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第4話 登録
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「マ~イト~」
「ダブ」
お母さんに抱かれながら夕方の街を歩く。僕に会えたのがよっぽど嬉しかったのか頬ずりしている。とにかく、お母さんを救えてよかった。
まだ夕方だったのに奴隷商は眠りについていた。松明やロウソクで明かりを確保している中世ヨーロッパの時代はそんなもんなのかな。
とはいうものの夜に遊ぶ人も多いので街灯は明るく煌々としている。
まだ夜の街の人っぽい、色っぽい人は見えないけど、冒険者っぽい人はちらほらと見えてきた。
この世界には冒険者がいる! 僕はそれを知ったときは興奮したね。お母さんを助けるときに知ったんだけど、冒険者のギルド行きたくて行きたくてしょうがなかったけどお母さんのもとに何とか行けたよ。親孝行したかったからね。
お母さんは元は農場を経営していた人と結婚して暮らしていた。名前はルル。奴隷になっても希望を捨てずに頑張ってきた。そんなお母さんとこの後暮らしていくにはどうしたものかと思っていたんだけど、それは冒険者がいるってことがわかって解決したよ。
「あの、登録したいんだけど」
「は~い。って子持ち!」
お母さんと共に冒険者ギルドにやってきた。すると、受付のお姉さんが驚いて声をあげた。子持ち冒険者ってやっぱり少ないのかな?
「冒険者って子持ちじゃなれないのかしら?」
「いやそうではないですけど」
「ならお願いね」
「あっ、はい」
お母さんは受付のお姉さんに反論を許さず登録を促した。子持ちが危ないのは誰でもわかることだから説明はいらないって感じ。
「あの、つかぬ事を聞きますけど、なんでまた冒険者に?」
受付のお姉さんは気になってしまったのか質問してきた。お母さんはニッコリ微笑んで僕を撫でると、
「お金が必要なのよ」
お母さんの優しい視線にお姉さんは涙を目に浮かべてる。
「そうでしたか。すみませんでした。すぐに作りますね」
目を擦りながらお姉さんは受付の下をごそごそし始めた。何も書いていないカードを受付の上に出すとナイフを手に取って、
「こちらのカードに一滴血をつけてください。そうすると冒険者カードが出来上がります」
おお、これは冒険者カードか。
「ふふ、マイトも欲しい?」
僕の視線に気づいたお母さんがそういってきた。僕は大きくうなずくとお姉さんに一本指を立てた。
「成人しないと登録は」
「じゃあ、白紙のカードを頂戴。この子が成人したら作るために」
お姉さんは微笑んで白紙のカードを僕にくれた。たまらずにカードを頬ずり。これが冒険者カードか~。ゲームの世界にはいったようなそんな気分。
「ふふ、嬉しそうですね」
「ありがとう。無理させちゃったわね。私はルル、これからよろしくね」
「あ、こちらこそ、よろしくお願いします。アネットです」
お姉さんとお母さんが握手。これからお世話になる冒険者ギルド。仲良くしていこう。
う~ん、僕も早く成人して登録したいな~。
「早速依頼を」
「ここは子持ちの来るようなところじゃねえぞ」
依頼を受けようと思ってアネットさんに聞こうとすると大きな声がギルドに響いた。併設されている酒場の短髪の男がエールを豪快に飲んで睨みつけてくる。
「子持ちが冒険者になっちゃダメなのかしら?」
「ああ、ダメだ」
お母さんの言葉に男は言い切った。
「なぜ?」
「足手まといな存在が二人で手を組んでも意味がない。そうだろ?」
男の言葉は正論だね。だけど、
「生きていくのにはお金がいる。女が一人で稼ぐにはこれしかないのよ」
「……体で稼げばいいだろ」
男は申し訳なさそうにそういった。普通は最低な言葉だけど、優しさを感じる。
「いいえ。私の体は汚れているわ。誰も買わない」
「それでも買ってくれるやつがいるだろ」
「確実ではないわ」
お母さんは首を横に振ってこたえた。お母さんは奴隷だったから、あざとか傷が多い。
「それでも外に行くような仕事をする必要ない。酒場の配膳係とかあるだろ」
「さっきも言ったけど、私は綺麗じゃない。気持ちよく飲みたいのに私が運んでいたんじゃ飲めないでしょ。今のあなたのように」
「……」
お母さんは色々と考えて、今ここにいる。何とか生き残ろうとしてここにいるんだ。
グ~! 無言になった男がうつむいているとお母さんのお腹が鳴きだした。お母さんは恥ずかしそうに頬を赤くして、
「こ、この通り早くお金が必要なのよ。もういいかしら」
「あ、ああ、すまない。戯言に付き合ってもらった礼だ。食べてくれ」
「ありがとう。正直、カッコつける余裕はないの。ありがたくもらうわ」
カッコ悪いようなことを言っているけど、お母さんは十分かっこいい。アネットさんは両手を組んで輝く目で見つめている。アネットさん以外の女性も尊敬の眼差しです。
お母さんはフランスパンみたいなパンをかじりながら依頼書の張ってある掲示板を見据える。
「ルルさん。これがおすすめですよ。鍛冶屋の掃除で大変なんだけど、宿屋も併設しているのでおまけしてくれると思います。今の時間なら丁度いいかと」
アネットさんが一枚の依頼書を取り出してそういってきた。
そうか、夜になりかかってるから宿屋を探さないといけないんだな。でも、お金がないからアネットさんが安くしてくれそうなところを勧めてくれた。良い人だな~。
「ありがとう。それでお願い」
「わかりましたお姉さま」
アネットさんが輝く瞳でそういってきた。崇拝に近い眼差しだな。
「お姉さま?」
「ダメですか?」
お母さんが首を傾げているとアネットさんがかわいらしく上目遣いで言って来た。それは男に人にやるやつでしょ。
「ダメじゃないけど」
そう思った僕だったけど、どうやらお母さんにも効いたようです。アネットさんは嬉しそうに微笑むと依頼書をお母さんのカードに入れていった。
冒険者カードには依頼書が入るようになってるみたい。カードの表面に依頼の内容が書き込まれてスライドさせると見えるみたい。なんだかスマホみたいだな。マップも書いてあるからすっごい便利だ。
「そのマップは人がたどり着いたところが全部書き込まれています。なので人が入っていないようなところに入りそうになったら引き返してくださいね。危ないですから」
なるほどね。マップが書き込まれていないところは未開地ってことか。
お母さんはアネットさんに頷いてこたえると早速鍛冶屋の掃除に行くことにした。お母さんのお腹が限界だったけど、パンのおかげで何とかなった。僕も結構限界です。マシューの屋敷で食べ物を確保しておくべきだったな~。でも、あの屋敷臭かったからあまり食べ物って感じじゃなかったんだよね。あの臭いル〇バのせいだ。
「ダブ」
お母さんに抱かれながら夕方の街を歩く。僕に会えたのがよっぽど嬉しかったのか頬ずりしている。とにかく、お母さんを救えてよかった。
まだ夕方だったのに奴隷商は眠りについていた。松明やロウソクで明かりを確保している中世ヨーロッパの時代はそんなもんなのかな。
とはいうものの夜に遊ぶ人も多いので街灯は明るく煌々としている。
まだ夜の街の人っぽい、色っぽい人は見えないけど、冒険者っぽい人はちらほらと見えてきた。
この世界には冒険者がいる! 僕はそれを知ったときは興奮したね。お母さんを助けるときに知ったんだけど、冒険者のギルド行きたくて行きたくてしょうがなかったけどお母さんのもとに何とか行けたよ。親孝行したかったからね。
お母さんは元は農場を経営していた人と結婚して暮らしていた。名前はルル。奴隷になっても希望を捨てずに頑張ってきた。そんなお母さんとこの後暮らしていくにはどうしたものかと思っていたんだけど、それは冒険者がいるってことがわかって解決したよ。
「あの、登録したいんだけど」
「は~い。って子持ち!」
お母さんと共に冒険者ギルドにやってきた。すると、受付のお姉さんが驚いて声をあげた。子持ち冒険者ってやっぱり少ないのかな?
