1 / 15
第1話 アズ
しおりを挟む
「のろま! 早く来い!」
「ま、待ってくださいよ」
僕はのろまなポーター(荷物持ち)、アズ。
14歳になったから冒険者に同行することが許されて、早一年。
ポーターはマジックバッグと言われる無限に物が入るバッグをいつでも取り出せてどんなものでも入れられる。
そのため、冒険者達はポーターを雇って依頼を達成していくわけだけど、僕を専属で雇ってくれたチームの【黒い刃】のリーダーはあまり僕を良く思ってない。
「たくよ。なんでこんな奴を専属ポーターにしちまったんだよ」
「そうね~。マジックバッグを持っているからってこんなにのろまじゃあね」
前衛を務めるグナンさんとロエタさんが呆れて声をもらす。
僕はマジックバッグに入っているものが重くて、足取りが重いんだ。しょうがないのに、黒い刃の人達は口々に僕の事を悪く言ってくる。人たちって言っても二人だけなんだけどね。もう三人いるんだけど三人はため息をついて何も言わない。関わりたくないって感じかな。
そして、依頼を終わらせて冒険者ギルドに併設されている酒場で分け前をもらおうと黒い刃の人達の机に近づくと二人が僕を睨んできた。
「のろま! お前の分け前ないからな」
「え!?」
「え!? じゃねえよ。お前のせいで依頼しかできなかったじゃねえか」
椅子に座る間もなくグナンさんが睨んでそういってきた。
「まあまあ、アズ君もがんばっていたじゃないですか」
「あ~? 獲物をバッグに入れてただけじゃねえか! そんなのポーターならだれでもできるだろ!」
「それがポーターの仕事ですし」
「あら? ダッグ? あなたアズを庇うの?」
盗賊職のダッグさんが庇ってくれたけど、グナンさんとロエタさんに言い負ける。
あとの二人は何も言わずにこのやり取りを聞くに徹してる。いつもそうだけど、目を瞑って瞑想してるみたいなんだよね。なんなんだろう……
「じゃあダッグの分け前からアズに渡すってことで」
「そ、それはちょっと」
結局、ダッグさんも僕への分け前をくれるわけじゃないみたいだ。
もういいや……
「わかりました。分け前をもらえないんだったらやめさせてもらいます」
このまま、こんなチームにいても暮らしていけない。今が辞め時だ。
「お~。やっといってくれたか」
「待っていたのよ」
グナンさんとロエタさんが大きく喜んでハイタッチまでしてる。
こんなチームにいても仕方ない。
「アズ君。そんなこと言わずに」
「ダッグさん。僕は決意したんです。今までありがとうございました」
ダッグさんが引き止めてくれたけど、僕は決めたんだ。やめてやる!
「おう。やめるのはいいけどよ。今までの荷物とか全部置いていけよ」
「宿屋に置いて言ってね~」
ぐびぐびとエールを飲みながら言ってくるグナンとロエタ。こんなやつらにさんなんてつけてたなんて思うと過去の自分が恥ずかしくなってくるよ。
「わかってますよ! ふん!」
冒険者ギルドを勢いよく飛び出す。すぐに宿屋に向かって走って帰る。
「あら、お帰りアズ。みんなと一緒じゃないのかい?」
宿屋に着くとおかみさんのツネさんに迎えられた。ツネさんには良くしてもらったからこの宿を出るのは悲しいけど、チームを抜けるから仕方ない。
あんなチームに居ても僕の為にならないしね。
「はい、僕はチームを抜けることにしましたので」
「ええ!? そうなのかい? アズは一人で大丈夫なのかい?」
「はい。とりあえず、故郷に帰ろうと思います」
田舎に帰って少しの間ゆっくりすることにした。当分は冒険者と関わりたくないからね。
「黒い刃の人達の荷物を置いておきたいんですけど、どこか場所ありますか?」
「ん? 部屋があるじゃないか。そこじゃ足りないのかい?」
ツネさんが疑問に思ったみたいで首を傾げてる。
