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第一章 ゲームの世界へ
第11話 帰還
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「お~う。飲んでるか君達~」
「僕は飲んでますけど、アスノ君はまだ未成年なので」
「おいおい、硬いこと言うなよ。飲んでない子を眠らせないなんてどんな拷問だ~い?」
オスターを救出して帰ってくると、アドラーさん達に飲みの席に連れてこられた。ドーシャさんがウザ絡みしてきてお酒臭い口を近づけてくる。
「気をつけろよランカ。こいつキスの魔物だから」
「あ~? 私からのキスなんだから気をつけろじゃねえだろルッカ~。まずはお前から私の口で黙らせてやる!」
「わ~やめろ。俺には妻が」
ドーシャさんが詰めよってぶっちゅ~と音が聞こえる程、口を吸われてるルッカさん。妻がいるのに容赦ないな~。泥酔者に近づいちゃダメだな。
「師匠~。もう行きましょう。早く武器を作らないと」
「ああ、そうだね。って僕は少し飲んでるからそんなに急がないで」
アスノ君が引っ張ってくる。みんなには軽く挨拶をして冒険者ギルドから外に出る。
「師匠~。早く師匠の武器が見たいです!」
「あ、ああ、すぐに作るよ。ってアスノ君もレベルが上がっただろ。君も作らないと」
「え~、僕はいいんですよ。どうせ碌なものできませんから」
あれ? なんかアスノ君の様子がおかしい。王都で何かあったのか? そういえば、彼は王都の【セントラルアルステード】にいるはずなんだよな。
「アスノ君はなんでオルコッドに来てたんだっけ?」
手を引っ張ってくるアスノ君に質問する。すると手を離してその場に座り込んだ。
「僕……Fランクの武具しか作れなくて……」
「え? F?」
武具のランクはEまでしかない。その下があるなんて聞いたことがないぞ。
「僕に作らせる鉄はないって言われて追い出されたんです……」
なるほど、それでオルコッドのルドマンさんのところに来て一から始めようとしたわけね。
「僕なんかいなくていいんだ……」
「はぁ~。何言ってんだよアスノ君」
座り込むアスノ君の肩に手を乗せて声をあげる。涙目で僕を見つめる彼にニッコリと笑って見せる。
「オスターを助けたのはアドラーさんだったけど、僕らがいなかったら大変なことになってただろ?」
「……師匠の武器があったからです。僕なんか……」
「はいはい。なんかとか言わない。君には君にしかできないことがあるんだよ。ほら」
「え!? これってミスリル?」
アイテム合成で作っておいた。近くの森のビッグスライム、やつがいなくなっちゃ困る理由がミスリルにある。
聖水と鉄をアイテム合成するとミスリルに変化するのだ。その為に近くの森に通っていたといっても過言じゃない。
「ぼ、僕がミスリルを?」
「そういうこと」
「……」
輝くミスリルインゴットを見て落胆するアスノ君。自分にはもったいないと思っちゃってるのかもな。でも、やってもらわないと困るぞ、なんて言っても君は【ミスリルのアスノ】なんだからさ。
「アスノ君。君が作らないとミスリルがもったいないんだよ」
「……」
「……君だけにしか作れないものがあるんだ。僕に見せてほしい。ダメかな?」
優しく諭す。だけど、彼は顔をあげることはなかった。トラウマはそんな簡単に払しょくできるものじゃないか。無理にやらせるのも違う、一緒に生活して、やる気になったらやってもらうしかないな。
「分かったよアスノ君。やりたくなったらでいいよ」
「……むにゃむにゃ。ス~ス~……」
「え?」
ミスリルインゴットがアスノ君の手から落ちて音を立てる。それと同時にアスノ君の寝息が聞こえてきた。どうやら、彼にお酒を飲ませた人がいるみたいだ。通りで様子がおかしいと思った。
日頃は前しか向かないアスノ君が後ろばかり気にしていたもんな。
「はぁ~、しょうがない。どっこいしょ。ミスリルのアスノの装備は明日だな」
