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第1章
第10話 グライアス商会
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「やあ! ダーク」
「シデン?」
ダークが熊を担いで街のギルドに向かっている私は声をかける。
彼女がギルドに卸すようになってほぼ毎日声をかけているので彼女は少し飽き飽きしているように感じる。
でも、致し方ない。彼女は優秀な戦士だ。これを逃す手はない。今は少しでも多くの強い仲間が必要だからな。
「私は入らないぞ」
「なんだ。急に」
「ほぼほぼ毎日誘ってくるからな。聞かれる前に言ってやったんだ」
自分よりも大きな熊を担いで歩く彼女は普通にそういってきた。
まったく、私でも少しは息を切らせるぞ。
「ギルドに顔が利くようになって、オクライナの避難民にもいい暮らしをさせられるんだぞ」
「何度も聞いてる。私は興味がない」
彼女が慈善事業のようなことをしているのは知っている。獲物をしとめて、ギルドに卸す。お金もみんなに配り、肉もみんなに配る。まるで聖母だと崇められている。
「皆を助ける手伝いをしたいんだ。わかるだろ?」
「私は別に人間など……」
「……あの赤ん坊か?」
私の言葉を聞いて、彼女は鋭い視線を浴びせてきた。
びりびりと殺気を感じてあぶら汗が止まらない。
「街へ入れたことは感謝するがあまり詮索すると死ぬぞ」
ダークはそういってギルドへと入って行った。
あの大きさの熊は解体室のある裏手でしか入れないからギルドの裏手だな。
彼女が卸すようになってからギルドは大変潤っていると聞く。偶には私も獲物を卸さないと彼女に負けそうだ。
◇
「女! 避難してきた身か? あまりウロチョロするなよ。失格紋の子供もな」
「はい……」
今日は森での狩りも終わったので街で買い物しようと思ったんだ。みんなの服とかを買おうと思って門をくぐると門を守ってる兵士さんに怒られた。
僕を見て明らかに嫌そうな顔をしている。
オクライナから避難してきた僕らの中には失格紋をつけられている子供は結構多い。辺境と言われているだけあってそういう迫害対象が多く移り住んでいたのかな?
お母さんは俯き加減に門を後した。
「おいおい、失格紋をつけているガキを連れてるぜ」
「ひゅ~、若くて可愛いのにもったいね~」
街を通ると路地にたむろしている青年たちがお母さんを見て声をあげてきた。
大通りなので多くの人が僕らを見てくる。
「ブ~!」
「大丈夫よアーリー。私は別に悪いことをしているわけではないんだから」
お母さんはそういって気丈に振舞って前を向いて歩く。
そんな中、路地の青年達を見ながら男が、
「もったいないのはどっちだかな!」
「あ~? なんだよおっさん!」
ぞろぞろと青年達はその男を包囲していく。しかし、
「もったいないって言ってるんだよ! 働かないお前たちがね!」
おじさんの後ろから多くの人がワラワラと現れる。屋台を出していたおじさんやおばさんがみんなで青年を包囲していく。
「な、なんだよ! 俺達はただ、避難してきた汚い奴らを」
「汚い!? あんたも言っただろ、とても可愛らしいじゃないか」
「汚いなら洗えばいい。服が汚れているんだったら変えればいいだろ。それを非難するってことはそれをさせないようにするってことだ。それじゃ何もできねえじゃねえか」
おじさんとおばさんの圧が強くなる。
お母さんもキョトンとして足を止めて見つめている。
「ちぃ! つまらねえ。行こうぜ」
青年達はそういって唾を地面に吐き路地の奥へと消えていった。
「あ、ありがとうございます」
「バブ!」
青年達に大きくため息をついておじさんたちは元の生活に戻っていった。
お母さんは大きな声でみんなにお辞儀をしてお礼を言うと少し赤くなった顔で頭を掻いた。
「誰でも避難する可能性のある世界だ。いいってことよ。それにな。俺達は商売人! お客様にカッコつけずに誰にするってんだ」
代表して一番最初に青年に注意してくれたおじさんが鼻を擦りながら話した。
