異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
上 下
33 / 61
第一章 新しい世界

第33話 不逞な

しおりを挟む
「なに!? またダンジョンだと~!?」

 家に帰ってきてお父さんに報告するとお父さんが驚愕で声をあげる。

「歴史的に見ても珍しいな。山向こうのダンジョンは距離的にはおかしくはない。森のダンジョンを消したことで出来たと思ってもいいしな」

 考え込んで席に着くお父さん。マリアンさんと一緒に考え込んでるな。最近マリアンさんもうちにいることが増えたな。

「ディア様。すぐに私の部下を派遣します」

「ああ、調べて冒険者に声をかけるか。エルクまたもやお手柄だな。流石は俺の息子だ」

 マリアンさんの提案に同意するお父さん。僕の頭を撫でると彼女と顔を見合う。何かあったのかな?

「あ~、エルク、メイナ。二人にちょっと聞いてほしいことがあるんだが……」

 お父さんの声に僕とお母さんは首を傾げた。マリアンさんは顔を赤くしてお腹を摩ってる? なんだかお母さんの仕草に似てるような。

「あ~とてもいいにくいんだが、マリアンに俺の子が身ごもった」

「「はぁ?」」

 お父さんの声にお母さんと顔を見合って声をあげる。何を言ってるんだこの人は。

「ダンジョンを攻略している時にな。その、マリアンと行為に及んでだな」

「あなた! 手を出したってこと!?」

「あ、ああ」

 マリアンさんの部下も一緒に行ってるはずだけどな。そんな中で行為に及んだってこと? 何やってるのこの人、実の父親だけどすっごい恥ずかしいんだけど。
 お母さんは涙目でお父さんに詰めよって手を振り上げる。横なぎに払おうと思ったみたいだけど留まってくれたみたいだ。

「お母さん」

「ありがとうエルク……」

 涙を流すお母さんの腰に抱き着き慰める。お礼を言ってくるお母さんは元気がなくなってしまった。

「実家に帰らせていただきます! エルクは連れて行くから!」

「ま、待ってくれメイナ!」

「フンッ! マリアンさんとよろしくやってればいいじゃない!」

「ち、違うんだメイナ!」

「何が違うって言うのよ!」

 お母さんのグッと握りしめる拳。解き放つと同時に声をあげるとお父さんと言い合いになる。見繕いをしていくお母さんに声をあげるお父さんだったけど、全然聞かないお母さん。

「マリアンと話したんだよ。このまま、内緒にしようって俺は言ったんだ。だけど、マリアンが話そうって」

「そう……。どういうことかしらマリアンさん?」

 お父さんの話を聞いてマリアンさんへと視線を向けるお母さん。お母さんの睨みを見て少し気圧されるマリアンさんは一度深呼吸をして話しだす。

「ディア様の子、みんなに喜んでほしかったのです」

「喜ぶと思ったの?」

「メイナ様なら喜んでくださると」

「……はぁ~。そう、残念ね。私は喜ばない」

 マリアンさんの言葉に大きなため息をついて答えるお母さん。目に涙を貯めながら身支度を進めていく、残念ながら手は止まらなかった。

「メイナ! 聞いてくれ! 俺は嬉しいんだ。家族が増えて!」

「あらそう。子供と奥さんが増えて嬉しいの? 私とエルクとお腹の中の子だけじゃ足りないって言うの? いい加減にして! エルク、あなたも身支度して」

 能天気なお父さんの声に、身支度を終えて荷物を抱えるお母さんは声を荒らげる。はぁ~、修羅場すぎるよ。
 僕的には家族が増えることは大歓迎なんだよな。でもさ、それは当人じゃないからであって。僕がお母さんだったら裏切りでしかないんだよな。仕方ない、ここは僕が殴る!

「お父さん、食いしばって~」

「エルク?」

「この! すけこましが~!」

「!?」

 拳に光の塊を纏わせてお父さんの顎を強打。強烈なアッパーカットが見事にヒットして、お父さんは天井を突き破って飛んでいく。

「エルク!? ディア! 大丈夫!?」

「あ、ああ、大丈夫だ……」

 身支度した荷物を投げ飛ばしてお父さんに駆け寄るお母さん。口から血をふきだしてるお父さん。痛々しい光景にお母さんが泣いてる。

「エルク! やり過ぎよ!」

「い、いいんだよメイナ。やられて当り前さ。君を裏切ってしまったんだから」

「で、でも」

 涙を流して僕を睨みつけるお母さん。お父さんがお母さんの頬に手を添えて声をあげると唇を重ねた。僕の横で見ていたマリアンさんは顔を背けている。

「ディア……」

「俺を嫌いでいい。だけどマリアンとその子は好きでいてくれ」

「う、うん。わかったわ。だから治療しましょ」

「はは、大丈夫さ。エルクが治してくれる。そうだろエルク?」

 僕を見つめるお父さん。僕はそっぽを向く。すぐに治しちゃ罰にならないからね。

「ディア様。肩をお貸しします」

「あ、ああ。ありがとうマリアン。妊婦に両肩を支えられるとはな。情けない」

 マリアンさんとお母さんに挟まれて肩を貸されるお父さん。はぁ~、これだからイケメンは。って僕はこの人の血を受け継いでるんだよな~。未来が思いやられるよ。

「マスター。家は直しておきます」

「うん、ロトナお願いね」

 家に入って行く三人を見送っていつの間にかいたロトナにお願いした。僕は家に入ろうと思って扉に手をかける。すると中からなまめかしい声が聞こえてきた。
 何ということでしょう数分の間に家の中がピンク色になっています。はぁ~、今は家に入るのやめよ。お父さんの回復もしてあげませんよ~だ。

「あれ? 何かあったのエルク~」

「ミアちゃん!?」

 そんな時にミアちゃんがやってきた。家に入れるわけにもいかないので通せんぼすると家を覗こうとしてくる。

「何々? 見せたくないものでもあるの? おねしょ?」

「おねしょ? 違うよ。今は家に入れないだけなんだ。ほら、屋根が壊れてるでしょ?」

「あ~、本当だ。じゃあ、今日は訓練できないかな」

 ミアちゃんを何とか納得させる。訓練の時間だったか、危なかったな。僕がいなかったらあのピンクの空間にミアちゃんが入るところだった。

「じゃあエルク! 私をエスコートして!」

「ええ? エスコートってどこ?」

「ん~、ダンジョン! 石塔でいいわよ」

 石塔でいいって言われてもな。まあ、ブレイドと一緒に行けば二日で行けるけど。

「ネイアとリッカとも一緒に行ったんでしょ? 私も強くなりたいの! いいでしょ?」

「あ~なるほど」

 二人の話を聞いたのか。いつの間にか冒険者さんとも仲良くなってるんだなミアちゃんは。まあ、どうせ家には入れないし。

「わかったよ。石塔に行こう」

「やった~。じゃあ、準備してくるね」

 嬉しそうに宿屋に入って行くミアちゃん。ブレイドにも声をかけると三人で石塔へと潜る。敵の倒し方も分かっているから一日で10階まで登れた。ミアちゃんも訓練をしっかりしているおかげで戦えてるな。
 家に帰るとピンクの空間は変わってなかったけど、修羅場でないだけまだましだったので我慢した。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...