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第一章 新しい世界
第13話 王国騎士マリアン
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◇
エルクとブレイドが去った後。
「なあ? ここで間違いないよな?」
「あ、ああ。そのはずなんだが」
一日もしない間にある部隊がゴブリンの拠点後にやってきていた。真っ黒に焦げた大地を足蹴にして声をもらす。
「ゴブリンが拠点を築いているという依頼が来たんだが……」
「ないね……」
男女の部隊はそういって周りを見回す。
「ま、まあ。拠点がなくなったというのを報告しても依頼は達成になる……」
「そうだけどよ~。魔物をどれだけ倒したって結構重要だろ? ジェネラルゴブリンがいるって言ってたから楽しみにしてたのによ」
リーダーらしき男が呟くと仲間が残念そうに呟く。
どうやら、エルクはこの部隊の仕事を取ってしまったようだ。
「はぁ~。冒険者っていうのは魔物の戦利品を持って帰らなかったら舐められるって言うのによ」
「ははは、舐められはしないさ。ただ、酒場での武勇伝がなくなる。でも、周りに被害がなくてよかったよ。村からの被害報告はあがっていなかったから」
「そういえば、私達が来たレネゲードから騎士がこの街道に向かっていたらしいよ。確か、この先の村に塔のダンジョンが出来たって知らせが来たらしくて」
「なるほど……それなら報告を済ませて行ってみるか?」
冒険者と言われる彼らは話し合いの結果、一度町に帰るようだ。
「黒焦げってことは魔法を使ったんだろう。魔物同士の争いだった場合は危ないから採取しておくか」
「魔力が残ってれば人か魔物かわかるんだっけ?」
「ああ、冒険者ギルドで調べられるらしい。場合によっては報酬も出るしな」
報告の為、地面の砂を少し採取して帰路にたつ冒険者達。
「下手に戦うことがなくてよかった。しかし、変な土地だな。魔物が妙にいない」
リーダーがそう呟いて彼らは見えなくなる。
エルク達がゴブリン達を倒しまわってしまったため、このあたりの魔物が激減してしまったのだった。
◇
『おはようございます』
「お、おはよう……」
マリアンさんの部下がそういって村の見張りに立つ。相も変わらすお父さんに敬意を払っているのが伺える。数日でここまで教育するなんてマリアンさんは凄いな。
「戻りました」
マリアンさんの噂をしていると石塔からマリアンさん達が戻ってきた。数人怪我をしているけど、彼女は無傷。
「情報通り、10階のロックバイソンを倒して帰還しました。しかし、改めて驚かされました」
お父さんが彼女を迎え入れて家に入る。椅子に座ってもらって報告をしてもらった。
マリアンさんは満面の笑みで僕を見つめてきた。
「エルク君はあんな魔物を倒してしまう。私の部下でも手を焼く相手だというのに」
「ロックバイソンは剣での相手は厳しいですからね」
褒めてくれるマリアンさんにお父さんが同意して話す。僕は恥ずかしくなって頭をポリポリ。
「ブレイドもいてくれたから何とか勝てたんです」
「あの子にも驚きました。子供とは言えCランクの魔物だからね。それを従えてしまうなんて、流石はディア様のお子さん。末恐ろしい」
僕の言葉を聞いて窓から中を覗いてくるブレイドを見つめるマリアンさん。末恐ろしい頂きました。3歳で魔物を倒してる時点でおかしいもんな。
「攻略は二日後に再開します。この上の階層になるとディア様のお力を借りることになると思うのでその時はお願いいたします」
「わかった」
「恥ずかしいことですが、私の部下では力不足なようです。では怪我人の処置や準備がありますので」
マリアンさんは会釈をして帰っていく。
「あの塔の高さを考えると50階は固いか?」
お父さんが顎に手を添えながら呟く。ってことはロックバイソンよりも強い魔物が出るようになるってことだよね。ゲーム的に考えると。
「俺でも正直厳しいと思うんだがな~。冒険者に依頼をして人海戦術で攻略を急がせるほかなさそうだぞ」
「冒険者!?」
お父さんが困った顔で声をあげる。冒険者というワードを聞いて僕はワクワクが止まらない。
「冒険者がいるの?」
「あ、ああ、いるぞ」
「わ~……」
異世界なんだから絶対にいると思っていたけど、まったく話にも出てこなかった存在冒険者。本には勇者とか魔王は出てきたけど、冒険者は紹介されてなかったんだよな。
「なんだエルク? 冒険者に興味があるのか?」
「うん! いつか僕も冒険者になる!」
「ははは、冒険者は誰にでもなれる職業だぞ。そんなものよりも騎士なんてどうだ? マリアンを従える聖騎士とか」
「え~。そんなお堅い職業やだよ~」
騎士なんか貴族のいう通りにとか、王族の子供にこき使われるのがオチでしょ。そんなものよりも冒険者になって自由に旅をしたい。折角異世界に来たんだから世界中を周りたいのだ。
「お堅いか、確かにそうだな。さて、マリアンの帰還を祝う準備をするか」
「そうね」
残念そうな表情をしてお父さんが立ち上がる。お母さんと共に豪華な料理を作っていって村中でお祝いをした。
マリアンさん達も大喜び。特に彼女の部下達は泣いて喜んでいた。彼女は帰ってきて早々に訓練を始めてしまったからね。そりゃ泣きたくもなる。
怪我をしている人ですら自重訓練を強要されててブラックな職場が作られていたからな~。
僕でも倒せた相手に傷を負わされていたことが原因だったみたいだから、元をたどれば僕のせいか。なんだかすいませんって感じだな。
