ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 ゲームの世界へ

第6話 レベル10に

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「し、師匠!? 鍛冶屋がレベルあげる必要あるんですか~!」

「必要です。上位ランクの剣を作るにはね」

 ルドマンさんの鍛冶屋を後にして、僕らは近くの森にやってきた。予め冒険者ギルドで薬草の依頼を受けてきて、アスノ君のレベル上げをしている。人のレベルをあげている場合じゃないんだけどね。

「ひぃ! 水魔法!?」

 悲鳴をあげながらスライムと戦うアスノ君。それを見ながら僕もスライムを一撃で倒す。僕はDランクの鉄の剣だからすぐに倒せる。これで5レベルにあがった。スライムの核もたんまりで懐も温かくなるぞ~。

「2匹目倒せました師匠~、レベル上がりました~」

「あいよ」

 びしょ濡れのアスノ君が声をあげて僕の前に倒れこむ。頭を撫でてあげて僕は薬草を使って低級ポーションを作り出す。

「流石にレベルは上がらないか」

 鉄の剣の方が大変な作業だ。ポーションじゃ少しも経験値をもらえない。ポーションが出来上がると懐から出すふりをしてアスノ君に手渡した。

「師匠これは?」

「見てわかるだろ? 低級ポーションだよ」

「ええ!? 師匠はポーションも作れるんですか?」

 アスノ君がびっくりして聞いてくる。剣を作れてポーションまでとなると流石におかしいか? とりあえず口止めしておこうかな。

「アスノ君。僕の弟子になるならあんまり口外しないようにね」

「はい! 師匠の秘密は墓場まで持っていきます! 拷問されてもいいません!」

「あ~、いや、拷問されたら言ってもいいよ」

 命を張るほどの秘密でもない。アスノ君自身の命の方が大事だ。なんて言っても【ミスリルのアスノ】、ミスリルの装備を作らせてそれを強化しまくって伝説の装備を超えさせるのだ。ぐふふ。

「師匠? 顔が変ですよ?」

「おっと、欲望が顔にでちゃったか。失敗失敗。気を取り直して、ポーションを飲んですぐにスライムを狩りなさい。剣士の君は10レベルに早くならないと」

「10レベルですか?」

 欲にまみれた表情を見られてしまい涎をふき取る。10レベルと首を傾げるアスノ君に無言で頷いて見せる。
 なぜ10レベルかと言うと製作物というのはレベル制限があるのだ。EランクからDランクの武具は5レベル以内でも作ることが可能だ。
 しかし、C以上の武具となると話は変わってくる。どんなに錬金術師レベルをあげようと作ることが出来なくなる。NPCだった人たちも例外じゃないはずだ。
 それを証明するにはルドマンさんがDランクの武具を作った時だな。それ以上のCランクへと手を伸ばそうとして作れなかったら確実にそれが適応されているとわかることだろう。
 アルステードオンラインの開発者が生産しかやらないという人を無くすために作ったこのシステム。B以上のランクもそれが適応されていて、20レベルがB、30以上がAランク、Sランクとなると50レベル以上が必要になってくる。
 最強の武具を作るにはレベル50以上が必要ってことだな。

「とにかく一緒にレベルをあげよう」

「はい! 師匠は職業を変えないんですか?」

「……職業か」

 この仕様を考えると大根剣士が一番いい。なぜかと言うと次のレベルにあがるための経験値が一番低い。それに僕は一応最強の剣士、剣聖をマスターして、勇者になってラストダンジョンをクリアした。同じ道を歩むなんてゲーマーとして恥だ。今度は最弱から最強になってやる。

「僕は大根剣士のままかな」

「そうですか」

 僕の答えに残念そうにするアスノ君。ふふふ、すぐに50レベルになってSランクの装備を見せてあげるぞ。

「弟子が師匠の心配をするんじゃないよ。それよりも君は早く10レベルになるんだ。ミスリル装備を作るんだから」

 アスノ君に檄を飛ばす。そう、ミスリルの素材はそれを使うだけでCランクの武具となる。つまりは10レベル以上にならないと扱うことすらできないのだ。

「え!? ミスリルですか!? 僕なんかが? でも、なるほど、レベルが足らなかったんですね。どおりで王都で作っても出来なかったわけだ。精進します!」

「お、おう……」

 アスノ君は僕の言葉を聞いて色々察したようだ。1を知って10を知るというやつか。やはりアスノ君は天才なのかもな。

「し、師匠……。武器が欲しいです」

 しばらくスライムと素手で戦っていたアスノ君。疲れ切って声をあげてる。
 自分で作れるのに素材がなかったから手持ちの武器がないんだよな。最初の僕と一緒だ。一発で倒せる僕と違うから苦労してるな。