アスノ君をお姫様抱っこして呟く。よく見ると顔が赤くなってるな。ドーシャさんが飲ませたのかもな。
「ら、ランカ……」
「え? ああ、オスター」
宿屋へと戻ろうと歩き出すとオスターが後ろから声をかけてきた。松葉杖をうまく使って歩いてきたのか。彼は冒険者は引退になっちゃうだろうな。両脚を傷つけられていたみたいだから。
ゴブリンは本当に狡猾だった。罠に使うオスターを動けなくして部屋に入ったらすべての通路からなだれ込む。普通のパーティーだったら全滅だよ。
アドラーさんみたいな一騎当千な人か、僕みたいなからめ手を隠し持ってる人とかがいなかったらね。
「初めて会った時に絡んですまなかった。それと今回の救出に参加してくれてありがとう。そ、それだけだからじゃあな」
「あ、うん……。恥ずかしいのかな」
素直に謝ってくるオスター。そそくさといなくなる彼の背中に呟くと声は虚空に消える。
「はは、オスターが珍しく素直だ」
オスターがいなくなるとアドラーさんが声をかけてきた。
「今回助かった。仲間達が全員無事だったのは君のおかげだよ」
「いえ、みんな強くて僕は何も」
彼の言葉に謙遜して俯く。アドラーさんがいればあの場も何とかなったわけだしね。
「君がいなかったらあの場に留まってオスターは殺されていただろう。ありがとう、居てくれて」
「アドラーさん……」
心優しいアドラーさんはゲームの中でも同じだった。ランダムに話される内容を話すだけの存在だったけれど、その全てが仲間の話だった。
誰一人かけたくない、そう思った時、僕に頼ってくれたってことか。強い人に頼られるのは悪くない。
「武器も楽しみに待っているよワッカと同じでいいから。ミスリルじゃなくてもいいからね」
「はい……いつから見てたんだ?」
アドラーさんはそういって冒険者ギルドに戻って行く。アスノ君との会話も全部聞いていたのかな。
「さて、今日は疲れた。僕も寝よう」
「スースー……」
よっこいしょとアスノ君を持ち上げて宿屋に変える。気持ちよく寝てる彼、王都には見る目のない鍛冶屋がいるんだな。
「僕は飲んでますけど、アスノ君はまだ未成年なので」
「おいおい、硬いこと言うなよ。飲んでない子を眠らせないなんてどんな拷問だ~い?」
オスターを救出して帰ってくると、アドラーさん達に飲みの席に連れてこられた。ドーシャさんがウザ絡みしてきてお酒臭い口を近づけてくる。
「気をつけろよランカ。こいつキスの魔物だから」
「あ~? 私からのキスなんだから気をつけろじゃねえだろルッカ~。まずはお前から私の口で黙らせてやる!」
「わ~やめろ。俺には妻が」
ドーシャさんが詰めよってぶっちゅ~と音が聞こえる程、口を吸われてるルッカさん。妻がいるのに容赦ないな~。泥酔者に近づいちゃダメだな。
「師匠~。もう行きましょう。早く武器を作らないと」
「ああ、そうだね。って僕は少し飲んでるからそんなに急がないで」
アスノ君が引っ張ってくる。みんなには軽く挨拶をして冒険者ギルドから外に出る。
「師匠~。早く師匠の武器が見たいです!」
「あ、ああ、すぐに作るよ。ってアスノ君もレベルが上がっただろ。君も作らないと」
「え~、僕はいいんですよ。どうせ碌なものできませんから」
あれ? なんかアスノ君の様子がおかしい。王都で何かあったのか? そういえば、彼は王都の【セントラルアルステード】にいるはずなんだよな。
「アスノ君はなんでオルコッドに来てたんだっけ?」
手を引っ張ってくるアスノ君に質問する。すると手を離してその場に座り込んだ。
「僕……Fランクの武具しか作れなくて……」
「え? F?」
武具のランクはEまでしかない。その下があるなんて聞いたことがないぞ。
「僕に作らせる鉄はないって言われて追い出されたんです……」
なるほど、それでオルコッドのルドマンさんのところに来て一から始めようとしたわけね。
「僕なんかいなくていいんだ……」
「はぁ~。何言ってんだよアスノ君」
