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第二章 支配地
第49話 安心
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「ランカ! 生き返って!」
「!?」
意識が戻ると声が聞こえて口が塞がれる。なぜかレッドがキスしてきてる。僕は驚いて目を見開く。
「レッドさん! 師匠が蘇りました!」
「き、奇跡じゃ!」
アスノ君とルドマンが大喜びで抱き着いてくる。そ、そんなことよりもレッドの唇が……。
「お兄ちゃんよかった~!」
「ランカ様! 息をしていなくて心配していました」
ノンとアンナさんが声をあげる。彼女たちだけじゃない。みんな僕の心配をしてくれていたみたいだ。凄く嬉しいんだけど。レッドの事が頭から離れない。なんでキスを?
「人工呼吸というものをさせていただきました。とても美味しくいただきましたランカ様」
「人工呼吸? セリスが?」
セリスの声に首を傾げる。ってことは彼女もキスをしてきたってことなのか!?
でも、なんでキスをされていたのかは分かった。息をしてなかったから人工呼吸を知っていたセリスがやってレッドもやってくれたんだ。
「レッドは?」
「ふふ、あの小娘は恥ずかしそうに城壁の外に行きましたよ。うぶな子ですね」
レッドがいなくなっていることに気が付いて声をあげるとセリスが教えてくれた。僕はすぐに追いかける。
「レッド!」
「あ、ランカ」
涙を拭っていたレッド。僕の声で気が付いて真っ赤な顔で抱き着いてくる。
「ランカ良かった。また私は大切なものを無くすところだった」
「レッド……」
抱きしめる力を強めながら呟くレッド。そうか、彼女は僕を弟として見てる。”また”彼女を悲しませてしまう所だったってわけか。そりゃ必死になって人工呼吸するよな~。
「怪我をしてるわけでもなかったからエリクサーも無駄になっちゃうと思って必死で。セリスが人工呼吸っていうのを聞いて」
「な、なるほど」
レッドが必死に説明してくれる。顔がどんどん赤くなって言って耳まで真っ赤っか。なんか可愛いな。
「ありがとうレッド」
「……ううん。役に立てなくてごめんね」
「いや、レッドは役にたってるよ」
お礼を言うと俯くレッド。彼女が役に立ってなかったら僕だって役に立ってない。
「とにかく、みんなの所に戻ろう」
「うん」
レッドの手を取って城壁の中へ。
「敵がまさか味方にいたとはね」
「教会が敵か」
ドーシャさんとワッカさんの声に振り向くとそこには縛られたアビゲールが。
「敵じゃないですよ! ドーシャさん、ワッカさん。早く縄を解いてあげてください」
「はぁ~? 何言ってんだよランカ。あんたやあの嬢ちゃんがやられただろ?」
嬢ちゃん? ああ、セリスのことか。彼女の事を話していないからただやられただけだと思ってるんだな。
「ってレッドとお手て繋いじゃって妬けるね~。ランカ、私の手も握ってほしいな~」
「「あっ!?」」
ドーシャさんに揶揄われて手を離す。ついつないだままにしてしまった。変に思われてしまったら嫌われちゃう、気をつけないとな。
「僕の中の天使が悪さをしてしまったみたいですね。すみませんでした」
「アビゲール、君のせいじゃないよ。それよりも孤児院の話をしよ」
「え?」
アビゲールを救う話を進める。彼女の守りたいものをすべてここに連れてくる。
セントラルを敵に回しても勝てるように準備しないといけないな。
「僕はここに町を作ろうと思ってるんだ」
「ええ!?」
驚くアビゲール。彼女だけじゃなくてみんな驚いてるな。
「孤児院を街の中に作ってそこに住んでもらおうと思うんだ」
「で、でも家なんてどこにも」
「だからこれから作るんだ。今の孤児院じゃ安心して子供たちを守れないでしょ?」
僕の声に頷いて答えるアビゲール。納得したように頷いているけど、不思議そうに僕を見つめてくる。
「何でも知ってるんですねランカさんは」
アビゲールは口角をあげてそういうと目隠しを取る。虹色に輝く瞳が綺麗でつい見惚れてしまう。決意めいた視線で見つめてくる。
「すみません。私の感じたものはすべて教会の者達に知られてしまいます。私はあなたの仲間にはなれません」
「……知ってるよ。でも必ず救ってあげるからね」
「ほんとに不思議な人ですね」
話ながら目隠しを切り破るアビゲール。あの目隠しは魔道具としての性能も有していたみたいだ。
一瞬で彼女の姿が消える。これは町やホームに飛べる魔道具だな。確か名前は【帰紙(キシ)】だ。帰紙を目隠しに使っていたのか、これはゲームの設定でも知らなかったな。
「あの子は大丈夫なの?」
「今のところは大丈夫だよ。それよりも準備が整ったら王都に行くよ。レッド、手伝ってくれる?」
「もちろん、何でも言って!」
心配するレッドにお願いすると元気に答えてくれる。何でもなんていわれるとお願いしたくなってしまうけど、そこは無言で通したぞ。レッドは僕に特別な感情を持っているけど、それは弟に似てるっていう特別な感情だ。それに胡坐をかいて甘えちゃだめだ。
「ステファンに知らせても大丈夫かしら?」
「ああ、第一騎士団長の。手伝ってもらえるとありがたいな」
ステファンは王都騎士団の団長の名だな。人柄もよくて平民にも優しいいい人のはずだ。あの人が仲間になってくれたらありがたいな。
「武具調査の結果も知らせてあるから、今頃王都でも生産者のレベル上げをしているんでしょうね」
レッドが感慨深く呟く。そうか、彼が王都で指揮をとってくれてるのか。それなら安心だな。
「!?」
意識が戻ると声が聞こえて口が塞がれる。なぜかレッドがキスしてきてる。僕は驚いて目を見開く。
「レッドさん! 師匠が蘇りました!」
「き、奇跡じゃ!」
アスノ君とルドマンが大喜びで抱き着いてくる。そ、そんなことよりもレッドの唇が……。
「お兄ちゃんよかった~!」
「ランカ様! 息をしていなくて心配していました」
ノンとアンナさんが声をあげる。彼女たちだけじゃない。みんな僕の心配をしてくれていたみたいだ。凄く嬉しいんだけど。レッドの事が頭から離れない。なんでキスを?
