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3巻

3-3

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「さて、そろそろ、僕も行こうかな。みんな、出番だよ」
「「従魔!?」」

 僕は従魔を一気に召喚。砂漠を埋め尽くすほどのサンドワームを全従魔で退治だ。
 百はいたサンドワームが、一瞬で死骸しがいになった。
 サンドワームの肉はあぶらがのっていて美味しい。そして脂は、かたまりの部分はろうの代わりになるので、この街では重宝しているみたいなんだよね。結果的に街がうるおった。
 僕らの街では魔石が出回りはじめたから、それを光源にして、夜でも明るく過ごせる。魔石も取引して渡してもいいね。
 ビシャスさん達にウィンスタの強さを知ってもらうには、いい戦闘だったな。
 サンドワームを片付け終わると、僕らはフェリーに乗り込んだ。

「皆さんがあんなに強いとは、思ってもみませんでした」
「ほんと……魔境の門の記録保持者なのは知っていましたが、まさかここまでとは……」

 ビシャスさんとビセットさんが満面の笑みで褒めてくれた。

「もう行ってしまうんですね……」
「はい、貿易の船はこちらで用意するので」
「待っています」

 ビセットさんがキラキラキラ~ッと輝く瞳で僕を見つめた。
 これは完全に裏で神って言われる状況だな~。

「では、また後程~」
「準備して待っています~」

 二人が降りるのを確認して、フェリーは動き出した。
 全力で振られる両手になんだか気恥ずかしさを感じながらも、僕らも手を振り返した。

「せんせ~、また来られるよね?」

 ザイの生徒の幼稚園児くらいの少年が、指をくわえながら話した。

「ん? ああ、もちろんだよ。何か心配事か、ルル?」
「ん~。なんか黒いなって。ミミも言ってる」
「ミミも? 本当かい?」

 少年の話を聞いたザイが、同じく生徒のミミちゃんという少女に確認した。

「うん。あの街が全部黒いの~」

 この言葉を聞いた僕は、ザイと顔を見合わせて頷く。
 ザイが育てている生徒の中には、特殊能力――いわゆるスキルを持っている者がいる。このルル君とミミちゃんには、予知能力のようなものが備わっている。
 ミミちゃんは目が少し不自由なんだけど、予知能力が強く現れて、ルル君に知らせてくれるんだ。
 この子達は孤児で、ザイが路地で見つけてきた。そのままにしていたら、命を落としていただろうね。今はウィンスタで学校に入れて勉強も教えてあげている。ザイはさながらお父さんじゃないかな?

「黒か~。これは誰か残した方がいいかもね」

 ルル君達の能力の的中率を考えると、何か良くないことが起きるのは確実だ。
 抽象的な表現の予知だけど、ある程度の傾向はわかってきている。
 黄色は喜び、青は悲しみ、緑は安らぎ、赤は闘争、そして黒は死。
 最初に彼女達の能力に気づいたのは、ウィンスタに現れる魔物が黒いって言った時だったな~。実物と違う色を言うから、変だな~って思っていたんだよね。
 とにかく、街の護衛のために誰か残していくべきだな。

「ではゴッド、私がここに残ります」

 ヴィクトリアさんがいち早く手を挙げてくれた。彼女なら強いし、安心だ。

「ヴィクトリアさんなら心配ないかな。でも、街全体が黒いというのが気になる……」

 僕が懸念を口にすると、エレクトラさんとエレポスさんも手を挙げてくれた。

「では、私達も残ります」
「任せてください、ウィン様!」

 二人がいれば、魔法系の力を使われても心配ない。

「わ、私も皆さんのサポートをいたします」

 さらに、ポーラさんも一緒に残ってくれることになった。

「何かあったら『魔話機まわき』で連絡してくれれば大丈夫」

 魔話機は魔法で動作する電話みたいな道具だ。これがあれば、離れていても瞬時に連絡が取れる。

「一応、目立たないように行動した方がいいでしょうか?」

 出発前に、ヴィクトリアさんが僕に聞いた。

「あ~そうか。敵が内部に隠れているかもしれないか……。任せるよ。いずれにしても、いつ襲撃が来ても対応できるように行動して」

 ミミちゃん達の予知は、そんなに遠くない未来を見ているんだよな。だいたい最長でも一日後に現実になる。
 もしかしたら、すでにシザリとかいう兄がこっちに向かっているのかもしれない。

