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第一章 新しい世界
第29話 最高の隣人
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ミアちゃんとグランさんが村にやってきて三日が経った。ネイアさんが帰ってきてダンジョンの成果を報告してくれる。
「エルク君に聞いていた通り、ボスはロックバイソンだった。そこまでは予想通りだったんだけどね……。大きさが普通じゃなかった」
かなり大変なボスだったみたいだ。よく見ると傷だらけで満身創痍。
「魔法使いのリッカが頑張ってくれたから何とかなったよ」
魔法使いのリッカさんのおかげみたいだな。あの人って寡黙だからどんな人か分からないけど、ネイアさんは彼女を信頼してるみたいだな。
「じゃあ、私は戻るね。そういえばディアさん、あの空き家をそのまま使っていいのかしら? 宿屋が出来てるから空けたほうがいい?」
「使う人がいないから空き家だったわけだ。大丈夫じゃないか?」
「そうですか良かった。戦利品で買おうか悩んでいるんだけど、その時はまたお話させていただきますね」
ネイアさんはお父さんに声をかけると嬉しそうに話す。家を買うってことか。ってことはこの村を気に入ってくれたってことかな。
彼女はいい終わると僕にウインクをして出て行った。
「キャン!」
「ブレイド? どうしたの?」
窓から顔を覗かせるブレイド。窓に駆けつけると外にゴブリンが見えた。みんなには見つかっていないのか?
「お父さん少し出てくるね。例のゴブリンが来てるから」
「わかった。ネイアさん達に見つからないようにな」
「うん」
世の中はゴブリンに厳しい。見つけたら根絶やしにしないとダメって言われているからね。女性を拉致監禁して子孫を増やすのはこの世界のゴブリンも一緒だから。
「ギャギャギャ!」
「え? 来て欲しいの?」
「ギャギャ!」
よく見るとグランさんを追い払っていた見張りのゴブリンだ。耳に動物の骨で作ったピアスをしてる。このピアスで区別しているんだろうな。
腕を引っ張ってくるから声をかけると頷いて答える。言っていることを理解してるのか分からないけど、とにかく一緒に行くか。
「ギャッギャ~!」
「ははは、楽しそうだね」
ブレイドに一緒に乗って王の元へ走りだす。ゴブリンが楽しそうにブレイドに跨る僕の肩に乗る。ブレイドは早いからな、風になった気分になれるんだろう。
「よく来てくれたエルク。歓迎する」
山に上ると王が直々に迎えてくれた。握手を交わして用意された骨で作った椅子に座ると深くお辞儀をしてきた。
「改めて歓迎するエルク」
「そんなに畏まらないでください」
「いや、エルクのおかげでこの地に住めるのだ。そのような恩人に礼を尽くせん我らは無能になってしまうよ」
王はそういって俯く。
「僕は何もしてませんよ」
「冒険者に言わないというのが一番恩を感じていることだ。この地は動物も魔物も豊富。兄弟達も肉つきがよくなってきた。エルクのおかげだ。ありがとう」
何もしていないことが一番の恩か。なんだか恥ずかしいな。
「ははは……。それでわざわざ呼んでくれたのは果物をくれる為ですか?」
僕と王の前に置かれた大きな葉っぱの上に乗る果物を摘まんで聞く。すると王はクーナリア連峰の尾根を指さす。
「この尾根を反対に下ったところにダンジョンがあった。そこでとれる果物なんだが人はダンジョンが好きだろう? 知らせようと思ってな」
果物の取れるダンジョンか。お城のダンジョンがなくなっちゃったから食べ物の取れるダンジョンはありがたい。だけど僕は行っている暇はないかもな。
「ダンジョンには行けないけど情報は助かります」
「ふむ、では我らが取って献上しよう」
「え? 献上?」
王はそういって微笑む。
「我らのことを黙ってくれている礼だ。遠慮せずにもらってくれ」
「ん~それは何もしてないのにもらってばかりじゃなんだな~。なのでこれなんかどうですか?」
「これは剣?」
もらってばかりは何なのでロトナに作ってもらった鉄の剣を見せる。マジックバッグから取り出したけど、既にマジックバッグは見せたことがあるから驚いてない。
「嬉しいぞエルク。これでダンジョンの魔物も簡単に倒せる」
ジェネラルが抱き着いて喜んでくれる。今までは骨を繋ぎ合わせた剣を使っていたからね。鉄の剣なんて嬉しいだろうな。まあ、僕はミスリルを使っているんだけど。
「じゃあ、そろそろ僕は帰りますね。また何かあったら教えてください」
「友よ、了解した」
王はそういって跪いて見送ってくれる。王に跪かれると僕が王様になった気分だな。
「エルク! 出かける時は私も連れて行ってよ!」
「み、ミアちゃん……」
村に帰ってくると頬を膨らませて憤りを見せるミアちゃんに迎えられる。
「エルクのお父様とお母様に紹介してもらったのはよかったのに~」
お父さんとお母さんに紹介すると嬉しそうに聞いてくれていた。彼女はグランさんに言われた通りにおめかしをしていたっけな。
「ははは~……。それよりも帰らなくて大丈夫なの? 両親が心配するんじゃない?」
「フンっ! 心配すればいいのよ! あんなレーガンなんかと結婚させようとしてくるんだから!」
ミアちゃんは相当恨んでいるみたいだな。僕から見てもレーガンはあまりいい子には見えなかったな。
「エルク、ミアちゃん。ご飯にしましょ」
「あっ、は~い。エルク行きましょ!」
「はいはい……」
ミアちゃんは村に来てからずっと一緒にご飯を食べている。お父さんもお母さんも娘のように可愛がっている。
二人はモテモテな僕を見ていたいといった様子、それを感じ取った僕はジト目で二人の様子を見る。
こんな忙しい一日になって一か月ほどが経過する。僕は4歳の誕生日を迎えた。
因みにミアもレーガンも5歳だったらしい。年上だったのか。
「エルク君に聞いていた通り、ボスはロックバイソンだった。そこまでは予想通りだったんだけどね……。大きさが普通じゃなかった」
かなり大変なボスだったみたいだ。よく見ると傷だらけで満身創痍。
「魔法使いのリッカが頑張ってくれたから何とかなったよ」
魔法使いのリッカさんのおかげみたいだな。あの人って寡黙だからどんな人か分からないけど、ネイアさんは彼女を信頼してるみたいだな。
「じゃあ、私は戻るね。そういえばディアさん、あの空き家をそのまま使っていいのかしら? 宿屋が出来てるから空けたほうがいい?」
「使う人がいないから空き家だったわけだ。大丈夫じゃないか?」
「そうですか良かった。戦利品で買おうか悩んでいるんだけど、その時はまたお話させていただきますね」
ネイアさんはお父さんに声をかけると嬉しそうに話す。家を買うってことか。ってことはこの村を気に入ってくれたってことかな。
彼女はいい終わると僕にウインクをして出て行った。
「キャン!」
「ブレイド? どうしたの?」
窓から顔を覗かせるブレイド。窓に駆けつけると外にゴブリンが見えた。みんなには見つかっていないのか?
