転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 異世界

第三十三話 従魔ふれあい馬車

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 ウルフの群れを退治して、街道を歩いて行く。
 ポーターの話はポロロちゃんの心に染みたようで、最初の頃のポロロちゃんでは想像もつかない程、元気に歩いている。最初は結構俯き加減だったからな。よかったよかった。

 しばらく歩いていると来た時に乗った馬車を降りた二又の道についた。それからまたしばらく歩いていると後ろから馬車が走ってきた。
俺達はその馬車を止めた。

「おっと、冒険者さん?」

「はい、できればアリプソの街までおねがいしたいんです」

「いいよ、従魔は無理だけど、大丈夫?」

「二人は大丈夫だよな?」

 サンとトラに目配せすると頷いている。ルキアも馬車に乗って大丈夫なのだが、ルキアはサンに乗っていたいようで馬車の横を並走することになった。

「冒険者を雇う金がなかったから丁度良かったよ。それも従魔付きのとは豪華だな」

 御者をしている青年が大きな声で話した。俺達は全員馬車に入れてもらえて少しだけ早く街に着けそうだ。

「トライホーンと三眼熊の従魔なんて珍しいコンビだな。食われる側と食う側が仲良くしてるなんて」

 鹿の魔物と熊の魔物だからか、そういった感想を持つようだな、御者の人が感心している。

「魔物が現れたら呼ぶから。ゆっくりしていていいよ」

「ありがとうそうさせてもらうよ」

 俺達は眠ることにする。この馬車は人を運ぶもの、15人ほどが乗れるほどの大きさで俺達を抜いて10人ほどが乗っている。子供が4人と三組の夫婦が座っていた。子供たちはサンとトラに手を振ってルキアがそれに答えていた。本当に子供というのは可愛らしいな。

「おじさんの従魔なの?」「私も乗りた~い」

 子供たちが輝く目で見てきて俺へと話しかけてきた。強面な俺の顔に近づいてくるとはサンとトラの人気がそれを上回ったという事か。

「サンとトラは優しいからお願いすれば乗せてくれるぞ」

「ほんと~?」

「ああ、でも、ダメって首を振ったら諦めてくれよ」

「は~い」

 子供たちは俺の言葉に元気に答えて馬車の後方からサンとトラへと声をかけた。サンとトラは俺を見てきたので頷くと俺も馬車から降りて子供達を背に乗せてあげた。その間、馬車は速度を落とすことになったが全員馬車の中の夫婦たちの子供なので遅れても大丈夫なようだ。
 子供達がサンとトラの背に乗るとキャッキャと喜んでいる。

「すいません、子供たちのわがままを聞いてもらっちゃって」

「いえいえ、従魔と触れ合えるのなんかそうそうないでしょうからね」

「ええ、正直私も触ってみたいです」

 一組の夫婦がそう言って話しかけてきた。一般の人達からしたらやっぱり従魔っていうのは珍しいらしいな。

「どうぞ、子供と一緒に触れあってください」

「いいんですか?」

「魔物の凄さを知っているといざというときに役立つだろうし、知っていて損はないと思いますよ。何より、子供達が喜びますから」

「ありがとうございます」

 俺と夫婦の言葉を聞いて別の夫婦達も馬車から降りて行って、サンとトラに触っていいか承諾して触りまくっていた。流石に撫でまわしすぎだが、サンとトラは嫌がっていないようだ。最初あった時から思っていたがサンとトラって結構、人なれしているよな。ルイさんの話だと冒険者を逃がしていたようだし、人間自体が嫌いというわけではなさそうだ。
 
    しばらく、サンとトラと触れ合う、従魔ふれあいパークのような状態で馬車は走っていた。流石に一キロほどを歩きがら触れ合っていたのでみんな疲れてきて馬車に戻ってきた。夫婦も子供達もみんないい笑顔で戻ってくる。動物園に行くとふれあいパークに行くけど動物を抱いたり触ったりするの楽しいもんな。

「キャンキャン」「ガウ~」

「お父さん、撫でてだって~」

 サンとトラが鳴いているとルキアが言葉を翻訳してきた。ルキアも大分言葉が話せるようになって流暢だな。
 サンとトラも我慢していたようで労えという事らしい。俺も撫でてやりたいと思っていたから思いっきり撫でまわした。二人とも顎辺りや首周りを撫でてやるととても喜んだ。
 ついでにルキアも撫でてやる、自分もやってほしそうに指を咥えてみてきていたからな。俺も撫でたくなってしまったのだ。可愛いって凄いな。
    撫でているとルキアの尻尾が乱舞しているのがまた面白い。

「そろそろ、速度上げますよ~」

「おっと、今行きます」

「キャルルルル~」

「おわ!トラどうした?」

「キャンキャン」

「乗せてくれるのか?」

 トラが馬車に戻ろうとした俺の首根っこを掴んで止めると鳴きだした。自分の背を顎で指してきて乗れと言わんばかりだ。俺が乗せてくれるのかと聞くと大きくうなずいている。

「じゃあ、どっこらしょ」

 親父臭く声を上げて背に乗り込む、もう、おじさんだと認めた俺に怖い物などない。
    声を漏らしながら大きなものを持ったりしてやるぜ。腰には気をつけよう。

「おお、背が高くなったみたいだ」

 景色が頭4個分ほど高くなったことで景色が変わって見える。社畜生活の時に乗馬とかやってみたかったな。人間の限界を突破したような気分だよ。

「キャルルル!」

「うお!速度を上げるのか?」

 急にトラが鳴きだして前方へと速度を上げてきた。徐々に速度を上げるので何がしたいのか分かった。馬車を通り越して街道をまっすぐ速度をあげて走っていく。草原の風を切るように走り抜けて、馬車が米粒くらいの大きさまで離れるとまた馬車に戻って走った。
 軽く30キロは出ているように思える。鹿って速く走れるんだな。上下も少なかったのはトラが俺を気遣ってくれていたのだろう。優しい奴だな。

「トライホーンって速いんだな」

「はは、俺も驚きですよ」

「キャン!」

 御者の青年が感心して話すとトライホーンがドヤといった風に鳴いた。俺も自慢の従魔だな。

「じゃあトラも疲れただろ?降りるぞ」

「キャルル」

「え?降りなくていいって?いや、しかしな」

「キャン!」

 流石に降りないとトラも疲れるだろうと思っていたんだが降りなくていいようだ。しかし、そろそろ、俺のケツが悲鳴を上げてしまうぞ。

「はは、従魔に愛されてるな~。この鞍買うかい?馬用だけどあんたの所のトライホーンなら合うだろ。銅貨6枚だけどどうだい?」

「商売上手だな。買った!」

「まいど」

 青年ははにかんでそう言うと鞍を俺に手渡した。この世界の人たちは逞しいな。俺は青年から受け取った鞍をトライホーンに装着していく。

「よし、これで大分俺のケツが守られるな」

「キャンキャン」

「はは、嬉しいか?」

 鞍を付け終わるとトライホーンが俺を舐めてきた。嬉しがってくれるのならそれが一番いい。

「街まで乗せてくれよ」

「キャン!」

 トライホーンに乗り込んで馬車に並走していく。
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