この日はみんな笑顔でお祭り騒ぎ。夜も賑わいが見える光景だった。
エルクとブレイドが去った後。
「なあ? ここで間違いないよな?」
「あ、ああ。そのはずなんだが」
一日もしない間にある部隊がゴブリンの拠点後にやってきていた。真っ黒に焦げた大地を足蹴にして声をもらす。
「ゴブリンが拠点を築いているという依頼が来たんだが……」
「ないね……」
男女の部隊はそういって周りを見回す。
「ま、まあ。拠点がなくなったというのを報告しても依頼は達成になる……」
「そうだけどよ~。魔物をどれだけ倒したって結構重要だろ? ジェネラルゴブリンがいるって言ってたから楽しみにしてたのによ」
リーダーらしき男が呟くと仲間が残念そうに呟く。
どうやら、エルクはこの部隊の仕事を取ってしまったようだ。
「はぁ~。冒険者っていうのは魔物の戦利品を持って帰らなかったら舐められるって言うのによ」
「ははは、舐められはしないさ。ただ、酒場での武勇伝がなくなる。でも、周りに被害がなくてよかったよ。村からの被害報告はあがっていなかったから」
「そういえば、私達が来たレネゲードから騎士がこの街道に向かっていたらしいよ。確か、この先の村に塔のダンジョンが出来たって知らせが来たらしくて」
「なるほど……それなら報告を済ませて行ってみるか?」
冒険者と言われる彼らは話し合いの結果、一度町に帰るようだ。
「黒焦げってことは魔法を使ったんだろう。魔物同士の争いだった場合は危ないから採取しておくか」
「魔力が残ってれば人か魔物かわかるんだっけ?」
「ああ、冒険者ギルドで調べられるらしい。場合によっては報酬も出るしな」
報告の為、地面の砂を少し採取して帰路にたつ冒険者達。
「下手に戦うことがなくてよかった。しかし、変な土地だな。魔物が妙にいない」
リーダーがそう呟いて彼らは見えなくなる。
エルク達がゴブリン達を倒しまわってしまったため、このあたりの魔物が激減してしまったのだった。
◇
『おはようございます』
「お、おはよう……」
マリアンさんの部下がそういって村の見張りに立つ。相も変わらすお父さんに敬意を払っているのが伺える。数日でここまで教育するなんてマリアンさんは凄いな。
「戻りました」
マリアンさんの噂をしていると石塔からマリアンさん達が戻ってきた。数人怪我をしているけど、彼女は無傷。
「情報通り、10階のロックバイソンを倒して帰還しました。しかし、改めて驚かされました」
お父さんが彼女を迎え入れて家に入る。椅子に座ってもらって報告をしてもらった。
マリアンさんは満面の笑みで僕を見つめてきた。
「エルク君はあんな魔物を倒してしまう。私の部下でも手を焼く相手だというのに」
「ロックバイソンは剣での相手は厳しいですからね」
褒めてくれるマリアンさんにお父さんが同意して話す。僕は恥ずかしくなって頭をポリポリ。
「ブレイドもいてくれたから何とか勝てたんです」
「あの子にも驚きました。子供とは言えCランクの魔物だからね。それを従えてしまうなんて、流石はディア様のお子さん。末恐ろしい」
僕の言葉を聞いて窓から中を覗いてくるブレイドを見つめるマリアンさん。末恐ろしい頂きました。3歳で魔物を倒してる時点でおかしいもんな。
「攻略は二日後に再開します。この上の階層になるとディア様のお力を借りることになると思うのでその時はお願いいたします」
「わかった」
「恥ずかしいことですが、私の部下では力不足なようです。では怪我人の処置や準備がありますので」
マリアンさんは会釈をして帰っていく。
「あの塔の高さを考えると50階は固いか?」
お父さんが顎に手を添えながら呟く。ってことはロックバイソンよりも強い魔物が出るようになるってことだよね。ゲーム的に考えると。
「俺でも正直厳しいと思うんだがな~。冒険者に依頼をして人海戦術で攻略を急がせるほかなさそうだぞ」
「冒険者!?」
お父さんが困った顔で声をあげる。冒険者というワードを聞いて僕はワクワクが止まらない。
「冒険者がいるの?」
「あ、ああ、いるぞ」
「わ~……」
異世界なんだから絶対にいると思っていたけど、まったく話にも出てこなかった存在冒険者。本には勇者とか魔王は出てきたけど、冒険者は紹介されてなかったんだよな。
「なんだエルク? 冒険者に興味があるのか?」
「うん! いつか僕も冒険者になる!」
「ははは、冒険者は誰にでもなれる職業だぞ。そんなものよりも騎士なんてどうだ? マリアンを従える聖騎士とか」
「え~。そんなお堅い職業やだよ~」
騎士なんか貴族のいう通りにとか、王族の子供にこき使われるのがオチでしょ。そんなものよりも冒険者になって自由に旅をしたい。折角異世界に来たんだから世界中を周りたいのだ。
「お堅いか、確かにそうだな。さて、マリアンの帰還を祝う準備をするか」
「そうね」
残念そうな表情をしてお父さんが立ち上がる。お母さんと共に豪華な料理を作っていって村中でお祝いをした。
マリアンさん達も大喜び。特に彼女の部下達は泣いて喜んでいた。彼女は帰ってきて早々に訓練を始めてしまったからね。そりゃ泣きたくもなる。
怪我をしている人ですら自重訓練を強要されててブラックな職場が作られていたからな~。
僕でも倒せた相手に傷を負わされていたことが原因だったみたいだから、元をたどれば僕のせいか。なんだかすいませんって感じだな。
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