「お父さん少し出てくるね。例のゴブリンが来てるから」
「わかった。ネイアさん達に見つからないようにな」
「うん」
世の中はゴブリンに厳しい。見つけたら根絶やしにしないとダメって言われているからね。女性を拉致監禁して子孫を増やすのはこの世界のゴブリンも一緒だから。
「ギャギャギャ!」
「え? 来て欲しいの?」
「ギャギャ!」
よく見るとグランさんを追い払っていた見張りのゴブリンだ。耳に動物の骨で作ったピアスをしてる。このピアスで区別しているんだろうな。
腕を引っ張ってくるから声をかけると頷いて答える。言っていることを理解してるのか分からないけど、とにかく一緒に行くか。
「ギャッギャ~!」
「ははは、楽しそうだね」
ブレイドに一緒に乗って王の元へ走りだす。ゴブリンが楽しそうにブレイドに跨る僕の肩に乗る。ブレイドは早いからな、風になった気分になれるんだろう。
「よく来てくれたエルク。歓迎する」
山に上ると王が直々に迎えてくれた。握手を交わして用意された骨で作った椅子に座ると深くお辞儀をしてきた。
「改めて歓迎するエルク」
「そんなに畏まらないでください」
「いや、エルクのおかげでこの地に住めるのだ。そのような恩人に礼を尽くせん我らは無能になってしまうよ」
王はそういって俯く。
「僕は何もしてませんよ」
「冒険者に言わないというのが一番恩を感じていることだ。この地は動物も魔物も豊富。兄弟達も肉つきがよくなってきた。エルクのおかげだ。ありがとう」
何もしていないことが一番の恩か。なんだか恥ずかしいな。
「ははは……。それでわざわざ呼んでくれたのは果物をくれる為ですか?」
僕と王の前に置かれた大きな葉っぱの上に乗る果物を摘まんで聞く。すると王はクーナリア連峰の尾根を指さす。
「この尾根を反対に下ったところにダンジョンがあった。そこでとれる果物なんだが人はダンジョンが好きだろう? 知らせようと思ってな」
果物の取れるダンジョンか。お城のダンジョンがなくなっちゃったから食べ物の取れるダンジョンはありがたい。だけど僕は行っている暇はないかもな。
「ダンジョンには行けないけど情報は助かります」
「ふむ、では我らが取って献上しよう」
「え? 献上?」
王はそういって微笑む。
「我らのことを黙ってくれている礼だ。遠慮せずにもらってくれ」
「ん~それは何もしてないのにもらってばかりじゃなんだな~。なのでこれなんかどうですか?」
「これは剣?」
もらってばかりは何なのでロトナに作ってもらった鉄の剣を見せる。マジックバッグから取り出したけど、既にマジックバッグは見せたことがあるから驚いてない。
「嬉しいぞエルク。これでダンジョンの魔物も簡単に倒せる」
ジェネラルが抱き着いて喜んでくれる。今までは骨を繋ぎ合わせた剣を使っていたからね。鉄の剣なんて嬉しいだろうな。まあ、僕はミスリルを使っているんだけど。
「じゃあ、そろそろ僕は帰りますね。また何かあったら教えてください」
「友よ、了解した」
王はそういって跪いて見送ってくれる。王に跪かれると僕が王様になった気分だな。
「エルク! 出かける時は私も連れて行ってよ!」
「み、ミアちゃん……」
村に帰ってくると頬を膨らませて憤りを見せるミアちゃんに迎えられる。
「エルクのお父様とお母様に紹介してもらったのはよかったのに~」
お父さんとお母さんに紹介すると嬉しそうに聞いてくれていた。彼女はグランさんに言われた通りにおめかしをしていたっけな。
「ははは~……。それよりも帰らなくて大丈夫なの? 両親が心配するんじゃない?」
「フンっ! 心配すればいいのよ! あんなレーガンなんかと結婚させようとしてくるんだから!」
ミアちゃんは相当恨んでいるみたいだな。僕から見てもレーガンはあまりいい子には見えなかったな。
「エルク、ミアちゃん。ご飯にしましょ」
「あっ、は~い。エルク行きましょ!」
「はいはい……」
ミアちゃんは村に来てからずっと一緒にご飯を食べている。お父さんもお母さんも娘のように可愛がっている。
二人はモテモテな僕を見ていたいといった様子、それを感じ取った僕はジト目で二人の様子を見る。
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