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第1話 アズ
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「のろま! 早く来い!」
「ま、待ってくださいよ」
僕はのろまなポーター(荷物持ち)、アズ。
14歳になったから冒険者に同行することが許されて、早一年。
ポーターはマジックバッグと言われる無限に物が入るバッグをいつでも取り出せてどんなものでも入れられる。
そのため、冒険者達はポーターを雇って依頼を達成していくわけだけど、僕を専属で雇ってくれたチームの【黒い刃】のリーダーはあまり僕を良く思ってない。
「たくよ。なんでこんな奴を専属ポーターにしちまったんだよ」
「そうね~。マジックバッグを持っているからってこんなにのろまじゃあね」
前衛を務めるグナンさんとロエタさんが呆れて声をもらす。
僕はマジックバッグに入っているものが重くて、足取りが重いんだ。しょうがないのに、黒い刃の人達は口々に僕の事を悪く言ってくる。人たちって言っても二人だけなんだけどね。もう三人いるんだけど三人はため息をついて何も言わない。関わりたくないって感じかな。
そして、依頼を終わらせて冒険者ギルドに併設されている酒場で分け前をもらおうと黒い刃の人達の机に近づくと二人が僕を睨んできた。
「のろま! お前の分け前ないからな」
「え!?」
「え!? じゃねえよ。お前のせいで依頼しかできなかったじゃねえか」
椅子に座る間もなくグナンさんが睨んでそういってきた。
「まあまあ、アズ君もがんばっていたじゃないですか」
「あ~? 獲物をバッグに入れてただけじゃねえか! そんなのポーターならだれでもできるだろ!」
「それがポーターの仕事ですし」
「あら? ダッグ? あなたアズを庇うの?」
盗賊職のダッグさんが庇ってくれたけど、グナンさんとロエタさんに言い負ける。
あとの二人は何も言わずにこのやり取りを聞くに徹してる。いつもそうだけど、目を瞑って瞑想してるみたいなんだよね。なんなんだろう……
「じゃあダッグの分け前からアズに渡すってことで」
「そ、それはちょっと」
結局、ダッグさんも僕への分け前をくれるわけじゃないみたいだ。
もういいや……
「わかりました。分け前をもらえないんだったらやめさせてもらいます」
このまま、こんなチームにいても暮らしていけない。今が辞め時だ。
「お~。やっといってくれたか」
「待っていたのよ」
グナンさんとロエタさんが大きく喜んでハイタッチまでしてる。
こんなチームにいても仕方ない。
「アズ君。そんなこと言わずに」
「ダッグさん。僕は決意したんです。今までありがとうございました」
ダッグさんが引き止めてくれたけど、僕は決めたんだ。やめてやる!
「おう。やめるのはいいけどよ。今までの荷物とか全部置いていけよ」
「宿屋に置いて言ってね~」
ぐびぐびとエールを飲みながら言ってくるグナンとロエタ。こんなやつらにさんなんてつけてたなんて思うと過去の自分が恥ずかしくなってくるよ。
「わかってますよ! ふん!」
冒険者ギルドを勢いよく飛び出す。すぐに宿屋に向かって走って帰る。
「あら、お帰りアズ。みんなと一緒じゃないのかい?」
宿屋に着くとおかみさんのツネさんに迎えられた。ツネさんには良くしてもらったからこの宿を出るのは悲しいけど、チームを抜けるから仕方ない。
あんなチームに居ても僕の為にならないしね。
「はい、僕はチームを抜けることにしましたので」
「ええ!? そうなのかい? アズは一人で大丈夫なのかい?」
「はい。とりあえず、故郷に帰ろうと思います」
田舎に帰って少しの間ゆっくりすることにした。当分は冒険者と関わりたくないからね。
「黒い刃の人達の荷物を置いておきたいんですけど、どこか場所ありますか?」
「ん? 部屋があるじゃないか。そこじゃ足りないのかい?」
ツネさんが疑問に思ったみたいで首を傾げてる。
黒い刃の人達の部屋は結構広いは広いんだけど、それでも今までの荷物をしまえるほどの大きさじゃない。溢れて部屋が壊れてしまうと思うんだ。
それじゃツネさんに悪いからもっと広いところを借りないと。
「たぶん部屋が壊れちゃうと思います」
「そんなにあるのかい?」
「はい。一年分くらいの荷物なので」
あの人たち必要ないものもいっぱい買ってたんだよね。マジックバッグが重さがなくなると思って自分勝手に買って僕に持たせていたんだ。
マジックバッグに入れたって重さがなくなるわけじゃないのにさ。
おかげで僕は足取りが重くなって、のろまって言われるようになっちゃったんだ。本当はもっと早く動けるんだけどね。
「じゃあ、裏庭に出しておきな。雨も降らないだろうし、アズをやめさせるような薄情なやつらの道具は外で十分だろ。相手は私に任せておきな」
ツネさんはそういって笑ってくれた。
笑って答えると裏庭に出て荷物を出していく。裏庭がすべて荷物で埋まるとツネさんが唖然として、すぐに笑顔になった。
「ははは、これを見た時のあいつらの顔が目に浮かぶよ」
すっごい笑顔のツネさん。思わず僕もニンマリ。
僕はツネさんの宿屋を後にした。
は~、久しぶりにマジックバッグが空だ。すっごい体が軽い。今なら空だって飛べそうだよ。
「ま、待ってくださいよ」
僕はのろまなポーター(荷物持ち)、アズ。
14歳になったから冒険者に同行することが許されて、早一年。
ポーターはマジックバッグと言われる無限に物が入るバッグをいつでも取り出せてどんなものでも入れられる。
そのため、冒険者達はポーターを雇って依頼を達成していくわけだけど、僕を専属で雇ってくれたチームの【黒い刃】のリーダーはあまり僕を良く思ってない。
「たくよ。なんでこんな奴を専属ポーターにしちまったんだよ」
「そうね~。マジックバッグを持っているからってこんなにのろまじゃあね」
前衛を務めるグナンさんとロエタさんが呆れて声をもらす。
僕はマジックバッグに入っているものが重くて、足取りが重いんだ。しょうがないのに、黒い刃の人達は口々に僕の事を悪く言ってくる。人たちって言っても二人だけなんだけどね。もう三人いるんだけど三人はため息をついて何も言わない。関わりたくないって感じかな。
そして、依頼を終わらせて冒険者ギルドに併設されている酒場で分け前をもらおうと黒い刃の人達の机に近づくと二人が僕を睨んできた。
「のろま! お前の分け前ないからな」
「え!?」
「え!? じゃねえよ。お前のせいで依頼しかできなかったじゃねえか」
椅子に座る間もなくグナンさんが睨んでそういってきた。
「まあまあ、アズ君もがんばっていたじゃないですか」
「あ~? 獲物をバッグに入れてただけじゃねえか! そんなのポーターならだれでもできるだろ!」
「それがポーターの仕事ですし」
「あら? ダッグ? あなたアズを庇うの?」
盗賊職のダッグさんが庇ってくれたけど、グナンさんとロエタさんに言い負ける。
あとの二人は何も言わずにこのやり取りを聞くに徹してる。いつもそうだけど、目を瞑って瞑想してるみたいなんだよね。なんなんだろう……
「じゃあダッグの分け前からアズに渡すってことで」
「そ、それはちょっと」
結局、ダッグさんも僕への分け前をくれるわけじゃないみたいだ。
もういいや……
「わかりました。分け前をもらえないんだったらやめさせてもらいます」
このまま、こんなチームにいても暮らしていけない。今が辞め時だ。
「お~。やっといってくれたか」
「待っていたのよ」
グナンさんとロエタさんが大きく喜んでハイタッチまでしてる。
こんなチームにいても仕方ない。
「アズ君。そんなこと言わずに」
「ダッグさん。僕は決意したんです。今までありがとうございました」
ダッグさんが引き止めてくれたけど、僕は決めたんだ。やめてやる!
「おう。やめるのはいいけどよ。今までの荷物とか全部置いていけよ」
「宿屋に置いて言ってね~」
ぐびぐびとエールを飲みながら言ってくるグナンとロエタ。こんなやつらにさんなんてつけてたなんて思うと過去の自分が恥ずかしくなってくるよ。
「わかってますよ! ふん!」
冒険者ギルドを勢いよく飛び出す。すぐに宿屋に向かって走って帰る。
「あら、お帰りアズ。みんなと一緒じゃないのかい?」
宿屋に着くとおかみさんのツネさんに迎えられた。ツネさんには良くしてもらったからこの宿を出るのは悲しいけど、チームを抜けるから仕方ない。
あんなチームに居ても僕の為にならないしね。
「はい、僕はチームを抜けることにしましたので」
「ええ!? そうなのかい? アズは一人で大丈夫なのかい?」
「はい。とりあえず、故郷に帰ろうと思います」
田舎に帰って少しの間ゆっくりすることにした。当分は冒険者と関わりたくないからね。
「黒い刃の人達の荷物を置いておきたいんですけど、どこか場所ありますか?」
「ん? 部屋があるじゃないか。そこじゃ足りないのかい?」
ツネさんが疑問に思ったみたいで首を傾げてる。
黒い刃の人達の部屋は結構広いは広いんだけど、それでも今までの荷物をしまえるほどの大きさじゃない。溢れて部屋が壊れてしまうと思うんだ。
それじゃツネさんに悪いからもっと広いところを借りないと。
「たぶん部屋が壊れちゃうと思います」
「そんなにあるのかい?」
「はい。一年分くらいの荷物なので」
あの人たち必要ないものもいっぱい買ってたんだよね。マジックバッグが重さがなくなると思って自分勝手に買って僕に持たせていたんだ。
マジックバッグに入れたって重さがなくなるわけじゃないのにさ。
おかげで僕は足取りが重くなって、のろまって言われるようになっちゃったんだ。本当はもっと早く動けるんだけどね。
「じゃあ、裏庭に出しておきな。雨も降らないだろうし、アズをやめさせるような薄情なやつらの道具は外で十分だろ。相手は私に任せておきな」
ツネさんはそういって笑ってくれた。
笑って答えると裏庭に出て荷物を出していく。裏庭がすべて荷物で埋まるとツネさんが唖然として、すぐに笑顔になった。
「ははは、これを見た時のあいつらの顔が目に浮かぶよ」
すっごい笑顔のツネさん。思わず僕もニンマリ。
僕はツネさんの宿屋を後にした。
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