「シーサーペントを出しておくから、海側もガードしておこう」
「では、それに乗って街に向かいます」

 すでに船は結構港から離れてしまっているから、ちょうどいいね。
 シーサーペントを出すと、三人は背に乗って港に向かった。
 海上から来る可能性を考えると、オクパスちゃんも残ってもらうべきかもしれないな。

「オクパスちゃんも、海で待機していてもらって大丈夫かな?」
「りょ、了解いたしました。しかし、ウィン様から離れるのは寂しいです。なので、抱きしめてほしいの~」
「ははは~、また猫をかぶっていますね、オクパス様」
「うるさい!」

 オクパスちゃんとゲーラさんの漫才を、僕は乾いた笑いで見つめる。
 仕方なくオクパスちゃんを抱きしめると、彼女はぬふふ、と乙女らしからぬ声を漏らした。
 容姿は可愛いのに、言動がもったいないな~。

「「では行ってまいります」」
「行ってらっしゃい」

 二人は海へと飛び込んで港へと向かってくれた。彼女達は海の住人だから、海上で警戒できるな。
 これだけ警備を固めれば大丈夫だろう。
 しかし、予知された未来を回避するために戦力を置いても、ミミちゃん達が見た街は黒いままだという。ヴィクトリアさん達がいれば、死は絶対に回避できるっていうのに、更新されないんだよな。
 これが何を表わしているのか気になるところだけど、敵の姿が見えないから、どうしようもない。
 とにかく、次にナリア国と取引するための作物を持ってきた時にどうなっているのか。そこで状況を見て判断するしかないな。


 ◇


 ウィン達がナリア国の港を出た頃、港から数十キロ先の砂漠に、兵士の一団が野営していた。
 その中心にある天幕に、伝令の兵士が駆け込んだ。

「ダース様! サンドワームが全滅いたしました!」
「な! そんなはずはない! 百以上のワームだぞ!」
「ほ、本当でございます」

 兵士の報告に驚き、胸ぐらをつかむのは、ナリア国の第三王子ダース。
 怪我させた兵士を餌代わりに走らせてサンドワームを誘い出し、港へと誘導した。しかしそれが、全て退治されたという。
 あり得ない報告を受け、ダースはワナワナと身震いしている。

「港の兵士は強いと聞いていたが、これほどとは。ビシャスめ、凄いものを飼っているじゃないか……クックック。跡目争いなど俺はどうでもいいが、楽しめそうだな」
「ひっ! ダース様、何を!」

 引きつった笑いをこぼしながら、ダースは突然大剣を掲げると、報告に来た兵士を真っ二つに切り捨てた。
 ぎゃ~という絶叫が陣に響き渡る。
 その声を聞いた兵士達は恐怖で体を震わせている。

「……バーサーカー」

 第三王子を見つめる兵士達が、口々にそう呟いた。
 それを横目に、ダースは楽しそうに鮮血に染めた大剣を見つめる。人の血と脂で光る大剣の刀身が紫に染まったかと思うと、やがて黒いもやを作り出す。

「『イーター』、腹が減ってしまっているだろう? いくらか食っておくか。準備運動しておこうぜ」
「ひ、ひぃ!」

 第三王子の持っていた大剣の刀身が割れてニタ~ッと口を開き、立っていた兵士達を見つめた。
 兵士達は恐怖で足をもつれさせながらも、天幕の外へ逃れようとする。

「おっと、動いていいって言ったか? まあいい。俺も少しは体を動かさないとな」

 第三王子は兵士達に狙いを定め、一歩ずつ近づいていく。
 恐怖の夜が始まった。
 その日、第三王子ダースの陣では、一晩中断末魔だんまつまの叫び声が響き続けたのだった。


 ◇ヴィクトリア◇


「やっと私の番が来ましたね……!」
「ヴィクトリア、私達もいることを忘れないでね」

 ナリア国の港に戻り、再び上陸して意気込む私に、エレクトラが微笑みかけた。
 私だけでも良かったのに、結局エレクトラ達も残った。ゴッドは優しいから、少しでも被害を少なくしようとしているんだろう。さすがは我らがゴッドだ。
 とはいえ、オクパスまで置いていかれると、信用ないのかと思ってしまう。

