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第八章 倍倍

第十九話 神界の戦い

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 ガギン!!

 金属同士が衝突した時のような音が神界に響く。

 ダインズの投げた槍が弾き飛ばされた。

「これはこれは何と。いつもいつもお早いお付きで」

 執事のようなお辞儀をして僕へと語ったダインズ。アステラ様は腰砕けになりその場に座っている。まるで迷いのない槍の軌道を思いだして僕は憤慨する。

「ダインズ!!」
「おっと~、怖い怖いそんなに怖い顔をされると私は恐怖で縮こまってしまいますよ」

 ダインズは迫る僕をみてすぐに槍を引き戻した。さっき見た槍よりも禍々しさがましているのを見て僕はシャイン様をみた。

「それは[光闇の槍]、神を殺せる唯一の武器と言われている」
「ふふ、そうですよ。この槍を刺せれば私の勝ちです。ぞくぞくしますね」

 ダインズはじりじりと迫る。僕は逆に近づいて行くとダインズは嫌がって後方に下がり始めた。

「おっと、勝負を急ぎ過ぎました。紹介しましょう。私のシモベのアダマイオスとオークレです」
「な!」

 ダインズが取り出した球上の水晶から人間のアダマイオスとオークレが飛び出した。二人は生き物とは思えない目で僕らを見ると剣や杖を自らの体から生み出して肉迫してくる。

「何の真似!。今更こんなの!」
「そうでしょうか?それにしては腰が引けてますよ」

 ダインズは僕の体の異変に気付いた。僕のトラウマであるアダマイオス、僕は克服しているつもりだった。だってドーザを殺めた時にそれほど感じなかったしダラクを殺めた時も感じなかったから。

 でもこの二つは僕にとって大きな誤算だった。ドーザは獣人だったんだ。前世の記憶がある僕にとってトカゲの獣人は魔物として見ていたのかもしれない。差別をなくすとか息巻いていて自分が差別をしていたんだね..。

 そしてダラクだ。ドーザの事もあって簡単に魔法を行使してしまった。だけど僕の魔法で死んだわけじゃなかった。最後はヘリアによって殺められた。

 この時、僕は自分の手を汚してなかったんだ。たぶんこの手で殺めていたらアダマイオスの時と同じような状態になったかもしれない。

「私はあなたを調べていましたからね。ご自分でも気づかないことに気付いてしまったんですよ私は。あなたは人を殺すことを遠ざけている。言い訳をして殺さないようにしているのです。話せばわかる。どんな悪い事していた人でも理解してくれると、ロクーデとベンジャミンがいい例ですよ」

 すらすらとよく喋るダインズ。僕はアダマイオスの振り下ろす剣を受けながらその語りを聞いている。とても腹立たしい。

 シャイン様はオークレの魔法で押されている。[光闇の槍]の靄がまとわりついているから何か作用していると思われる。

「私はあなたの大ファンですからね。ああ、ジーニ様私の元で世界を作り替えませんか?もちろんそこに居るシリカ嬢とララ嬢も連れて行けますよ」

 ダインズは二人を順々に見てそういった。だけど僕は首を横にふる。

「僕は傲慢なんだ。そのダインズが作った世界が今の世界より良くても、僕はこの世界を救いたい。全部救ってできれば君の事も救ってあげたいんだ..」
「・・・」

 ダインズは僕の言葉を聞いて両手で顔を覆う。体を震わせ始めたダインズを見て僕は笑っているんだと思った。だけど、

「うう、悲しい、悲しいですジーニ様。私はあなたと家族になりたかった。ですが叶わない叶わないんですね。決して交わることの出来ない運命なのですね」

 そういうとつかつかと歩み始めたダインズは槍をクルクルと回して槍を放り投げた。その槍はモノクロの螺旋を纏いアステラ様へと向かっていった。


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