11 / 252
第一章 新しい命
第十一話 王の決断
しおりを挟む
「アルス様!ご報告します!」
「何かあったのか?」
アルス王子の軍勢はアステリアまであと少しの所までたどり着いていた。だがその時先に行かしていた斥候が早馬で帰ってきて息を切らせて話し出した。その異様に急いでいる姿にアルス王子は少し動揺している。
「アステリアはもぬけの殻です」
「「「「「!?」」」」」
斥候の声が聞こえる範囲の騎士達が狼狽えた。そして確かなのかと斥候に詰め寄るエルエス。だが答えは変わらず伝えられるのだった。
「何故だ・・・・・まさか!!」
「!?、全軍転進!!敵は王都だ!」
アルス王子はいち早く気づく、アステリアは囮であったのだと。アルス王子の後方を見る仕草ですぐに号令をかけたエルエスは流石である。これもまた薄い本の題材に・・・って私はどこの業者なんだ、おっと失礼!。
アルス王子の軍勢は急ぎ王都アルサレムへと向かうのだった。
同刻アルサレムでも驚きの報が知らされていた。
「アルサレム王!アドスバーンから使者が!」
「何!アドスバーンからだと!」
王は驚き玉座から立ち上がる。そして大臣に諭され王は落ち着き玉座に座りなおすのだった。戦争中の国から使者が送られてくる事はそう珍しい事でもないのだがこちらは負けている国、通常ならば負けている国が使者を出し譲歩を引き出す物なのだ。
なので勝利しているアドスバーンから先に使者がくる事はなかなかに貴重な物だろう。
王はすぐに使者を通すように促すと軽装備の冒険者のような魔族の男が玉座の間へ案内され中央に立ち文を取り出すと王や周りを見やる。そして王が頷くと文を読み始めるのだった。
「では読ませていただきます。『ご機嫌いかがだろうかアルサレムの王よ、こちらは上々だ。挨拶もそこそこに本題に入ろう
私はアステリアの領主ツヴァイを気に入った。そして[元アステリア]の者達もだ。この者達は誰もが共に分かち合う事を忘れずに補い合っている。しかし今回残念なことに私はアステリアを手に入れてしまった。
だが間違った事をしたなどとは思っていない、お前達人間はいつの世も弱者を蔑み従わせようとする、それが許せん。だから攻めたのだから』」
アドスバーンの手紙からは切実な言い訳のような理由が書きなぐられている。しかしそこには嘘はなくただただツヴァイとアステリアの人達を褒める言葉が並べられていた。
本当はツヴァイの代わりにジーニの名前が入るはずだったのだがジェイラに指摘されて書き直したらしい。
「『少し脱線してしまったな。これは私のお願いであるがそれを断るのであるならば私はアルサレムを自ら滅ぼしにいくだろう、すぐにだ! アステリアの領主ツヴァイとその息子をアステリアの王と王子に、つまりはアステリア王国の建国を望む』」
「「「「「建国!?」」」」」
アドスバーンへ助言したジェイラの策略が文に書かれていた。アステリアを王国にすることでアルサレムとは関係ない所で同盟を組むことが可能になるのだ。そしてゆくゆくはアステリアを自分の属国へと変えていくと言うのがジェイラのシナリオであろう。
玉座の間にはツヴァイも控えていた。ツヴァイは青ざめ王を視界に入れる。とてもじゃないが王を直接見る事はできなかった。守るべき王を盾にお前が王になれと訳の分からないことをいわれているのだ。ツヴァイが困惑することはしょうがない事だった。
王や王の近くで控えていた大臣達が俯く、するとアドスバーンの使者がその沈黙を破り話し出した。
「期日は明日までに、私は明日にはアドスバーンへの帰路に立ちます」
王達はその言葉を聞きすぐに後方の円卓の間へと足を運んだ。
使者は城の応接の間に泊まってもらう予定で案内されていった。
「ツヴァイよ。どう見る?」
円卓に座るは王、ツヴァイ、第一騎士団団長クァンタム、大臣のバンである。
本来はここにアルスとエルエスもいるのだが今アステリアから転進している頃なので来れるはずもない。
「私は・・・王を守る者です・・それ以上でも以下でもありません」
「そう言ってくれるか・・・・騎士団長、アドスバーンの総攻撃を受けてアルサレムはもつか?」
「・・・・守って見せます」
