転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 異世界

第四十二話 サゲスの願い

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「それでなんでサゲスは俺を呼んだんだ?しかもオッズを脅迫してまで」

 オッズの様子がおかしかったのは脅迫されてだと思っていた。だから、あまり攻めなかった。彼には彼の守るものがあるからな。しかも、アイサは脅迫を受けていないと見た、オッズと違って様子が変わっていなかったからな。そうまでして俺に来てほしかった理由とは何なのか?

「ああ、サゲス様はお前に興味を持っているからな。それだけだろう。もしかしたら俺と同僚になるかもな。その時はよろしく頼むぞ」

 ハーゲンが勝手な推測を言ってきた。ヤの人みたいな職業はごめんこうむりたいのだが。

「サゲス様、タツミを連れてきました」

「ああ、待っていたよ」

 サゲスの家に入り、奥の部屋へと案内された。
 ハーゲンが部屋の前で来たことを告げると昨日とは違い少しうれしそうな声が中から発せられた。

「やあ、タツミ。待っていたよ。さあ、ソファーに座ってくれたまえ、従魔のお嬢さんも」

 サンとトラは家の外で待ってくれている。大変目立ってるけど元々サゲスの家なので従魔がいてもそれほど気にはされていないようだ。

「それで?なんで俺を?」

「まあ、そう言う疑問が出るだろうね。だけど、昨日も行ったけど私は君に興味を持っているんだよ」

「俺はそう言う趣味はないぞ」

「いやいや、違うよ。そういう意味じゃない。オッズ君を助けたというだけでも珍しい人なんだよ、君は」

 サゲスは俺の疑問に応えて、コーヒーカップにコーヒーのような茶色の液体を入れている。匂いからしてたぶんコーヒーだろうな。この世界にも元の世界の物があるというのが分かった。胡椒とか醤油とかそういった物も手に入るかもな。
 サゲスの話から鑑みるとオッズ達が帰ってくる時間が遅れたのは俺との話を聞かれていたのだろう。ゴブリンから助けられてとかそういったところ。服の事はたぶん言わないでくれていると思う。オッズはそんなに口の軽い男じゃないからな。

「私のような者としっかりと話して、上を行くような知識。私はそれに興味をもったんだ。そこで君とパートナーになりたいと思ってね」

「パートナー?」

 サゲスの話に俺は首を傾げた、横に座っていたルキアも俺の真似をして首を傾げている。サゲスはその様子を見てクスリと笑ってコーヒーを一口口に含んだ。ルキアに驚かないのを見るとハーゲンから知らされていただろうな。

「おっと失礼、タツミも飲むかい?」

「いや、いらないよ」

 何を入れられているかわからないし、こういった輩からの食べ物や飲み物は飲まない方がいい。ドラッグとかと同じようなものが入っているかもしれないからな。

「ますます気に入りましたよ。ですが、私たちはもうちょっと真っ当な職業の者なんですよ。まあ、信じられないとは思いますがね」

 俺がなんで飲まなかったのかを考えたサゲスはそう言っているが、真っ当ならば脅迫とか暴利を叩いてくるのは良くないと思うがな。

「真っ当な職業というんなら、知識のない者を食い物にするな」

「・・ごもっともですね。ですが、世界とは弱者を踏みつけて成り立っているんですよ。ない者の上に我々は立っているんです。何かを助けるには土台となる弱い物から奪わないといけないんですよ」

「助ける?」

 弱者がどうとか言っているくせに助けると言うものだからつい口に出してしまった。

「そうです。未来ある子供達です。私はここから遠く離れた街の孤児院も経営しているんです。そこでは子供たちがのびのびと暮らしています」

「・・・」

 孤児院か・・、魔物とかがはびこっている世界だから孤児なんかも多いとは思っていたけど、やっぱり孤児院ってあるんだな。元の世界でもあるにはあるけど気にも留めたこともなかった。小学校の頃も数人親のいない子供っていうのはいたけどみんな気にしないで仲良く遊んだ覚えしかない。

「犯罪まがいな行為で手に入れた金で孤児院を経営しているのか?」

「いえいえ、真っ当な職業だといったでしょ。金貸しはついでのような仕事ですよ」

 ついでって・・・そのついででオッズ達は苦しんでいたんだぞ。

「苦しんでいる人がいるのはわかっているだろ?」

「ええ、そうですね。ですがその人たちのおかげでお金が集まってくるんですよ」

「おいっ」

 真っ当な職業とか言ってるけど結局は負け組を作って金を吸い取っているだけじゃないか。俺は我慢ならなくなってサゲスの胸ぐらを掴んで吊り上げていく。

「おっとっと、凄い力ですね。これもあなたの魅力の一つだ」

 サゲスは吊り上げられているのにも関わらず余裕しゃくしゃくと話をつづけた。

「最初に言ったでしょ。私たちは負け組の土台の上に立っていると、誰かが負けて初めて助かる人がいるんです」

「そんな金で子供たちが成長している。それを知った子供たちがどんな気持ちになると思ってるんだ」

 サゲスの言葉に俺は憤りを見せた。吊り上げられたままのサゲスはその言葉を聞いて頬を吊り上げた。

「そう言うと思っていましたよ。そうです。子供達には知ってほしくない。もっと真っ当なお金で育ってほしい。私もそう思っているんです。ですが私にも部下がいます。それらを養うには負け組の力が必要なんですよ」

