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第二章 不思議な洞窟
第27話 マール
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「ん、え!? ここはどこ!?」
洞窟に入ってハーフの獣人の女の子を寝かせた。少しすると目を覚まし、驚いてきょろきょろと辺りを見回す。
「あなたは……神様ですか?」
「え? いやいや、違うよ」
なぜか少女は僕に祈ってきた。否定すると悲しい顔で俯いていく。
「私、祈っていたんです。私の命でどうか村のみんなを助けてくださいって。そうしたらここにいたから」
「村のみんな? 何かあったの? あ、ごめんね。まずは自己紹介だよね。僕の名前はシン。よろしくね」
「あ、はい。私はマールです。よろしくお願いします」
涙を流しながら話してくれる少女、マールちゃんに自己紹介をする。彼女もちゃんと自己紹介してくれて握手を交わした。
それにしても彼女は村の為に命を差し出したってことかな?
「私の村は砂漠の中にあるんです。オアシスに作られた村で、オアシスだけが私達の命をつなぐものでした。ですがある日、オアシスが枯れてしまって。村長が人柱を砂漠に捧げればまたオアシスが蘇るって。それで……」
なるほど、日本の昔話でもあるような話だな。天災は神様の怒りとか言って、人柱でどうにかしようとする。獣人の国はまだまだそう言った文明が発達していないんだな。
「ん~、オアシスがなくなったのは地下水がなくなったとか別に原因がありそうだけどな。土の中の魔物みたいのはいるのかな?」
「あっ、はい。サンドワームという魔物がいます。だけど、村のハンターが村に近づかないように警戒しているから入ってきたことはありません」
「ん~、地上ではでしょ? 地下にはいたかもしれないからな~」
地中で暮らせる魔物なら、地下水脈を滅茶苦茶にしてしまう可能性があるんだよな~。
「じゃあシンさんは魔物が原因だって言うんですか?」
「ん~、絶対とは言い切れないけどね」
魔物のいる世界だから可能性はあると思うんだよな~。でも、一度変えられちゃった地形は戻せないよな~。これはレッドでも無理だろう。
「水さえあればいいんです。そうすればみんなが……」
「そうか、水か。じゃあ持ってこよう」
「え!? どこに水があるんですか。砂漠なんですよ!」
「大丈夫だよ。マールちゃん。これを食べながら待ってて」
「え!? マジックバッグ?」
おなかもすいているだろうと思ってグミとオーク肉を挟んだサンドウィッチをマジックバッグから取り出した。バッグの体積よりも大きなものを取り出したからマールちゃんは驚いて声をあげた。
マールちゃんはレッドにまかせて、僕はシーレイクラインの町へ向かう。
マジックバッグはいくらでもアイテムが入る。ってことは水も沢山はいるってことだ。
シーレイクラインで水を蓄えて、マールちゃんの村で出せば、万事解決だ。
「ん? シンどうしたんだ? そんなに水を入れた瓶をマジックバッグにいれて?」
「あ、ゲハルドさん。少し水が必要になって」
井戸で水を汲んでいるとゲハルドさんに声をかけられた。結構、有名人になったから野次馬も集まってきちゃったな。
「シャドウの奴にこき使われてるのか? いじめられてるなら言えよ?」
「そう言うんじゃないですよ」
「ははは、分かってて言ってるんだよ」
ゲハルドさんはからかってきて頭をガシガシ撫でてくる。まったく、昼間っからお酒飲んでるのかな、顔が真っ赤だ。
「何か手伝えることがあったら言えよ? ここに来たのはいいけどよ。やることなくなっちまってな」
「ゲハルドさんは僕を金づるだと思って来たんですもんね」
「おいおい、そんな昔のことほじくり返すなよシン~」
ゲハルドさんをからかい返すと僕のほっぺをツンツンしてきた。まったく、酔っぱらい。
「はい、ゲハルドさん、水です。酔っぱらいに用はないので早く覚ましてください」
「お~、ありがとうよ~シン」
水を桶で渡すとそのまま飲み干していくゲハルドさん。ほんとに酔っぱらいだ。
「じゃあ、僕は急いでるので」
「おう! 水ありがとな~。何か困ったことがあったら言えよ~」
酔っぱらいに手を振って僕は洞窟に戻る。急いで戻るとシャドウさんの研究所でマールちゃんがベッドで眠っていた。
「みんな、水があるよ……」
「レッドが案内したのかな?」
「!」
寝顔を見ながらレッドに聞くと体を動かして答えてくれる。スライムみたいだけど、グミなんだよな~。
「あっ! すみません!」
「いいんだよマールちゃん。疲れてたんでしょ、それよりもサンドウィッチは美味しかった?」
「はい! 今まで食べたことない美味しさでした!」
目を覚ますマールちゃん。彼女はピコピコ耳を動かしながら感想を話してくれる。オーク肉は本当に美味しいんだよな~。豚肉なのに牛肉みたいな旨みがあるんだよ。これだけは前世の食材でも勝てないかもな。
「それは良かった。じゃあ、水を届けに行こう」
「はい! でも、本当にいいんですか?」
「え? 何が?」
申し訳なさそうに聞いてくるマールちゃんに首を傾げる。どうしたんだろう?