黒い刃の人達の部屋は結構広いは広いんだけど、それでも今までの荷物をしまえるほどの大きさじゃない。溢れて部屋が壊れてしまうと思うんだ。
それじゃツネさんに悪いからもっと広いところを借りないと。
「たぶん部屋が壊れちゃうと思います」
「そんなにあるのかい?」
「はい。一年分くらいの荷物なので」
あの人たち必要ないものもいっぱい買ってたんだよね。マジックバッグが重さがなくなると思って自分勝手に買って僕に持たせていたんだ。
マジックバッグに入れたって重さがなくなるわけじゃないのにさ。
おかげで僕は足取りが重くなって、のろまって言われるようになっちゃったんだ。本当はもっと早く動けるんだけどね。
「じゃあ、裏庭に出しておきな。雨も降らないだろうし、アズをやめさせるような薄情なやつらの道具は外で十分だろ。相手は私に任せておきな」
ツネさんはそういって笑ってくれた。
笑って答えると裏庭に出て荷物を出していく。裏庭がすべて荷物で埋まるとツネさんが唖然として、すぐに笑顔になった。
「ははは、これを見た時のあいつらの顔が目に浮かぶよ」
すっごい笑顔のツネさん。思わず僕もニンマリ。
僕はツネさんの宿屋を後にした。
は~、久しぶりにマジックバッグが空だ。すっごい体が軽い。今なら空だって飛べそうだよ。
「ま、待ってくださいよ」
僕はのろまなポーター(荷物持ち)、アズ。
14歳になったから冒険者に同行することが許されて、早一年。
ポーターはマジックバッグと言われる無限に物が入るバッグをいつでも取り出せてどんなものでも入れられる。
そのため、冒険者達はポーターを雇って依頼を達成していくわけだけど、僕を専属で雇ってくれたチームの【黒い刃】のリーダーはあまり僕を良く思ってない。
「たくよ。なんでこんな奴を専属ポーターにしちまったんだよ」
「そうね~。マジックバッグを持っているからってこんなにのろまじゃあね」
前衛を務めるグナンさんとロエタさんが呆れて声をもらす。
僕はマジックバッグに入っているものが重くて、足取りが重いんだ。しょうがないのに、黒い刃の人達は口々に僕の事を悪く言ってくる。人たちって言っても二人だけなんだけどね。もう三人いるんだけど三人はため息をついて何も言わない。関わりたくないって感じかな。
そして、依頼を終わらせて冒険者ギルドに併設されている酒場で分け前をもらおうと黒い刃の人達の机に近づくと二人が僕を睨んできた。
「のろま! お前の分け前ないからな」
「え!?」
「え!? じゃねえよ。お前のせいで依頼しかできなかったじゃねえか」
椅子に座る間もなくグナンさんが睨んでそういってきた。
「まあまあ、アズ君もがんばっていたじゃないですか」
「あ~? 獲物をバッグに入れてただけじゃねえか! そんなのポーターならだれでもできるだろ!」
「それがポーターの仕事ですし」
「あら? ダッグ? あなたアズを庇うの?」
盗賊職のダッグさんが庇ってくれたけど、グナンさんとロエタさんに言い負ける。
あとの二人は何も言わずにこのやり取りを聞くに徹してる。いつもそうだけど、目を瞑って瞑想してるみたいなんだよね。なんなんだろう……
「じゃあダッグの分け前からアズに渡すってことで」
「そ、それはちょっと」
結局、ダッグさんも僕への分け前をくれるわけじゃないみたいだ。
もういいや……
「わかりました。分け前をもらえないんだったらやめさせてもらいます」
このまま、こんなチームにいても暮らしていけない。今が辞め時だ。
「お~。やっといってくれたか」
「待っていたのよ」
グナンさんとロエタさんが大きく喜んでハイタッチまでしてる。
こんなチームにいても仕方ない。
「アズ君。そんなこと言わずに」
「ダッグさん。僕は決意したんです。今までありがとうございました」
ダッグさんが引き止めてくれたけど、僕は決めたんだ。やめてやる!