「冒険者って子持ちじゃなれないのかしら?」
「いやそうではないですけど」
「ならお願いね」
「あっ、はい」
お母さんは受付のお姉さんに反論を許さず登録を促した。子持ちが危ないのは誰でもわかることだから説明はいらないって感じ。
「あの、つかぬ事を聞きますけど、なんでまた冒険者に?」
受付のお姉さんは気になってしまったのか質問してきた。お母さんはニッコリ微笑んで僕を撫でると、
「お金が必要なのよ」
お母さんの優しい視線にお姉さんは涙を目に浮かべてる。
「そうでしたか。すみませんでした。すぐに作りますね」
目を擦りながらお姉さんは受付の下をごそごそし始めた。何も書いていないカードを受付の上に出すとナイフを手に取って、
「こちらのカードに一滴血をつけてください。そうすると冒険者カードが出来上がります」
おお、これは冒険者カードか。
「ふふ、マイトも欲しい?」
僕の視線に気づいたお母さんがそういってきた。僕は大きくうなずくとお姉さんに一本指を立てた。
「成人しないと登録は」
「じゃあ、白紙のカードを頂戴。この子が成人したら作るために」
お姉さんは微笑んで白紙のカードを僕にくれた。たまらずにカードを頬ずり。これが冒険者カードか~。ゲームの世界にはいったようなそんな気分。
「ふふ、嬉しそうですね」
「ありがとう。無理させちゃったわね。私はルル、これからよろしくね」
「あ、こちらこそ、よろしくお願いします。アネットです」
お姉さんとお母さんが握手。これからお世話になる冒険者ギルド。仲良くしていこう。
う~ん、僕も早く成人して登録したいな~。
「早速依頼を」
「ここは子持ちの来るようなところじゃねえぞ」
依頼を受けようと思ってアネットさんに聞こうとすると大きな声がギルドに響いた。併設されている酒場の短髪の男がエールを豪快に飲んで睨みつけてくる。
「子持ちが冒険者になっちゃダメなのかしら?」
「ああ、ダメだ」
お母さんの言葉に男は言い切った。
「なぜ?」
「足手まといな存在が二人で手を組んでも意味がない。そうだろ?」
男の言葉は正論だね。だけど、
「生きていくのにはお金がいる。女が一人で稼ぐにはこれしかないのよ」
「……体で稼げばいいだろ」
男は申し訳なさそうにそういった。普通は最低な言葉だけど、優しさを感じる。
「いいえ。私の体は汚れているわ。誰も買わない」
「それでも買ってくれるやつがいるだろ」
「確実ではないわ」
お母さんは首を横に振ってこたえた。お母さんは奴隷だったから、あざとか傷が多い。
「それでも外に行くような仕事をする必要ない。酒場の配膳係とかあるだろ」
「さっきも言ったけど、私は綺麗じゃない。気持ちよく飲みたいのに私が運んでいたんじゃ飲めないでしょ。今のあなたのように」
「……」
お母さんは色々と考えて、今ここにいる。何とか生き残ろうとしてここにいるんだ。
グ~! 無言になった男がうつむいているとお母さんのお腹が鳴きだした。お母さんは恥ずかしそうに頬を赤くして、
「こ、この通り早くお金が必要なのよ。もういいかしら」
「あ、ああ、すまない。戯言に付き合ってもらった礼だ。食べてくれ」
「ありがとう。正直、カッコつける余裕はないの。ありがたくもらうわ」
カッコ悪いようなことを言っているけど、お母さんは十分かっこいい。アネットさんは両手を組んで輝く目で見つめている。アネットさん以外の女性も尊敬の眼差しです。
お母さんはフランスパンみたいなパンをかじりながら依頼書の張ってある掲示板を見据える。
「ルルさん。これがおすすめですよ。鍛冶屋の掃除で大変なんだけど、宿屋も併設しているのでおまけしてくれると思います。今の時間なら丁度いいかと」
アネットさんが一枚の依頼書を取り出してそういってきた。
そうか、夜になりかかってるから宿屋を探さないといけないんだな。でも、お金がないからアネットさんが安くしてくれそうなところを勧めてくれた。良い人だな~。
「ありがとう。それでお願い」
「わかりましたお姉さま」
アネットさんが輝く瞳でそういってきた。崇拝に近い眼差しだな。
「お姉さま?」
「ダメですか?」
お母さんが首を傾げているとアネットさんがかわいらしく上目遣いで言って来た。それは男に人にやるやつでしょ。
「ダメじゃないけど」
そう思った僕だったけど、どうやらお母さんにも効いたようです。アネットさんは嬉しそうに微笑むと依頼書をお母さんのカードに入れていった。
冒険者カードには依頼書が入るようになってるみたい。カードの表面に依頼の内容が書き込まれてスライドさせると見えるみたい。なんだかスマホみたいだな。マップも書いてあるからすっごい便利だ。
「そのマップは人がたどり着いたところが全部書き込まれています。なので人が入っていないようなところに入りそうになったら引き返してくださいね。危ないですから」
なるほどね。マップが書き込まれていないところは未開地ってことか。
お母さんはアネットさんに頷いてこたえると早速鍛冶屋の掃除に行くことにした。お母さんのお腹が限界だったけど、パンのおかげで何とかなった。僕も結構限界です。マシューの屋敷で食べ物を確保しておくべきだったな~。でも、あの屋敷臭かったからあまり食べ物って感じじゃなかったんだよね。あの臭いル〇バのせいだ。
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