「水は希少です。とても高価になるんですよね?」
あ~、なるほど。無償でもらうのが申し訳ないってことか。
「大丈夫だよ。水はタダで得られるくらい豊富にあるからね」
「え!? そ、そんなわけないです! 私達の町の水は他の村の人が買いに来ますけど、羊や牛を一頭渡してくるほどのもので」
砂漠地帯の話は聞いたことがあったけど、流石にそこまでの価値は初めて聞いた。それだけステイタム獣国は水がないんだな。
「マールちゃん。後でお金を請求することもしないから安心して」
「いえ、そうじゃなくて……、シン様が損をするので」
「僕の心配をしてくれたのか。優しいねマールちゃんは」
優しすぎるなこの子は。って! シン様なんてがらじゃない!
「シン様なんてやめてよマールちゃん」
「え? 何故ですか? シン様はシン様です」
「シン様なんて呼ばせてるところシャドウさんに見られたら恥ずかしくて、どうにかなっちゃうよ」
シャドウさんが帰ってきたら絶対にからかわれる。そう思っていると魔族領への道の扉が開いていく。
「どうしたんだ一人で騒いで……。新たな仲間か」
「……シャドウさんお帰りなさい」
驚きもしないでマールちゃんに視線を落とすシャドウさん。よかった、揶揄ってこない。ゲハルドさんだったら絶対にからかってきたはずだからつい警戒してしまった。
洞窟に入ってハーフの獣人の女の子を寝かせた。少しすると目を覚まし、驚いてきょろきょろと辺りを見回す。
「あなたは……神様ですか?」
「え? いやいや、違うよ」
なぜか少女は僕に祈ってきた。否定すると悲しい顔で俯いていく。
「私、祈っていたんです。私の命でどうか村のみんなを助けてくださいって。そうしたらここにいたから」
「村のみんな? 何かあったの? あ、ごめんね。まずは自己紹介だよね。僕の名前はシン。よろしくね」
「あ、はい。私はマールです。よろしくお願いします」
涙を流しながら話してくれる少女、マールちゃんに自己紹介をする。彼女もちゃんと自己紹介してくれて握手を交わした。
それにしても彼女は村の為に命を差し出したってことかな?
「私の村は砂漠の中にあるんです。オアシスに作られた村で、オアシスだけが私達の命をつなぐものでした。ですがある日、オアシスが枯れてしまって。村長が人柱を砂漠に捧げればまたオアシスが蘇るって。それで……」
なるほど、日本の昔話でもあるような話だな。天災は神様の怒りとか言って、人柱でどうにかしようとする。獣人の国はまだまだそう言った文明が発達していないんだな。
「ん~、オアシスがなくなったのは地下水がなくなったとか別に原因がありそうだけどな。土の中の魔物みたいのはいるのかな?」
「あっ、はい。サンドワームという魔物がいます。だけど、村のハンターが村に近づかないように警戒しているから入ってきたことはありません」
「ん~、地上ではでしょ? 地下にはいたかもしれないからな~」
地中で暮らせる魔物なら、地下水脈を滅茶苦茶にしてしまう可能性があるんだよな~。
「じゃあシンさんは魔物が原因だって言うんですか?」
「ん~、絶対とは言い切れないけどね」
魔物のいる世界だから可能性はあると思うんだよな~。でも、一度変えられちゃった地形は戻せないよな~。これはレッドでも無理だろう。
「水さえあればいいんです。そうすればみんなが……」
「そうか、水か。じゃあ持ってこよう」
「え!? どこに水があるんですか。砂漠なんですよ!」
「大丈夫だよ。マールちゃん。これを食べながら待ってて」
「え!? マジックバッグ?」
おなかもすいているだろうと思ってグミとオーク肉を挟んだサンドウィッチをマジックバッグから取り出した。バッグの体積よりも大きなものを取り出したからマールちゃんは驚いて声をあげた。
マールちゃんはレッドにまかせて、僕はシーレイクラインの町へ向かう。
マジックバッグはいくらでもアイテムが入る。ってことは水も沢山はいるってことだ。
シーレイクラインで水を蓄えて、マールちゃんの村で出せば、万事解決だ。
「ん? シンどうしたんだ? そんなに水を入れた瓶をマジックバッグにいれて?」
「あ、ゲハルドさん。少し水が必要になって」
井戸で水を汲んでいるとゲハルドさんに声をかけられた。結構、有名人になったから野次馬も集まってきちゃったな。
「シャドウの奴にこき使われてるのか? いじめられてるなら言えよ?」
「そう言うんじゃないですよ」
「ははは、分かってて言ってるんだよ」
ゲハルドさんはからかってきて頭をガシガシ撫でてくる。まったく、昼間っからお酒飲んでるのかな、顔が真っ赤だ。
「何か手伝えることがあったら言えよ? ここに来たのはいいけどよ。やることなくなっちまってな」
「ゲハルドさんは僕を金づるだと思って来たんですもんね」
「おいおい、そんな昔のことほじくり返すなよシン~」
ゲハルドさんをからかい返すと僕のほっぺをツンツンしてきた。まったく、酔っぱらい。
「はい、ゲハルドさん、水です。酔っぱらいに用はないので早く覚ましてください」
「お~、ありがとうよ~シン」
水を桶で渡すとそのまま飲み干していくゲハルドさん。ほんとに酔っぱらいだ。
「じゃあ、僕は急いでるので」
「おう! 水ありがとな~。何か困ったことがあったら言えよ~」
酔っぱらいに手を振って僕は洞窟に戻る。急いで戻るとシャドウさんの研究所でマールちゃんがベッドで眠っていた。
「みんな、水があるよ……」
「レッドが案内したのかな?」
「!」
寝顔を見ながらレッドに聞くと体を動かして答えてくれる。スライムみたいだけど、グミなんだよな~。
「あっ! すみません!」
「いいんだよマールちゃん。疲れてたんでしょ、それよりもサンドウィッチは美味しかった?」
「はい! 今まで食べたことない美味しさでした!」
目を覚ますマールちゃん。彼女はピコピコ耳を動かしながら感想を話してくれる。オーク肉は本当に美味しいんだよな~。豚肉なのに牛肉みたいな旨みがあるんだよ。これだけは前世の食材でも勝てないかもな。
「それは良かった。じゃあ、水を届けに行こう」
「はい! でも、本当にいいんですか?」
「え? 何が?」
申し訳なさそうに聞いてくるマールちゃんに首を傾げる。どうしたんだろう?
「水は希少です。とても高価になるんですよね?」
あ~、なるほど。無償でもらうのが申し訳ないってことか。
「大丈夫だよ。水はタダで得られるくらい豊富にあるからね」
「え!? そ、そんなわけないです! 私達の町の水は他の村の人が買いに来ますけど、羊や牛を一頭渡してくるほどのもので」
砂漠地帯の話は聞いたことがあったけど、流石にそこまでの価値は初めて聞いた。それだけステイタム獣国は水がないんだな。
「マールちゃん。後でお金を請求することもしないから安心して」
「いえ、そうじゃなくて……、シン様が損をするので」
「僕の心配をしてくれたのか。優しいねマールちゃんは」
優しすぎるなこの子は。って! シン様なんてがらじゃない!
「シン様なんてやめてよマールちゃん」
「え? 何故ですか? シン様はシン様です」
「シン様なんて呼ばせてるところシャドウさんに見られたら恥ずかしくて、どうにかなっちゃうよ」
シャドウさんが帰ってきたら絶対にからかわれる。そう思っていると魔族領への道の扉が開いていく。
「どうしたんだ一人で騒いで……。新たな仲間か」
「……シャドウさんお帰りなさい」
驚きもしないでマールちゃんに視線を落とすシャドウさん。よかった、揶揄ってこない。ゲハルドさんだったら絶対にからかってきたはずだからつい警戒してしまった。
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