スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)

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2巻

2-1

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 第一章 来訪者



 元サラリーマンで異世界の貴族に転生した僕――ウィンは、家族や仲間と共に自分の国に向かって走っている。
 全員、僕のスキル【ぼくだけの農場のうじょう】によって身体能力が強化されているから、すごい速度だ。こんな速さで走れる人は僕ら以外にはいないだろうな~。
 ヘイゼル王国の貴族であるアウグストの領地の森を出ると、隣接する僕らの領地へと向かう街道が見えてきた。まっすぐで勾配こうばいゆるやかな街道だが、じきに起伏が激しい草原になる。ついこの間までは、砂漠だった土地だ。
 魔物への対策もさることながら、この起伏もどうにかした方がいいな~。暇な時に平らにしていきたいな。村長のオロミさんと一緒に検討してみようかな。
 そんな中、妹のモニカが前方を指さした。

「お兄様。馬車が見えます」
「ん? あ~本当だ。早速、人が来ているのかな?」

 自分達の国――ウィンスタ王国を建国したから、外部から人が来るようになったみたいだよ。うれしいな~。
 ――なんて喜んでいると、幌馬車ほろばしゃはなぜか街道を外れて、ぎりぎり僕らの領地に入らない禿やまに向かっていく。
 ちぇっ、うちに来たわけじゃないのか~。でも、なんであんなところに行くんだ?
 周りの景色を見るとわかるけど、僕らの領地以外はろくに植物もえていないようなところも多い。このあたりだと僕らの領地だけが緑豊かだ。
【僕だけの農場】から持ってきた作物は二度みのることもあるそうだけど、緑の多さからその効果がわかるね。

「お兄様~。馬車から女の人がさけんでます」

 色々考え込んでいたら、モニカが注意をうながした。
 さっきの馬車を見ると、女の人が車内から体を乗り出して男達といになっている。走行中の馬車から逃げようとするなんて、普通じゃない。何かまずいことになっているのは一目瞭然いちもくりょうぜんだ。
 騎士のヴィクトリアさんが顔をしかめる。

「乗合馬車をよそおった盗賊ですね」

 それを聞いて、モニカがすっ飛んでいった。

「助ける~!」
「よし。行こう、みんな!」

 僕らの領地の近くで犯罪は許さないぞ。


 ◇


 ――時はさかのぼり、ウィンがアウグスト達に謀反むほんの疑いを掛けられて小競こぜいをしていた頃。
 ヘイゼル王国から海をへだてた魔法都市ヒルドラドに、ある知らせがもたらされた。

永遠えいえん巫女様みこさま、エレポス様。あなた以上の回復魔法を使う者が現れたようです」

 部屋に駆け込んできた女性信者の言葉に、エレポスと呼ばれた少女が目を丸くする。

「え!? それは本当?」
「はい!」

 この魔法都市には、大きな水晶がまつられている。その水晶には、回復魔法を使った者を感知する力があり、方角までわかるのだ。さらに、大きい魔法になればなるほど、水晶はより白く輝く。

「どのくらい輝いたのですか? 空を照らすくらい?」

 巫女エレポスは期待に満ちた瞳で信者に問う。信者も同じくらい目をキラキラさせて答える。

深淵しんえんやみでも照らす。そう思わせるくらいの神々こうごうしい光でした」
「そんなに……。まさか、神の使徒が降臨したのでしょうか」

 神の使徒と表現した巫女の言葉を大袈裟おおげさに思う様子もなく、信者は何度もうなずいた。巫女以上の回復魔法を使える人物はそう呼ぶに相応ふさわしいと、彼女も思っているようだ。
 通常、回復魔法には切り傷や打撲などを治すくらいの効果しかない。永遠の巫女と言われるエレポスでさえ、切断には至らない程度の傷を治すのがやっと。
 身体欠損を回復させる魔法など、ヒルドラドではお目にかかれない。
 かつて、この回復魔法の波動を感じられる水晶がなかった時代もあるが、その頃も身体欠損を治せる者はいなかったとされている。
 水晶の輝きから察するに、それ以上――欠損はおろか、死者を生き返らせることすら可能なのではないかと、エレポスは期待に胸を高鳴らせた。
 彼女は動き出した。魔法を使った人物を探すために。


