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第19話
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「さて、亜人の魔王はどう出てくるかしらね」
木の魔王の素質を持つラフレイシアは呟いて街の門へと向かう。
門の前に着くと、そこには兵士や冒険者たちが集まりだしていた。
「街道を警護に行くものはこれを持ってくれ。危なくなったら砕けばここに戻ってこれる帰り石だ。領主様が用意してくださったぞ」
「へ~、そんな便利なものがあるのね。結構高いんじゃないかしら?」
カランゾを統治している領主は金に糸目をつけずにアイテムを卸しているようだ。ラフレイシアは感心してアイテムを配っている人に近づいていく。
「街道に行きたいんだけど」
「ん? あんたが? ここは社交場じゃないぞ」
「私高レベルの旅芸人なのよ。強いんだから」
「あんたが高レベル?」
『わっはっはっはっは』
ラフレイシアが帰り石をもらおうと声をかけると兵士や冒険者たちが笑い出した。見目麗しいラフレイシアが高レベルとは信じられない様子。
すかさずラフレイシアは地面を踏みぬいた。地面は陥没して辺りが一瞬揺れた。
「どう? 高レベルでしょ?」
「あっはい……」
びっくりして腰を抜かした兵士を睨みつけるラフレイシア。兵士は鼻水を垂らしながら帰り石を手渡した。
周りにいた冒険者達も驚いてラフレイシアを見送る。
街の外へでたラフレイシアはすぐに索敵をかける。
彼女の索敵は植物を経由して行うことが出来る。木の魔王の名は伊達ではないようで、木や植物のある所ならば、見えないところはないようだ。千里眼と言っても過言ではないかもしれない。
「ん~、なるほどね。洞窟が何キロにもわたって出来ていたのね。ゴブリンやトロール。それにオークなんかに掘らせていたみたいね」
地上のみならずラフレイシアの索敵は地下にも及んだ。亜人の魔王は部下たちに地下を掘らせて、ここまでの道を作り出したようだ。ダカン達、高ランクの冒険者が亜人達に遭遇しなかったのは地下から現れたからのようだ。
「なるほどね。ゴブリンロードもいるのね。魔王はいないみたいだけど、油断はできそうにないわ」
街道を歩きながら呟く。彼女は呑気に散歩しているみたいだ。
「きゃ~! 誰か助けて!」
「助けてくれー」
口笛でも吹きそうなほど呑気に歩くラフレイシア。街道の先から叫び声が聞こえると残像を残して声のするほうへ駆けていく。
「ああ、彼女を離せ!」
「あなた~助けて!」
ゴブリンとトロールが馬車を襲っている。トロールが女性を背負って、ゴブリンが今まさに男性にこんぼうを振り下ろそうとしていた。しかし、そうはならなかった。
「はい! ストップね」
「「「「うごが……」」」」
いばらで出来た鞭でゴブリン三匹とトロールを縛り付ける。
「大丈夫かしら?」
「あっ! はい。ありがとうございます」
トロールから女性を降ろすと二人して馬車に乗り込んでカランゾのほうへ逃げていった。
「これで少しは有名になれるかしら」
「グゴゴ!」
「ああ、忘れていたわ。死んでいいわよ」
「ギャウ……」
いばらの鞭が生き物のように蠢いて更に縛り付けた。まるで絞られた雑巾のように血しぶきをまき散らすゴブリン達。ラフレイシアはそれを被り舌なめずりをした。
「トロールはなかなかの栄養ね。ゴブリンは安すぎるわ。もっと強い子はいないかしらね」
血で汚れた体が一瞬で綺麗にするとラフレイシアは街道を進んでいった。
「あらあら、血の匂いに寄ってきたのかしら?」
「グルルルル!」
ゴブリンの大群が森の中から顔を出す。後ろにはオークやトロールなども見える。ラフレイシアは舌なめずりをして、周囲にトレントを二体、召喚し始めた。
「あなた達は友達がいっぱいいるんだからいいわよね。反則なんていうのはなしよ」
赤く輝く瞳を光らせて、鞭を鳴らすラフレイシア。トレントと共にゴブリンを血祭りにあげていく姿を目撃した冒険者から【鮮血の淑女】と名付けられることになる。高レベルの旅人という嘘を本当にするには見てもらわなくてはいけないのであらかじめ狙っていた。彼女は淡々と任務を遂行していくのだった。