座り込むアスノ君の肩に手を乗せて声をあげる。涙目で僕を見つめる彼にニッコリと笑って見せる。
「オスターを助けたのはアドラーさんだったけど、僕らがいなかったら大変なことになってただろ?」
「……師匠の武器があったからです。僕なんか……」
「はいはい。なんかとか言わない。君には君にしかできないことがあるんだよ。ほら」
「え!? これってミスリル?」
アイテム合成で作っておいた。近くの森のビッグスライム、やつがいなくなっちゃ困る理由がミスリルにある。
聖水と鉄をアイテム合成するとミスリルに変化するのだ。その為に近くの森に通っていたといっても過言じゃない。
「ぼ、僕がミスリルを?」
「そういうこと」
「……」
輝くミスリルインゴットを見て落胆するアスノ君。自分にはもったいないと思っちゃってるのかもな。でも、やってもらわないと困るぞ、なんて言っても君は【ミスリルのアスノ】なんだからさ。
「アスノ君。君が作らないとミスリルがもったいないんだよ」
「……」
「……君だけにしか作れないものがあるんだ。僕に見せてほしい。ダメかな?」
優しく諭す。だけど、彼は顔をあげることはなかった。トラウマはそんな簡単に払しょくできるものじゃないか。無理にやらせるのも違う、一緒に生活して、やる気になったらやってもらうしかないな。
「分かったよアスノ君。やりたくなったらでいいよ」
「……むにゃむにゃ。ス~ス~……」
「え?」
ミスリルインゴットがアスノ君の手から落ちて音を立てる。それと同時にアスノ君の寝息が聞こえてきた。どうやら、彼にお酒を飲ませた人がいるみたいだ。通りで様子がおかしいと思った。
日頃は前しか向かないアスノ君が後ろばかり気にしていたもんな。
「はぁ~、しょうがない。どっこいしょ。ミスリルのアスノの装備は明日だな」
アスノ君をお姫様抱っこして呟く。よく見ると顔が赤くなってるな。ドーシャさんが飲ませたのかもな。
「ら、ランカ……」
「え? ああ、オスター」
宿屋へと戻ろうと歩き出すとオスターが後ろから声をかけてきた。松葉杖をうまく使って歩いてきたのか。彼は冒険者は引退になっちゃうだろうな。両脚を傷つけられていたみたいだから。
ゴブリンは本当に狡猾だった。罠に使うオスターを動けなくして部屋に入ったらすべての通路からなだれ込む。普通のパーティーだったら全滅だよ。
アドラーさんみたいな一騎当千な人か、僕みたいなからめ手を隠し持ってる人とかがいなかったらね。
「初めて会った時に絡んですまなかった。それと今回の救出に参加してくれてありがとう。そ、それだけだからじゃあな」
「あ、うん……。恥ずかしいのかな」
素直に謝ってくるオスター。そそくさといなくなる彼の背中に呟くと声は虚空に消える。
「はは、オスターが珍しく素直だ」
オスターがいなくなるとアドラーさんが声をかけてきた。
「今回助かった。仲間達が全員無事だったのは君のおかげだよ」
「いえ、みんな強くて僕は何も」
彼の言葉に謙遜して俯く。アドラーさんがいればあの場も何とかなったわけだしね。
「君がいなかったらあの場に留まってオスターは殺されていただろう。ありがとう、居てくれて」
「アドラーさん……」
心優しいアドラーさんはゲームの中でも同じだった。ランダムに話される内容を話すだけの存在だったけれど、その全てが仲間の話だった。
誰一人かけたくない、そう思った時、僕に頼ってくれたってことか。強い人に頼られるのは悪くない。
「武器も楽しみに待っているよワッカと同じでいいから。ミスリルじゃなくてもいいからね」
「はい……いつから見てたんだ?」
アドラーさんはそういって冒険者ギルドに戻って行く。アスノ君との会話も全部聞いていたのかな。
「さて、今日は疲れた。僕も寝よう」
「スースー……」
よっこいしょとアスノ君を持ち上げて宿屋に変える。気持ちよく寝てる彼、王都には見る目のない鍛冶屋がいるんだな。
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