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第二章 支配地
第50話 ステファン
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◇
「ふぉ~、美しい~!」
私はステファン。レッドがオルコッドで情報を寄こしてから長い時間が経った。
その情報をもとに生産者を鍛えていたら鍛冶にはまってしまう私。自分で作った白銀の剣を見つめて声をあげてしまう程だ。あぁ、美しい。
「私にピッタリの剣だ。まだまだDランクの白銀の剣だが、家宝にしよう」
鞘も作り方を教えてもらい作った。綺麗に装飾された鞘、こっちも美しい! はぁ、騎士をやめて鍛冶師になってしまおうか。
「ステファン団長! 大変です!」
「む! 何事だ!?」
鍛冶場にわざわざ部下の騎士がやってきて声をあげる。手紙を差し出してきたので見てみると驚きの内容が書かれていた。
「教会が騎士を指揮する?」
思わず首を傾げてしまう。教会がなんで我々騎士を? これはどういうことだ?
「レッド様もいなくなり、ステファン様も鍛冶場に入り浸り。王はさじを投げたのでは……」
「な!? そんなバカな話があるか! 王に直に聞きに行くぞ!」
部下の声に声を荒らげて城へと歩き出す。おっと、せっかく作った剣を忘れる所だった。しっかりと持って。
私が歩くと次々と部下の騎士達が背後に集まってくる。みな、私の作った剣を背中に背負っているな。背負われている姿も美しい。
「王! セントラル様!」
「ん? ステファン、どうした?」
玉座の間に着き、玉座に座る王に声をあげる。跪いて首を垂れると問いかける。
「騎士団の指揮権を教会に渡すというのは本当ですか?」
「うむ、本当だ」
「な、なぜです!」
王の返答に顔をあげると王は呆れた表情になり、腰に差していた剣を引き抜いて切っ先を見つめた。
「教会の勇者が負けて帰ってきたらしくてな。騎士団を勇者に同行させたいらしいのだ」
「勇者?」
王の言葉に首を傾げる。勇者が現れたという話は聞いていない。教会は勇者を隠していたのか? しかし、勇者を負かすような相手がいるとは、こちらも聞いたことがないな。
勇者と同行して復讐をするというのか? そんなことに騎士団を使うなど言語道断。承服しかねる。
「騎士団は王と町を守る為のもの。勇者と共に復讐をするためのものではありません! どうかお考え直しください」
「うむ、お前ならばそう言うと思っていた。しかし、決定は覆らないぞ」
「な、なぜです!」
私の懇願も虚しく、王は抜き身のままの剣を縦に回転させながら近づいてきて答えた。私の問いかけに王は笑みを浮かべる。
「私の決定だからだ」
回転させた剣を私の眼前に振り下ろし床に突き刺す王。何が面白いのか、満面の笑みで剣を引き抜き再度剣を回転させる。
「王、どうかお考え直しください。教会は騎士団を使い町を襲うかもしれません。王に反旗を翻ることも考えられます。どうか、どうか!」
「ん? その時はお前が止めればいいではないか? 教会が裏切らないように監視すればよい」
「う……た、確かにそうですが」
王の指摘に返す言葉が無くなってしまう。裏切りの兆候があるならば、私が止めてしまえばいい。言われてみればそうだ。
「では、命令は絶対に従わなくてもよいということで?」
「そういうことだ。教会がきな臭いのは知っているからな」
流石は私の王。聡明であらせられる。この剣と同じで美しい!
「時にステファン。鍛冶に精を出しているらしいな」
「あ、はい! 精進しております」
「この剣もお前が作ったらしいな。実にいい剣だ」
振り回していた剣も私のものだったか。どおりで美しいわけだ。
「生産者も戦闘職のレベルをあげなくてはいけないとは。大変なことだ。この情報を得た騎士団には感謝しているぞ」
「はっ! お褒めにあずかり有難うございます」
「うむ、では教会へと向かうがいい」
褒めてくださる王に首を垂れる。これもレッドが情報を得てくれたおかげだ。彼女は戦闘も諜報員としても優秀。頼りになる美しき女性だな。
「団長、本当に教会の元で働くのですか?」
玉座の間を後にして部下が疑問の声をあげる。
「聞いていただろ? 王も教会に疑問を持っているのだ。我々に諜報活動をせよと暗に命令しているのだよ。流石はセントラル様だ」
従う王が素晴らしいとやりがいがあるな。
「では第二騎士団を教会へ向かわせろ」
「は? 騎士団全員では?」
「全員を向かわせてしまったら陰で動けないだろ。諜報とは隠れてするものだ」
部下の疑問に仕方なく答える。教会にすべての騎士を向かわせてしまったら教会の反乱を裁くことが出来ない。私自ら言ってしまっても同じこと。ここはレッドの部下達に任せるべきだろう。
「教会をしっかりと監視するようにと伝えておくのだぞ。いいな」
「あ、はい」
よし! これで鍛冶に精を出せる。早くCランクの武具を作りたい。今でもこの美しさ、Cランクの武具は更に美しくなるのだろう。楽しみだ。
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「ふぉ~、美しい~!」
私はステファン。レッドがオルコッドで情報を寄こしてから長い時間が経った。
その情報をもとに生産者を鍛えていたら鍛冶にはまってしまう私。自分で作った白銀の剣を見つめて声をあげてしまう程だ。あぁ、美しい。
「私にピッタリの剣だ。まだまだDランクの白銀の剣だが、家宝にしよう」
鞘も作り方を教えてもらい作った。綺麗に装飾された鞘、こっちも美しい! はぁ、騎士をやめて鍛冶師になってしまおうか。
「ステファン団長! 大変です!」
「む! 何事だ!?」
鍛冶場にわざわざ部下の騎士がやってきて声をあげる。手紙を差し出してきたので見てみると驚きの内容が書かれていた。
「教会が騎士を指揮する?」
思わず首を傾げてしまう。教会がなんで我々騎士を? これはどういうことだ?