 サゲスは俯き加減になっていった。俺はこいつを吊り上げる腕を下げていく。自分がいけない事をしていると分かっているんだな。

「孤児院を手放しても彼らを養うお金は作れない。ですが、あなたならそれができるんじゃないですか?一回の旅で金貨を5枚も6枚も稼いでしまうのですから」

 しまったな。一気に返済した事で更に俺への興味が爆発したようだ。俺はこの世界を旅して暮らしたいだけなんだがな。

「孤児院は海に面した港町、シーラインにあります。連絡はしておきますので気が向いたら孤児院に顔を出してください」

「俺が孤児院に行かなかったらどうなるんだ?」

「残念ながら孤児院は経営者不在で取り壊しになるかもしれませんね」

「・・」

 まだ見ぬ子供達を人質にされたわけだな。

「サゲスはそれでいいのか?」

「嫌ですが、真っ当なお金だけでは養えません。ハーゲン達も養わないといけませんからね」

「ちゃんと冒険者みたいに働けば稼げるだろ」

「誰かが稼げば誰かが損をするんですよ。だから自分達で身を守る為にオッズ君のような弱者を作らなくちゃいけないんです。お金とは有限、無限に湧くわけではありませんからね」

 お金が有限なんて元の世界の知識があるからわかってはいる。しかし、このままこいつの思い通りになっていいのだろうか?子供達を見殺しにもできないしな。とりあえずは子供達を助けると思ってその孤児院に行ってみるか。港町っていうのも気になるしな。

「分ったよ。とりあえずはお前の思惑通りに動いてやるよ」

「思惑なんて人聞きの悪い。ですがありがとうございます。港町シーラインはここから南東の方向です。街道がありますのでその通り進んでいけば十日ほどでたどり着けますよ。精霊による連絡はしておきますので安心して向かってください」

 どうやら精霊魔法とは万能なのが伺える。電話のような事もできるし契約書発行とかもできるし便利すぎるよな。それを俺はもうすでに手に入れている。笑いが止まらん。

「じゃあ、早速向かわせてもらうよ。ルキア行くぞ」

「あ~い!」

「もう行くんですか?そんなにやる気になってもらうのも何だか悪いですね。馬車か何かを用意しますか?」

 馬車か・・トラとサンに引かせれば確かに便利かもしれないな。しかも、寝れるからな。しかし、目立つよな。ちょっとしたテントはこの後買えばいいと思っていたし、馬車はいらないな。

「いや、いい、その金でハーゲンとかを養っているんだろ?それに真っ当な金ではないだろうし?」

「まあ、確かにそうですけどね。でも道中大変でしょう?食料とか」

「勝手にそこら辺の物を食べるさ」

「そういえば、料理ができるんでしたっけ・・・タツミさんの料理は美味しいと噂になっていますよ。私も食べたかったのですが」

 まだ二回しか食堂を開いていないのに噂になっているのか。何だか恥ずかしいな。

「機会があれば作ってやるけど、その時は真っ当な人間になってきてくれよ」

「・・では食べれないでしょうね。私は闇に生きるものですから」

「そうか、じゃあまたな」

「いえ、もう会わないでしょう。あなたが孤児院を経営するのならば、私は安心して任せられますからね」

 サゲスは寂しそうに話して俺達に背を向けた。

「おじさんともう会えないの?」

 サゲスに近づいてルキアが呟いた。サゲスは優しい顔でルキアを見やる。

「私なんかと仲良くしていてはあなたのお父さんに迷惑がかかりますからね」

「そうなの?」

「ええ」

「でもおじさん、寂しそう」

 ルキアの問いにサゲスは寂しそうに答えていく。根っからの悪党ではないんだろうな。

「大丈夫、私は今とてもうれしい気分ですよ。あなたのおかげで」

「ほんと?」

「本当です」

 サゲスは優しくルキアの頭を撫でて言う。本当に孤児院を手放す話が出ていたのか?サゲスは慈善で孤児院を経営していたんじゃないのか?サゲスは真っ当なお金で子供達を育てたかったと言っていた。だから、手放したいと思っていたんだよな。

「ルキア、行こう」

「はい!サゲスおじさん。またね」

「いえ、またはないですよ」

「人に孤児院を押し付けて自分は逃げるのか?また会おうぜ。その時は俺の料理を食べてもらうぞ」

「いいんですか?私なんかを」

「おじさん、来てね!」

「ルキアを泣かせるなよな」

「ありがとうございます」

 俺とルキアの言葉にサゲスの目に涙が溜まって床に落ちて行った。俺とルキアは笑顔で見合ってサゲスの家を後にした。
 人をだますことをよしとはしないが、守るものを何とか守ろうとしている。俺はああならないようにするしかないな。
 
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