「わらわもいるからの。海は安心してくれてよいぞ」
「はいはい」
「ヴィクトリアさん。ウィン様は信用がないから私達を残したんじゃないですよ。信用しているからこそ、確実に危機を回避しようとしているんです」

 ゲーラがフォローした。

「わかってますよ、そんなことは。でもね、やっと私が目立てると思ったのに、みんなが来ちゃったでしょ? それが残念なんです……」

 エレポスさんを守ったエレクトラみたいに、功績をたてたい。

「魔境を閉じた時は、あなたが一緒にいたじゃない?」
「いたにはいましたけど、結局最後のボス戦には加われなかったし、ゴッドはカエデと離れていると気が気じゃないって感じで、私の活躍をアピールする余地はありませんでした。ゴッドとの出会いは私の方が先だったのにな~」

 カエデとゴッドの出会いだって、私に会いに来る約束をした日の朝の出来事。ゲームのストーリーとして作られた話だけど、そうだった。

「ゲームでは、私がメインヒロインって言われてたんですけど……」
「そうらしいわね。でも、今のヒロインはカエデよ。気長に待ちましょ。どうせ、私達は歳も取らないんだし」

 私達は作られた存在。現実に出てこられたとしても、歳をとることはない。
 といっても、ゴッドが死ぬまでの話だけれど。スキルによって生み出された存在である私達は、ゴッドが寿命で死んだ時、たぶん消滅する。

「とりあえず、宿屋を探しましょ」

 エレクトラを呼び止める。

「エレクトラ、ビシャスさん達の屋敷に行けばいいんじゃないの?」
「申し訳ないけど、彼女達の兵士が何かをするという可能性もあるでしょ? サンドワームの事件で私達の強さを知っているから、焦って強引な手段に訴えるかもしれないわ。ウィン様が来る前の日、たぶん明日の夕方くらいが怪しいと思うわ」

 さすがエレクトラね、色々と考えている。
 こういうところでもゴッドの信頼を得ているんだろうな~。頑張れ、私……。

「じゃあ外套がいとうを買ってから、宿屋に行きましょう」

 露店で売っていたフード付きの外套を人数分買ってから、宿屋に入った。
 ご飯を食べて、私は一人で街の一番大きな建物である灯台に上った。
 ここからなら街が一望できて便利だ。
 エレクトラ達には街中で異変があったら対応できるように待機してもらうことにした。

「私達は眠らなくてもいい。それが悲しいなんて思ったことはないけど、ゴッドと離れている今は、やけに夜が長く感じる」

 ひざを抱えながら座って、ついつい寂しさを口にした。
 早く終わらせて、ゴッドのもとに帰りたい。


 ◇


 静まり返ったナリア国第三王子の陣に、着飾った褐色かっしょくの肌の女性が降り立った。

「あらら~……自分の兵士をこんなに殺して、何やってんの?」
「おう、ルーンか。遅く来て正解だな。早く来てたら死んでいたぞ」

 ダースは女性の名を呼び、大剣の口を閉じさせる。

「まったく、その『イーター』を手放す気はないの? どんなに兵士を集めても、すぐに足りなくなってしまうじゃない」
「おいおい、俺のジジイから受け継いだ呪いの剣だぜ。手放せるかよ。それに、人が足りないのは、俺だけのせいじゃねえだろ」

 ため息をつくルーンに、ダースが言い放った。

「その人手不足を埋めるのがどれだけ大変か。シザリ兄さんにも相談しているのに、相手にしてくれないし」
「シザリの奴は城の地下のバケモンに夢中だからな。仕方ないさ」
「地下のバケモノね~。終焉しゅうえんのバケモノだっけ? あれはどうなの?」

 ルーンが首を傾げて疑問をぶつけるが、ダースもわかっていないらしく、「さあ?」と首を傾げた。

「シザリの奴は、あれをよみがえらせて使いたいみたいだな」
「操れるのかしら? そもそも、蘇らせることができるの?」
「さあな。それよりもルーン。お前が来たってことは、指令があったんだろ? なんだって?」

