが嬉しいのか笑顔で返して頷いた。
僕らの農場に仲間が増える。それも領主様とは凄い話だな~。
「農場に行くのはいいんですが魔物の群れは魔法を使ってこなかったんですか? 嬉しい誤算でしたが死人が出ていないのがおかしな感じで」
「ああ、そのことか。それは王にも言われたよ」
お父さんの疑問にライナ様は俯いて話した。
「内通しているから死人が出ていないんじゃないかって言われたよ」
「そんな! 命をかけて戦っていたのにそんなことをいわれたのですか?」
叫ぶように言ったお父さんにみんな頷いてこたえた。ランネローゼ様が何とかしてくれると思うけど、そんなことを言われたのか。愚王っていうのは本当なんだな~。
ランネローゼ様も大変だろうな。
「ランネローゼ様だけが私の言葉を信じてくれていたよ」
「あの方は我々の味方ですよ。アーリーを可愛がってくれています」
「面識があるのか?」
「ほぼ毎日遊びに来ています」
「毎日?」
お父さんと返答に首を傾げるライナ様。兵士のみんなも首を傾げて変な顔になってる。
王族であるランネローゼ様が遊びに来ているのがおかしいんだろうな。なんだか楽しい。
「キャッキャ」
「アーリーとはあの子か。なんだか逞しくなったんじゃないか?」
「そうですか?」
みんなの様子を見て笑うとみんな僕を見つめてきた。微笑ましく見つめてくるみんな。本当に無事でよかったね。
「では後程伺うよ。その時に今後の事を話し合おう」
「はい。お待ちしてます」
ひとしきり僕を見つめるとみんな満足したみたい。
お父さんが僕を抱き上げてこの場を後にする。手を振って別れを告げるとみんなも振ってくれた。いい人たちでよかった。
「どうだった?」
詰所から出て大通りを通るとグライアスさんが待ってた。魔法を使ってこなかったっていう話を聞きたいんだろうな。
「少なくともオクライナの城壁戦では魔法をつかってこなかったらしい。それで領主のライナ様は内通しているんじゃないかって王様に疑われてる」
「う~ん。内通っていうのは本当にないのか?」
「え?」
「だってそうだろ? 魔物が本気出さないことなんてあるのか?」
街を出て農場に向かいながらそんな話を続ける。ここなら話を誰かに聞かれることもない。
グライアスさんの言っていることはわかる。魔物って本能に忠実だから、あんまり手加減なんてしないんだよね。まあ、知能のあるやつが上にいるとシデンさんにしたように楽しむやつもいるけど、大抵は本気でかかってくる。
僕も森で狩りをしているときに熊やイノシシの魔物と戦うけど、見るなり獲物だと思って攻撃してくるからね。話すよゆうもない感じだもん。あれが普通の魔物なんだろうな。
「言いたいことはわかる。しかし、ライナ様はとてもいい方なんだ。今も傷ついてる仲間を看病しているし、お金のない貧しい人を養ったりしている。そんなお方が」
「だからだろ」
「え?」
「この国の王は愚王。愚かな王だ。だから、裏切って滅ぼそうとしてる。うまくやって王だけを仕留められれば」
「な、なにを馬鹿なことを」
グライアスさんの言葉にお父さんはたじろぐ。言いたいことはわかるけど、無理があるよ。
王以外の人を殺さずに仕留めるなんて無理だよ。
「商会は俺の商会だけ、あとは住民。城の者だけにすればそれほど難しくはないだろ」
「グライアス。この話はもうやめよう。ライナ様がそんなことをするはずがない」
「なんでだ? 可能性はあるだろ?」
「ないんだよ。ウラス王はライナ様の命の恩人だからね」
「命の恩人?」
命の恩人? お父さんの言葉に僕は首を傾げた。
愚王と言われている人に命を助けられているってことか。そうなると確かに恩をあだで返すようなことは。
「今回と同じように魔物が街を襲ったんだ。若かりし頃のウラス王はライナ様を魔物から助けて王都へと逃げてきた。今回のライナ様のようにね」
「そうだったのか……それならあり得ないのかもな」
絶対とは言い切れないけど確かにそれなら。
グライアスさんは納得したようで何度か頷いた。
「なんだか悪いことをしたな。じゃあ、俺は街に戻るよ。また、何かあったら知らせろよ。必要なものがある時もな」
「ああ、こちらこそ悪い。その時は頼んだ」
硬い握手をしてグライアスさんは街へと帰っていった。
なんだか男の友情って感じでいいな。
496
お気に入りに追加
1,033
あなたにおすすめの小説
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!!
僕は異世界転生してしまう
大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった
仕事とゲームで過労になってしまったようだ
とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた
転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった
住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる
◇
HOTランキング一位獲得!
皆さま本当にありがとうございます!
無事に書籍化となり絶賛発売中です
よかったら手に取っていただけると嬉しいです
これからも日々勉強していきたいと思います
◇
僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました
毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる