異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 新しい世界

第15話 ダンジョン攻略

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「グルルルル」

 玉座の間の中央に鎮座する巨大な魔物。オークだと思うけど、大きさが規格外。全長10メートルはあるだろうか。大きな斧を振り回して唸り声をあげて威嚇してくる。

「オークチャンピオンだ。ダンジョンのボスだと更に大きくなる」

「あんなのどうやって倒すの?」

「ははは、確かに大きいから攻撃は激しいぞ。まあ見てろ」

 お父さんがそういって玉座の間に入って行く。入ったと同時にオークチャンピオンが動き出して、大きな斧を振り上げて襲い掛かってくる。
 振り上げた斧が横なぎに払われて風圧が襲い掛かってくる。その風が来るのと同時にお父さんの姿が消えた。

「大きければ大きいほど隙が生まれやすい。案外弱いんだ」

「グルァァ!?」

 お父さんが視界から消えたと思ったらオークチャンピオンの斧にぶら下がっていた。声をあげると共にチャンピオンの頭に乗り移って剣を振り下ろした。
 片目を切りつけて降りてくるお父さん。チャンピオンは悲痛な叫びをあげてお父さんを睨みつける。

「ガァ!」

「おっと。俺はこうやって倒していた。大きいことを逆に利用するわけだ。魔法剣を使えば一瞬で済ませることが出来て食糧庫として使っていたわけだ」

 更に襲い掛かってくるチャンピオンを軽くあしらって教えてくれるお父さん。後ろ向きで大きな斧を躱していく。ステータスの差もあるだろうけど、経験の差も大きく戦闘に関わるって言うのがよくわかる。

「さて、そろそろお前達に任せてみるか」

 チャンピオンの大きな斧を半分に切り落として声をあげるお父さん。片目を傷つけて、更に武器を無くしてくれたみたいだ。

「本来のオークチャンピオンはAランクの魔物だ。普通ならお前やブレイドじゃ勝てないだろう。うまく立ち回れば勝てたかもしれないがな」

 確かに魔法でうまく立ち回れば勝てたと思う。ロックバイソンと同じで考えて戦えば。でも、ロックバイソンの時のようにうまくいくことばかりじゃない。オークチャンピオンの横なぎの攻撃は躱せる気はしなかったしね。一瞬で壁に叩きつかれる想像が出来る。

「さあ、勉強の時間はおしまいだ。実戦実戦!」

「よ、よし!」

 お父さんの声に応えて、頬を両手で叩く。
 気合を入れて素手のチャンピオンへとブレイドと一緒に挑む。
 定石通り、左右に分かれてチャンピオンに近づいていく。

「グラァ!」

「!?」

 左右に分かれるとチャンピオンがブレイドへと拳を振り下ろした。間一髪のところで回避したブレイドはチャンピオンの腕を切りつけて背後に回っていく。

「ブレイドやるな~。よし! 僕も」

 ブレイドが背後なら僕は正面。魔法剣の属性を雷にして、バチバチと音を立てながら駆け寄る。
 僕とブレイドどちらを攻撃しようか悩みだすチャンピオン。これはいける、そう思った時、チャンピオンの姿が消えた。

「な!? 上!?」

 大きく跳躍したチャンピオン。僕とブレイドを同時に攻撃するために跳躍したようだ。
 両足を回転させて風が僕らを襲う。鋭い風が僕の頬を切りつけ、更に壁へと叩きつけられる。
 体を早く動かすだけで風が僕らを襲う。お父さんとの戦いではそんなに強く感じなかったけど、やっぱり普通に強いな。

「風なら風の塊を纏って、ブレイドにもかける。」

 風魔法を体に纏わせる。ブレイドにもかけてチャンピオンへと視線を戻す。

「ガァ!」

「もう効かないよ!」

 チャンピオンが手を横なぎに払って風を生みだす。風のシールドを作っているようなものだから風の影響は受けない。すかさず駆け寄って剣を振り上げる。

「はっ!」

 バチバチと剣がうなりをあげて振り下ろされる。チャンピオンの足に剣が突き刺さり、電撃が体を走っていく。電撃が頭まで駆けのぼると同時にブレイドがチャンピオンの首へと剣を走らせる。

「グルルル」

「キャン!」

 迂闊に近寄りすぎたブレイドが捕まる。剣が首に食い込んでいるけど絶命には至らなかった。だけど、それで十分だ。

「君の相手は二人ってことを忘れてるね」

「!?」

 声をあげると共にブレイドとは反対の方向からチャンピオンの首を切りつける。電撃が走りブレイドを手放すチャンピオン。そのまま後ろに倒れこんで消えていく。どうやら、無事に討伐できたようだ。

「ブレイド怪我しちゃったか」

「キャン……」

 掴まれた体を舐めているブレイド。内出血をしているみたいだ。治してあげよう。

「よくやったなエルク、ブレイド」

 光魔法を手に持ってブレイドを撫でてあげているとお父さんが僕とブレイドの頭を撫でてくれた。

「武器なしとはいえチャンピオンを二人で倒すのは凄いことだぞ」

「えへへ」

「キャン」

 褒めてくれるお父さんに僕とブレイドが顔を見合って笑う。

「さて、あとはあのコアを手に入れればおしまいだ。名残惜しいがしょうがないよな」

 オークチャンピオンの戦利品を拾いながらお父さんが玉座の間の奥へと視線を向ける。
 玉座の後ろに扉が見える。その扉の向こうにコアがあるのかな?

「コアって?」

「ああ、ダンジョンコアだ。それを切り離せばダンジョンは消えて俺達は外へと投げ出される。お前が魔法陣でダンジョンから出たようにな」

 ダンジョンの心臓ってことかな。そうか、このダンジョンともお別れなんだな~。

「……ダンジョンコアはエルクのだな」

「え?」

「ダンジョンコアには不思議な力があると言われてる。すべてのダンジョンコアにあるわけじゃないから手に入るか分からないがな」

「不思議な力?」

 普通に生まれて努力で強くなってきた僕。やっとチートを手に入れられる? 赤ん坊が知識を持っているだけでだいぶチートだけどね。

「ダンジョンコアは別の空間を作り出す。制御できればこことは別の空間を作り出すことが出来るかもしれない。冒険者の中にはそういった空間を作り出して富を得たものもいる。エルクの魔力制御の才能があればあるいは……」

 なるほど、ダンジョンコアがこのダンジョンの空間を作ってるわけだもんな。ってことは別の空間を作ることが出来ても可笑しくない。
 それを人為的に作り出せる、やっている人がいるから出来るかも。

「じゃあ、行くぞ」

「うん!」

 玉座の間の奥の扉に触れる。自動で開いていく扉。扉の先には台座が光り輝き、光に目が慣れると台座の上の赤い球が見えてきた。

「これがコア?」

「ああ」

 台座によじ登って赤い球に触れる。何の抵抗もなく僕の手の中に入る赤い球。台座から離れると一瞬で景色が変わっていく。

「よし。帰るか」

 お父さんはそういって村へと歩いていく。僕はダンジョンコアを眺めてブレイドの背に乗った。
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