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第1章

第15話 手合わせ

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「オクライナへと文を出したらしいのですがそれも私が対応いたしますのでご心配なく。というかオクライナの領主が怒らないか心配です。魔物の群れは他国の起こしたことかもと言われているのに守っている領主を叱るような文をだしていますから……」

 僕の手を離したランネローゼさんがソファーに座るとため息をつきながら話す。
 ヒュドラを召喚された時にそんなようなことだろうと思っていたけど、やっぱり他国の起こしたことなんだな。

「ヒュドラの報告を聞いた時は死を覚悟しましたがシデンには感謝してもしきれません」

 ヒュドラを倒したのはシデンさんってことになっている。流石に僕とダークで倒したなんてことになったら更に目立ってしまうから伏せておいた。シデンさんもそれをわかってくれているみたいでダークをクランに誘っているんだよね。黙っててあげるからって感じでもないけど、無言の圧を感じるのは僕だけみたいでダークは普通に無視している感じだ。
 
「しかし、シデンは雷の魔法を得意としています。炎と氷の首を倒すのはわかるのですが雷の首はどうなのでしょうか?」

「クリス。強ければ属性など関係ないのですよ。物理物理なのです」

 クリスさんが首を傾げて話した。ランネローゼさんはそれにガッツポーズをして力説してる。可愛らしいしぐさで少女って感じがするな~。

「世間話もこれくらいにしておきましょうか。これから農場を頑張ってください。本来は街の中に入っていただこうと思っていたのですけど、ワイバーンを使役できるほどの方々ならば無用でしょう」

「今のところは大丈夫ですが魔物の群れが来た時には」

「はい、それは大丈夫ですよ。すぐに兵士達に知らせておきます。もちろん力でも言いつけますよ。クリスにやらせますので」

 迫害の強いこの町では僕たちを追い出しかねないからね。ランネローゼさんはそういうところも気づいているみたいでクリスさんに指示している。

「では皆さん。本日は愚痴を聞いてくださりありがとうございました。また後程お話いたしましょう。今度は私がそちらに行きますね」

 ランネローゼさんはそういって僕らを見送ってくれた。城の外まで案内までしてくれて、とってもいい人だったな~。

 城を出て敷地から出ようと思ったら、

「ちょっと待っていただこう」

 クリスさんが僕らを引き止めた。

「ダークとはお前の事か?」

「なんで私の名を?」

 クリスさんがダークを指さして言って来た。
 さっきまではランネローゼさんがいたから言わなかったのかな? 少し攻撃的なクリスさんは腰の細剣に手をかけている。

「少しお付き合いいただきたい」

「……では皆さんは先に帰っていてください。おっとマスターはこちらに」

 ダークをご指名みたい。ダークはお父さんたちを帰して僕を抱き寄せた。お母さんは残念そうです。
 
「なぜ赤子を!」

「別に自由でしょ? マスターが一緒じゃだめならば私はこれで」

「まて! わかった。こっちだ来てくれ」

 心配そうに見ていたお父さんたちを見送って僕らはクリスさんの後をついていく。

 城の裏手へと回るとそこには訓練場のような庭が広がっている。藁で作ったかかしとかが置いてあって木剣何かも置いてある。
 
「これを使え。剣は使えるのだろ?」

 木剣を投げ渡してきたクリスさん。どうやら、ダークと手合わせをしたいみたいだ。

「手加減は必要か?」

「なめているのか? ランネローゼ様の近衛兵。手加減など不要だ」

 ダークがクスッと笑って話すとクリスさんは怒って木剣を握りつぶした。
 あんなに細い腕で木剣が握りつぶせるんだからステータスが仕事しているのが伺えるな~。

「子供は置けよ」

「本当にやる気か? 相手の実力も測れないようじゃ」

「早く準備をしろ!」

 クリスさんを挑発するダーク。見事にクリスさんはキレていくよ。あれじゃまともに戦えなさそうだけどな。

 ダークは僕を椅子に置くと木剣の握りを確認した。

「これでいいか?」

「ふん、いつでもいいかかってこい」

 クリスさんも木剣を手に取って突きの構えをとる。細剣を持っているだけあって、突き主体の闘い方みたいだ。
 ダークは笑いながらその様子を見ている。

「いくぞ」

「なっ!」

 ダークの声と同時に風がクリスさんを襲った。体が押されるほどの風で彼女は動きずらそうだ。
 それでも構えを崩さずに近づいてきていたダークの剣をガードする。
 鍔迫り合いになり、ぎりぎりと木の焦げる匂いが立ち込めてきた。

「なかなか頑張るな」

「これ程とは!」

 クリスさんは鍔迫り合いで汗を流して頑張ってる。涼しい顔のダークとは正反対だ。圧倒的にダークの方がつよいみたいだね。

「突っかかってきておいてこの程度なのか? それでも近衛兵なの?」

「ぐっ! 言ってくれる。ではこれならばどうだ!」

 鍔迫り合いで片膝をついたクリスさんが地面に片手をやると氷の刃がダークの足元から生えてきた。ダークはそれに乗り涼しい顔。

「なぜ切れない!」

「切れていたら死んでいるぞ。簡単なことだ。炎を纏っていただけ」

「いつの間に!」

 ダークの足を見ると赤く輝いているのが見える。彼女が言っている通り、炎の魔法を足につけているみたいだ。器用なことをするな~。

 それから少し、剣を交える彼女達。近づくのを嫌ったクリスさんが遠隔から氷の刃をとばして戦っていた。
 ダークはしびれを切らせて瞬時に近づいて切り伏せて終わらせたよ。

「もういいか? 私たちは忙しいんだ」

「ハァハァ……。素晴らしい。姫様の言っていた通りだ」
 
 どうやら、ランネローゼ様はこの事を知っているようだ。試しにやってみなさいって感じかな。

「またお願いしてもいいか? 今度はあなたが満足できるような戦いをしたい」

「ん? ああ、強くなれたらな」

「ありがとう」

 満足したようなクリスさんはそういってその場に寝転んだ。疲れ果てた様子で息も切れてる。

 それから僕を抱き上げたダークは城を後にした。
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