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第八章 倍倍

第十五話 戦いの時

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 僕は深くため息をついた。昨日のシリカさんの姿を思いだした。

「あんなキレイな人が僕の妻になったんだな~」

 青い髪に日の光が反射して輝いていて、女神と言っても過言じゃなかった。僕はあの人の元に帰るんだ。その前まで諦めかけていた心を奮い立たせる。

 絶対に帰る!僕はそんな気持ちだった。だけどエンドの様子がおかしくなってくる。日に日にマナが増幅してる。僕はソフィアみたいな魔眼はないけど感じるんだ嫌な予感を。

「ジーニ出番だ」

 ツヴァイお父様に背中を押されて僕は壇上にあがる。最後の演説を僕が任されたんだ。

「皆さんおつかれさまです。僕はアステリア・ジーニ」

 僕は深くお辞儀をして自己紹介をした。みんな緊張で顔が強張ってる。

「僕は知っての通り加護なしです。あの魔人達も元加護なし。だけど僕は彼らも救ってあげたいんだ。僕が加護なしだからじゃないよ。この世界の本当の事を知っているからなんだ」

 僕はみんなに加護なしは神に愛されなかったから生まれたんじゃない事を話した。みんな神妙な面持ちで聞いてくれてる。

「神様はみんなを愛してくれてる。この中に冒険者はいるでしょ?魔窟に行った時に何か嫌な予感はしなかった?心当たりのある人はわかると思うんだけどその予感は二人の神様が助けてくれていたんだ。本当に二人の神様は優しい人なんだ。だけど二人にも限界があるの、加護なしが生まれた原因はそこにあっただけなんだ。だから僕らに違いはないんだ、だからみんなで助けてあげて。動きを止めてくれれば僕がみんなを眠らせるから。お願いします」

 僕のお願いにみんなは顔を見合わせて悩んでる。それもそうだよね。この世界の常識を考えると加護なしを擁護することはしなくてもいいんだから。それに自分達の命がかかってるからね。

「もちろん、みんなは自分の命を一番に考えて。仲間と自分を守って、ついでに世界を守ってほしいんだ」

 僕は我慢が出来なくて涙を流す。その涙は何についてなのか僕にもわからなかった。だけどみんなの心を少しだけ動かしていく。

「子供にばっか任せてられねえぞ」
「ああ、俺達は世界を守るんだ」
「加護なしだろうが今は魔人だ。俺達よりも強いんだぜ。のしてやって舎弟にしてやる」

 血気盛んな若い少年兵達が声を荒らげた。そうなんだよね。魔人達は強いんだ。最低でもAランクの魔物と同じくらいに。

「この世界は破滅に向かってる。僕らが止めないと壊れてしまうんだ。それをしているのはみんなも知っているダインズ。ダインズはこの世界が嫌になって作り替えようとしてる。そんなの勝手すぎるよ。だから僕らが止めるんだ!僕らの守りたい人を守るために!みんなの力を貸してください!!」

 僕の最後の言葉に並んでいた兵士達が答えて歓声があがる。その声は反対側のサンドエンドからも聞こえてきて僕も高揚してマナが高まる。







 僕は一人エンドに舞い降りた。

 僕は結界に近づき触れる。思った通り結界はそんなに頑丈じゃない。

 みんなに合図を送って結界を壊した。

 すると結界を形成していた魔人の石像が元の体を取り戻してノソっと動き出した。そして上空から中級以上の範囲魔法が降り注ぐ。

 僕の結界を壊す合図と共に超遠隔魔法を放ってもらったんだ。みんなこの数日でエンドまで届く魔法の作成に勤しんでいたんだ。とても頼りになる。

 魔人の大半はこれで足止めできて僕の魔人キャッチャーに捕まってすぐに眠らせた。逃げ延びた魔人達は空を飛べる三人の助っ人に任せた。アドスバーンとエクス王それにグロリアさんだ。

 僕は眠らせた魔人をセバス直伝のグルグル巻きにしてダインズの潜っているであろう中央に向かう。

「グルルルル」

 何もせずに向かわせてくれるはずもない。ボルケーノが僕に牙と爪を向ける。

「ジーニ様ここは私が!」
「デシウス!何でここに?」

 屋敷にいるはずのみんなが僕の前に出て僕を守った。

 みんなはブラウディアを守るために残っているはず。何でここにいるの?。

「ジャンヌ達が向かわせてくれたんだ。本当はジャンヌが一番来たいはずなのに」

 ローズさんとデシウスがボルケーノを抑える。話している間もボルケーノを眠らせようとするんだけど魔法がレジストされる。たぶん強化されているのかもしれない。

 魔人達の中には手練れだった人達もいて、その人達は魔法のかかりが悪い。強い魔人が残るのは危ないから心配だったけどみんなが来てくれたなら大丈夫だ。

「「ジーニ様」」
「ええ、シリカさんにララさんまで...危ないよ!何で来たの!!」

 僕は二人を叱った。流石に危なすぎる。

「ジーニ様が約束をたがわない様に来たんです」
「ん、ジーニ様には私達が必要」

 僕はそんな二人を抱きしめた。だけど連れて行くわけには。

「ジーニ!魔人達がこっちに来る。早く入るんだ」
「ジーニ様もう戻れません。三人でダインズを止めてください!!」
「でも!」
「ジーニ「ジーニ様」」

 みんながいるから全体魔法で魔人達を倒す事は出来ないし。う~ん!!

「わかったよ。だけど気をつけてよ!」
「「はい!」」

 僕はシリカさんとララさんを抱えて中央にあった魔法陣へと足を踏み入れ地面に潜っていく。

「デシウスは良かったのか?」
「今回は二人に譲ったんです。そういうローズはどうなんですか?」
「ああ、私はお母さんが戻っただけでいいんだ。だがジーニを諦めたわけじゃないぞ。なんせ私よりも強い男などジーニくらいなんだからな」

 ボルケーノを押しのけて言い放つローズ。これを皮切りにそれぞれの戦場が激化していく。
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