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第八章 倍倍

第二十話 ダインズの最後

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「あ、ああ」

 [光闇の槍]は鈍い音を立てて誰かに当たった。僕はその方向を見て涙で前が見えなくなる。

「ダインズ!!!」

 僕は気を膨れ上がらせる。その光はマナを纏い邪悪な者達を退けていった。アダマイオスやオークレは光に消えていったんだ。心なしか二人は安らかな顔をしていたように見える。

「凄い!!凄いですね~ジーニ様、まさに最終決戦ですね~」

 ダインズは槍を手元に戻してにやけている。

「アステラ!!」
「アステラ様!」

 槍の軌道は確かにアステラ様にあたる軌道だった。だけど間にシリカさんが入っていったんだ。でもアステラ様は腰の抜けた状態でもシリカさんを突き飛ばして自分を守ろうとしたシリカさんを庇ったんだ。アステラ様は血を流して倒れてる。

「ジーニ心配するな。神は死なない!神は死なないんだ!!」

 シャイン様の必死な声は僕に心配させないように嘘を言っているようにも取れた。僕はその気遣いに涙してダインズへと迫る。

「涙の最終決戦とでも名付けましょうか」
「おふざけはそこまでだ!。僕は本当に怒ったぞダインズ!」

 油断していたのかダインズは[光闇の槍]を簡単に弾かせた。僕は魔剣グリードで連撃を当てる。

「中々の剣筋。ですがあなたは元々素手の達人でしたよね。まだまだですね」

 ダインズはステータスの上がっている状態の僕の攻撃を紙一重で躱す。余裕な顔を見ると更に上げても大丈夫そうだ。

「これが本気なわけがないでしょ!。[エンゲージリング]解放!」

 これで更に僕のステータスが倍になる。最高まで上がっている状態から2倍だ。これは天文学的数字になっている。

「この時を待っていました!」
「負け惜しみは見苦しいよ!最後だ![シャイニング・スクライド]!」

 聖属性の魔法を纏った魔剣グリードは光闇を纏い螺旋を描きダインズへと突き刺さった。

「グハッ....引き分け..いえ、私の勝ちですね」
「負け惜しみはそれまで...。...えっ..何で槍が、それに僕のHPがどんどん減ってる?」

 背中に衝撃が走った。僕は自分の背中を見て愕然とする。レジーの盾を背中に背負っていたんだけどそれを貫いて[光闇の槍]が僕を背中から胸まで貫いた。ダインズは神殺しの槍で神の領域に達した僕を刺した。神になった事で僕はこの槍の効果の対象になってしまったんだ。

「ガハッ...」
「フハ、フハハハハ」
「「ジーニ様!!」」

 シリカさん、ララさんごめんなさい。

「ジーニ様謝らないで」
「じっとしてください」

 でも約束守れなかったし...。

「そんな約束なんて..」
「ん、死なないで」

 死にたくないよ。死にたく。

「感動ですね感動ですよ。英雄の死はいつも悲しい物です。でもジーニ様、私は自分で自分を殺したのです。あまり気を病む必要はありません。ではジーニ様、先に地獄へと行っていますよ。」

 ダインズは自分の身を焦がして死んで行った。僕に殺されたんじゃないって言いたかったのかもしれない。ダインズはその時薄っすらと涙を浮かべていたんだ。それは僕を殺してしまった事を後悔しているようだった。

「ジーニ!」
「ダメだ!アステラ、この状態で槍を抜くと血が噴き出てすぐにジーニは死んでしまう」

 よかった。アステラ様は本当に死んでなかったんだね。[光闇の槍]でも一発で殺すことはできなかったんだ。

 それにしても、みんな必死にこの状態の僕を助けようとしてる。だけどダメだよ。まだ仕事が残っているからね。寝ていられないよ。

「ジーニ様どこに!」

 立ち上がる僕にシリカさんが心配している。

 心配しないでシリカさん。僕はみんなを守るんだ。

「転移!」
「神になったのか!」

 僕は一瞬で狭間の世界に転移した。アステリアの屋敷はなくなっていて真っ暗な世界になってた。

「はは、こんなぽっかりと穴が開いてる。痛そうだな~」

 時の止まっているこの世界なら僕の体は生きていられる。でもそうじゃない。この世界にはもう一つ問題があったんだ。ダインズが勝ち誇ったように逝った理由。
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