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第一章 異世界

第五話 獣人達を助ける

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 俺は騎士たちを追い返して途方に暮れている。村は無事だったがこの後も危険じゃないとは言い切れないのだ。
 老人は俺に迷惑をかけまいとしているのだが、流石に見過ごせない。獣人を差別していいなんて日本人である俺からしたらナンセンス。
    共存共栄なんて言わないけど嫌いあうなんて言うのはやめようぜ。同じ生き物なんだからさ。

「ヒヒ~ン」

「おお、そう言えば、俺が乗ってきたこいつがいたな」

 馬が構ってほしそうに俺に近づいてきた。王都オラストロとかいうところからずっと一緒だった。といっても二日ばかりだけどな。この世界にきて一番親しみを持った動物だよな。

「この馬を使えばどうだろうか?」

「いえ、騎士様の馬を使うなど」

「いいから考えてみて下さい」

 老人は顔の前で両手を振って否定していたけど考えさせると顎に手をあてて思案しだした。

「荷馬車を馬車に作り替えれば、行けるかもしれません」

「じゃあ、そうしましょう」

「ですが、そうしてしまったらあなた様は?」

「僕はいいんですよ。食べ物は少し持っていますし」

 料理長をした時に少しだけがめておいたのだ。ぬかりはないのだよ。

「このような多大な恩を、どうお返ししたらいいか・・・ありがとうございます」

「いやいや、そんなにかしこまらないでください。それよりもこの村に職業をお持ちの人はいらっしゃいますか?」

「職業ですか?」

 老人は俺の言葉に首を傾げた。そりゃそうだよな。職を持っている人います? なんてどんな職質だよって感じだよな。

「この村には畑と家しかありませんから職という大業な者はいません」

「う~ん。じゃあとりあえず、農業をしている人と家を建てた人を呼んでくれますか?」

「はぁ~?」

 老人は首を傾げたまま、馬車の準備をしていたガタイの良い熊の獣人とひょろっとした狐獣人を連れてきた。
 どうでもいいけど、この世界の獣人は獣率が高いな。人っていうか獣の顔をしている。って諦めんなこの老人は少し人の顔に近い、獣耳が付いていて毛深いくらいだ。という事はケモミミの可愛い子もいるはずだ。夢は大事だ、生きる糧になる。

「この二人はこの村随一の畑の持ち主とすべての家を建てた大工です」

 自己紹介をされると二人の獣人は俺に対して会釈をした。申し訳なさそうにしている姿がとても親しみを持てるが人間に対して恐怖がうかがえる。何だか人間やめたい気分だな。

「そんなにかしこまらないでください。俺はみんなと仲良くしたいだけですから」

 俺はそう話しながら二人に触っていく。

「はい~?・・・それでなにか?」

「いやいや。もう大丈夫、こんな家や畑を誰が作ったのかなと思って。大事にしていたのに離れなくてはいけないなんてさ。何だかすいません」
 
 俺は誤魔化すように二人を褒めると二人の獣人は頬を赤くして頭を抑えて俯いた。褒められたことがないのか凄く可愛らしい。って俺にそっちの趣味はないぞ。

「馬車の準備に戻りなさい」

「「はいっ、村長」」

 今更ながら話していた老人はこの村の村長のようで二人の獣人に戻るように告げていた。

「では、俺も少し手伝いますか」

「え?」

 俺は腕まくりをして手首を触りステータスを引き出した。このステータスウィンドウは他者には見えないようでどこでも開閉して大丈夫なようだ。他の人の手首も見てみたんだが、こんな光るボタンのようなものはない。たぶん、これも異世界人ならではなのかもしれない。
 先ほど得た大工と農民の服が増えている。農民の最上位の人物ってどんな効果なのかわからないが後の楽しみにとっておこう。

「よしっやるか」

 大工の服に着替える。なんとも古風なねじり鉢巻きだろうか。ねじり鉢巻きに腹巻ってどっかのパパさんみたいだな。
 村長が呆気に取られているがそんなことお構いなしに俺は馬車を作っていく。荷馬車二台を取り付けて四輪にしてつなぎ目も補強。並みの大工なら、これで終わりだろうが服の性能を極限まで発揮できる俺は違うようだ。馬車の中身が見えないように木のついたてで屋根と壁の骨組みを作って布をかぶせていく。本来は運べればいいので最初の段階でいいんだが、誰に襲われるかわからない世界っぽいからこんな感じに屋根を作ってみた。

「騎士様はそんなこともできるのですか」
 
「はは、付け焼き刃ですけどね。でもこれで安心していけるでしょう」

 とりあえずの応急処置としては完璧じゃないかな。でも、一つ気掛かりなのが着替えたのに対応が一緒なんだよな。騎士に着替えた時は隊長たちが下になっていたのに。謎だらけでなんともわからん。

 獣人達は馬車ができたことで移動する決定を下した。せっせこ準備をして、夜を過ぎると朝早くに出発することとした。小さな子供も居たいい村だと思ったけど、こんなに簡単になくなってしまう。なんとも恐ろしい世界なんだと実感。

 俺はこの世界で暮らしていけるのだろうか?
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