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第二章 海へ

第三話 転生ではなく憑依?

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「・・・」

《どうしました?マスター》

 俺はウィンディーネが出している水の鏡で自分の顔をみた。確かに俺の顔なのだろうそれは。

「どなたさんですか?」

《はい?》

 別にウィンディーネに言っているわけではない。俺は俺に言っているのだ。

「これが俺なのか?」

 黒髪なのは知っていた元々黒髪だしな。長髪になっているのもわかっている。
 しかし、顔が顔が美しすぎる。それに若い、たぶん二十歳そこそこな感じだ。顔立ちはなんというか、どこのラインハルトさんですかといった感じだ。凛々しくて俺が女だったら惚れるなこれ。イソリ村でおじさんと言ってきた子供達は何を見ていってきていたんだ。こんなイケメンつかまえておじさんなんて普通言えないぞ。

「これじゃアリッサさんが迫ってくるわけだな」

 圧倒的イケメンだ。はっきり言って今まであった男の中で一番カッコイイ。まあ、それほどかっこいい奴には会っていないわけだけどな。
 因みに一番カッコよかったのはオッズなのだが。他の冒険者はオッズと同じくらいかそれ以下である。

「お父さんはカッコいい」

「ははは、そうみたいだな」

 俺の背中に乗ってきたルキアが鏡の俺を見てそう言ってきた。背中に乗せながらルキアを撫でる。
 しかし、こんなイケメンが強かったり頼りになったらカッコよすぎるな。顔を変えることはできないわけで、諦めざる負えないな。

「は~これからは自重しないとダメかもな」

 まさか、自分の顔が良すぎて悩む時が来るとは、もっとイケメンに生まれたかったとか思っていたけど、こんなに気苦労するんだな。なんだか思っていたイケメンと違う。

《マスター、悩んでいる所すいません》

「ん?ああ、すまん。ウィンディーネは何ができるんだ?」

《水は私の体そのものです。水で魔物を倒したりすることができます》

 なるほど、従魔の魔法使いバージョンみたいなものか。

「その時が来たら頼むよ」

《マスター、今がその時のようです》

 ウィンディーネがそう言って周囲に水の膜を張った。

《みんなを中に》

「ああ、みんな中に入ってくれ」

「あい!」

 水の結界といって差し支えのない水の膜の中へ入っていく、水の膜は水で出来ているのに体はぬれなかったそういう事もコントロールしているのだろう。

『ギャギャギャ!』

 よく聞いた覚えのある鳴き声が夜の森に響いてくる。それと同時に水の膜に石や矢が飛んできて弾かれていく。

「ゴブリンの集団か」

《全員倒してよろしいですか?》

「君の強さを知っておいた方がいいか。頼む」

《了解しました》

 ウィンディーネが水の膜を張りながらその外に水の球をいくつも作り始める。その間もゴブリン達の投擲と矢が降ってくるが水の膜だけで防げている。明らかに力の差があるな。

《水の眷属達よ。蹂躙しなさい》

 ウィンディーネがそう言うと複数の水の球が動き出した。水の球はゴブリン達へと進んでいき、水の体を剣や槍にしてゴブリン達を蹂躙していく。派手な魔法を期待していたがなかなか地味だな。

《ゴブリンを統率しているものがいるようですね。”派手な”魔法で仕留めてきます。皆さんは見ていてください》

「あら、まさかして聞こえてた?」

 ウィンディーネがそう言って宙に舞っていく。どうやら、俺の心の声を読んでいたみたいだ。という事はイケメンに苦悩する俺の声も聞こえていたってことだよな。何だか恥ずかしい。
 ウィンディーネは全体が見回せるほど高く飛んで空に魔法陣を描いていく。
 その間も俺達を守る水の膜は維持されている。精霊って最強の存在なんじゃないか?

《衝撃に気を付けてくださいねマスター。[クラッシャーレインボム]!》

 ウィンディーネがエコーのかかった声で俺に声をかけてすぐに空に描かれた魔法陣が収束していき、辺りに光を纏った流星が降り注ぐ。

《終わりです》

 水の膜の中に戻ってきたウィンディーネがそう言うと周りから大きな破裂音と光が連続して放たれた。
 辺りから聞こえていたゴブリンの声がなくなり、ウィンディーネが言ったように終わったのがわかった。

《どうでしたかマスター、”派手な”魔法でしたか?》

「ん、ああ。そうだな」

 ウィンディーネを怒らせたらやばそうだな、そう思った夜だった。

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