 ◇エレポス◇


「ポーラ、ここがヘイゼル王国ですか?」

 自分よりも強力な回復魔法の使い手が存在すると知った私――エレポスは、いても立ってもいられなくなり、この地にやって来た。

「はい、エレポス様。我が国とは離れた地にある国です。水晶はこの国の方向からの回復の魔法を受けて光り出したと思われるのですが……」

 侍女のポーラが回復魔法の波動を感じられる水晶を手に説明した。
 異なる国とはいえ、文明の発展度合は同じくらい。建物も道路も石造りで、大きな違いはないように思える。でも、ここには身体欠損をも治せるほどの魔法使いがいる。
 そんな人を見つけることができれば、きっと我が国の戦争も終わるはずよ。

「とにかく情報を集めましょう」
「はい、エレポス様」

 私達は絶対にその魔法使い――いえ、神の使徒を見つけるわ。それでみんなが救えるのだから。


 ◇


 ヘイゼル王国にやって来てからしばらく。
 高位の回復魔法を使える神の使徒を探すために、私達は情報を集めていた。
 さすがに他国で堂々と探すことはできないので、冒険者ギルドでの噂話うわさばなしを収集するくらいにとどめているのだけれどね。
 ついでに冒険者登録をして、簡単な依頼を受けて日銭を稼いでいる。
 そんなある日、近くの森で薬草を集めていると、ポーラがペンダントとして首にかけている水晶の欠片かけらが輝き出した。
 突然、太陽のような光に包まれて、さすがに驚いたわ。

「ポーラ、これは?」
「エレポス様! 回復魔法の波動です。この方角です」
「この方角は確か……」
「ええ、噂のウィンスタ王国ですね」

 ヘイゼル王国から独立する形で最近建国された、ウィンスタ王国。
 ヘイゼル王国の国王――ヘイゼルフェード王の息子でもある勇者ランス様を打ち負かして、独立を勝ち取ったらしいわ。
 勇者は相手の防御を完全に無効化する神の槍を使い、並大抵の攻撃などものともしない神装しんそうを身にまとうと聞くわ。
 しかも、それを殺すのではなく、生きたまま国に帰すなんて、凄いことよ。だって、勇者ランス様を取るに足らないものと判断したわけなんだもの。
 いつでも殺せる。ならば生かして王に貸しを作り、国をおこしてしまおう……そう考えたに違いないわ。それでも首を縦に振らないおろかな王ならば、殺してしまえばいいんだもの。

「ウィンスタはどこまで凄い国なのかしら」
「念願、叶いますかね?」
「そうね。あなたの足も治るかもね、ポーラ」
「はい……」

 ポーラは戦災孤児。紛争地帯で生まれた彼女は、幼い頃にいくさの流れ矢に当たった足を、腐らせてしまった。彼女は左足に粗末な木の棒の義足をつけている。
 ポーラみたいな孤児が私の国には多くいる。私の回復魔法では壊死えしは治せない。進行を遅くすることはできるけれど、完全に回復させることはできない。私はそんな孤児達を回復させたい――そう思ってここまでやってきたの。教会の反対を押し切ってね。

「とにかく、光が差し示す方角へ向かいましょう」
「はい」

 ちょうどウィンスタ王国行きの乗合馬車が出発するみたいなので、私とポーラはあわてて乗り込んだ。
 馬車の客室には、屈強くっきょうな冒険者達が多く乗っている。なんだか怖いわ。
 そんなことを考えていると、男達が話しかけてきた。

「よ~、姉ちゃん達は二人か?」
「ウィンスタまで仲良くしようや」
「え? あ、はい……」

 私って人見知りだから、初めて会う人には気やすく話しかけられないの。そもそも、人の目を見るのが怖いのよね。
 私の様子を見かねたポーラが男達を追い払う。

「エレポス様に近づかないように!」
「おお~ん? お貴族様か?」
「別にみつきやしねえよ」
「どうだか……」

 嫌な空気をただよわせながら、馬車が走り出した。
 ウィンスタは平和な国と聞いていたけれど、冒険者は違うみたいね。
 建国して間もない国に行って一旗ひとはたあげようってつもりなのかしら。それほど強そうでもないくせにいきがっちゃって。いい大人が恥ずかしい。

