上 下
83 / 113
第二章 海へ

第四十話 超健康児

しおりを挟む
 おっさんが真剣にルキアの背中に聴診器を当てている。今は見ることしかできない。

「うん・・・」

「どうなんだ?」

「健康だ」

「え?」

 医者のおっさんが頷いてそうつぶやいた。健康なのにこんな高熱を出すのか?

「わからないのか?」

「分かったんだよ。すっごい元気だ。それじゃ私は帰るよ」

「おい!」

 おっさんはそう言ってカバンを片づけて出て行ってしまった。どういうことだ!

「タツミさん・・」

「着替えます」

 おっさんを信じていないわけじゃないけど、確認してみる。俺は医者の服に着替える。前にみんなには見せてしまっているので隠すのは今更だよな。
 着替えると聴診器と注射器が手に握られていた。現代の医者みたいな白衣で凄い清潔だ。

「ルキア、ちょっとヒヤッとするぞ」

「・・・」

 ルキアの胸に聴診器をつける。冷たいと思ったので声をかけたが返事は帰ってこなかった。
 聴診器を当てるとルキアの状態異常が文字になって浮かび上がる。この世界の医者は魔法と一体になっているようだ。元の世界よりもこの世界のトップは最高クラスかもしれない。

 ルキア 健康体【進化前放熱中】
 
 種族 キャットマン
 
 年齢 9か月 

 状態異常

 なし

 持病

 なし

 年齢と今の状態が表示される。おっさんの言っていたのはこういう事なのか?
 医者の服に着替えたから医者のトップの人間の性能になった俺だけど、おっさんは違うはずだよな。それなのに健康だと言い切って帰ったあのおっさんは何者だ。そう言えば自己紹介もしなかったから名前もわからん。

「どうですか?」

「あのおっさんが言っていたように健康です。ただ、進化前放熱中となっています」

「そんな事までわかるんですか・・・タツミさんあなたは」

 ルナさんは驚いて口を抑えた。好奇心を抑えられなかったのかもしれないな。この際だから正直に能力の事を話すか。

「俺はこういった能力があったんですよ。それで建物も建てれたんです」

「そうだったんですね。タツミさんは特別な能力をもっているんですね。でも、タツミさんなら納得です」

 俺の言葉を聞いてルナさんは納得したように頷いた。そんな素直に納得されても恥ずかしいな。

「ルキアちゃん大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。少しだけ寝させてやってくれ」

『は~い』

 子供達は素直に俺のいう事を聞いて外へと遊びに行った。ルキアもすぐにあんな風に元気になるのだろうか?

「進化ってどうなるんだ?」

「私もそれが気になってたんです。もっと可愛くなっちゃうのかな?」

 俺の疑問にルナさんも賛同して首を傾げている。あなたも可愛いですとかいったらいいムードになるのかな。しかし、サゲスの本心も知らないのでそんなゲスな事はしない。

「でもよかったよ。健康なのが分かって」

「ルキアちゃんは大丈夫だったんですか?」

 ホッと胸をなで下ろしていると教会にアルフレドが入ってきた。ルキアの事を心配してくれたみたいだ。大丈夫だと言うとアルフレドも安心したようで胸をなで下ろすように息を漏らした。

「でもよかったですね」

「ん?」

「シーラインでルキアちゃんが倒れて」

「あ!?」

 どういう事だ?さっきまで心配していたアルフレドの言葉に顔をしかめる。

「へ、変な意味じゃないですよ。あのお医者さんの事です」

 しかめっ面でアルフレドを見ていたから彼は焦って弁解した。ルキアが倒れてよかったなんて言うから殺意だけで殺そうと思ってしまったぞ。しかし、どういうことだ?

「あのお医者さんは世界随一の医者と言われている人なんです。それなのに組織に属さずに昼夜、けが人や病人を見て回っているんですよ」

「あのおっさんが」

「見た目は綺麗とは言えませんがあれはそう言った事をする暇がないって事なんです」

「そうなのか・・」

 元の世界の繁盛しているお店みたいな言い分だが、医者なら清潔にしないとダメだと思うぞ。今思い出すとトラがあのおっさんの体臭でしかめっ面になったのが面白かったな。

「キャン」

「うお、なんだよトラ」

 俺の心を読んだのか、トラが頭で叩いてきた。三又の角が危ないんだからやめろって。

「ははは、本当に仲がいいんですね」

「みんな、俺の家族だからな」

「キャンキャン」「ガウ!」

 サンとトラの首を抱きしめた。アルフレドは羨ましそうに指を咥えている。

「そうだ。牛と豚の件でダングルフとシャリフが呼んでいましたよ」

「ああ、そういえば持ってきてくれたんだっけか。代金も小屋で渡すな」

「はい」

 そういって俺は小屋に向かった。サンとトラはルキアを見ていてくれるようだ。というより自分達の子供だと思っているのかルキアの近くのベッドに顔をうずめて見守っている。
 しかし、あのおっさんが世界一の医者だったとはな。しかし、この世界に来てから初めて、最高位の存在にあったな。つまりあのおっさんの能力が医者の服に付与されているわけだな。できるだけ、困っている人の為に使わないと罰が当たりそうだな。今度、お礼に行って自己紹介しよう。結局名前分らなかったもんな。


 
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸
ファンタジー
 普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。  海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。  その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。  もう一度もらった命。  啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。  前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...