上 下
245 / 252
第八章 倍倍

第十六話 火ぶたが切られる

しおりを挟む
 エンドを囲うように空を飛べる実力者が舞う。そこへ魔人になった者達が逃げようと散開してきた。

「ジーニは万の魔人を捉えたか、数が極端に少ない」

 アドスバーンは僥倖と笑みを浮かべる。本来のアドスバーンの性格上残念に思うのが妥当だったが今回は違う。一人一人が強力である魔人がこれ以上いるとたまったものではないのだ。

「では、お二人共。分散して撃破」
「わかってます?気絶か眠らせるんですよ」
「大丈夫。ジーニに怒られるからな」

 三人は頷いた。ジーニに嫌われる事をよしとしない三人は魔人を無力化する事に専念する。

 そして、アドスバーン、グロリア、エクスの三人に釣られなかった魔人達は”近くの街”を襲い始める。

「罠とも知らずに来たな!」
「来たぞ!空に逃がすなよ!」

 ツヴァイの合図で上空に結界が張られる。魔人達を閉じ込める事に成功した。

 近くの街とは部隊が作っておいたハリボテである。そのハリボテの出来はハリボテとは思えない物で城壁まで要しているのだ、騙されても仕方ない。

「グロロロロ!!」
「子供の魔人でも全力でかかれ!、油断するな」

 子供の魔人も確認されている。ジーニの眠りの魔法をレジスト出来ているのを考えると才能ある子供なのだろう。

「抑えるぞ!」
「「「「応っ」」」」 

 前衛を指揮して魔人達に突撃するツヴァイ。ツヴァイは最初から全力で立ち会う。両肩のゴールドとシルバーの援護を受けて次々と魔人を沈黙させていくが。

「ぐ!、強い個体か」

 ツヴァイを簡単に弾き睨みつける青年の魔人。他の魔人にはないねじれた両角を要していた。

「あんたがツヴァイか?」
「な!、喋れるのか。理性を持っているならば戦うのをやめてくれ」
「それはできないな。これは世界への復讐のチャンスだからな!!」

 青年の魔人はそういって手刀から繰り出される斬撃をツヴァイに放つ。ツヴァイはそれを自分の斬撃で相殺させる。

「戦闘は避けられないか?」
「ああ、俺もダインズの様に世界が嫌いでね」
「みんなこいつは俺に任せて他を止めてくれ。...これで邪魔をするものはいない。名を聞こうか?」
「多勢でもよかったんだがな...。そうだな、俺の名はトゥルースとでも呼んでもらおうか」
「な!ふざけてるのか!」
「ふふ、まあそう言う事だよ。俺の名なんてない。それが”真実”だ!」

 トゥルースと名乗った魔人はツヴァイに肉迫した。








「ジーニの魔法をレジストしているだけあって強敵ね」

 サンドエンドの方にも強敵が現れた。ダインズと同じこの世界を恨んでいる者達が現れたのだ。それはこの世界が作った闇の一端だろう。

「死ね死ね死ね~~~」
「ちい、無差別かよ!」

 ゴスロリのドレスを着た少女の魔人彼女もまた両角を要していた。そしてその少女は全方位に水の弾をまき散らしている。

「あははははは、こんな世界滅べばいいのよ~」
「そうはさせないわ!。行くわよみんな!」
「「「「了解!」」」」

「あら?私の相手はとても若いのね。死ぬ前に私の名前を覚えていって頂戴。私の名前はフェイクよ!」

 桃花会のメンバーは少女の魔人と対峙する事となった。





 ここは何処だろう。

 僕は確かシリカさんとララさんと一緒に魔法陣に入ってダインズを追って大地に入っていったはずなんだけど...

 この真っ暗の空間に一筋の光がシリカさんもララさんもいない。僕は水中を泳ぐように一筋の光へと近づいて行く。

 しばらく暗闇を進んでいくと光が広がっていき真っ暗な空間が真っ白になっていく。

 僕は周囲を見回したけど何もない。僕は光の広がった方向へ進んでいくすると水から出るような感覚に襲われて光景が一変した。

「おかえりなさいジーニ様」
「ここは?」

 一瞬でアステリアの屋敷に光景が変化した。そこにはシリカさんがいつもの様に迎えてくれてる。

「ふふ、ジーニ様ねぼけているんですか?でももうしゃべれるんですね」
「バブ?アブブ!」

 え?これは!。僕はどうやら一歳に戻ってしまったみたい。言葉も喋れないようになった。この時点でダインズの仕業なのが分かってるんだけど。

「ん、ジーニ様食事の時間だよ」
「ダ?」

 僕を抱きしめて椅子に座らせるララさん、机の上にはパンとスープがあってシリカさんが食べるのを手伝ってくれた。食事が終わると二人は生気のない目になり明かりが消えて一人の男が入ってきた。

「ダ?」
「ジーニ、お父さんだよ」

 僕はこの人を知っている。だけどわからない、ただお父様ではない事はわかる。

「そんな怯えた顔でどうしたんだジーニ。お父さんだよ」

 僕を抱き上げた男はそのままお風呂場の方へ入っていく。

しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。

烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。 その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。 「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。 あなたの思うように過ごしていいのよ」 真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。 その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

処理中です...