騎士団長のクァンタムは少し考えて答えた。クァンタムの表情を見て王は頭を抱える。確実に守れるという保証はないクァンタムは自分の力のなさに握りこぶしから悔しさを滲ませた。
「王様、これはアドスバーンの策略ではないでしょうか?」
「それはどういう意味だ?」
大臣のバンが椅子から立ちあがり声を張り上げる。
「ツヴァイ殿をアステリアに行かせ、王国をつくるという事を強要する。いう事をきかなかったら滅ぼすという事ですからツヴァイ殿が建国せねば滅ぼす理由をアドスバーンが得られるのです」
「ふむ、要求をのまないことが前提という事か・・・・」
大臣は見事にジェイラの罠にかかった。だがこの罠には逃げる術がないので仕方のない事だが。
そして王は顎に手を当てて考えている。大臣の言葉に嫌な予感を感じたツヴァイは気が気ではない。このままでは自分が王になるかもしれないのだ。
「ツヴァイよ。涙を飲んでくれ・・・・私の盾から友になるのだ。受けてくれるか?」
「友・・・・そんな事を言われたら……断れません」
王はツヴァイに握手を求めそれにツヴァイも答えた。ツヴァイの顔は青ざめたままだがどこか清々しい様子だった。
「しばらくアステリアはアルサレムと同盟国という事になる、いいか?」
「わかりました、ですが建国してすぐにアドスバーンに奪われるのでは」
「それはないだろう。それに本来ならばこんな交渉無くてもいい物なのだ。力であちらの方が勝っているのだからな。本当にアステリアの者達に心奪われたのだろう。しかしそうなるとアルサレムも偵察されていたということか・・・」
王は顎に手を置き考えている。アステリアの人達を見ていたという事はアルサレムに来ていたという事なのだ。敵にずっと見られていたという事は先手をずっと譲っていたということだ。情報戦とは戦争の基礎、これで負けていた時点でこちらの負けが見えていた。
「そうですね・・・・。警備も考えなくてはいけません。しかしツヴァイを手放すのはアルサレムとしてかなりの痛手それが策略の一部だったら」
「大丈夫ですよ。アルサレムが危ない時には私自ら赴きます」
大臣のバンは警備について何か案があるのか考えてから新たな問題のツヴァイの流出を挙げた、だがそれは杞憂に終わる。アルサレムの王とツヴァイは熱く握手を交わす。ツヴァイは戸惑いながらもこの運命の歯車に乗る事を選んだ。
そんな大事が始動している事も知らずにジーニはアステリアへ向かっていた。そして30分ほど飛んでいるとアルス王子の軍勢を見つける。
「アウ?」
あれれ?アルス王子帰っちゃうの?アルサレムに帰るとしても3日はかかるんじゃ?。ジーニは首を傾げる。アルス王子の表情をうかがう事が出来たのだが余裕のない険しい表情だった。折角のイケメンなのに・・・。
アルス王子の軍勢は急いでいた。その為騎馬とそれに追いつけずに引き離されて行く槍兵達、更にその後方に訓練もそこそこだろうなという感じの民兵が歩いていた。息も絶え絶えで今にも倒れそうになっている。
「ブ~」
アルス王子は部下も管理できないの?。そんなに急いでどこ行くんだよ~。仕方ないから槍兵と民兵に回復とバフかけてあげよう。
「アウパウ~」
僕は広範囲に[ハイパワー]の魔法をかけた。効果は名前の通りパワーが上がります。もちろん僕は初めてかけたのでまさかあんな効果になるとは思わなかったよ・・・てへ。
「「「「うお~~~~~」」」」
槍兵と民兵の勝鬨のような声がここら一帯を覆った。そして歩きのはずの槍兵と民兵はアルス王子達の騎馬兵のすぐ後方へ追いつき見事な隊列を成していた。
僕は少しやり過ぎたと思いながらもアステリアを見に行く。アルス王子は戻って行ったけど、アステリアで何かがあったのではと思ったからだ。そしてアステリアの上空へ着き神眼で建物を調べていくと驚く事に誰もいなかった。
「ウ?」
僕は不審に思いしっかりと一つ一つの建物を調べていったけど神眼がおかしくなったわけではなく確かに誰もいないのだった。僕はアステリアにいても仕方がないと思ってアルサレムへと帰還するのだった。
「ここは?」
「ツヴァイの屋敷よ」
「あなたは・・」
「メリアよ。あなたのお名前は?」
「私はデシウス・・・メリア..様」
