異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)

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第二章 見知った大地

第42話 寝床問題

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「おはようライトく~ん」

「お、おはようございます……」

 前世のお母さん、アユカさんの家にやってきて次の日。悩ましい課題が生まれた。
 まず僕が寝れる部屋がアイコさんとマリさんの部屋しかなかった。そして、挨拶してくるアイコさん、着崩れたパジャマがとてもいやらしい。妹達をそんな目で見たくない。ということで住居が必要だ。戸籍がないから家を買うことはできないよな~。

「家が必要か~」

 アイコさんに抱き着かれながら部屋を出て、朝食を食べていたシンジさんに相談する。

「うちはいつまでもいてくれていいんだけどね~。アユカさんの子なんだから」

「そう言うわけには行かないかなって」

 僕は外見が4歳児だけど、本当は前世も合わせると18歳くらいだ。これから毎日アイコさんに抱き着かれて寝るのは流石に厳しいのだ。

「え~、ライト君引っ越しちゃうの?」

「す、すみません」

 後ろから抱き着いてくるアイコさんが残念そうに耳元で話す。刺激が強すぎて俯きがちに謝ると抱きしめる力が強くなる。

「アイコ。あんたのせいでしょ」

「え~、何で私なのマリ?」

「ライト君も男の子なんだよ。抱き枕にされてずっと抱き着かれてたら疲れちゃうでしょ」

 マリさんが指摘してくれる。それでもアイコさんは抱き着くのをやめない。

「だってだって~、ライト君って今まであった男の人の中で一番凄いんだも~ん」

「凄い?」

「ふふ、筋肉が」

「……はぁ~?」

 アイコさんの発言にマリさんが盛大にため息をつく。

「マリも触らせてもらいなよ! 本当に凄いんだから~」

「筋肉なんてみんな一緒でしょ? え!? す、すご!? なにこれ……」

 アイコさんに勧められて僕の腹筋に触れるマリさん。顔を赤くして摘まんでくる。は、恥ずかしいんですが……。

「こ、こんな小さい子なのに」

「ね~、凄いでしょ? 異世界ってそれだけ過酷なんだね~」

 二人は話しながら腹筋を摩ってくる。その様子を見ているシンジさんとアユカさん、呆れながらも微笑ましそうに様子を伺ってる。

「あら!? お腹の子のもさわりたいみたいね。お腹を蹴っているわ」

「ははは、じゃあ女の子かな」

 アユカさんが自分のお腹を摩って話すとシンジさんがお腹に耳を当てて嬉しそうにしてる。いやいや、そこまでわかるものなのか?

「ほら、ライトも触ってみて」

「うん!」

 素直にアユカさんのお腹に触れる。すると声が聞こえてきた。

『お兄ちゃん。来てくれてありがとう』

「え!?」

 声にびっくりしてお腹から手を離す。すると声が聞こえなくなった。

「どうしたの?」

「あ、それが……」

 驚いていると心配そうに声をかけてくるアユカさん。僕は再度お腹に手を当てる。

『驚かせてごめんねお兄ちゃん』

「……」

 確かに声が聞こえる。アユカさんのお腹の中の子の声だろう。

『時間もないから端的に言うね。時の精霊様にお兄ちゃんを呼んでもらったのは私なの。みんなを助けてほしくて』

 声に首を傾げる。

「どうしたのライト?」

「あ、ごめん。もう少し手を当てていいかな?」

「私は大丈夫だけど?」

「ありがとうお母さん」

 心配そうに聞いてくるアユカさんに応えて声に集中する。

『マリお姉ちゃんを助けてくれてありがとう。お兄ちゃんが来てなかったらお姉ちゃんは死んでしまうところだったんだ』

 話を聞いて驚愕する。死んでしまうところということはそれを知っていたってことだ。ってことは未来が見えている?

『私は未来が見えるの。家族のみんなの命が危ないそう思ったら居ても立っても居られなくて、それで心の中で大きな声をあげていたら時の精霊様と話せることが分かって助けを求めたの』

 凄い赤ん坊だな。話を聞いてみんなの顔を見ると戸惑ってる。説明をしておこうかな。

「お腹の中の子と話してるんです」

「ええ!? そんなことも出来るのかい?」

「いえ、僕の力じゃなくて、お腹の中の子の力です」

『ええ!?』

 説明すると最初にシンジさんが声をあげる。みんなも驚いて声をあげると声に集中した。

『ん……。眠くなってきた。時間がない』

「ぼ、僕は何をすればいいの?」

『みんなを守って。次はアイコお姉ちゃん……』

「アイコさん!?」

 声に反応してアイコさんに視線を向ける。アイコさんは首を傾げるだけ。

「声が聞こえなくなりました。眠ったみたいです」

「胎児って言うのはずっと寝てるらしいからな。それで何を言ってたんだい?」

 眠ったことを教えるとシンジさんが内容を聞いてくる。僕はみんなに聞いたことを全部伝える。

「は、ははは。まさか自分の子が【未来視】の超能力者とはね」

「それでみんなに危険が起きそうになってた。ますが私、そして次は……」

 シンジさんが頭を抱えているとマリさんがゆっくりと話、アイコさんを見た。

「……だ、だだだ大丈夫だよ! マリみたいにストーカーなんてあり得ないし!」

「そう? アイコの方がスタイルもいいし、金髪だし」

「マリの方がスレンダーでカッコいいもん!」

「はぁ? モテてないと思ってるのは本人だけよ。レベルが高すぎて声かけられてないだけよ。あんた目当てでこっちがどれだけ声かけられてるか……」

 アイコさんが自信なさげに話すとマリさんが呆れて声をあげる。色々と苦労してるみたいだな。

「とにかく、妹にそんなことを頼まれた以上は皆さんを守ることに集中したいと思います」

「ってことは……。私につきっきりになってくれるってこと!? やった~! ライト君とずっと一緒~」

「わぷっ!」

 アイコさんが喜んで抱き着いてくる。

「まあ、ライト君が居てくれたら一安心だ。あとはそれぞれ気をつけて暮らすしかないな。じゃあ仕事に行ってくるよ。みんな気をつけて」

 シンジさんはそういって玄関から出て行く。

「じゃあ、私達も学校に行く準備を」

「少しくらい朝食食べていきなさい」

「無理~。ダイエット中~」

「まったく……」

 シンジさんを見送ってマリさんが自室に入って行く。アユカさんの声にマリさんは後ろ手に振って答えた。朝食は大事だから僕は食べる。アイコさんもちゃんと食べてるな。
 マリさんはあんなにスレンダーなのになんでダイエットなんかしてるんだ?
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