 ダースにうながされたルーンは、ふところから紙を取り出して彼に渡した。

「えっと、なになに……。明日の昼頃に港を襲え、と……簡単だな。しかし、兵士がな~。『イーター』のえさになっちまったぞ」
「自分で食べさせたんじゃない、まったく! シザリ兄さんはそれも読んでいるわ」
「おお、さすがはシザリだ」

 ルーンが指さす先には、鎧を着ている骸骨の兵士の軍団が近づいてきていた。
 ナリア国は死霊の兵士を操る術を有しているようだ。

「こいつらは明日の夜を過ぎると消えるらしいから、頑張ってね」
「おいおい、時間制限付きかよ」
「時間制限付きじゃない生身の兵士は、さっきあんたが食べさせちゃったでしょ、まったく。指令は伝えたからね。私は伝令兵じゃないっての」

 ルーンはそう言って空へと駆け上っていった。
 彼女は空を走り、まっすぐナリア国王都へと駆けていく。

「便利なスキルだな。魔素で足場を作れるんだっけか。さわれず壊せずの足場とは、恐れ入るぜ。まあ、消費が激しいから、あいつしか使えないけどな」

 ダースは夜空を見上げて呟く。
 どうやらルーンは、そのスキルのせいで伝令兵のようなことをさせられているらしい。走る速度もなかなかで、馬よりも早く目的地に達するとなれば、伝令役は適任と言わざるを得ない。

「さて、骸骨ども! 並べ!」

 ダースは骸骨兵達を整列させる。死霊の軍団とはいえ、これだけの数が揃うと壮観そうかんだ。

「十万と言ったところか? 『イーター』の餌にはならねえけど、サンドワーム五百よりは使えそうだな」

 十万の骸骨兵が港を襲う。ビシャス達の運命はいかに。


 ◇


 ナリア国から帰ってきた僕は、夕食を済ませ、お風呂に入った。
 そして今、僕らは【僕だけの農場】のスキルの中へとやってきていた。
 ちなみに、ここにいる間は現実世界の時間は経過しない。

「お兄様~。グレートバードマンが倒せなくなったの~?」

 モニカが不満そうに言った。

「ああ、そうなんだよ~」

 天使達と一緒にグレートバードマンを倒したところ「次の段階へと移行します」というシステム音声が聞こえてきて、ギルドでグレートバードマン討伐とうばつが受注できなくなったんだ。
 羽はとても貴重な素材だから、もっと取っておくべきだったと思ったんだけど、そんな心配は【僕だけの農場】には不要だった。なぜかというと――

「いらっしゃいませ。ウィン様」

 噴水広場に露店を出す人が新たに現れたのだ。なんとその人は鳥人で、店で天使の装備を扱っていた。

「何か良いものはありますか?」
「『天使てんし大剣たいけん』や『天使てんしけん』、それに『天使てんしよろい』がありますよ」

 羽の形をした大きな剣と短剣、鎧は背中に羽が付いている。まるで浮力でもあるかのように、どれもふわふわと揺れていて、今にも飛び立ちそうだ。

「ねぇねぇ! 小手とかな~い?」
「ございますよ、モニカ様」

 モニカの質問に、店主が答えた。

「私の名前を知ってるの?」
「はい! 存じております。こちらが『天使てんし小手こて』です。地上にある素材では得られない強さを秘めていますよ」
「わ~」

 モニカが渡されたのは、真っ白な羽根で飾られている小手で、中心に黄色い宝石が付いている。とても高そうだ。

「カエデも刀があるみたいだよ」
「えっ! 本当?」

 ゲームのキャラだった頃、カエデ達はそれぞれ決まった装備を持っていたけど、これからは自由に装備を変えていいから、気になるみたいだね。
 天使の装備なんて、明らかに普通は得られないものだし、僕も手に入れておこう。

「デーモンソードに天使の大剣か~」
「ふふ、大剣の二刀流は使いにくいんじゃない?」

 宮本武蔵みやもとむさしさんは大小の太刀たちにぎったみたいだけど、僕のはそれを超える大剣二本だからな~。
 普通の人だと重さと長さが過剰で使いづらそうだ。
 だけど、それを使ってこそロマンだよね。ちょっとやってみようかな。