木の魔王の素質を持つラフレイシアは呟いて街の門へと向かう。
門の前に着くと、そこには兵士や冒険者たちが集まりだしていた。
「街道を警護に行くものはこれを持ってくれ。危なくなったら砕けばここに戻ってこれる帰り石だ。領主様が用意してくださったぞ」
「へ~、そんな便利なものがあるのね。結構高いんじゃないかしら?」
カランゾを統治している領主は金に糸目をつけずにアイテムを卸しているようだ。ラフレイシアは感心してアイテムを配っている人に近づいていく。
「街道に行きたいんだけど」
「ん? あんたが? ここは社交場じゃないぞ」
「私高レベルの旅芸人なのよ。強いんだから」
「あんたが高レベル?」
『わっはっはっはっは』
ラフレイシアが帰り石をもらおうと声をかけると兵士や冒険者たちが笑い出した。見目麗しいラフレイシアが高レベルとは信じられない様子。
すかさずラフレイシアは地面を踏みぬいた。地面は陥没して辺りが一瞬揺れた。
「どう? 高レベルでしょ?」
「あっはい……」
びっくりして腰を抜かした兵士を睨みつけるラフレイシア。兵士は鼻水を垂らしながら帰り石を手渡した。
周りにいた冒険者達も驚いてラフレイシアを見送る。
街の外へでたラフレイシアはすぐに索敵をかける。
彼女の索敵は植物を経由して行うことが出来る。木の魔王の名は伊達ではないようで、木や植物のある所ならば、見えないところはないようだ。千里眼と言っても過言ではないかもしれない。
「ん~、なるほどね。洞窟が何キロにもわたって出来ていたのね。ゴブリンやトロール。それにオークなんかに掘らせていたみたいね」
地上のみならずラフレイシアの索敵は地下にも及んだ。亜人の魔王は部下たちに地下を掘らせて、ここまでの道を作り出したようだ。ダカン達、高ランクの冒険者が亜人達に遭遇しなかったのは地下から現れたからのようだ。
「なるほどね。ゴブリンロードもいるのね。魔王はいないみたいだけど、油断はできそうにないわ」
街道を歩きながら呟く。彼女は呑気に散歩しているみたいだ。
「きゃ~! 誰か助けて!」
「助けてくれー」
口笛でも吹きそうなほど呑気に歩くラフレイシア。街道の先から叫び声が聞こえると残像を残して声のするほうへ駆けていく。
「ああ、彼女を離せ!」
「あなた~助けて!」
ゴブリンとトロールが馬車を襲っている。トロールが女性を背負って、ゴブリンが今まさに男性にこんぼうを振り下ろそうとしていた。しかし、そうはならなかった。
「はい! ストップね」
「「「「うごが……」」」」
いばらで出来た鞭でゴブリン三匹とトロールを縛り付ける。
「大丈夫かしら?」
「あっ! はい。ありがとうございます」
トロールから女性を降ろすと二人して馬車に乗り込んでカランゾのほうへ逃げていった。
「これで少しは有名になれるかしら」
「グゴゴ!」
「ああ、忘れていたわ。死んでいいわよ」
「ギャウ……」
いばらの鞭が生き物のように蠢いて更に縛り付けた。まるで絞られた雑巾のように血しぶきをまき散らすゴブリン達。ラフレイシアはそれを被り舌なめずりをした。
「トロールはなかなかの栄養ね。ゴブリンは安すぎるわ。もっと強い子はいないかしらね」
血で汚れた体が一瞬で綺麗にするとラフレイシアは街道を進んでいった。
「あらあら、血の匂いに寄ってきたのかしら?」
「グルルルル!」
ゴブリンの大群が森の中から顔を出す。後ろにはオークやトロールなども見える。ラフレイシアは舌なめずりをして、周囲にトレントを二体、召喚し始めた。
「あなた達は友達がいっぱいいるんだからいいわよね。反則なんていうのはなしよ」
赤く輝く瞳を光らせて、鞭を鳴らすラフレイシア。トレントと共にゴブリンを血祭りにあげていく姿を目撃した冒険者から【鮮血の淑女】と名付けられることになる。高レベルの旅人という嘘を本当にするには見てもらわなくてはいけないのであらかじめ狙っていた。彼女は淡々と任務を遂行していくのだった。
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