デシウスはベッドから体を起こす。
気絶していたデシウスを運んできたのはもちろんアステリアのキーファである。キーファはすぐにツヴァイ邸へと運んだ。その後も帰らずに居座っているのはデシウスが気になっているからであろう。
「ではあなたがジーニ様のお母様・・・・女神様なのですね」
「ええ?」
デシウスは輝く目でメリアを見ている。メリアは女神と言われ悪い気はしないもののなんのことかと困惑している。
「私はジーニ様の信徒です女神様。ジーニ様はどこに?」
「あれ?僕、おかしな人連れてきちゃった?」
キーファは自分の目を擦り、耳をほじり周りを見てそう話す。キーファは悪くないただ単にデシウスのジーニを思う心が強すぎるのだ。
「・・・ジーニ様は今アステリアへ行っていますよ」
「え?嘘、行き違い・・・」
少し嫌そうな顔でシリカがデシウスに答える。デシウスは見てわかるほど落胆した。シリカはジーニに悪い虫がついたと警戒しているようだ。
「ん、この人ロクーデの手先..かも」
「「「!?」」」
キーファ以外のその場にいる全員が隠し持っていた武器を構えた。キーファは戸惑っている。キーファはロクーデの事を知らないので致し方ない。
「・・・確かに私はロクーデの...ですが私はジーニ様の..いえ、神様の信徒です」
「「「「「神!?」」」」」
これにはキーファも反応した。ジーニの事を神と言ってのけたのだ驚かないなんてことはあり得ない状況である。
「ん、ジーニ様を尋問しなくちゃ」
「・・そうね。あの人の子だもの。血は争えないわ」
ついでにツヴァイも傷つくことになってしまったがメリアの証言は嘘である。ツヴァイはモテていたが手は出していない生涯メリアだけを愛していた。まだまだ相談もなしにジーニをアステリアに行かせたことを根に持っているのだろう。
「ジーニ様って1歳だよな?」
少し蚊帳の外のキーファは呟くのであった。
ジーニが帰ってくるまでメリア達はロクーデの話やアステリアで起こった話をデシウスに聞き会話に花を咲かせるのだった。
「何かあったのか?」
アルス王子の軍勢はアステリアまであと少しの所までたどり着いていた。だがその時先に行かしていた斥候が早馬で帰ってきて息を切らせて話し出した。その異様に急いでいる姿にアルス王子は少し動揺している。
「アステリアはもぬけの殻です」
「「「「「!?」」」」」
斥候の声が聞こえる範囲の騎士達が狼狽えた。そして確かなのかと斥候に詰め寄るエルエス。だが答えは変わらず伝えられるのだった。
「何故だ・・・・・まさか!!」
「!?、全軍転進!!敵は王都だ!」
アルス王子はいち早く気づく、アステリアは囮であったのだと。アルス王子の後方を見る仕草ですぐに号令をかけたエルエスは流石である。これもまた薄い本の題材に・・・って私はどこの業者なんだ、おっと失礼!。
アルス王子の軍勢は急ぎ王都アルサレムへと向かうのだった。
同刻アルサレムでも驚きの報が知らされていた。
「アルサレム王!アドスバーンから使者が!」
「何!アドスバーンからだと!」
王は驚き玉座から立ち上がる。そして大臣に諭され王は落ち着き玉座に座りなおすのだった。戦争中の国から使者が送られてくる事はそう珍しい事でもないのだがこちらは負けている国、通常ならば負けている国が使者を出し譲歩を引き出す物なのだ。
なので勝利しているアドスバーンから先に使者がくる事はなかなかに貴重な物だろう。
王はすぐに使者を通すように促すと軽装備の冒険者のような魔族の男が玉座の間へ案内され中央に立ち文を取り出すと王や周りを見やる。そして王が頷くと文を読み始めるのだった。
「では読ませていただきます。『ご機嫌いかがだろうかアルサレムの王よ、こちらは上々だ。挨拶もそこそこに本題に入ろう
私はアステリアの領主ツヴァイを気に入った。そして[元アステリア]の者達もだ。この者達は誰もが共に分かち合う事を忘れずに補い合っている。しかし今回残念なことに私はアステリアを手に入れてしまった。
だが間違った事をしたなどとは思っていない、お前達人間はいつの世も弱者を蔑み従わせようとする、それが許せん。だから攻めたのだから』」