「試し切りしに行こう、モニカ!」
「やった~。久しぶりにお兄様とお姉様と狩り~」

 モニカが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。
 確かに、最近みんなと一緒に【僕だけの農場】に来てない。時々一人で入って、畑や鉱山で働いている〝妖精ようせいさん〟達と交流はしていた。
 そういえば、「次の段階へと移行します」っていうアナウンスがあったんだけど、何が変化しているのかな?
 まあ、気にしても仕方ないので、グレートドラゴンの討伐依頼を受けて、試し切りしてみよう。
 ちなみに天使装備は一個十兆ポイントだった……さすがというかなんというか、ポイントのインフレが凄い。

「おお、天使の大剣を振ると、空が飛べるんだ~。うまく使えばデーモンソードも振りやすいぞ!」

 僕らはエリアルド王国の城壁を少し出た所に出現するグレートドラゴンと対峙たいじする。
 天使の大剣を振るうと、体重がなくなったかのように剣に引っ張られて、空を飛べる。
 もちろん、今の僕らの能力なら、ジャンプするだけである程度の高度まで飛べちゃうんだけど、道具で飛ぶのもまたロマンだ。
 剣に振り回されているようにも見えるかもしれないが、うまく使えば身長の低さをカバーしてデーモンソードを振うこともできそうだ。
 天使の大剣で少し浮いた状態を維持しながらデーモンソードを振れば、切っ先が地面にぶつからずに済む。地面に当たるのもお構いなしに振っちゃえばいいんだけど、それじゃスマートじゃないからね~。男としてはやっぱり、格好よく剣を振るいたい。

「次は切れ味だな」

 僕はグレートドラゴンの攻撃を避けながら呟く。切れ味の確認のために、奴の尻尾を少しずつ切ってみる。

「よっと! ほい!」

 尻尾攻撃を避けたタイミングに合わせて、先っぽに切りつけると、なんの抵抗もなく切り落とせた。
 切れた部位はすぐに霧散むさんして消えていく。
 デーモンソードの重みで振り回されて、天使の大剣で抑制して両剣で切り落とす。まるで剣が生きているような動きになっているな。

「ウィン! 格好良い!」

 遠巻きに見ているカエデが褒めてくれた。

「そ、そう?」
「うん。動きに緩急かんきゅうがあって、相手からしたら戦いにくいと思うよ」

 思わずにやけていると、モニカが空から降下してきて、グレートドラゴンを地面に埋め込んだ。

「天使の小手、強い~」
「ははは、パワーも上がっているね」
「うん。これなら、もっとお兄様の役に立てる~」

 そう言ってモニカが抱きついてきた。本当にいい子で、涙が止まりません。

「カエデも試してみたら?」
「私もウィンの真似して二本にしたんだけど、似合うかな?」

 真っ白な天使の刀と、もともと持っている真っ黒い刀で二刀にしたんだね。カエデの愛刀は彼女の師匠の刀だから、さすがに手放せないよな。

「格好良いよ。やっぱり刀は二刀流だよね」
「宮本武蔵さんでしたっけ? 伝説の人なんでしょ?」
「うん。世に最強の名をとどろかせた、強さの頂点の人だよ」

 一度冒険者ギルドに戻った僕らは、再び討伐依頼を受けて、グレートドラゴンと対峙する。

「では! 行きます!」

 試し斬りとばかりに天使の刀で居合いあいの構えを取るカエデ。一気に場にキ~ンとした緊張が走る。
 息を大きく吸い込んだ彼女の姿が一瞬消え、直後にはグレートドラゴンの首が地面に落ちていた。
 高速で体を動かしたことで、消えたように見えたんだな。さすがは僕らよりも強いカエデだ。

「凄い。この刀は、スピードが増してる」
「天使の刀なんて、地上じゃ存在しないだろうしね。それくらいの効果はあるかもね」

 カエデと話していると、モニカが空を指さした。

「お兄様~、飛空城ひくうじょうが来てるよ~」
「あ、本当。ウィン? 呼んだの?」
「え~、僕は呼んでないけどな~」

 空を見上げると、島エリアの方から巨大な飛空城がやってきた。


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