ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 ゲームの世界へ

第22話 魔物同士の争い

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「この地を荒らす不届きものが!」

 リトルが声を荒らげる空で戦闘されると何もできなくなっちゃうぞ。と普通ならばそうなるんだけど。

「みんなこれを」

「あ! 師匠の魔法付きのこん棒!」

 声をあげて【ホーリーボルト】の【スクロール】を付与したこん棒を手渡す。こん棒もたくさん手に入ったから魔法の杖みたいに使おうと思って作っておいたんだよな。無限に使えるわけじゃないのが玉に傷。魔法を使い切ると霧散して消えてしまう。有用なアイテムはこうやって制限されるんだよな。

「はは、私が魔法使ってる。面白い」

「儂もじゃ! 楽しいの~」

 レッドとルドマンさんが嬉しそうに声をあげてる。
 こん棒の先から聖なる矢が飛ぶ。リトルを襲うワイバーンに当たると地面に落ちてくる。羽を少しでも傷つけられれば落ちてくる。地面に落ちたらこっちのものだ。

「はっ! やっ!」

 ワイバーンに切りかかって両足を切りつける。前のめりに倒れるワイバーンの背中に乗り首を切りつけると動かなくなる。

「師匠の真似して!」

「落とすのは儂に任せろ」

 次々と落ちてくるワイバーン。アスノ君は僕と同じように落ちてきたワイバーンを仕留めていく。落ちてくるワイバーンが多いと思ったらリトルも頑張って戦っる。同じワイバーンでもリトルの方が強いみたいだな。

「ハァハァ。見たか! 私たちの方が強いんだぞ!」

 しばらく倒しているとワイバーン達が逃げていく。リトルが高らかに勝鬨をあげると僕らの前に降りてくる。よく見るとリトルの体はボロボロだ。

「ありがとうランカ。助かった」

「無茶するね。僕らがいなくてもやるつもりだったでしょ?」

「皆を守る為だ。その為なら私の命など、いつでも捨てる」

 傷だらけの体を舐めながらリーダーらしい声をあげる。リトルとなら仲間になってもいいかもしれないな。

「はい、人間が使ってるポーション。魔物にも効くかわからないけど、傷を治せる薬だよ」

「ん? ほ~、人間はこんなものを使ってるのか」

 ポーションを手渡す。初めて飲むポーションを楽しそうに飲み干すリトル。見ていて気持ちいい飲み方だな。

「う……うまい、こんなに美味しいものがあるとは」

「え? そんなに?」

 中級ポーションに感動の声をあげるリトル。ポーションの味は栄養飲料のような薬臭い味だ。僕は好きだけど、人を選ぶ味だよな。

「これを沢山くれないか? 皆もこれを飲めば生きていける」

「ええ!? 食料にするってこと?」

「ああ、私達は水だけでも生きていけるからな」

 元々草食な食生活でも生きていけるようなことを言っていたから可能なのか。思ってみればマナで出来てる魔物なわけだからマナを取り込めれば生きていけるのか。

「数に限りがあるからな~。まあ作ればいいんだけど」

「そうか……。人間は取引というのはするのだろ? 何か私達であげられるものがあればこれと交換してくれないか?」

 残念そうに俯くリトルだったけど、すぐに頭をあげて提案してくる。薬草を持ってきてくれれば無限に作れるわけだけど、支配者の話をもう少し聞きたいな。

「ポーションは薬草で作れるんだ。リトルの仲間が逃げた森にも薬草はなってるはず」

「おお! ではそれを」

「あと支配者についても聞きたい。この峡谷の支配者はだれ?」

 僕の言葉に喜んで答えるリトル。続けて聞くと首を傾げる。

「峡谷の支配者は今はいない。誰も支配していないからな」

「ええ!? それなら僕を【フィールドクリスタル】の元に案内して。それで住みよい大地にするよ」

 リトルの言葉に嬉しさが込みあがる。ゲームの時にはいくつかの大地を支配していた。【フィールドクリスタル】の取り合いも横行していて、守るのも大変だった。ゲームが現実となったこの世界なら僕だけが手に入れられるかも。

「大地を変えられるという事か? それは凄いなランカ。だが、その約束を本当に守ってくれるのか?」

 不安な表情のリトル。そうだよな、会ったばかりの人を信じられるはずないよな。

「はは、ごめんね。無理だよね。もう少し僕らと一緒に過ごして決めてくれればいいよ」

「すまないランカ。傷ついた私を助けてくれたのに……」

 群れの安全を考えたらそんな凄い力を今日あった人に使わせるのは怖いよな。仕方ない事だ。

「リトル君! 師匠はすっごくすっごくいい人なんだ! ちゃんと見ててよ!」

「あ、ああ……」

 アスノ君がリトルの足を蹴って声をあげる。戸惑うリトルは何だか可愛らしい。そして僕は恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じて両手で顔を隠してしまうよ。

「ランカは雌なのか? つがいはアスノか?」

「「はぁ?」」

 リトルのまさかの声にアスノ君と一緒に変な声が上げた。つがいって夫婦ってことだよな。なんでそれで僕とアスノ君? ってリトルも僕を女だと思っているのか! 失礼な!

「ふふ、ランカは男の子だよリトル。それと男の子が女の子と間違えられたりするのは傷つくからわからなかったら聞かない方がいいわよ。それも友達を増やすコツ」

「む? そうなのか。すまないなランカ。人の雄雌はよくわからなくてな」

 レッドが楽しそうに笑いながら説明する。リトルは分かってくれたみたいで謝ってくれる。

「ではつがいはレッドか? ランカはいい雄、羨ましい事だ」

「「ええ!?」」

 再度リトルが嬉しそうに変なことを話す。レッドと一緒に顔を見合って変な声をあげてしまう。羨ましいってまさか、君は……。

「私に釣り合う雄がいなくてな。レッドが羨ましい」

「……ってことはリトルは雌ということか?」

「む……確かに性別を間違えられたり、分からなかったりするのは傷つくものだな。反省しよう」

 ルドマンさんの声にリトルが残念そうに俯く。分かってくれたようで嬉しいけれど、僕とアスノ君とレッドが傷を負っちゃったよ。ってなんでアスノ君は顔を隠しているんだ?

「僕と師匠がつがい……うへへ」

 ……アスノ君の独り言を僕は聞かなかったことにする。僕にそんな趣味はないからね。
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