「おう。やめるのはいいけどよ。今までの荷物とか全部置いていけよ」
「宿屋に置いて言ってね~」
ぐびぐびとエールを飲みながら言ってくるグナンとロエタ。こんなやつらにさんなんてつけてたなんて思うと過去の自分が恥ずかしくなってくるよ。
「わかってますよ! ふん!」
冒険者ギルドを勢いよく飛び出す。すぐに宿屋に向かって走って帰る。
「あら、お帰りアズ。みんなと一緒じゃないのかい?」
宿屋に着くとおかみさんのツネさんに迎えられた。ツネさんには良くしてもらったからこの宿を出るのは悲しいけど、チームを抜けるから仕方ない。
あんなチームに居ても僕の為にならないしね。
「はい、僕はチームを抜けることにしましたので」
「ええ!? そうなのかい? アズは一人で大丈夫なのかい?」
「はい。とりあえず、故郷に帰ろうと思います」
田舎に帰って少しの間ゆっくりすることにした。当分は冒険者と関わりたくないからね。
「黒い刃の人達の荷物を置いておきたいんですけど、どこか場所ありますか?」
「ん? 部屋があるじゃないか。そこじゃ足りないのかい?」
ツネさんが疑問に思ったみたいで首を傾げてる。
黒い刃の人達の部屋は結構広いは広いんだけど、それでも今までの荷物をしまえるほどの大きさじゃない。溢れて部屋が壊れてしまうと思うんだ。
それじゃツネさんに悪いからもっと広いところを借りないと。
「たぶん部屋が壊れちゃうと思います」
「そんなにあるのかい?」
「はい。一年分くらいの荷物なので」
あの人たち必要ないものもいっぱい買ってたんだよね。マジックバッグが重さがなくなると思って自分勝手に買って僕に持たせていたんだ。
マジックバッグに入れたって重さがなくなるわけじゃないのにさ。
おかげで僕は足取りが重くなって、のろまって言われるようになっちゃったんだ。本当はもっと早く動けるんだけどね。
「じゃあ、裏庭に出しておきな。雨も降らないだろうし、アズをやめさせるような薄情なやつらの道具は外で十分だろ。相手は私に任せておきな」
ツネさんはそういって笑ってくれた。
笑って答えると裏庭に出て荷物を出していく。裏庭がすべて荷物で埋まるとツネさんが唖然として、すぐに笑顔になった。
「ははは、これを見た時のあいつらの顔が目に浮かぶよ」
すっごい笑顔のツネさん。思わず僕もニンマリ。
僕はツネさんの宿屋を後にした。
は~、久しぶりにマジックバッグが空だ。すっごい体が軽い。今なら空だって飛べそうだよ。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…


テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク
両親は村を守る為に死んでしまった
一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る
シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい
すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。
神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。
そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

前世大精霊の貴族 魔法適性がないといわれて捨てられたけど精霊なので普通に使えますけど~!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世精霊だった僕、アクアス。
大賢者で貴族の両親から殺意を向けられて捨てられた
そんな僕を不憫に思った育ての親のルミナさん
僕は彼女と添い遂げる
強くなって彼女を守っていきます
ーーーー
どうも、カムイイムカです
この度、僕だけの農場が書籍化になることが決定しました
11月の下旬に発売されますのでよかったら読んでいただけると嬉しいです
もちろん、WEB版も嬉しいのですが発売と同時に見れなくなるのでお気を付けください
また、こちらの水精霊ですが今鋭意製作中の作品とは別の作品なので途中で終わってしまいます
新作の投稿は12月下旬を予定しておりますのでそれまでは途中まで作ったけど……という作品を投稿しようと思います
最後まで読みたいという人には大変ご迷惑をおかけします
15話でストップします


異世界転生したら【スキル】が【グミ】でした 【魔王】の友達もできたので世界を平和にしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はエガワ シュンヤ。グミが好きだった僕は異世界に転生した
とても珍しいスキルを手に入れたけれど、人攫いにあってしまって両親と離れ離れ
やっと成人して冒険者になれたけど、珍しいスキルが発動することはなかった
だけど、レベルが上がったことで世界が変わった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる