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第1章
第7話 召喚
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「た、ただいま」
「戻りました」
ダークとお父さんが帰ってきた。どうやら、被害なく終わったみたい。僕とお母さんが『お帰り』というとくたびれた表情で笑顔を作るお父さん。
お父さんはぐったりしていて、ダークに肩を持たれている。
「ん? こっちにも魔物が来たのか?」
野営地が少し騒がしくなっている。
僕が失神させた男の事で兵士さんやシデンさんの部隊の人達が騒いでる。
ガストゥーレ帝国の人らしいけど、そんなに有名なのかな?
「帝国の仕業だったか。どうりで……。普通は見境なく近場のものを襲うはずの魔物が一心不乱にこちらに向かってきていたわけだ。特に鼻の利くやつが多かったように見える。【魔寄せの香】を使ったのだろう。まったく、ろくなことをしない……」
お父さんはため息をついて話してくれた。そんなお香があるんだな~。ってことは焚火に入れられていたのか。
「私は全然気づきませんでしたが?」
「たぶん、強い魔物には効かないのでしょう。来た魔物も多くはEランクの魔物でしたから」
ダークの疑問にお父さんが顎に手を当てて話した。なるほどね。お香がすべての魔物に効いてしまったら恐ろしいことになるもんね。ちゃんとそういうところは考えているのかな?
「しかし、そうなると街が気になる」
「あなた?」
「ん? ああ、心配はないと思うがね。魔物の群れは確認されていたわけだ。それにガストゥーレがかかわっているのもわかった。そうなるとこちらが本命ではない可能性があるんだよ」
お父さんは考えを口に出した。お母さんが心配そうに顔を覗き込んでいる。
「なかなかの知将ですねお父様は」
「あ、いやいや。ただの憶測です」
ダークが率直に褒めるとお父さんは恥ずかしそうに照れた。
美人に褒められるとそうなっちゃうよな~。でも、お父さんはお母さんがいるからダメ~。
「あらあら、あなた。ほほがこんなに赤くなっていますよ。ちゃんと傷薬をつけておかないといけないですね~!」
「あっちょっ! エネ! 何を怒って。ああ~」
お父さんはお母さんに頬をつねられて引っ張られていった。
お母さんの前で美人にのろけてはいけないぞ父ちゃん。
「マスターの心配通り、シデンという女に目をつけられてしまいました」
「バブ……」
一人になった僕を抱き上げて耳元でささやくダーク。こそばゆいが心地よい。
「始末しますか?」
「バブバブ!」
ダメダメ、そんな事しちゃダメだよ~。
普通の市民として接してスルーしていこう。
「承知しました。しかし、あの女もなかなかの逸材ですね。雷を操る槍を持っていました」
シデンさんはそれが代名詞らしいからね。僕も炎の剣とかほしいな~。
ロマンは大事だよねやっぱり。
◇
「黙っていても無駄だぞ」
「……」
ガストゥーレの刺客を拷問することとなった。こういうことは苦手なのだが、今は少しでも情報が欲しいところだ。
私の部隊の一番大きなテントで鞭打ちを行っている。
鞭を打つと男は苦悶の表情を浮かべた。口は堅く、かなりベテラン。そんなベテランを失神させたものが避難民の中にいたということか。
ダークさんといいここの避難民は何かおかしいな。
「損しかないぞ早く吐け」
「……」
「短剣を持っていたそうだな。腕に自信があるようだ」
ベキッ! 私は男の腕をへし折った。縛られているものを傷つけるのは気が引けるが致し方ない。
命を狙ってくるものに同情しても損をするだけだ、ここは我慢して男を痛めつける。
「ぐう……」
「今ならばまだ回復の見込みはあるぞ」
「……」
「そうか、残念だ。利き腕は右か?」
「待て! わかった話す!」
殺意のこもった私の問いに我慢できなくなった男は口を開いた。
「早く話せ!」
「話す話すよ! 俺はガストゥーレの……ぐ」
「どうした!」
「腹から何か! グるぁァ!」
男の腹が大きく裂けてそのままテントを裂いていく。私と数名の部下は瞬時に反応してテントの外へと飛んだ。
そこで私たちは恐ろしいものを目にすることとなった。
「ヒュドラ!」
三つ首の龍、ヒュドラ。大きさは貴族の屋敷ほど、それが赤い瞳で私たちを見据えていた。三つの首はそれぞれ別々の属性を操ることが出来る。炎、氷そして一番厄介な雷。伝説ともいわれる魔物の一体。
男の体には秘密を話そうとすると作動する魔法がかかっていたようだ。男の命と魔力を使って作動する魔法。召喚魔法であるのはわかるがヒュドラを召喚する魔法はかなり強力な魔法だ。あいつ一人の魔力では到底おこせない。
「なるほど……そのための魔物か……」
私達が仕留めたEランクの魔物、Eランクとはいえ百を超える数だ。それなりの魔力に変わるだろう。
「シデン隊長来ます!」
「雷は任せろ炎の首と氷の首をしとめろ!」
『応っ!』
さあ、二回戦と行こうじゃないか!