「レッド様もいなくなり、ステファン様も鍛冶場に入り浸り。王はさじを投げたのでは……」
「な!? そんなバカな話があるか! 王に直に聞きに行くぞ!」
部下の声に声を荒らげて城へと歩き出す。おっと、せっかく作った剣を忘れる所だった。しっかりと持って。
私が歩くと次々と部下の騎士達が背後に集まってくる。みな、私の作った剣を背中に背負っているな。背負われている姿も美しい。
「王! セントラル様!」
「ん? ステファン、どうした?」
玉座の間に着き、玉座に座る王に声をあげる。跪いて首を垂れると問いかける。
「騎士団の指揮権を教会に渡すというのは本当ですか?」
「うむ、本当だ」
「な、なぜです!」
王の返答に顔をあげると王は呆れた表情になり、腰に差していた剣を引き抜いて切っ先を見つめた。
「教会の勇者が負けて帰ってきたらしくてな。騎士団を勇者に同行させたいらしいのだ」
「勇者?」
王の言葉に首を傾げる。勇者が現れたという話は聞いていない。教会は勇者を隠していたのか? しかし、勇者を負かすような相手がいるとは、こちらも聞いたことがないな。
勇者と同行して復讐をするというのか? そんなことに騎士団を使うなど言語道断。承服しかねる。
「騎士団は王と町を守る為のもの。勇者と共に復讐をするためのものではありません! どうかお考え直しください」
「うむ、お前ならばそう言うと思っていた。しかし、決定は覆らないぞ」
「な、なぜです!」
私の懇願も虚しく、王は抜き身のままの剣を縦に回転させながら近づいてきて答えた。私の問いかけに王は笑みを浮かべる。
「私の決定だからだ」
回転させた剣を私の眼前に振り下ろし床に突き刺す王。何が面白いのか、満面の笑みで剣を引き抜き再度剣を回転させる。
「王、どうかお考え直しください。教会は騎士団を使い町を襲うかもしれません。王に反旗を翻ることも考えられます。どうか、どうか!」
「ん? その時はお前が止めればいいではないか? 教会が裏切らないように監視すればよい」
「う……た、確かにそうですが」
王の指摘に返す言葉が無くなってしまう。裏切りの兆候があるならば、私が止めてしまえばいい。言われてみればそうだ。
「では、命令は絶対に従わなくてもよいということで?」
「そういうことだ。教会がきな臭いのは知っているからな」
流石は私の王。聡明であらせられる。この剣と同じで美しい!
「時にステファン。鍛冶に精を出しているらしいな」
「あ、はい! 精進しております」
「この剣もお前が作ったらしいな。実にいい剣だ」
振り回していた剣も私のものだったか。どおりで美しいわけだ。
「生産者も戦闘職のレベルをあげなくてはいけないとは。大変なことだ。この情報を得た騎士団には感謝しているぞ」
「はっ! お褒めにあずかり有難うございます」
「うむ、では教会へと向かうがいい」
褒めてくださる王に首を垂れる。これもレッドが情報を得てくれたおかげだ。彼女は戦闘も諜報員としても優秀。頼りになる美しき女性だな。
「団長、本当に教会の元で働くのですか?」
玉座の間を後にして部下が疑問の声をあげる。
「聞いていただろ? 王も教会に疑問を持っているのだ。我々に諜報活動をせよと暗に命令しているのだよ。流石はセントラル様だ」
従う王が素晴らしいとやりがいがあるな。
「では第二騎士団を教会へ向かわせろ」
「は? 騎士団全員では?」
「全員を向かわせてしまったら陰で動けないだろ。諜報とは隠れてするものだ」
部下の疑問に仕方なく答える。教会にすべての騎士を向かわせてしまったら教会の反乱を裁くことが出来ない。私自ら言ってしまっても同じこと。ここはレッドの部下達に任せるべきだろう。
「教会をしっかりと監視するようにと伝えておくのだぞ。いいな」
「あ、はい」
よし! これで鍛冶に精を出せる。早くCランクの武具を作りたい。今でもこの美しさ、Cランクの武具は更に美しくなるのだろう。楽しみだ。
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