「人工呼吸というものをさせていただきました。とても美味しくいただきましたランカ様」
「人工呼吸? セリスが?」
セリスの声に首を傾げる。ってことは彼女もキスをしてきたってことなのか!?
でも、なんでキスをされていたのかは分かった。息をしてなかったから人工呼吸を知っていたセリスがやってレッドもやってくれたんだ。
「レッドは?」
「ふふ、あの小娘は恥ずかしそうに城壁の外に行きましたよ。うぶな子ですね」
レッドがいなくなっていることに気が付いて声をあげるとセリスが教えてくれた。僕はすぐに追いかける。
「レッド!」
「あ、ランカ」
涙を拭っていたレッド。僕の声で気が付いて真っ赤な顔で抱き着いてくる。
「ランカ良かった。また私は大切なものを無くすところだった」
「レッド……」
抱きしめる力を強めながら呟くレッド。そうか、彼女は僕を弟として見てる。”また”彼女を悲しませてしまう所だったってわけか。そりゃ必死になって人工呼吸するよな~。
「怪我をしてるわけでもなかったからエリクサーも無駄になっちゃうと思って必死で。セリスが人工呼吸っていうのを聞いて」
「な、なるほど」
レッドが必死に説明してくれる。顔がどんどん赤くなって言って耳まで真っ赤っか。なんか可愛いな。
「ありがとうレッド」
「……ううん。役に立てなくてごめんね」
「いや、レッドは役にたってるよ」
お礼を言うと俯くレッド。彼女が役に立ってなかったら僕だって役に立ってない。
「とにかく、みんなの所に戻ろう」
「うん」
レッドの手を取って城壁の中へ。
「敵がまさか味方にいたとはね」
「教会が敵か」
ドーシャさんとワッカさんの声に振り向くとそこには縛られたアビゲールが。
「敵じゃないですよ! ドーシャさん、ワッカさん。早く縄を解いてあげてください」
「はぁ~? 何言ってんだよランカ。あんたやあの嬢ちゃんがやられただろ?」
嬢ちゃん? ああ、セリスのことか。彼女の事を話していないからただやられただけだと思ってるんだな。
「ってレッドとお手て繋いじゃって妬けるね~。ランカ、私の手も握ってほしいな~」
「「あっ!?」」
ドーシャさんに揶揄われて手を離す。ついつないだままにしてしまった。変に思われてしまったら嫌われちゃう、気をつけないとな。
「僕の中の天使が悪さをしてしまったみたいですね。すみませんでした」
「アビゲール、君のせいじゃないよ。それよりも孤児院の話をしよ」
「え?」
アビゲールを救う話を進める。彼女の守りたいものをすべてここに連れてくる。
セントラルを敵に回しても勝てるように準備しないといけないな。
「僕はここに町を作ろうと思ってるんだ」
「ええ!?」
驚くアビゲール。彼女だけじゃなくてみんな驚いてるな。
「孤児院を街の中に作ってそこに住んでもらおうと思うんだ」
「で、でも家なんてどこにも」
「だからこれから作るんだ。今の孤児院じゃ安心して子供たちを守れないでしょ?」
僕の声に頷いて答えるアビゲール。納得したように頷いているけど、不思議そうに僕を見つめてくる。
「何でも知ってるんですねランカさんは」
アビゲールは口角をあげてそういうと目隠しを取る。虹色に輝く瞳が綺麗でつい見惚れてしまう。決意めいた視線で見つめてくる。
「すみません。私の感じたものはすべて教会の者達に知られてしまいます。私はあなたの仲間にはなれません」
「……知ってるよ。でも必ず救ってあげるからね」
「ほんとに不思議な人ですね」
話ながら目隠しを切り破るアビゲール。あの目隠しは魔道具としての性能も有していたみたいだ。
一瞬で彼女の姿が消える。これは町やホームに飛べる魔道具だな。確か名前は【帰紙(キシ)】だ。帰紙を目隠しに使っていたのか、これはゲームの設定でも知らなかったな。
「あの子は大丈夫なの?」
「今のところは大丈夫だよ。それよりも準備が整ったら王都に行くよ。レッド、手伝ってくれる?」
「もちろん、何でも言って!」
心配するレッドにお願いすると元気に答えてくれる。何でもなんていわれるとお願いしたくなってしまうけど、そこは無言で通したぞ。レッドは僕に特別な感情を持っているけど、それは弟に似てるっていう特別な感情だ。それに胡坐をかいて甘えちゃだめだ。
「ステファンに知らせても大丈夫かしら?」
「ああ、第一騎士団長の。手伝ってもらえるとありがたいな」
ステファンは王都騎士団の団長の名だな。人柄もよくて平民にも優しいいい人のはずだ。あの人が仲間になってくれたらありがたいな。
「武具調査の結果も知らせてあるから、今頃王都でも生産者のレベル上げをしているんでしょうね」
レッドが感慨深く呟く。そうか、彼が王都で指揮をとってくれてるのか。それなら安心だな。
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