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第6話 カイツ親子

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 カイツさんにご飯を食べさせてもらうとすぐに掃除を再開して、すぐに終わらせた。依頼は終わったけど、夜も深くなってきたので外に出るのをカイツさんに止められた。

「女子供だけじゃ危ないだろ」

 そういって止められたんだけど、なんだか頬が赤い。ムフフ、お母さんにほの字なのかしら。

「その言い方は嫌いだけど、恩人の言うことは聞いておくわ」

 お母さんは大人しく言うことを聞くみたい。僕はにゅふふと顔を緩めて二人を見つめる。おかしな顔をしているとお母さんが頬をプニプニしてきて『何を期待しているの』と言って来たけどお母さんが思っていることだよと『ダアダア』と言って笑った。
 お母さんは呆れるような顔を僕にすると抱き上げて用意してもらった部屋に入って就寝。
 ふふ、なんだか青春アニメを見ているようだ。

「「おはよう」」

「おはよう二人とも」

 朝起きてくると二人がご飯を用意してくれた。僕はお母さんの母乳をいただいたので満腹。

「朝ももらっていいの?」

「ああ、ラックが用意したいって言うもんだからな」

「うん。みんなで食べたいんだ。いいでしょ?」

 まあもやラック君は上目遣いでお願いしてきた。お母さんは『ありがとう』と言ってラック君の頭を撫でた。ラック君はそのあと僕の頭を撫でてる。いい子だ。

 雑談をしながら食事を済ませる。その時に奴隷商が奴隷に逃げられたという話があった。とりあえず、みんなは無事に逃げられたみたいだ。よかったよかった。

「食事ありがとう。本当に宿代はいいの?」

「ああ、金は出来た時でいい」

 冒険者ギルドに行こうと席を立って話すとカイツさんがお金は後でいいって言ってくれた。

「余裕がないから甘えちゃうけど、必ず払うからね」

「ああ、待ってるよ」

「いってらっしゃ~い」

 僕を抱き上げて冒険者ギルドに向かう。本当にカイツさんは良い人だな。まあ、お母さんにほの字だからっていうのもあるだろうけどね。
 お母さんの男勝りな性格がいいのかもしれない。かわいい顔で男勝りはギャップ萌えってやつなのかな。

 僕を抱きながら冒険者ギルドへ向かう。
 道路には左右に露店が建っている。値札を見る限りは言語は大丈夫。そういえば、お母さん達の会話も日本語になっているけど、元々なのかな。転生者に優しい世界。まあ、奴隷スタートだけどね。それも赤ん坊……お母さんがいなかったら死んでるね。
 
 そうこうしているうちに冒険者ギルドに到着。中に入るとアネットさんがお母さんに気づいて手を振ってきた。

「おはようございますお姉さま。カイツさんはどうでしたか」

「おはよう……どうって普通よ」

「むふふ、そうですか?」

「そうよ」

 アネットさんはカイツさんと会わせるために依頼をチョイスしたのかな? いたずらが成功した子供のような笑みを浮かべている。お母さんは頬を赤く染めてそっぽ向いているよ。お母さんもまんざらでもないみたいだね。
 カイツさんもラック君もいい人だから、僕的には大歓迎だな~。奴隷から解放されたんだから、お母さんには幸せになってほしい。お母さんの過去を僕は知らないからな~。早く話せるようになって聞いてみたいな。

「ラック君は元気でした?」

「元気よ。ってあなたが自分で見に行けばいいじゃないの」

「私は仕事場が家なので。旅の冒険者さんに案内するのが私に与えられた使命です」

 ドヤと胸を張るアネットさん。控えめなお胸を張っているけど、なんでドヤっているのかな。

「なんでそんなにあの親子に?」

「お母さんを早くに無くして頑張っているんですよ。二人で宿屋と鍛冶屋ですよ。守ってあげたいじゃないですか!」

 アネットさんが凄い圧でお母さんに迫った。お胸が僕に当たっているんだけど……うむ、いいものだ。
 お母さんは迫られて『そ、そう』って答えてる。アネットさんは満足そうです。

 掃除の依頼を完了報告をする、カードをアネットさんい手渡すと彼女の持っていたカードに合わせてる。少しすると、

「はい、確かに完了していますね。ではこちらが報酬の銅貨十枚です」

「ありがとう」

 この世界の通貨は銅貨、銀貨、金貨、白銀貨。百枚で次の位の通貨に換えられる。外の値札を見る限りだとリンゴが銅貨一枚だったから千円くらいになるのかな? 日本だともっと高いリンゴもあるけど、百円くらいのはずだから、そんな感じだよね。
 そう考えると掃除はお金にならないな~。まあ、宿代と朝食を無料にしてもらってるからかなり得しているけどね。

「宿代は銅貨20よね。それに朝食が10枚……。何かいい依頼はないかしら?」

 お母さんは悩まし気にアネットさんに相談してる。カイツさんに借りを返さないといけないからね。でも、もっとゆっくりでもいいんじゃないのかな?

「宿代と朝食がタダだったんですね。カイツさんも脈ありかな。これなら……むふふ」

 お母さんの悩みにアネットさんが色々と察して笑みを浮かべてる。思っている通りだから、女性のそういう勘は凄いっていうのがわかる。僕も気をつけよう。

「アネット、依頼は?」

「ああ、ごめんなさいお姉さま。そうですね~」

 ムフフと惚けているアネットさんにお母さんが呆れて声をかけるとすぐに依頼書を確認しに行った。受付に座るように言って来たのでお母さんは僕を受付に座らせて椅子に座った。

「これなんてどうでしょう? 薬草と魔法の草の採取です。同じ森の依頼なので一緒に出来るし、合わせて銀貨一枚の依頼なので一気に払えて、そのままお泊りできますよ」

 アネットさんはそういってニヤついている。お母さんはその顔を見て呆れていたけど、確かに全額返済できるので受けることにした見たい。カードをアネットさんに手渡してるよ。

「それではいってらっしゃいお姉さま」

 満面の笑みのアネットさんに見送られながら冒険者ギルドを後にした。

「まったく、カイツと私に結ばれてほしいなんて、そんなことあるわけないのにねマイト」

「ダブ?」

 冒険者ギルドを出て街を歩いているとお母さんが僕に話しかけてきた。僕は首を傾げる。そういえば、お母さんはなんで拒んでいるのかな?

「……だって、私は汚れているのよ。それに子持ちだし」

「ダブダブ」

「えっ? 違うって言っているの?」

「あい!」

 お母さんに言葉に身振り手振りで答える。ちゃんと伝わって喜ぶとお母さんが悩みだした。

「あんないい人に私が言い寄るなんて……出来るわけないでしょ」

「バ~ブ!」

「痛っ。マイト……」

 悲観的になっていたお母さんの頬を弱く平手打ち。お母さんはアネットさんや冒険者の女性達があこがれたように強いカリスマを持っているんだ。もっと自信を持ってほしい。

「バブバブ!」

「……悲観的になるなっていうの? でも、私たちは元……。そうね。そうよね。あれは過去の事、新しく生まれ変わったと思って自分の思うままに暮らせばいいのよね」

 力強く励ますとお母さんは少しずつ上向いてくれた。何とか僕がお母さんを幸せに導くぞ~。

「さて、森はどっちからいけばいいのかしら?」

「やめて! 赤ん坊がいないならあなた達に用はない」

「おいおい、つれないな嬢ちゃん」

 お母さんが依頼の場所をカードで見ているとそんな声が路地から聞こえてきた。この声はどこかで聞いたことがあるような?
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