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第1章
第12話 愚行
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「なんだありゃ?」
「農場?」
城壁からアーリー農場を見た兵士たちが口々に疑問を投げかけた。
壁と堀のすぐ横に木の囲いで作られた農場が出来ている。
王都からすると木の囲いとはいえ建物が出来ているのはあまりよろしくない。
農場を敵国の者に取られて使われでもしたら厄介、城壁を守る兵士長がぎりぎりと歯ぎしりをして城内へと入っていった。
兵士長は王へと報告に向かったのだった。
「何! それは真か! ぐぬぬ。盾くらいにはなると思っていたが厄介なことをしてくれる」
兵士長の知らせに王は顔を真っ赤にして顔を歪めた。
王都ウラスの王、ラエラル・ウラスは三代目の王として君臨している。先代、先々代にあぐらをかくだけの堕落の王。
自分の兵士を使わず、オクライナの民を使い群れやそれを操る敵国から身を守ろうとしていた。
オクライナの民、アーリー達が建物を建て始めたのは予想外だった。
失格紋を多く持つオクライナの民は逞しいのだった。
「すぐにオクライナの領主を呼べ!」
「はっ!」
今も戦っているオクライナの領主を呼び寄せようと愚行を行う。
何とも呆れた王だろうか!
「何をしておる! すぐに建物を破壊せよ!」
さらに王はアーリー農場を破壊にかかる。兵士長はにやりと笑みを浮かべて玉座の間を後にした。
兵士長の後姿を見て、王はため息をつくのだった。
「な! なんだあれは!」
兵士長が城壁に戻ると、そこには予想だにしないものが農場に現れていた。
「ワイバーン?」
城壁上から覗く兵士達が一様に頷いた。
農場には木で作られた一般的な牛用の柵が作られている。屋根のついた牛用の建物ももちろん完備されている。
牛ももちろん顔を覗かせている。その牛も一般的な牛よりも大型の牛。魔物だと思われるその体躯は戦力としても申し分ないものだろう。
それにももちろん兵士たちは驚いていた。しかし、それよりも驚くべきものが空を舞い、地を歩いていたのだ。
兵士たちの目はワイバーンに釘付けである。
「兵士長、王はなんと?」
「……オクライナにうまを走らせ領主を呼べと、それからあの建物を即刻破壊せよ……だそうだ」
「ええ!」
兵士長の言葉に兵士たちは驚き生唾を飲み込んだ。
本来は兵士達もそうなるだろうと思っていた。しかし、相手がワイバーンを調教できる相手、命がいくつあっても足りないと絶句している。
それもそのはず、ワイバーンはCランクの魔物、Cランクと聞いて弱いと思われるだろうがそれは魔法使いや弓使いがいてこそのCランクだ。
空を舞い、石を落としてくるものを剣で落とせるはずがない。
ウラスの兵士たちの多くは剣と槍と弓を使う。魔法を使うものはごく少数だ。それでも失格紋を迫害するものだから質が悪い。
苦悶の顔をして兵士長は爪を噛み始めた。
王の命令は絶対、しかし、戦いとなったら勝てる見込みはない。十個師団ある騎士団を全部投入すればもしかしたら勝てるかもしれないがそんなことをしてしまったら本末転倒。敵国と戦う前に兵士がいなくなってしまう。
悩みに悩んだ兵士長は数名の兵士を連れて農場へと訪れた。
「ここの責任者はいるか?」
顔を引きつらせながら声をあげる兵士長。
なんだなんだとオクライナの民が集まってきて更に顔をひきつらせた。
「何か用ですか兵士さん?」
「責任者を出せと言っている。いないのか?」
ただ単に暮らすため、恩を返すために作った農場のため責任者を決めていなかった。
みんなが首を傾げているとアーリーの父、エランが前に出た。
「みんな私達の為に作ってくれたんです。たぶん、私が責任者になるかと」
エランがそういうと、ふむと頷いた兵士長が連れてきた部下にエランを逮捕させた。
「な、なにを!」
「こんなところに建物を作るなど、敵国のスパイだろ! 牢屋に放り込んでやる」
先ほどまでの引きつった顔を笑みに変えてエランを捕まえる兵士長。
しかし、その顔はすぐに青ざめることとなる。
「おろしてくれ~」
「兵士長助けて~」
逮捕しようとしてきた兵士達も一緒にアーリーの操るワイバーンによって大空を飛ぶこととなった。
鼻水や涙を滝のように流して喚き散らしている。
「キャッキャ!」
兵士達からしたら悪魔の笑い声だろうそれがワイバーンの背から聞こえる。
アーリーはダークと共に魔物を連れて来ていた。
圧倒的なステータス差を感じた魔物はアーリーに従順になるようになった。それでも襲ってくる魔物は容赦なく狩る。その獲物を卸したお金がみんなのものになっていくのだった。
「「……」」
ひとしきり飛んだことで兵士と兵士長の意識が飛んでしまって静かになった。
父であるエランにひどいことをしようとしたのだからこうなっても仕方がないこと、因果応報である。
「マスター。こっちも意識がなくなったので私が連れていきますね」
「バブ!」
地に降りてダークの乗っていたワイバーンの掴んでいた兵士も一緒に町へと帰す。
結局、兵士長は王の命令を守れないのであった。
「農場?」
城壁からアーリー農場を見た兵士たちが口々に疑問を投げかけた。
壁と堀のすぐ横に木の囲いで作られた農場が出来ている。
王都からすると木の囲いとはいえ建物が出来ているのはあまりよろしくない。
農場を敵国の者に取られて使われでもしたら厄介、城壁を守る兵士長がぎりぎりと歯ぎしりをして城内へと入っていった。
兵士長は王へと報告に向かったのだった。
「何! それは真か! ぐぬぬ。盾くらいにはなると思っていたが厄介なことをしてくれる」
兵士長の知らせに王は顔を真っ赤にして顔を歪めた。
王都ウラスの王、ラエラル・ウラスは三代目の王として君臨している。先代、先々代にあぐらをかくだけの堕落の王。
自分の兵士を使わず、オクライナの民を使い群れやそれを操る敵国から身を守ろうとしていた。
オクライナの民、アーリー達が建物を建て始めたのは予想外だった。
失格紋を多く持つオクライナの民は逞しいのだった。
「すぐにオクライナの領主を呼べ!」
「はっ!」
今も戦っているオクライナの領主を呼び寄せようと愚行を行う。
何とも呆れた王だろうか!
「何をしておる! すぐに建物を破壊せよ!」
さらに王はアーリー農場を破壊にかかる。兵士長はにやりと笑みを浮かべて玉座の間を後にした。
兵士長の後姿を見て、王はため息をつくのだった。
「な! なんだあれは!」
兵士長が城壁に戻ると、そこには予想だにしないものが農場に現れていた。
「ワイバーン?」
城壁上から覗く兵士達が一様に頷いた。
農場には木で作られた一般的な牛用の柵が作られている。屋根のついた牛用の建物ももちろん完備されている。
牛ももちろん顔を覗かせている。その牛も一般的な牛よりも大型の牛。魔物だと思われるその体躯は戦力としても申し分ないものだろう。
それにももちろん兵士たちは驚いていた。しかし、それよりも驚くべきものが空を舞い、地を歩いていたのだ。
兵士たちの目はワイバーンに釘付けである。
「兵士長、王はなんと?」
「……オクライナにうまを走らせ領主を呼べと、それからあの建物を即刻破壊せよ……だそうだ」
「ええ!」
兵士長の言葉に兵士たちは驚き生唾を飲み込んだ。
本来は兵士達もそうなるだろうと思っていた。しかし、相手がワイバーンを調教できる相手、命がいくつあっても足りないと絶句している。
それもそのはず、ワイバーンはCランクの魔物、Cランクと聞いて弱いと思われるだろうがそれは魔法使いや弓使いがいてこそのCランクだ。
空を舞い、石を落としてくるものを剣で落とせるはずがない。
ウラスの兵士たちの多くは剣と槍と弓を使う。魔法を使うものはごく少数だ。それでも失格紋を迫害するものだから質が悪い。
苦悶の顔をして兵士長は爪を噛み始めた。
王の命令は絶対、しかし、戦いとなったら勝てる見込みはない。十個師団ある騎士団を全部投入すればもしかしたら勝てるかもしれないがそんなことをしてしまったら本末転倒。敵国と戦う前に兵士がいなくなってしまう。
悩みに悩んだ兵士長は数名の兵士を連れて農場へと訪れた。
「ここの責任者はいるか?」
顔を引きつらせながら声をあげる兵士長。
なんだなんだとオクライナの民が集まってきて更に顔をひきつらせた。
「何か用ですか兵士さん?」
「責任者を出せと言っている。いないのか?」
ただ単に暮らすため、恩を返すために作った農場のため責任者を決めていなかった。
みんなが首を傾げているとアーリーの父、エランが前に出た。
「みんな私達の為に作ってくれたんです。たぶん、私が責任者になるかと」
エランがそういうと、ふむと頷いた兵士長が連れてきた部下にエランを逮捕させた。
「な、なにを!」
「こんなところに建物を作るなど、敵国のスパイだろ! 牢屋に放り込んでやる」
先ほどまでの引きつった顔を笑みに変えてエランを捕まえる兵士長。
しかし、その顔はすぐに青ざめることとなる。
「おろしてくれ~」
「兵士長助けて~」
逮捕しようとしてきた兵士達も一緒にアーリーの操るワイバーンによって大空を飛ぶこととなった。
鼻水や涙を滝のように流して喚き散らしている。
「キャッキャ!」
兵士達からしたら悪魔の笑い声だろうそれがワイバーンの背から聞こえる。
アーリーはダークと共に魔物を連れて来ていた。
圧倒的なステータス差を感じた魔物はアーリーに従順になるようになった。それでも襲ってくる魔物は容赦なく狩る。その獲物を卸したお金がみんなのものになっていくのだった。
「「……」」
ひとしきり飛んだことで兵士と兵士長の意識が飛んでしまって静かになった。
父であるエランにひどいことをしようとしたのだからこうなっても仕方がないこと、因果応報である。
「マスター。こっちも意識がなくなったので私が連れていきますね」
「バブ!」
地に降りてダークの乗っていたワイバーンの掴んでいた兵士も一緒に町へと帰す。
結局、兵士長は王の命令を守れないのであった。
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