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第15話
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ディーネちゃんにみんなを預けて僕はすぐにグラーゼスに戻ることにした。
ルルちゃんとナナちゃんが僕にくっついて離れようとしなかったから出てくるのが大変だったけど、何とか納得してもらって出発することが出来た。
あんな小さな子達に泣きつかれると出かけたくない気持ちが大きくなったけど、あの子達を解放するには必要なことだから仕方ないよね。
「マジックバッグの中身がなくなったから体が軽いや」
故郷のウンディーネ村から出て街道を外れて真っ直ぐ走っていく。方角はあっているからこのほうが早いんだよね~。体が重いときは街道の方が歩きやすいから歩くけど、軽い場合は跳躍の方が早いからね。木に差し掛かっても全然差し支えないのだ。
最短距離を走ってグラーゼスに到着。行きと帰りじゃ全然早さが違うな~。ウンディーネ村に着いたと思ったらその日に帰ってきちゃった。ベラトンに早く依頼を達成したのを報告しないとな。
あと、ディーネちゃんからの言伝もね。
トムさんの住んでいる家に到着。
「トムさん。ただいまもどりました」
「ああ! アズさん。戻ってきてくれたんですね……無理だったんですか?」
扉をノックするとトムさんが迎えてくれた。
帰ってくるのが早すぎるから失敗したと思っているトムさん。笑顔で首を横に振ると驚いてる。
リビングにあるソファーに案内されて座ると水を出してくれた。
「じゃ、じゃあ。あの船をしまったポーターがいるっていう噂は本当だったんですね」
「そんな噂されてるんですか?」
突然あんな大きな船が港からなくなったら驚くだろうな。家を一軒入れた時も驚かれたことがあったけど、その比じゃないみたいだ。
話を聞くと商人ギルドが僕を探しているらしい。見つかると面倒くさいことになりそうだから早くベラトンのもとへ向かおう。
「ベラトンがどこにいるかわかりますか?」
「商人ギルドにいると思います」
「ええ!? 商人ギルドに?」
「はい。交渉をするといっていました」
交渉か……貴族ってこともあって色んな事をしているんだろうな。トムさんにやったような汚いこととか。
「じゃあ、行かないほうがいいですかね?」
「それが、ベラトンにはアズさんが来たら来るようにと言われていまして」
「そう、ですか……」
仕方ない行くしかないか。
いかなかったらトムさん達が何されるかわからないしね。
「あなたお店の準備できたみたいよ。あ、アズさんお帰りなさい。もう行ってきてくれたんですか?」
重い腰をあげて商人ギルドに行こうと思ったらトムさんの奥さんが家に帰ってきた。僕に気づいて驚いてる。
お店って新しく店を開くのかな?
「これから新しい日々が始められます。アズさんのおかげです。本当にありがとうございます」
「いえいえ、でも本当によかったですね」
そうか、新しく始められるんだね。
「はい! 私には料理しかできませんから同じ芸のない食事処を始めることにしました」
「そうですか」
ベラトンの妨害がなかったら普通に売れていたらしいからね。今度は絶対成功するだろうな。
「お父さん……」
「おお。お前達、起きたか」
奥の部屋からトムさんの子供達が起きてきた。
起きたばっかりで目を擦ってる。
「あ~アズさんだ~」
「お帰りなさいアズさん」
「ふふ、ただいま」
僕に気づくと元気になって脚に抱き着いてきた。頭を撫でてあげると二カッと笑ってる。
「アズさんのおかげでこの子達と普通に暮らすことが出来ます」
子供を一人抱き上げて微笑むトムさん。抱き上げられた子と僕に抱き着いてる子も一緒になって満面の笑顔を向けてくれた。
「じゃあ、僕はベラトンに会いに行ってきますね。その後にお店に行ってもいいですか?」
「あ、はい! ぜひ。子供達も待っています」
「「来てね!」」
バイバイとトムさん達に手を振って商人ギルドへと向かう。
商人ギルドは緑と白を基調にした建物で町の中央に位置してる。結構綺麗な服じゃないと入口で止められるとか聞いたけど大丈夫だろうか?
「止まれ!」
心配しながらギルドの前につくと案の定止められてしまった。
「商人ギルドに何か用か?」
「えっと、ベラトンって人が来てるはずなんですが……」
「ベラトン様だと? あの方にお前が何の用だ?」
建物と同じ緑と白を基調にした鎧を着てる兵士さんが警戒した表情で僕を睨みを効かせてきた。やっぱり、服装って大事だな~。
「依頼を受けて達成したので来たんですが、商人ギルドにいると聞いて……」
「ふん。ベラトン様はそんな依頼をしていない。嘘をつくな」
この兵士さんは完全に僕の話を聞く気がないみたいだ。仕方ない、待つしかないかな。
「ふぁ~」
しばらく待っていたのであくびが凄い出る。
ギルドに入れてくれないので出てくるのを待ってみたんだけど、ベラトンが出てくる様子はない。
兵士さんに見られながら待つのは緊張したけど、別に悪いことをしているわけじゃなかったから何とか我慢できた。
夕日が落ちかけたころやっとベラトンがギルドから出てくるのが見えた。すかさず近づくと兵士達に囲まれた。
「ちょ、ちょっと」
「お前を拘束する。大人しくしろ」
兵士さんはずっと待っていた僕を怪しんで仲間を呼んだみたいだ。ここまでしなくてもいいと思うんだけど。
「アズ君ではないですか? これはどういうことですか?」
その騒ぎを見ていたベラトンが声をかけてくれた。
「べ、ベラトン様、こいつを知っているんですか?」
「それはもう。親友といってもいい仲ですよ」
誰が親友なんだ? あくどい男と親友になったつもりはないんだけどな。まあそれはそれとして。
ベラトンの返答に兵士さんは顔を真っ青にして僕を見つめた。
まるで子犬のようなまなざしだ。僕に許してほしいのかな?
「まさか、あなた達。アズ君に無礼を?」
「いえ! その……」
「ベラトン許してあげて。服装が服装だから止められたんだ」
「ふむ、優しいアズ君に免じて許して差し上げましょうか」
顔を真っ青にしていた兵士さんがしどろもどろになっていたので助け船を出してあげると何とか許してもらえたみたいだ。兵士さんは涙目で僕へと視線を送る。男の人からの熱いまなざしは気持ち悪いな~。
ベラトンは商人ギルドの人事も扱えるほどの地位を持っているのか。貴族っていうのは本当に凄い力をもっているんだな。
「ではアズ君。時間も時間です。食事をしながら報告を聞きましょうか。いい店が出来たので案内しますよ」
「え? でも」
「大丈夫、あなたも気に入りますよ。絶対に」
ベラトンは笑いながらそういって、ある店へと案内してくれた。
「あ~。アズお兄ちゃんだ~」
「いらっしゃいませ~」
「気にいるといったでしょ」
ベラトンが案内した店はトムさんの開いた店だった。
ルルちゃんとナナちゃんが僕にくっついて離れようとしなかったから出てくるのが大変だったけど、何とか納得してもらって出発することが出来た。
あんな小さな子達に泣きつかれると出かけたくない気持ちが大きくなったけど、あの子達を解放するには必要なことだから仕方ないよね。
「マジックバッグの中身がなくなったから体が軽いや」
故郷のウンディーネ村から出て街道を外れて真っ直ぐ走っていく。方角はあっているからこのほうが早いんだよね~。体が重いときは街道の方が歩きやすいから歩くけど、軽い場合は跳躍の方が早いからね。木に差し掛かっても全然差し支えないのだ。
最短距離を走ってグラーゼスに到着。行きと帰りじゃ全然早さが違うな~。ウンディーネ村に着いたと思ったらその日に帰ってきちゃった。ベラトンに早く依頼を達成したのを報告しないとな。
あと、ディーネちゃんからの言伝もね。
トムさんの住んでいる家に到着。
「トムさん。ただいまもどりました」
「ああ! アズさん。戻ってきてくれたんですね……無理だったんですか?」
扉をノックするとトムさんが迎えてくれた。
帰ってくるのが早すぎるから失敗したと思っているトムさん。笑顔で首を横に振ると驚いてる。
リビングにあるソファーに案内されて座ると水を出してくれた。
「じゃ、じゃあ。あの船をしまったポーターがいるっていう噂は本当だったんですね」
「そんな噂されてるんですか?」
突然あんな大きな船が港からなくなったら驚くだろうな。家を一軒入れた時も驚かれたことがあったけど、その比じゃないみたいだ。
話を聞くと商人ギルドが僕を探しているらしい。見つかると面倒くさいことになりそうだから早くベラトンのもとへ向かおう。
「ベラトンがどこにいるかわかりますか?」
「商人ギルドにいると思います」
「ええ!? 商人ギルドに?」
「はい。交渉をするといっていました」
交渉か……貴族ってこともあって色んな事をしているんだろうな。トムさんにやったような汚いこととか。
「じゃあ、行かないほうがいいですかね?」
「それが、ベラトンにはアズさんが来たら来るようにと言われていまして」
「そう、ですか……」
仕方ない行くしかないか。
いかなかったらトムさん達が何されるかわからないしね。
「あなたお店の準備できたみたいよ。あ、アズさんお帰りなさい。もう行ってきてくれたんですか?」
重い腰をあげて商人ギルドに行こうと思ったらトムさんの奥さんが家に帰ってきた。僕に気づいて驚いてる。
お店って新しく店を開くのかな?
「これから新しい日々が始められます。アズさんのおかげです。本当にありがとうございます」
「いえいえ、でも本当によかったですね」
そうか、新しく始められるんだね。
「はい! 私には料理しかできませんから同じ芸のない食事処を始めることにしました」
「そうですか」
ベラトンの妨害がなかったら普通に売れていたらしいからね。今度は絶対成功するだろうな。
「お父さん……」
「おお。お前達、起きたか」
奥の部屋からトムさんの子供達が起きてきた。
起きたばっかりで目を擦ってる。
「あ~アズさんだ~」
「お帰りなさいアズさん」
「ふふ、ただいま」
僕に気づくと元気になって脚に抱き着いてきた。頭を撫でてあげると二カッと笑ってる。
「アズさんのおかげでこの子達と普通に暮らすことが出来ます」
子供を一人抱き上げて微笑むトムさん。抱き上げられた子と僕に抱き着いてる子も一緒になって満面の笑顔を向けてくれた。
「じゃあ、僕はベラトンに会いに行ってきますね。その後にお店に行ってもいいですか?」
「あ、はい! ぜひ。子供達も待っています」
「「来てね!」」
バイバイとトムさん達に手を振って商人ギルドへと向かう。
商人ギルドは緑と白を基調にした建物で町の中央に位置してる。結構綺麗な服じゃないと入口で止められるとか聞いたけど大丈夫だろうか?
「止まれ!」
心配しながらギルドの前につくと案の定止められてしまった。
「商人ギルドに何か用か?」
「えっと、ベラトンって人が来てるはずなんですが……」
「ベラトン様だと? あの方にお前が何の用だ?」
建物と同じ緑と白を基調にした鎧を着てる兵士さんが警戒した表情で僕を睨みを効かせてきた。やっぱり、服装って大事だな~。
「依頼を受けて達成したので来たんですが、商人ギルドにいると聞いて……」
「ふん。ベラトン様はそんな依頼をしていない。嘘をつくな」
この兵士さんは完全に僕の話を聞く気がないみたいだ。仕方ない、待つしかないかな。
「ふぁ~」
しばらく待っていたのであくびが凄い出る。
ギルドに入れてくれないので出てくるのを待ってみたんだけど、ベラトンが出てくる様子はない。
兵士さんに見られながら待つのは緊張したけど、別に悪いことをしているわけじゃなかったから何とか我慢できた。
夕日が落ちかけたころやっとベラトンがギルドから出てくるのが見えた。すかさず近づくと兵士達に囲まれた。
「ちょ、ちょっと」
「お前を拘束する。大人しくしろ」
兵士さんはずっと待っていた僕を怪しんで仲間を呼んだみたいだ。ここまでしなくてもいいと思うんだけど。
「アズ君ではないですか? これはどういうことですか?」
その騒ぎを見ていたベラトンが声をかけてくれた。
「べ、ベラトン様、こいつを知っているんですか?」
「それはもう。親友といってもいい仲ですよ」
誰が親友なんだ? あくどい男と親友になったつもりはないんだけどな。まあそれはそれとして。
ベラトンの返答に兵士さんは顔を真っ青にして僕を見つめた。
まるで子犬のようなまなざしだ。僕に許してほしいのかな?
「まさか、あなた達。アズ君に無礼を?」
「いえ! その……」
「ベラトン許してあげて。服装が服装だから止められたんだ」
「ふむ、優しいアズ君に免じて許して差し上げましょうか」
顔を真っ青にしていた兵士さんがしどろもどろになっていたので助け船を出してあげると何とか許してもらえたみたいだ。兵士さんは涙目で僕へと視線を送る。男の人からの熱いまなざしは気持ち悪いな~。
ベラトンは商人ギルドの人事も扱えるほどの地位を持っているのか。貴族っていうのは本当に凄い力をもっているんだな。
「ではアズ君。時間も時間です。食事をしながら報告を聞きましょうか。いい店が出来たので案内しますよ」
「え? でも」
「大丈夫、あなたも気に入りますよ。絶対に」
ベラトンは笑いながらそういって、ある店へと案内してくれた。
「あ~。アズお兄ちゃんだ~」
「いらっしゃいませ~」
「気にいるといったでしょ」
ベラトンが案内した店はトムさんの開いた店だった。
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