アドスバーンの手紙からは切実な言い訳のような理由が書きなぐられている。しかしそこには嘘はなくただただツヴァイとアステリアの人達を褒める言葉が並べられていた。
本当はツヴァイの代わりにジーニの名前が入るはずだったのだがジェイラに指摘されて書き直したらしい。
「『少し脱線してしまったな。これは私のお願いであるがそれを断るのであるならば私はアルサレムを自ら滅ぼしにいくだろう、すぐにだ! アステリアの領主ツヴァイとその息子をアステリアの王と王子に、つまりはアステリア王国の建国を望む』」
「「「「「建国!?」」」」」
アドスバーンへ助言したジェイラの策略が文に書かれていた。アステリアを王国にすることでアルサレムとは関係ない所で同盟を組むことが可能になるのだ。そしてゆくゆくはアステリアを自分の属国へと変えていくと言うのがジェイラのシナリオであろう。
玉座の間にはツヴァイも控えていた。ツヴァイは青ざめ王を視界に入れる。とてもじゃないが王を直接見る事はできなかった。守るべき王を盾にお前が王になれと訳の分からないことをいわれているのだ。ツヴァイが困惑することはしょうがない事だった。
王や王の近くで控えていた大臣達が俯く、するとアドスバーンの使者がその沈黙を破り話し出した。
「期日は明日までに、私は明日にはアドスバーンへの帰路に立ちます」
王達はその言葉を聞きすぐに後方の円卓の間へと足を運んだ。
使者は城の応接の間に泊まってもらう予定で案内されていった。
「ツヴァイよ。どう見る?」
円卓に座るは王、ツヴァイ、第一騎士団団長クァンタム、大臣のバンである。
本来はここにアルスとエルエスもいるのだが今アステリアから転進している頃なので来れるはずもない。
「私は・・・王を守る者です・・それ以上でも以下でもありません」
「そう言ってくれるか・・・・騎士団長、アドスバーンの総攻撃を受けてアルサレムはもつか?」
「・・・・守って見せます」
騎士団長のクァンタムは少し考えて答えた。クァンタムの表情を見て王は頭を抱える。確実に守れるという保証はないクァンタムは自分の力のなさに握りこぶしから悔しさを滲ませた。
「王様、これはアドスバーンの策略ではないでしょうか?」
「それはどういう意味だ?」
大臣のバンが椅子から立ちあがり声を張り上げる。
「ツヴァイ殿をアステリアに行かせ、王国をつくるという事を強要する。いう事をきかなかったら滅ぼすという事ですからツヴァイ殿が建国せねば滅ぼす理由をアドスバーンが得られるのです」
「ふむ、要求をのまないことが前提という事か・・・・」
大臣は見事にジェイラの罠にかかった。だがこの罠には逃げる術がないので仕方のない事だが。
そして王は顎に手を当てて考えている。大臣の言葉に嫌な予感を感じたツヴァイは気が気ではない。このままでは自分が王になるかもしれないのだ。
「ツヴァイよ。涙を飲んでくれ・・・・私の盾から友になるのだ。受けてくれるか?」
「友・・・・そんな事を言われたら……断れません」
王はツヴァイに握手を求めそれにツヴァイも答えた。ツヴァイの顔は青ざめたままだがどこか清々しい様子だった。
「しばらくアステリアはアルサレムと同盟国という事になる、いいか?」
「わかりました、ですが建国してすぐにアドスバーンに奪われるのでは」
「それはないだろう。それに本来ならばこんな交渉無くてもいい物なのだ。力であちらの方が勝っているのだからな。本当にアステリアの者達に心奪われたのだろう。しかしそうなるとアルサレムも偵察されていたということか・・・」
王は顎に手を置き考えている。アステリアの人達を見ていたという事はアルサレムに来ていたという事なのだ。敵にずっと見られていたという事は先手をずっと譲っていたということだ。情報戦とは戦争の基礎、これで負けていた時点でこちらの負けが見えていた。
「そうですね・・・・。警備も考えなくてはいけません。しかしツヴァイを手放すのはアルサレムとしてかなりの痛手それが策略の一部だったら」
「大丈夫ですよ。アルサレムが危ない時には私自ら赴きます」
大臣のバンは警備について何か案があるのか考えてから新たな問題のツヴァイの流出を挙げた、だがそれは杞憂に終わる。アルサレムの王とツヴァイは熱く握手を交わす。ツヴァイは戸惑いながらもこの運命の歯車に乗る事を選んだ。