「一度町に戻れば作れるか」

「や、やった……。お腹もすきました」

 僕の声に安堵して、パタリと倒れこむアスノ君。町へと振り返ると後ろから大きな音が聞こえてくる。森の奥か? もしかして……

「アスノ君、町に帰っててくれる?」

「え? でも……」

「いいから早く!」

 僕の予感が当たっているとアスノ君は危ない。そう思って彼を早く帰そうと思った。だけど、時すでに遅し。町の方向に大きな影が回り込む。

「ジュルジュル」

「す、スライム?」

 影の正体を見てアスノ君が呟く。嫌な予感が的中だ。こいつは近くの森のフィールドボス、ビッグスライムだ。スライムをある一定の数狩ると現れるボスだ。初心者のころ、最初の町の近くのボスだから、余裕で狩れるだろうと思って返り討ちにあった思い出がフラッシュバックする。

「うっ!?」

 フラッシュバックじゃない、走馬灯を見ている。ビッグスライムが自分の体を触手のように伸ばして攻撃をしてきた。もろに食らって木に叩きつけられる


「師匠!」

「アスノ君。逃げるんだ」

「いやです! 師匠を残してそんなこと! できません!」

 体が動かない。動けない僕を引きずるアスノ君。このままじゃアスノ君もやられちゃう。

「ポーションを飲めれば」

 インベントリのアイコンを視線で追う。作っておいた低級ポーションを見つめると体が楽になる。

「つ、使えた!?」

「師匠!」

 ショートカットキーがなくなっているからインベントリから取り出さないと使えないと思っていた。ダメージを受けていれば取り出さなくても普通に使えるみたいだ。これで戦える。

「アスノ君。君は逃げるんだ」

「ぼ、僕も戦います」

「まったく……わかったよ。石で牽制して、触手に気をつけるんだ」

「分かりました!」

 頑ななアスノ君に指示を飛ばす。こんなピンチなのに嬉しそうに返事してる。本当にやばい状況だって言うのに、って僕もか。勝手に口角が上がってしまう。

「死ぬのは怖い。だけど、ギリギリの戦いは面白いんだよな!」

 石を投げてビッグスライムの横に走りこむアスノ君。スライムは彼に夢中だ。触手をアスノ君に集中して出してる。全てを避けてる彼の心配は要らない、僕はDランクの剣を1、2、3とビッグスライムに走らせる。

「そろそろこっちに来る!」

 アスノ君に夢中だったビッグスライムも攻撃をされたら流石に僕へと攻撃がやってきた。予め離れ始めていたから回避も簡単。木に隠れたりして躱すと再度アスノ君が注意を引き付ける。
 それを何度か繰り返すとビッグスライムが小さくなっていく。そして、

「よし! 倒した!」

 小さくなったスライムが霧散して消えていく。ビッグスライムの核と聖水が戦利品として落ちる。もちろん、半透明な状態のものも落ちている。試しにアスノ君に指さして見せたけど見えていない様子だった。
 やっぱり半透明の戦利品は僕にしか見えていないようだ。まあ、普通のスライムの時に確認はしていたんだけど、改めて確認が取れた。
 ビッグスライムは経験値もかなり高い。スライムを狩っていた一番の理由はそこだ。油断していてやられたけど、ここで一気に10レベルにしてしまおうと思っていた。こんなに早く10レベルになるとはな。
 ということで僕は早くも10レベルに到達。



名前 ランカ 大根剣士
 
 レベル 10

 HP 80
 MP 55
 
 STR 75
 DEF 75
 DEX 75
 AGI 79
 INT 60
 MND 60



 アスノ君はあと少しだ。ミスリルも手に入れないとな。
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