「戻りました」
ダークとお父さんが帰ってきた。どうやら、被害なく終わったみたい。僕とお母さんが『お帰り』というとくたびれた表情で笑顔を作るお父さん。
お父さんはぐったりしていて、ダークに肩を持たれている。
「ん? こっちにも魔物が来たのか?」
野営地が少し騒がしくなっている。
僕が失神させた男の事で兵士さんやシデンさんの部隊の人達が騒いでる。
ガストゥーレ帝国の人らしいけど、そんなに有名なのかな?
「帝国の仕業だったか。どうりで……。普通は見境なく近場のものを襲うはずの魔物が一心不乱にこちらに向かってきていたわけだ。特に鼻の利くやつが多かったように見える。【魔寄せの香】を使ったのだろう。まったく、ろくなことをしない……」
お父さんはため息をついて話してくれた。そんなお香があるんだな~。ってことは焚火に入れられていたのか。
「私は全然気づきませんでしたが?」
「たぶん、強い魔物には効かないのでしょう。来た魔物も多くはEランクの魔物でしたから」
ダークの疑問にお父さんが顎に手を当てて話した。なるほどね。お香がすべての魔物に効いてしまったら恐ろしいことになるもんね。ちゃんとそういうところは考えているのかな?
「しかし、そうなると街が気になる」
「あなた?」
「ん? ああ、心配はないと思うがね。魔物の群れは確認されていたわけだ。それにガストゥーレがかかわっているのもわかった。そうなるとこちらが本命ではない可能性があるんだよ」
お父さんは考えを口に出した。お母さんが心配そうに顔を覗き込んでいる。
「なかなかの知将ですねお父様は」
「あ、いやいや。ただの憶測です」
ダークが率直に褒めるとお父さんは恥ずかしそうに照れた。
美人に褒められるとそうなっちゃうよな~。でも、お父さんはお母さんがいるからダメ~。
「あらあら、あなた。ほほがこんなに赤くなっていますよ。ちゃんと傷薬をつけておかないといけないですね~!」
「あっちょっ! エネ! 何を怒って。ああ~」
お父さんはお母さんに頬をつねられて引っ張られていった。
お母さんの前で美人にのろけてはいけないぞ父ちゃん。
「マスターの心配通り、シデンという女に目をつけられてしまいました」
「バブ……」
一人になった僕を抱き上げて耳元でささやくダーク。こそばゆいが心地よい。
「始末しますか?」
「バブバブ!」
ダメダメ、そんな事しちゃダメだよ~。
普通の市民として接してスルーしていこう。
「承知しました。しかし、あの女もなかなかの逸材ですね。雷を操る槍を持っていました」
シデンさんはそれが代名詞らしいからね。僕も炎の剣とかほしいな~。
ロマンは大事だよねやっぱり。
◇
「黙っていても無駄だぞ」
「……」
ガストゥーレの刺客を拷問することとなった。こういうことは苦手なのだが、今は少しでも情報が欲しいところだ。
私の部隊の一番大きなテントで鞭打ちを行っている。
鞭を打つと男は苦悶の表情を浮かべた。口は堅く、かなりベテラン。そんなベテランを失神させたものが避難民の中にいたということか。
ダークさんといいここの避難民は何かおかしいな。
「損しかないぞ早く吐け」
「……」
「短剣を持っていたそうだな。腕に自信があるようだ」
ベキッ! 私は男の腕をへし折った。縛られているものを傷つけるのは気が引けるが致し方ない。
命を狙ってくるものに同情しても損をするだけだ、ここは我慢して男を痛めつける。
「ぐう……」
「今ならばまだ回復の見込みはあるぞ」
「……」
「そうか、残念だ。利き腕は右か?」
「待て! わかった話す!」
殺意のこもった私の問いに我慢できなくなった男は口を開いた。
「早く話せ!」
「話す話すよ! 俺はガストゥーレの……ぐ」
「どうした!」
「腹から何か! グるぁァ!」
男の腹が大きく裂けてそのままテントを裂いていく。私と数名の部下は瞬時に反応してテントの外へと飛んだ。
そこで私たちは恐ろしいものを目にすることとなった。
「ヒュドラ!」
三つ首の龍、ヒュドラ。大きさは貴族の屋敷ほど、それが赤い瞳で私たちを見据えていた。三つの首はそれぞれ別々の属性を操ることが出来る。炎、氷そして一番厄介な雷。伝説ともいわれる魔物の一体。
男の体には秘密を話そうとすると作動する魔法がかかっていたようだ。男の命と魔力を使って作動する魔法。召喚魔法であるのはわかるがヒュドラを召喚する魔法はかなり強力な魔法だ。あいつ一人の魔力では到底おこせない。
「なるほど……そのための魔物か……」
私達が仕留めたEランクの魔物、Eランクとはいえ百を超える数だ。それなりの魔力に変わるだろう。
「シデン隊長来ます!」
「雷は任せろ炎の首と氷の首をしとめろ!」
『応っ!』
さあ、二回戦と行こうじゃないか!
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