そんな大事が始動している事も知らずにジーニはアステリアへ向かっていた。そして30分ほど飛んでいるとアルス王子の軍勢を見つける。
「アウ?」
あれれ?アルス王子帰っちゃうの?アルサレムに帰るとしても3日はかかるんじゃ?。ジーニは首を傾げる。アルス王子の表情をうかがう事が出来たのだが余裕のない険しい表情だった。折角のイケメンなのに・・・。
アルス王子の軍勢は急いでいた。その為騎馬とそれに追いつけずに引き離されて行く槍兵達、更にその後方に訓練もそこそこだろうなという感じの民兵が歩いていた。息も絶え絶えで今にも倒れそうになっている。
「ブ~」
アルス王子は部下も管理できないの?。そんなに急いでどこ行くんだよ~。仕方ないから槍兵と民兵に回復とバフかけてあげよう。
「アウパウ~」
僕は広範囲に[ハイパワー]の魔法をかけた。効果は名前の通りパワーが上がります。もちろん僕は初めてかけたのでまさかあんな効果になるとは思わなかったよ・・・てへ。
「「「「うお~~~~~」」」」
槍兵と民兵の勝鬨のような声がここら一帯を覆った。そして歩きのはずの槍兵と民兵はアルス王子達の騎馬兵のすぐ後方へ追いつき見事な隊列を成していた。
僕は少しやり過ぎたと思いながらもアステリアを見に行く。アルス王子は戻って行ったけど、アステリアで何かがあったのではと思ったからだ。そしてアステリアの上空へ着き神眼で建物を調べていくと驚く事に誰もいなかった。
「ウ?」
僕は不審に思いしっかりと一つ一つの建物を調べていったけど神眼がおかしくなったわけではなく確かに誰もいないのだった。僕はアステリアにいても仕方がないと思ってアルサレムへと帰還するのだった。
「ここは?」
「ツヴァイの屋敷よ」
「あなたは・・」
「メリアよ。あなたのお名前は?」
「私はデシウス・・・メリア..様」
デシウスはベッドから体を起こす。
気絶していたデシウスを運んできたのはもちろんアステリアのキーファである。キーファはすぐにツヴァイ邸へと運んだ。その後も帰らずに居座っているのはデシウスが気になっているからであろう。
「ではあなたがジーニ様のお母様・・・・女神様なのですね」
「ええ?」
デシウスは輝く目でメリアを見ている。メリアは女神と言われ悪い気はしないもののなんのことかと困惑している。
「私はジーニ様の信徒です女神様。ジーニ様はどこに?」
「あれ?僕、おかしな人連れてきちゃった?」
キーファは自分の目を擦り、耳をほじり周りを見てそう話す。キーファは悪くないただ単にデシウスのジーニを思う心が強すぎるのだ。
「・・・ジーニ様は今アステリアへ行っていますよ」
「え?嘘、行き違い・・・」
少し嫌そうな顔でシリカがデシウスに答える。デシウスは見てわかるほど落胆した。シリカはジーニに悪い虫がついたと警戒しているようだ。
「ん、この人ロクーデの手先..かも」
「「「!?」」」
キーファ以外のその場にいる全員が隠し持っていた武器を構えた。キーファは戸惑っている。キーファはロクーデの事を知らないので致し方ない。
「・・・確かに私はロクーデの...ですが私はジーニ様の..いえ、神様の信徒です」
「「「「「神!?」」」」」
これにはキーファも反応した。ジーニの事を神と言ってのけたのだ驚かないなんてことはあり得ない状況である。
「ん、ジーニ様を尋問しなくちゃ」
「・・そうね。あの人の子だもの。血は争えないわ」
ついでにツヴァイも傷つくことになってしまったがメリアの証言は嘘である。ツヴァイはモテていたが手は出していない生涯メリアだけを愛していた。まだまだ相談もなしにジーニをアステリアに行かせたことを根に持っているのだろう。
「ジーニ様って1歳だよな?」
少し蚊帳の外のキーファは呟くのであった。
ジーニが帰ってくるまでメリア達はロクーデの話やアステリアで起こった話をデシウスに聞き会話に花を咲かせるのだった。
89
お気に入りに追加
5,867
あなたにおすすめの小説
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。
女の子と言われてしまう程可愛い少年。
アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。
仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。
そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた
願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~
【創造魔法】を覚えて、万能で最強になりました。 クラスから追放した奴らは、そこらへんの草でも食ってろ!
久乃川あずき(桑野和明)
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ『面白スキル賞』受賞しました。
2022年9月20日より、コミカライズ連載開始です(アルファポリスのサイトで読めます)
単行本は現在2巻まで出ています。
高校二年の水沢優樹は、不思議な地震に巻き込まれ、クラスメイト三十五人といっしょに異世界に転移してしまう。
三ヶ月後、ケガをした優樹は、クラスメイトから役立たずと言われて追放される。
絶望的な状況だったが、ふとしたきっかけで、【創造魔法】が使えるようになる。
【創造魔法】は素材さえあれば、どんなものでも作ることができる究極の魔法で、優樹は幼馴染みの由那と快適な暮らしを始める。
一方、優樹を追放したクラスメイトたちは、木の実や野草を食べて、ぎりぎりの生活をしていた。優樹が元の世界の食べ物を魔法で作れることを知り、追放を撤回しようとするが、その判断は遅かった。
優樹は自分を追放したクラスメイトたちを助ける気などなくなっていた。
あいつらは、そこらへんの草でも食ってればいいんだ。
異世界で活躍する優樹と悲惨な展開になるクラスメイトたちの物語です。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ
ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた
いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう
その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った
だけど仲間に裏切られてしまった
生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい
そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)
丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】
深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。
前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。
そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに……
異世界に転生しても働くのをやめられない!
剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。
■カクヨムでも連載中です■
本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。
中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。
いつもありがとうございます。
◆
書籍化に伴いタイトルが変更となりました。
剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~
↓
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる