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第一章 ゲームの世界へ

第23話 リトル

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「ランカ。次だ!」

「了解」

 ニールキャニオンで狩りを始めた。リトルの背に乗って次々とワイバーンを切り落としていく。リトルから飛び降りて、ワイバーンの背に乗って羽を傷つけると飛び降りる。リトルはそれを予想して降下地点に来てくれる。彼はかなり有能なワイバーンなんだな。

「付き合ってもらっちゃっていいの? 仲間たちと森に行かなくて?」

 ワイバーンを倒し終わって戦利品を回収しながらリトルに質問する。彼女は首を傾げて答える。

「ランカの人となりを見ないといけない。この地に生まれたものとして私が見なくてはいけないだろ?」

 彼女なりに僕の事を見てくれてるってことか。ありがたいな。

「時にランカ。支配と言うものをするとどんなことが出来るのだ? 具体的な例を言ってくれないか?」

「そういえば、具体的には言ってなかったね」

 再度首を傾げてくるリトルの質問にコホンと咳ばらいを一つして答える。

「【支配者】になると【フィールドクリスタル】にマナとお金を入れられるようになる。マナっていうのはMPの事ね」

「流石師匠! 何でも知ってる!」

 説明し始めるとアスノ君が相槌を打ってくれる。少し恥ずかしい気持ちになりながらも気持ちよくなってる僕。

「与えたマナとお金を消費して大地に起伏を与えたり、木を実らしたり、川を作ったりできるんだ」

「なに!? そ、それは凄いな!」

 説明を聞くとリトルが驚きながら瞳を輝かせる。瞳を輝かせながら僕に顔を寄せてくる彼女は何か欲しそうに見つめてくる。

「クリスタルのところにランカを案内すればすぐに出来るのか?」

「ん~、どうだろう。お金は少しはあるけど、マナは少ないしな~」

 リトルの質問に首を傾げる。支配者になりたいと思ったけど、正直お金もマナも全然ないよな~。

「ランカ、それだと支配者に利益がなさすぎない?」

「レッドの言う通りじゃな。森を作って木材にしてもそんなに稼ぎに繋がらない。損じゃ」

 レッドとルドマンさんが首を横に振って言ってくる。確かに消費するものが多すぎるように感じるよな。

「ちっちっち。甘いよ甘すぎるよ、レッドもルドマンさんもね。【支配者】は凄い得するんだ」

 人差し指を左右に振って二人に話す。二人は不思議そうにしてる。

「土地に起伏を与えるとどうなる?」

「ん? 山が出来たり、谷になったりか?」

「そう、普通じゃ見られない地層が見れるんだ」

「な!? そ、そういうことか!?」

 僕の質問にルドマンさんが答える。彼はすぐに気が付いたみたいだ。
 そう、地層をいじくれるという事は深い地層にある鉱石を見つけることが出来る。この世界はゲームの世界。アルステードオンラインの地層は深くなればなるほどいい鉱石が取れる。ミスリルも取れてアダマンタイトやオリハルコン、ヒヒイロカネとよりどりみどり。さらに、

「それだけじゃないんだ。森と言ったけど、どんな木でも植えられる。これがどれほどすごい事かわかる?」

「木? 果物の木とか?」

「うん。それもいいね。僕が一番勧めるのは【世界樹】だよ」

『世界樹!?』

 レッドが可愛らしい答えを言ってくる。それに人差し指を左右に振って世界樹、と言うとみんなが驚いて声をあげた。
 世界樹か~、懐かしいな~。たくさんの支配地に世界樹がなって、結界を作る光景。結界を作ることで支配者に有利な力をくれるんだよな。アスノ君のSTR3倍みたいな効果をね。

「世界樹は滅んだはずじゃ?」

「あ~、そういえば、そう言う話だっけ?」

 アルステードオンラインのストーリーでは確かにそんな話だったっけ。勇者である、僕たちプレイヤーが蘇らせて支配地に植えるんだよな。現実になったからそういうのはすっ飛ばしているから大丈夫だと思うけど、もしかしたら世界樹はお預けかもな。

「まあ、とりあえずはやってみないとわからないな」

 リトルを見つめて呟く。すべては彼女が案内してくれれば分かることだが。

「ん~~……、す、すまないランカ。まだ」

「はは、大丈夫だよリトル。出来ることを聞いたら更に怖くなるよね」

「……ランカはとても優しい。私達に不利な事はしないと分かっているんだが」

 リトルは悲しそうに俯く。群れを束ねている立場だからすぐには僕の事を信じられないだろう。一日も経っていないのに信用は得られないだろう。

「師匠は優しいのに」

「儂も強くしてもらっているしな。今日でレベル30じゃ。Bランクの装備が作れるはずじゃぞ!」

 アスノ君が指を咥えながら呟くとルドマンさんも同意して報告してくる。そうか、とうとうレベル30になったか。
 僕もレベル45、Aランクの装備が作れる。後少しでSランクの装備が……ルドマンさんほどの強い装備は作れないけど、ゲームの時に装備していた武具をまた着れる。わくわくが止まらないな。

「さて、狩りはもういいかな。夕日も落ちてきたし、野営の準備を」

 わくわくしながら野営の準備。ワイバーンの戦利品のお肉でBBQ。うん、美味しそうな匂いだ。

「師匠、こっちの骨は何に使うんですか?」

「ああ、それは武具に加工できるんだけど、ミスリルとかで間に合ってるからしまうだけかな」

 ワイバーンの肉を焼いているとアスノ君が他の戦利品を指さして声をあげた。答えると輝く瞳で見つめてくる。

「流石師匠! 骨で武具を作れるなんて! ぜひ! 見せてください! 勉強したいです」

「え……」

 アスノ君は骨の武具を見たことないみたいだ。ん~、彼の為にも見せた方がいいかな?

「じゃあ、武器にしようかな」

 ワイバーンの骨だけで作れる【ボーンサイス】を作って見よう。もちろん、賢者の眼鏡をしてっと。
 両手で扱う鎌、鉄とミスリルの間の武器だけど、僕が作るとAランクの装備になる。それなりに強い。

【Aランクボーンサイス+1】攻撃力200

「凄い! カッコイイ~!」

 アスノ君に手渡すと感嘆の声をあげて振って見せてくる。小さな体であんな大きな鎌を操る。彼もかなり強くなったな。なんだか誇らしい。

「……ランカ、私にもあれを作ってくれないか?」

「リトル? 欲しいの?」

 リトルが欲しそうに瞳を輝かせて話す。問いかけると大きく頷いた。

「じゃあ、物々交換だね」

「ん、覚悟は決まった。あの鎌がもらえるなら案内しよう」

 リトルは嬉しそうに尻尾を振ってこたえてくれる。すでに彼女に僕は信頼されてたのかもな。どうせあげるなら+をいっぱいつけちゃおう。

「す、すごい!」

「ほんとランカはシャレにならんものを作る」

 アスノ君とルドマンさんが呆れて声をあげる。それほど凄いボーンサイスが出来上がった。骨がたくさんあったから作れたんだけど、やり過ぎたかな。

【Aランクボーンサイス+50】攻撃力400

 リトルが嬉しそうにしているから大成功だな。
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