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第一章 新しい世界

第16話 チートダンジョンとロトナ

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「綺麗だな~」

 ダンジョンを攻略して次の日。ベッドに横になりながらダンジョンコアを見つめる。綺麗に赤く輝くコア、一日経っても何かが起こるわけでもない。お父さんは魔力制御で空間を作り出すとか言っていたけど、やってみようかな。

「屋内だと危ないかな。庭に行こう」

 トコトコと家を出て庭に出る。洗濯物を干しているお母さんが見える位置。

「エルク~。危ないことはしちゃダメよ~」

「は~い。訓練って危ないことじゃないのかな?」

 お父さんとの剣の稽古は十分危ないものだと思うんだけど、とお母さんの注意に愚痴をこぼす。でも、そんな愚痴をこぼしてしまうような口うるさいことも愛あってこそだよな。因みにお父さんは町の警備で外へ見回りに行ってる。

「さて、魔力制御ってことはマナを込めればいいのかな?」

 座り込んでダンジョンコアを両手で包む。力を込めるように力んで土の魔法を込めてみる。

「お、おおお~」

「キャンキャン!」

 ダンジョンコアが浮き上がる。思わずブレイドと一緒に声をあげてしまう。
 大人一人が丁度入れるほどの洞窟を作り出し、地下へと道を作る。

「ど、どうしたのエルク!? ってダンジョンコアを使ったの?」

「う、うん。やってみたら出来た」

「ふふふ、流石は私とディアの子ね。天才だわ~」

 勝手にダンジョンコアを使ってしまったって言うのに褒めてくれるお母さん。頬をスリスリしてきて頭も撫でてくれる。

「中に入ってみましょ」

「お母さんは待ってて。お腹には妹もいるんだから段差は危ないよ」

「あ、そうね」

 妊婦さんだっていうのに危ないことを恐れないお母さん。洗濯ものだって僕がやるって言ってるのにな~。まあ、僕は3歳なので任してもらえないんだけどね。早く大きくなりたいな。

「ん、ダンジョンに入る時の感覚」

 洞窟へと足を踏み入れると水に入るような粘りのある感触がやってくる。中に入ると一瞬で景色が変わり洞窟のような石肌の風景が現れる。

「キャンキャン」

「どうしたのブレイド。え? もしかしてあれって銀?」

 先に奥に歩いていたブレイドが声をあげる。そこには銀色の鉱石が顔を出す岩が思わず近寄ってみると奥にも同じような岩肌が沢山あるのが見えた。もしかしてここは鉱石の取れる洞窟?

「ぎ、銀って高いよね……」

 通貨にも使われている銀。安いはずがない。

「キャンキャン!」

「こ、今度はどうしたのブレイド! って!? ええぇぇ~~!?」

 さっきよりも大きな声をあげるブレイドに驚いて応える。彼の見る方向を見るとなんとそこには金の鉱石が壁一面にべったりと張り付いている景色が。

「ど、どうなってるの?」

 金なんて前世でも見たことがないよ。本当に金なのかな?

「マスター」

「な!? ゴーレム!?」

 声が聞こえて振り向くと岩肌と同化して顔を出す岩の人形が声をかけてきていた。僕は思わず戦闘態勢をとる。
 岩肌から出てくる人形。跪いて来たけど、なぜか動かなくなった。

「き、君は? 魔物じゃないよね」

「私はロックパペットという魔物をベースに作られています。『魔物じゃないよね』と問われると『いいえ』と答えざる負えません」

 人形さんは一応は魔物ってことか。

「じゃあ、味方かな?」

「はい。私はマスターの物ですので」

 跪いたまま答えるロックパペット。マスターってことはそう言うことだよね。
 ロックパペットじゃいいにくいから名前を考えてあげるか。

「ロックパペットは女の子?」

「私は物質系の魔物です。性別はありません」

「ん~、体は石だからどっちかわからないな~。でも、声は可愛いから女の子のような名前にしようかな」

「名前を頂けるのですね! 嬉しいです!」

 初めて顔をあげてくれるロックパペット。喜んでくれてるみたいでこっちも嬉しくなっちゃうな。

「ロックパペット。ロト……ロトナなんてどうかな?」

「ロトナ! 嬉しいですマスター」

 喜んでくれたようで良かった。

「ああ、力が漲る!」

「え?」

 岩の人形だったロトナが名前をあげると光り輝く。光が治まると灰色の長い髪の女性に代わる。

「マスター。パペットへと進化しました」

「へ? 進化?」

 ロトナが僕を抱き上げて報告してくる。
 そ、そうか、進化ってやつか。それは喜ばしいけど。

「そんなに簡単に進化ってするの?」

「ロックパペットは幼体のようなものですから名付けで進化へと至ります」

「な、なるほど……」

 魔物って結構簡単に進化するんだな。考えても仕方ない。とにかく、進化してくれたのならそれでいいか。それよりもこの洞窟を案内してもらおおう。

「ロトナ。この洞窟の話をしてくれるかい?」

「はい。ではこのまま抱いたままで」

「あ、うん。お好きにどうぞ」

 抱き寄せてくるロトナ。ロックパペットじゃなくなったからか、柔らかな肉肌になってる。お胸もそこそこあるので目のやり場に困ってしまう。

「この洞窟は8種類の鉱石群で出来ています。銀、金は見ましたよね。あとは銅、鉄、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネです」

「アダマンタイト、ヒヒイロカネ……」

 最終決戦で出てくるような鉱石が普通に取れるのか。恐ろしいな。でも、手に入っても加工できなかったら意味がないな。

「私は加工も出来ますので言っていただければすべての武器防具を作ることが可能です」

「ええ!? す、すごい」

 ロトナは加工も出来るのか。至れり尽くせりだな。

「名前を授けていただけて細かな加工も出来るようになりました。装飾品も可能でしょう」

 石の体じゃ確かに細かな作業はしにくいよな~。
 ん~、夢にまで見たチート生活が今ここに。お金には困らなくなりそうだな。

「マスター。何からいたしましょうか? 武器防具を作りますか? それとも硬貨を作ってしまいましょうか?」

「硬貨!? そ、それはまずいでしょ……」

 目を輝かせて聞いてくるロトナ。武器はともかく、防具は大きくなるから合わなくなるしな~。

「とりあえず、いつでも作れるようにインゴットとかにしておいてもらって。そうすれば売ることも出来るだろうしね」

「流石はマスターです! 分かりました。すぐにすべての鉱石をインゴットに変えていきますね!」

 てきぱきと動き出すロトナ。彼女は嬉しそうに動いてくれる。
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