【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章

第1話 幸せスキルと失格紋

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 視界が真っ白。
 僕は何が起こったのかわからなくて困惑した。
 
 視界が色を取り戻す。
 周りを見回していると金髪の綺麗なお姉さんが目の前に現れて僕を抱き上げた。
 この時に初めて気が付いた。僕は赤ん坊になっていたようだ。
 確か僕は30歳のフリーターだったはず? おぼろげな記憶だけど確かそう……そうだよね?

「可愛そうな子。あんな事故で命を失ってしまうなんて」

 女性はそういって僕の頬に自分の頬を重ねてきた。
 とても暖かくて自然と涙が出てくる。

 女性の言葉を信じると僕は死んでしまったみたい。この真っ白な世界は神界ってやつなのかもしれない。

「私の名はティリアス。あなたの生きてきた世界とは別の世界の女神よ」

 僕を地面から現れた子供用の椅子に座らせると自己紹介をしてくれた。彼女は女神様らしいです。

「これからあなたは私の世界に旅立ちます。今まで素直に生きてきたあなたには特別な力を授けます。幸せの力です」

「アブ?」

 幸せの力? なんだろうそれは?

「あなたは歩くだけで経験値を得ることが出来るのです。更に私からのプレゼント。あなたは経験値を百倍得ることが出来ます」

「バブ!?」

 幸せの力ってRPGゲームのやつか! ゲームの場合は1歩で1の経験値だけど、ティリアス様のおかげで1歩で百の経験値を得ることが出来る。
 うん、完全にチートだね。

「理解してくれたようでよかった。では早速、転生させましょう」

「バブ!」

 ティリアス様はそういうと僕の視界が真っ暗になった。
 真っ暗な時間が長くて思わず口が動き出す。

 オギャ~オギャ~。

「お~元気な男の子です」

「でかしたぞエネ」

 思わず泣いたらそんな声が聞こえてきた。
 どうやら、僕が生まれたみたいだ。視界が真っ暗なのは生まれたばかりだからか、納得すると泣くこともないな。急に冷静になる僕、赤ん坊なのにこれじゃ不自然だろうな。

「早速、ギフトを見てみよう」

 カチャカチャと音を立てるお父さん。しばらくすると指に痛みが走った。針を刺されたみたいだ。
 目が見えないので急に来た痛みでまた泣いてしまった。

「HP5 MP0? ギフトが【幸せ】?」

「あなた!? 私にも見せて」

 両親は僕のステータスを見ているみたいだ。針で血を出した? 血でステータスを見れるのか。僕も見たいけど、目が見えないから見られない。
 
「STR DEF DEX AGI MND INT すべて3……」

「どれも平均以下だ。加えてMPが0。もしかしたら魔法の才能がないのかもしれない」

 両親は二人でそういって涙を流した。うれし涙だけで済めばよかったのにな。

 とにかく、この段階でわかったのはこの世界がゲームのようなステータスが見れる世界ってことだ。
 魔法があってステータスがあるってことは魔物の居る世界かもしれない。
 
「アーリー。ご飯ですよ」

「バブ」

 僕が生まれて三か月。僕の名はアーリーになったみたい。
 目も見えるようになって狭い家の中をハイハイで駆けまわってる。
 ご飯ということでお母さんに抱えられて母乳を与えられた。
 30にもなって母乳は恥ずかしいけど、今の外見は0歳なので何とか我慢できた。

「ただいま~」

「おかえりなさいあなた」

 お父さんの名前はエラン、お母さんはエネ、とっても優しくて、出来損ないかもしれない僕にも優しくしてくれてる。

 お父さんも帰ってきて夕食。茶色のシチューと黒いパン。家の感じもそうだけど、時代は完全に中世ヨーロッパっぽい。
 お父さんは兵士の兜と鎧を持っている。もちろん、剣もあるんだけど、銃はないみたい。
 魔法があるから銃は要らないのかもな。

「ふふ、アーリーったら凄いのよ。天井とか壁とか登っちゃうの」

「おお、それは凄いな~。将来は兵士だな」

「もう、あなたったら気が早いわ」

 二人とも僕のやったことを楽しく話してる。生まれたときは悲しそうにしていたけど、今はもう大丈夫みたい。
 ティリアス様のギフト、【幸せ】の効果で歩くだけでレベルが上がる。

 ステータスを見るのに魔道具みたいなもので毎回見なくちゃいけないんだけどそれはできないんだ。
 魔道具が必要ってことはステータスをみるのにもお金がかかるってことで、それほど裕福でもない家庭なので無理させたくない。
 それなのになんでレベルが上がったのかがわかるかというとシステム音声がなる。女性のような声のシステム音声で『レベルが上がりました』と聞こえる。
 今まで数えていたんだけど、合っていれば50レベルまで上がっているはず。
 ステータスも上がっているだろうから試しに壁とか登ってみたんだ。
 案の定ステータスが上がっているみたいで自分の体がかなり軽くなってるみたい。ハイハイだとあんまり感じられなかったけど、登ったりしたら結構軽くなっているようなきがする。
 お母さんはそれを見てくれてた。楽しそうに微笑んでくれて、自然と僕も笑顔になっちゃう。

「失敗したな。失格紋なんてやらなくてよかったかもな」

「そうね。魔法なんてなくたって、アーリーは強くなるわ」

 僕の手の甲は失格紋がついている。国の決まりで魔法に適性がないと思われる赤子にはつけないといけないんだ、それをしないと捕まるらしい。隠すことが犯罪になるなんて迫害もここまでくると凄いな。

 
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