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第一章 ゲームの世界へ

第27話 信頼

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「レッド……自分の部屋に戻ったら?」

「そうね」

 食事を終えてそれぞれの部屋に戻ったみんな。何故かレッドは僕の部屋に入ってくる。部屋に戻るように促してみるけど、返事はすれど出ていく気配はない。なんか怒ってる?

「何か私に言う事はない?」

「え!?」

 レッドはそういってベッドに座る。彼女はベッドを強くたたくと僕を見つめてくる。か、完全に怒ってるな。

「えっと、その~」

「男ならハッキリする!」

 しどろもどろになっているとレッドが大きな声をあげる。僕は驚きながらもベッドじゃなくて椅子に座って彼女を見つめた。

「あなたは何を知っているの?」

「……」

「ずっと不思議に思ってた。いつか私達にも話してくれると思ったけど、限界。ランカ、教えて」

 レッドが立ち上がると僕に顔を近づけてお願いしてくる。瞳が涙で妖艶に揺れる。ニールキャニオンの時は黙って僕のやることを見ていてくれたレッド。彼女は僕を優しく見守ってくれてたけど、限界が来ちゃったみたいだな。仕方ない彼女やアスノ君、ルドマンさんには教えてしまおう。僕が別の世界から来た人だって。

「分かったよレッド」

「ランカ」

 覚悟して俯きながら答える。レッドは嬉しそうに僕の手を取る。早速喋ろうと口を開くと部屋の扉がゆっくりと開く。

「ランカお兄ちゃん……」

 扉を開いたのはノンナちゃん。目を擦りながら入ってくる彼女は僕の膝に座ると目を閉じていく。唖然としてレッドと顔を見合う。

「ふふ、そうだよね。ランカは無害だよね」

 しばらくそのままでいるとレッドがクスクスと笑って呟く。彼女はベッドから立ち上がるとノンナちゃんを抱き上げてベッドに横にすると一緒に添い寝し始める。

「え~っと……。僕のベッド」

「ん、一緒に寝ればいいでしょ?」

「えぇ~」

 レッドみたいな美女とノンナちゃんみたいな少女と一緒のベッドに寝るってどんだけ僕はイケメンなんだよ。
 眠るノンナちゃんを優しく見つめるレッド。僕は椅子でねればいいかな。

「「ス~ス~……」」

「二人して寝ちゃって」

 椅子に突っ伏して寝たふりをしているとレッドとノンナちゃんの寝息が聞こえてくる。眠れるわけもなく二人の寝顔を見つめる。

「……綺麗だな」

 レッドの顔を見つめて思わず呟く。僕のつぶやきは虚空に消えると虚しさが胸に突き刺さる。たまらず窓の外の月を見上げる。

「お前はこの世界でも変わらないな」

 月に八つ当たりの言葉をぶつける。大きくため息をつくと思いふける。
 レッドは僕の可笑しさに気が付いた。アスノ君やルドマンさんもおかしいと思っているだろう。
 聞いてこないのは優しさから、いつまでもその優しさにかまけていたら迷惑になる。知ってもらっていた方が僕もやりやすくなる。前向きに考えてみんなには教えよう。

「みんな僕の事を知ったら仲間のままでいてくれるだろうか」

 話すと決めると不意に恐怖が頭をよぎる。別の世界から来た人、普通なら恐れられてしまうかもしれない。差別や迫害の対象になるかもしれない。怖いな……。
 みんなを信じているつもりだけど、自分に自信がない。僕はみんなの信頼を得られているんだろうか?

「眠れないの?」

「レッド!? 起きてたの?」

「……ううん。今起きちゃったの。あなたが動くから。ほら私って騎士団長でしょ? いついかなる時も警戒してるから癖でね」

 ノンナちゃんの横で体を起こすレッドが声をかけてくる。驚いて答えると顔を少し赤くさせて微笑む。誤魔化すような言葉だけど、流石騎士団長だな。彼女の強さを感じる。

「綺麗ね」

 ベッドから起き上がると僕の横に来て声をあげるレッド。月を見上げる彼女は絵になる。

「レッド、驚かずに聞いてほしい。実は」

「まって」

 別世界から来たと言おうと口を開くとレッドが人差し指で僕の口を抑える。

「ノンナちゃんのおかげで分かった。ランカは悪い人じゃないって言う事が。だから説明は要らない。知ろうとしてしまってごめんね」

 微笑みながらレッドが謝ってくれる。こんなに優しい彼女たちに知ってもらわなくていいんだろうか? 
 違うよ、分かってる。僕という存在を知ってもらって、それで初めて本当の仲間になるんだ。彼女たちなら分かってくれる。

「この一つ一つの光は別の星」

「え?」

「僕はその別の星から来た……たぶん」

 ゲームの世界、なんて説明しにくいから変なことを言う事になってしまった。レッドはポカンと開いた口が塞がらない様子。

「別の世界から僕は来たんだ。この世界を別の視点から見ていたんだよ。だから君やアスノ君、ルドマンさんを知ってた」

「別の世界……」
 
 恥ずかしくなって頭を掻きながら説明するとレッドは考え込んでしまう。しばらく考えると小さく息を吐いて僕を見つめる。

「ありがとうランカ、話してくれて」

「信じてくれるの?」

「ふふ、だって本当なんでしょ? 信じるよ、だって仲間でしょ?」

 彼女は楽しそうに微笑む。少し心配だったけど、思った通り彼女は僕を信じてくれて、仲間だと思ってくれてた。嬉しいな。

「このことはアスノもルドマンも知らないこと?」

「うん。明日言うつもり」

「そう……私が始めてなんだね」

 レッドは感慨深げに窓の外を見つめて呟く。更に小さく『嬉しい』と呟くと頬を赤くさせる。

「さて、別世界から来たランカ。改めてよろしくね。この世界を」

「あ~うん。精一杯頑張るよ」

 更に楽しく声をあげるレッド。この世界は不安定だ。僕の周りだけでも安定させていかないとな。まずはノンナちゃんだ。予定を大きく変えられてしまったけど、彼女を救うぞ。
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