異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)

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第二章 見知った大地

第43話 少しずつ

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「先に外に出てきたけど……女の子は外出に時間かかるんだな~」

 僕の服は最初の服しかないからすぐに出てこれた。替えの服も買わないとだけかもな。お金をどうするかだよな~。簡単に物の売れない世界だから物を売るわけにもいかないしな~。

「まあ、この世界に戻された理由が分かって良かった。つまりはアユカさん達を救えば時の試練をクリアしたってことになるんだろう。たぶん」

 時の精霊クロックはお腹の中の子の願いを叶えてくれた。彼に得のあることじゃないから少し邪推してしまうが精霊だから得とか要らないのかもしれない。とは言え、警戒する必要はあるかも知れないな。

「おまたせ~! 私のナイト様!」

「わっぷ!?」

 アイコさんが抱き着いてくる。柔らかなお胸が顔に当たる。

「はぁ~。ナイト様を窒息死させるつもり?」

「あっ!? ごめ~ん。えへへ~」

 マリさんが呆れて彼女の頭にチョップを優しく当てる。解放されて残念なような良かったような。

「あっ、エルクじゃなかった。ライト君おはよう」

 一台のパトカーがマンションの前に止まる。パトカーから顔を出して声をかけてくるケンジさん。あのストーカーの話かな?

「昨日のストーカーの話ですか?」

「ああ、そうなんだ。今から学校だと思うから、パトカーの中で話せるかな」

「わかりました」

 ケンジさんに問いかけるとパトカーに乗るように促される。三人で乗るとパトカーが走り出す。

「驚くだろうけど言っておくよ。昨日捕まえたあの子はマリさんと同じ学校の生徒だった」

 走り出してすぐに説明してくれる。

「そこまでは普通なことだ。名前を名乗ろうとしたら消えたんだよ。文字通りボンッとね」

『え!?』

 ケンジさんの説明にみんなで驚いて顔を見合う。彼は大きなため息をついて続きを話しだす。

「カメラにも収めているから警察内でも騒ぎになっているよ。これは俺の警察の勘なんだが、ライト君がこの世界に来たことと関係があるんじゃないかな?」

「……そうかもしれないですね」

 ケンジさんの話に考え込む。この世界に僕が来て時の精霊に得がない。僕はそう思っていた。
 だけどそれは大きな勘違いだったかもしれない。僕の妹を理由にして、この世界に僕を戻した。それはこの騒動を解決させるためじゃ?
 そもそも、神じゃなくて精霊が人を自由に時空間移動させられるなんて可能なのか? もしかしてこれは神も絡んでいることなんじゃ? 地球の神がいて、魔法みたいな力を持った人が暴れているから僕に解決させようとか?

「所持品も全部消えちゃってね。分かっていることはマリさん、アイコさんと一緒の学校ということだけってわけ」

「そうですか。そこだけ喋ったってことですね。これは誘われていますね」

「ああ……」

 話す前に消えればいいのに学校の名前を言って消えた。捕まえられるものなら捕まえて見ろといった感じだろう。警察へも挑発しているのを見ると僕への牽制のつもりかな。魔法を積極的に使えなくするとかね。

「警察としては大っぴらに動けない状況だ。俺が少し気にかけることしかできない。なにせ加害者がいなくなってしまったからね」

「ケンジさんだけでも心強いです」

「ははは、昨日は情けない限りだったけどね。あ!? 今思えばあの時体が動かなくなったんだ。もしかして……」

「魔法……それに似たものの可能性があるということですね」

 なるほど、警官のケンジさんが簡単に刺されたのはそう言うことか。やっぱり、これは魔法、こっちの世界じゃ超能力と言ったほうが分かりやすいか。それが大きく関係しているかもな。

「はぁ~、マジックバッグだけでも持ってこれてよかった。みんなにこれを渡しておきます」

「わぁ~、綺麗。ルビー?」

 みんなにマジックバッグから指輪を取り出して手渡す。アイコさんが早速指にはめてうっとりと眺める。

「はい、これはロトナっていう僕の仲間が作ってくれた指輪です。えっと、防御力に関係してるステータスをあげてくれます。物理的防御と魔法的な防御力ですね。これで少しは違うと思うので」

 ロトナには色んな装備を作っておいてもらった。まさか、地球で役に立つとは思わなかったな。

「……それはいいんだけど、指輪って」

「あ~、マリったら顔赤くしてる~。可愛い~」

「う、うるさいなアイコは~。フンッ、ありがたくもらっておくわ」

 アイコさんと同じ左手の薬指にはめるマリさん。そういうわけで渡しているわけじゃ。

「なるほど、じゃあ俺も」

「ちょ、ちょっとケンジさん!?」

「ははは、嘘嘘俺は胸ポケットにでも入れておくよ。これでも効果が付与されるだろ?」

「も、もうケンジさんは」

 笑いながら冗談を言ってくるケンジさん。もって入れば効果が付与されるから大丈夫だけど、出来るだけ肌につけてほしいんだけどな。

「さあ、学校についたぞ」
 
 そうこうしているとアイコさん達の学校についた。といっても学校から少し離れた位置だ。パトカーで送迎は流石に目立つもんな。

「しばらく俺は普通の公務をする。時間が出来たら君達と一緒に行動することになる。心に留めておいてくれるかな?」

「分かりました。ケンジさんも気をつけて」

「ああ、ありがとうライト君」

 ケンジさんは嬉しそうに笑うとパトカーで去っていった。

「いい人だねケンジさん」

「うん、警察然としてるね。みんなあんな人たちばっかりなら犯罪なんてないんだけどね」

 マリさんの声に頷いて答える。正義感の強い人だ。それにしてもすでに警察にまで魔法や超能力があるんじゃないかってなってる。僕が生きていた時代とは大きく変わってしまうんじゃないかな? 神様とかにしてみたら見過ごせないことだよな。自分の作った世界の理が壊れそうになっているんだから。

「じゃあライト君。学校案内してあげる~」

「わっ!?」

 考え込んでいると急にアイコさんに手を引っ張られる。
 校舎に差し掛かり玄関に入ろうと思ったその時、急に影が視線に入る。

「危ない!?」

「え!?」

 影の正体は机だった。アイコさんにあたりそうだった机を殴って吹き飛ばすと校庭に投げ出された。

「あ、ありがとうライト君……」

「あ、うん。それよりもなんで机が?」

 アイコさんのお礼に答える。玄関のある校舎の上から落ちてきた。犯人は屋上から落してきたのか?

「マリは大丈夫? ……え!? ライト君! マリがいない!」

「な!?」

 アイコさんへの攻撃は囮か!? 本命はマリさん。ということは屋上か!
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