「ということで何か買わないかい?」
おじさんはそういって自分の屋台を指さした。そこには果物がいっぱい盛られている籠がいっぱいあって、いい匂いがする。
「じゃ、じゃあリンゴを一つ」
「お? 無理に買わなくてもいいぞ。俺の屋台じゃなくてもいいんだ。言ってくれよ」
「あ、その……みんなの服を買おうと思って」
「みんな?」
お母さんの言葉を聞いて首を傾げるおじさん。
お母さんはみんなの事を話すとおじさんは涙目で鼻をすすった。
「く~。泣かすね~。おっしゃ! 任せてくれ。これでもグライアス商会の端くれよ!」
「端くれどころか会長だろ」
「よっ! 流石グライアス会長!」
「よせやい。自慢になっちまう」
おじさんがドンッと胸を叩いて話すと周りの屋台から声が上がった。
このおじさんはグライアス商会っていう商会の会長みたいだ。会長なのに屋台で働いてたのか、なんだか凄いな。
「会長さん?」
「ああ。一代で商会を大きくした。って結局自慢しちまった」
「なんで屋台で?」
「おう、大きな商会だからよ。移動することが多いから馬車で移動しやすいように店を持ってねえんだ。俺だけでいってもいいんだけどよ。流石に会長だからな。死んだら路頭に迷うやつがいるってんでみんなが守ってくれてんだ」
「俺達は会長の息子や娘だからな」
「おいおい、俺はまだ結婚もしてねえぞ。とまあ、こういうことでな」
なるほど、店を持っていない商会ってことか。移動しやすいように馬車にすべてを持ってるから身軽に動ける。
「よし! 俺の話は終わりっと。服だったな! お~いばっちゃ~ん」
「誰がばっちゃんだい。わたしゃまだ90だよ」
「ははは、十分ばっちゃんだ」
布が山になっている屋台に向かってグライアスさんは声をあげた。しわくちゃのおばあさんが声を張り上げてる。
微笑ましい光景。外に出て初めて人を見た気がする。ああいう人望のある人が会長だとホッとするな。
それからグライアスさんには避難民テントに来てもらって色々と買い付けさせてもらった。通常の2割増しで買わせてもらったよ。
これもうちのおかあさんが美人だからかな? 僕も可愛いから頭を撫でられてしまったよ。ムフ~。
「シデン?」
ダークが熊を担いで街のギルドに向かっている私は声をかける。
彼女がギルドに卸すようになってほぼ毎日声をかけているので彼女は少し飽き飽きしているように感じる。
でも、致し方ない。彼女は優秀な戦士だ。これを逃す手はない。今は少しでも多くの強い仲間が必要だからな。
「私は入らないぞ」
「なんだ。急に」
「ほぼほぼ毎日誘ってくるからな。聞かれる前に言ってやったんだ」
自分よりも大きな熊を担いで歩く彼女は普通にそういってきた。
まったく、私でも少しは息を切らせるぞ。
「ギルドに顔が利くようになって、オクライナの避難民にもいい暮らしをさせられるんだぞ」
「何度も聞いてる。私は興味がない」
彼女が慈善事業のようなことをしているのは知っている。獲物をしとめて、ギルドに卸す。お金もみんなに配り、肉もみんなに配る。まるで聖母だと崇められている。
「皆を助ける手伝いをしたいんだ。わかるだろ?」
「私は別に人間など……」
「……あの赤ん坊か?」
私の言葉を聞いて、彼女は鋭い視線を浴びせてきた。
びりびりと殺気を感じてあぶら汗が止まらない。
「街へ入れたことは感謝するがあまり詮索すると死ぬぞ」
ダークはそういってギルドへと入って行った。
あの大きさの熊は解体室のある裏手でしか入れないからギルドの裏手だな。
彼女が卸すようになってからギルドは大変潤っていると聞く。偶には私も獲物を卸さないと彼女に負けそうだ。
◇
「女! 避難してきた身か? あまりウロチョロするなよ。失格紋の子供もな」
「はい……」
今日は森での狩りも終わったので街で買い物しようと思ったんだ。みんなの服とかを買おうと思って門をくぐると門を守ってる兵士さんに怒られた。
僕を見て明らかに嫌そうな顔をしている。
オクライナから避難してきた僕らの中には失格紋をつけられている子供は結構多い。辺境と言われているだけあってそういう迫害対象が多く移り住んでいたのかな?
お母さんは俯き加減に門を後した。
「おいおい、失格紋をつけているガキを連れてるぜ」
「ひゅ~、若くて可愛いのにもったいね~」
街を通ると路地にたむろしている青年たちがお母さんを見て声をあげてきた。
大通りなので多くの人が僕らを見てくる。
「ブ~!」
「大丈夫よアーリー。私は別に悪いことをしているわけではないんだから」
お母さんはそういって気丈に振舞って前を向いて歩く。
そんな中、路地の青年達を見ながら男が、
「もったいないのはどっちだかな!」
「あ~? なんだよおっさん!」
ぞろぞろと青年達はその男を包囲していく。しかし、
「もったいないって言ってるんだよ! 働かないお前たちがね!」
おじさんの後ろから多くの人がワラワラと現れる。屋台を出していたおじさんやおばさんがみんなで青年を包囲していく。
「な、なんだよ! 俺達はただ、避難してきた汚い奴らを」
「汚い!? あんたも言っただろ、とても可愛らしいじゃないか」
「汚いなら洗えばいい。服が汚れているんだったら変えればいいだろ。それを非難するってことはそれをさせないようにするってことだ。それじゃ何もできねえじゃねえか」
おじさんとおばさんの圧が強くなる。
お母さんもキョトンとして足を止めて見つめている。
「ちぃ! つまらねえ。行こうぜ」
青年達はそういって唾を地面に吐き路地の奥へと消えていった。
「あ、ありがとうございます」
「バブ!」
青年達に大きくため息をついておじさんたちは元の生活に戻っていった。
お母さんは大きな声でみんなにお辞儀をしてお礼を言うと少し赤くなった顔で頭を掻いた。
「誰でも避難する可能性のある世界だ。いいってことよ。それにな。俺達は商売人! お客様にカッコつけずに誰にするってんだ」
代表して一番最初に青年に注意してくれたおじさんが鼻を擦りながら話した。
「ということで何か買わないかい?」
おじさんはそういって自分の屋台を指さした。そこには果物がいっぱい盛られている籠がいっぱいあって、いい匂いがする。
「じゃ、じゃあリンゴを一つ」
「お? 無理に買わなくてもいいぞ。俺の屋台じゃなくてもいいんだ。言ってくれよ」
「あ、その……みんなの服を買おうと思って」
「みんな?」
お母さんの言葉を聞いて首を傾げるおじさん。
お母さんはみんなの事を話すとおじさんは涙目で鼻をすすった。
「く~。泣かすね~。おっしゃ! 任せてくれ。これでもグライアス商会の端くれよ!」
「端くれどころか会長だろ」
「よっ! 流石グライアス会長!」
「よせやい。自慢になっちまう」
おじさんがドンッと胸を叩いて話すと周りの屋台から声が上がった。
このおじさんはグライアス商会っていう商会の会長みたいだ。会長なのに屋台で働いてたのか、なんだか凄いな。
「会長さん?」
「ああ。一代で商会を大きくした。って結局自慢しちまった」
「なんで屋台で?」
「おう、大きな商会だからよ。移動することが多いから馬車で移動しやすいように店を持ってねえんだ。俺だけでいってもいいんだけどよ。流石に会長だからな。死んだら路頭に迷うやつがいるってんでみんなが守ってくれてんだ」
「俺達は会長の息子や娘だからな」
「おいおい、俺はまだ結婚もしてねえぞ。とまあ、こういうことでな」
なるほど、店を持っていない商会ってことか。移動しやすいように馬車にすべてを持ってるから身軽に動ける。
「よし! 俺の話は終わりっと。服だったな! お~いばっちゃ~ん」
「誰がばっちゃんだい。わたしゃまだ90だよ」
「ははは、十分ばっちゃんだ」
布が山になっている屋台に向かってグライアスさんは声をあげた。しわくちゃのおばあさんが声を張り上げてる。
微笑ましい光景。外に出て初めて人を見た気がする。ああいう人望のある人が会長だとホッとするな。
それからグライアスさんには避難民テントに来てもらって色々と買い付けさせてもらった。通常の2割増しで買わせてもらったよ。
これもうちのおかあさんが美人だからかな? 僕も可愛いから頭を撫でられてしまったよ。ムフ~。
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