「ひっひっひ」

 悪い予感が的中しませんように……どうか神よ、慈悲じひを。
 私は男達の下品な笑い声を追い払うように、祈りをささげた。
 そんな私を見て、男達は一瞬顔を引きつらせるけど、すぐに気持ち悪い顔に戻る。
 まったく、豊満なポーラの体をじろじろ見て、ほんとに男っていう生き物はけがらわしい。
 ウィンスタにいる回復魔法の使い手は女性であってほしいわね。
 しばらく馬車に揺られてウトウトしていると、急に男に押さえつけられた。

「やめて! やめなさい!」

 嫌な予感が的中。平和な国だと聞いてポーラと女二人だけで来てしまったのが間違いだった。
 外の景色を見ると、馬車は街道を外れてどんどん山の方へと向かっている。

「へっへっへ。上玉が手に入ったな。ヘイゼル王国じゃ売れねえから輸送費が高くつくが、それでもおつりが来そうだ。こっちの女も良い体してやがる。なぐさものとして良い値が付きそうだぜ」
「ポーラ! ああ、神よ。お救いください」 

 永遠の巫女エレポスはこの地で命を落とす運命なのでしょうか。

「ふへへ。こっちの娘は生娘きむすめだろうからな、傷モノにしちまうと値が落ちる。代わりにこっちをちょっとつまむか」
「親分。最初はどうぞ!」
「やめ、やめて……!」

 男に無理やり抱きつかれたポーラは、馬車から逃げようと身を乗り出している。
 私とポーラは隙を見てなんとか車外に飛び出しとしたものの、すぐに男達に囲まれてしまった。

「おう。ふへへ。おびえちまって可愛かわいいな~おい」

 なんてみにくいの……なぜ神はこのような男を生かしているの。私が神ならばこんな男、吹き飛ばしているのに。そう考えた直後――

「ど~ん!」
「どわぁ~!」
「な、なんだ!」

 女の子の声がしたと思ったら、ポーラと彼女を抱きしめていた男以外の冒険者達が視界から消えていた。土煙みたいなものが立ち込めていて何も見えない。

「お前達どうした! いで! いでででで」
「はい。放してね~。大丈夫ですか?」
「は、はい……」

 煙の中から出てきた少年が、男の腕をひねってポーラから引きはがしている。
 だんだん煙が晴れてきて、女性二人と少女が男達を縛り上げているのが見えてきた。


 その少女が、腰を抜かしていた私に手を差しのべる。

「大丈夫? 怪我は?」
「あ、はい。大丈夫です。それよりもあなた達は?」
「私はモニカだよ。こっちはウィンお兄様とカエデお姉ちゃん、あっちのお姉ちゃんはヴィクトリアさんだよ~」

 この人達の名前には覚えがあるわ。ウィンスタ王国の王子ウィン様と、王女モニカ様に違いない! 女性なのに武器を帯びているところを見ると、カエデさんとヴィクトリアさんは、彼らの護衛かしら?

「ありがとうございます。私はエレポス。そちらはポーラと申します。ポーラ、お礼を」
「……」

 失礼がないように挨拶を促したのに、ポーラはじっとウィン様を見つめたまま。

「ポーラ!」
「あ、はい! ありがとうございます、ウィン様」
「どういたしまして」

 この様子だと、ポーラはウィン様にれてしまったのかもしれないわ。彼はとても綺麗きれいなお顔で可愛らしいと思うけれど……さすがに年の差がありすぎるんじゃないかしら。

「この男達とは知り合いですか?」

 ウィン様が私に聞いてきた。

「い、いえ。乗合馬車でウィンスタに行こうと思ったらいつの間にか街道を外れていて、襲われました」
「やっぱり……。ここら辺は平和なはずなんだけど、なんだかすみません」

