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第一章 新しい世界

第34話 はた迷惑な

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「マリアン、あなたも身重なんだから働いちゃダメよ」

「いえ、私は大丈夫です。メイナ様こそ私に任せてください」

 すっかり仲の良くなった二人。三人でイチャイチャしていたらそりゃ仲良くなるよな。しかし、夫婦喧嘩は犬も食わぬとはよく言ったものだけど、本当だな。

「エルクありがとうな」

「礼には及びませんよお父様」

 ソファーに座って二人を眺めているとお父さんが隣に座ってきて声をかけてくる。

「お前が俺を殴ってくれなかったらこうはならなかった。本当にありがとう」

「僕は殴りたかったから殴っただけですよ」

 不倫をしていても両親は仲良くいて欲しい。ただ僕はそう思っただけだ。

「はは。それにしてもエルクは強くなったな。もう俺と同じレベルまで来てるかもしれないな」

「ん~、まだ実感はないです」

 石塔も一日で10階まで行けるようになった。ブレイドと一緒にかなり強くなったかも。それでもお父さんに勝てる感じはしないんだよな~。

「ディア~。手伝って」

「おう! とにかくありがとうなエルク。何をすればいいんだ?」

 お母さんに呼ばれてソファーを立つお父さん。台所でお母さんの代わりに固い野菜を切ってる。宙に投げて綺麗に切ってるな。ああいうの見るとお父さんよりも強くなれてる気がしないよな。

『ミア!』

「ん? なんだ?」

 仲良しな三人を見ていると外からミアちゃんを呼ぶ声が聞こえてきた。窓から外を見ると村の入口に白馬に乗ったおじさんが見える。王冠も被ってるけど、もしかして?

「お父様。どうしてここに?」

「お前を探しに来たに決まっているだろう!」

 白馬から降りるおじさん。ミアちゃんを抱き上げると嬉しそうに回転する。王冠を被ってるってことは王様? その娘さんってことはミアちゃんってお姫様?

「お父様、仕事をさぼっちゃダメよ。すぐに帰って」

「み、ミア。それは少し酷くないか?」

「酷くないわ。お父様は王様なんだから、みんなの仕事がどんどん遅れちゃうわよ」

「それはそうだが……」

 ミアちゃんの返答に困った表情になるおじさん。やっぱり王様みたいだな。ってことはレード様かな?

「あっ! エルク~。お父様を紹介するわ!」

 僕に気がついたミアちゃんがレード様から飛び降りて抱き着いてくる。レード様が凄い表情で僕を睨みつけてきてる。

「ほ~、そなたがゼックウ様も言っていた子というわけか?」

「へ? ゼックウ様が?」

 そういえば、プラークとかいう貴族を持っていってもらったんだった。その時にゼックウ様が僕のことを言ったのか。

「ではでは、ミアも見初める男はどの程度か……見せてもらおう!」

 声と共に切りかかってくるレード様。ミアちゃんを抱き上げて躱す。

「わっ!? きゅ、急になにするんですか! ミアちゃんもいるって言うのに!」

「エルクカッコいい!」

 華麗に躱すとミアちゃんの顔が赤く待って目がハートになる。そんなことよりもレード様を止めてほしいな。

「ぐぬぬ、なるほどな。流石はミアの見初めた男よ。その年で私の剣を躱すとはな。しかし、ミアがいるんだ、今のは手加減をしていたんだぞ」

「お父様言い訳はカッコ悪いですわ」

 レード様が悔しそうに話しているとミアちゃんがけなしていく。

「ミアを離しなさい。ここからが本気だよエルク君」

「は、はぁ? やりたくないっていってもやるんですか?」

「無論だ。我が子に相応しいか見定める!」

 再度、声をあげ終わるとすぐに剣を突き入れてくる。サーベルと言われる突きに特化した剣だ。人との戦闘に特化した戦い方だな。でも、的と小さい僕にはあまり効果的ではない。それに、

「な! 電撃の塊が!」

 電気属性の球を無数に浮かせる。僕の思い通りに動く塊はゆっくりとレード様に近づいていく。

「なるほど、ゼックウ様のいう通りということか。しかし、舐めてもらっては困る。これでも一国の王だぞ!」

 サーベルに水を纏うレード様。電撃の塊を切り落とし、感電した水を地面に落としていく。

「さあ、剣を抜きなさい!」

「分かりました」

 レード様は剣の腕前もみたいらしい。僕は仕方なく剣を取り出して構える。
 それを見てレード様は深く頷いて鋭く前進してきた。さっきよりも早い鋭い突き。避ける僕の頬を剣が掠める。

「流石の君も躱せないだろう」

「凄いですね。早いわけじゃないのに躱せなかったです」

「ふふ、言ってくれる」

 まるで腕が伸びたかのような感覚に陥る。間合いを読み間違えたわけじゃないのに剣が僕に届いていた。

「さあ、次も行くぞ!」

「行くぞではない!」

「なっ!? ゼックウ様!? 痛っ! 何を!?」

 僕も楽しくなってきたと思って身構えるとゼックウ様が空から降りてきた。レード様に拳骨を落とすと無言で睨みつけた。

「み、ミアがついていくような子ならば見定めるのは当たり前でしょう?」

「……それで剣を子供に向けるのか? 本当に間違いではないといえるのか?」

 レード様の言い訳にゼックウ様が話すとレード様は僕を一度見て俯いた。

「た、確かに普通の子供ならばそうです。ですがあなたも言っていたでしょう? 類まれな才能の持ち主だと、ご自身を大きく超える存在だと」

 レード様がそう言うとゼックウ様はまた拳骨を彼に落とした。ゼックウ様はそんなに僕のことを買ってくれてたのか、普通に嬉しいな。

「特別だと決めつけるのは他人じゃ。本人がその特別を受け入れるかは対話をしてからじゃろう。まずは話してからじゃぞ。まったく、昔から言い聞かせているというのに」

「そうですね。私も王族というだけで決めつけられて暮らしていたというのに。すまなかったエルク君。少し落ち着いて話そう」

 ゼックウ様の声を聞いて落ち着いてくれたみたい。落ち着いて握手を求めてくるレード様、応えて握手を交わすと力強く握ってくる。思いっきり力を込めてきてるんだけど、本当に納得してるのかな?
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