 ウィン様はとても優しいお方なのね。目がハートになっているポーラじゃないけれど、好印象だわ。

「この人達を放置するわけにもいかないね。このまま馬車に乗せていこうか」
「そうね。そうしましょ」

 ウィン様の提案に従って、カエデさんとヴィクトリアさんが、気絶している男達を盗賊達の馬車に乗せていく。二人とも手際てぎわよく手足を縛っているわ。

「普通の馬車だと結構時間かかるな~。あっ! そうだ。ちょっと待っていてくださいね」

 ウィン様はそう言うと、どこかへ走っていってしまった。
 しかし数秒後、彼はすぐに帰ってきた。体長十メートルほどの一匹のトカゲを連れて……。

「ビッグリザード!? Bランクの魔物……!」

 私とポーラは驚きの声を上げる。でも、モニカ様達は全然びっくりしていないわ。ということは、彼女達にとっては見慣れた光景なのね。
 どうやらウィン様は従魔じゅうまも従えているみたい。さすがは王子様といったところかしら。
 ウィン様のビッグリザードが馬車を引っ張る。そして馬車を引いていた馬は、なんとヴィクトリアさんがかつぎ上げて走っているわ……。
 ちなみに、私はカエデさんにお姫様抱っこされていて、ポーラはウィン様に抱っこされている。
 ポーラったら、完全に心奪われている様子ね。
 みんな馬車など比較にならない凄いスピードで走るものだから、さっきの男達はお腹の中のものを全て吐き出している。振り向くと、男達の胃の内容物がわだちのように道を作っているのが見えるわ。
 ああ、きっと私達は夢を見ているのね……。あまりに現実感のない光景で、そう思えてくる。
 本当はあの男達にもてあそばれて、ここで死んでいるんだわ。絶対にそうね。


 ◇


 僕はエレポスさんを連れて街の防壁の建設地まで到着した。
 まさか、となりの国の永遠の巫女様を助けるとは思わなかったな。
 それにしても、冒険者にふんした盗賊が近くにいたなんて、盲点もうてんだったよ。もっともっとウィンスタを安全な国にしないといけないね。
 建てたばかりの家にエレポスさん達を招待すると、エレクトラさんが迎えてくれた。

「お帰りなさい、ウィン様」
「ただいま。とりあえず、エレポスさん達はここでくつろいでください」

 男達に慰み者にされそうになっていたし、二人とも疲れているだろう。
 ところが、エレポスさんは意外なほどに元気で、早速僕に質問をしてきた。

「ウィン様。私達はここに魔法使いを探しに来たのです」
「え? 魔法使い?」
「はい。ポーラ、あれを」
「……」

 エレポスさんは何かを出すように声をかけたんだけど、そのポーラさんは僕を見つめるばかりで、何を言われたかわかっていないみたい。再度エレポスさんに声をかけられるとやっと気が付いて、ふところから水晶の欠片みたいなものを取り出した。

「この水晶は、回復魔法の波動を感じて輝く特殊な性質があります。その反応で方向や魔法の強度がわかるのです。それによると、かなり強い回復魔法の使い手がこちらにいるはずなのですが」

 エレポスさんはそう言って、欠片を僕に見せる。
 回復魔法といえば、魔法使いのエレクトラさんと、【僕だけの農場】の世界にある国――エリアルドの王、シュタイナー君のことが思い浮かぶ。
 シュタイナー君には、僧侶隊を召喚して回復魔法を行使させる能力がある。
 ちなみに、【僕だけの農場】は僕が生前やっていたゲーム――『エリアルド農業物語』の世界を参考に、神様がスキル化してくれた能力だ。カエデやヴィクトリアさんも、元はこのゲームの登場人物だった。
 ゲームの中と違って、この世界では回復魔法の使い手は珍しいと聞くし、軽率に話すと色々と面倒なことになりそうだから、一旦ごまかしておくかな~。

「それなら、もっと南の……海の向こうじゃないですか?」
「いえ、確かにここら辺のはずです。魔法都市からの位置関係を考えると、少なくとも、ヘイゼル王国南部のはずなんです」
「そ、そうですか……」

 エレポスさんは凄い自信をのぞかせる。方角を示すだけではなく、距離もわかるのだろうか?

「ウィン様? 見せてあげてもいいんじゃないですか?」

 ごまかそうとしていると、エレクトラさんがそう言った。カエデもヴィクトリアさんも頷いている。
 エレポスさんは悪い人じゃないって感じたのかな? みんながいいなら見せてみようかな。
 僕が回復魔法を許可すると、エレクトラさんはポーラさんに近づいていく。

「ポーラさん」
「え? はい」

 エレクトラさんが木の義足を外して手をかざすと、ポーラさんの失われた足が光に包まれた。
 にょきにょき生えてくるものだと思ったけど、光が集まるようにして足になっていった。
 魔法って凄いな。

「あぁ!? 私の足。エレポス様……!」
「凄い。あなたが回復魔法の使い手様なのですね」

 ポーラさんは涙を流しながら自分の足を触っている。
 その光景を見たエレポスさんは感激した様子でエレクトラさんに祈りはじめてしまった。
 それほど探し求めていたんだろうな。

「エレクトラ様。どうか私達の国へ来てください。戦争で苦しむ人をなくしてほしいのです」

 突然、エレポスさんがエレクトラさんにすがいた。
 なんだか色々込み入った事情がありそうだ。エレクトラさんは困った様子でキョロキョロする。

「それは無理よ。私はウィン様の護衛ですもの」
「そ、そんな……」

 エレポスさんはこの世の終わりのような表情で肩を落とす。

「とりあえず、もう少し詳しく事情を話してください」

 この落ち込み方からして、よっぽどの理由があるんだろうと思って、エレポスさんに聞いてみた。

「私達の国は回復魔法を有する者が多くいます。といっても、傷を治すのが精いっぱいで、体の欠損を治せる者は一人もいません。私もその一人ですが、ポーラの足すら治せないのに永遠の巫女などともてはやされています」

 この世界の回復魔法は、ゲームの世界ほど威力はないってことか。
 農場で強化する前の僕のステータスから推測すると、この世界の人達のHPやMPは最大でも1000に届かないくらいだと思うからね。999が伝説の達人クラスだとしてもおかしくない。
 その水準を優に超えている僕らは、はっきり言って異常な存在だ。

「それでも私は、回復魔法を使える者の中では一番とされています。ですが救える命は少なくて、毎日戦争で多くの人が死んでいます。ポーラのように手足をなくす人も絶えない。私はその人達を救いたいのです」

 エレポスさんが切実に訴えた。なるほど、自国の人達を救いたいってことか。
 戦争がずっと続いていると大変なんだろうな~。ヘイゼル王国は大陸から飛び出した半島に位置していて、周囲を海で守られているからそうそう戦争は起きないけど、他の国は色々あるんだな~。

「我々が属する永遠教会えいえんきょうかいは、そういった苦しんでいる人を救う活動をしているのです。どうか、お願いいたします。エレクトラ様、私達と一緒にヒルドラドへ行っていただけませんか?」

 魔法都市ヒルドラドか~。行ってみたい気もするな。僕は魔法を使えない人間だから、興味はあったんだよね。
 ステータスを上げたからMPはいっぱいある。あとは何か学べば、もしかしたら魔法が使えるんじゃないかってね。

「戦争で苦しんでいる人のために回復魔法? それっておかしいんじゃないかしら?」
「え?」

 突然エレクトラさんが発した疑問の言葉に、エレポスさんとポーラさんは顔を見合わせた。

「だってそうでしょ? 兵士が手足を切られて帰ってきました。とても痛がっています。回復させて、その人はまた戦争へと向かいます……その繰り返しじゃない。それなら、そもそも戦争をなくすべきじゃないの?」

 確かにそうだね。根本の戦争をなくさないと、一生続くね。
 エレクトラさんは僕にウインクして話し続ける。

「あなた達の土地って、緑地はあるの? 作物は十分にとれるのかしら?」
「あ、はい。ですが戦争のせいで畑が戦場になったり兵士に踏み荒らされたりもしていて……」

 どうやらヒルドラドは戦争で土地が荒れてしまっているみたい。

「じゃあ、決まりね。ここの作物の種を買っていきなさい。それから、しばらくここで暮らして。私があなたをきたえてあげる」
「え!? エレクトラ様が私を?」
「そうよ! 嫌?」
「嫌じゃないです。ですが、教えてもらっただけで、私があなたのような回復魔法を使えるようになるのですか?」

 エレポスさんは不安そうに言うが、エレクトラさんが頷いて答えると、パッと顔を輝かせた。
 こうして、エレポスさん達が僕らの街にしばらく居候いそうろうすることとなりました。


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