上 下
243 / 252
第八章 倍倍

第十四話 アステリア・シリカ

しおりを挟む
 私はシリカ...

 私の愛した人は子供...

 とても可愛らしくてとても強かった彼はいつでも笑顔で私達を楽しませてくれた。

 毎日毎日が楽しくてこの時間は一生続くものだと思っていたの。

 だけど終わりはいつか来るもの、私はそれが怖くてしょうがなかった。

 だってシスターが言っていたの、私のお父様とお母様は私を幸せにするために預けたんだって。それは私にとっての幸せを思った両親の行動だったけど実際は違う。

 両親は幸せが終わって破滅に向かう前に私を孤児院に預けたの、そう、終わりが来てしまった。私は両親のおかげで生きてこられたけど。

 幸せはいつか終わりがくる。その終わりが私の寿命ならいいの。最悪を見ないですむから...

「シリカ..」

 私を心配してベッドに体を預けて眠るララ、いつの間にか人の心配ができるほどに大きく頼りになる存在になってた。だけどダメなの。

 私は最悪を見たくない。生きている意味を無くすから...

 でも私の好きな人がそれを許してくれない。とても暖かい魔法が私を包んで生きながらえさせる。

 私は食事をしていないのに生きられる。体はとても細くなったけど生きていられる。だけど私はそれを望んでないの...

 あの日から私の好きな人は顔を見せてくれない。私を嫌いになったのかな...それでもいい、私はこのままこの部屋で最後を迎えるの。

 勝手に流れてくる涙はどこから来るのだろう。私は悲しいのかな?。そんな事を考えながら目を瞑る。定期的に暖かい魔法が私の体を包むのがわかる。その魔法が来る間はあの人の心に私がいる証拠、何だか悲しい。

 私は両親を失った悲しみを知っているのにそれをあの人に与えてしまおうとしている。私はずるいのかな?だってあの人は先に死のうとしているんだよ。先に死んで待っていてもいいじゃない。

 その間も何度も何度も暖かい魔法が私を包んだ。その魔法の間隔は一瞬だったのか一日なのかわからないけど私を包んだ。

 私はずっと目を瞑り眠る。あの人が作る絵本のお姫様みたい、魔女のリンゴを食べてしまって王子様のキスで起きる話。でもこれはあんないい話じゃない。私は先に旅立ちたいと思っているのだから。







 風が私をなでる。私はまるで飛んでいるよう。

 ふと私は目を開けた。目を開けると天井はなくて空が見えた。私は体を起こして辺りを見るとそこには一面のお花畑。

「シリカさん、これは全部あなたの為に作りました。どうか受け取ってください」

 ジーニ様が執事のような黒い服を着てお辞儀していた。私はわけがわからずにベッドから立ち上がろうとする。

「シリカさんにはやっぱり純白のドレスだよね」

 私の寝間着のような服が一瞬で純白のドレスに変わる。この時、私は理解したの。ここは天国何だって、だから私はされるがまま。最後の記憶位良い物で終わりたいから。

「シリカさんの綺麗な青い髪が台無しだね」
 
 夢の中のジーニ様が私の髪を撫でる。撫でた髪は蒼から青に輝き綺麗になっていく。やっぱり私の勝手な夢何だと思ってジーニ様に微笑んだ。ジーニ様もそれに答えて笑顔を向けてくれた。

「シリカさん、無理しないで座っていてね」

 私をベッドに座らせると空から天使が二人舞い降りて言葉を投げかけた。

「汝、ジーニはシリカを愛すると誓うか?」
「はい!、もちろん一生愛します」

 ふふ、ライ様とレイ様だわ。これは私の願望、だから二人共話せるのね。これはジーニ様との結婚式なんだわ。

 自分の本心だと思って笑う私。何だか涙が出てくる。

「汝、シリカはジーニを愛すると誓うか?」
「はい!、私はジーニ様を愛しています」

 そう、私はジーニ様が大好き。好きだからこそ先に...。

「では、二人共誓いのキスを」

 チュ

 向き合って私はジーニ様の唇にキスをした。ジーニ様の顔はみるみる赤くなって照れ隠しに頭を掻いてた。やっぱり私はジーニ様が好き。

「あ、忘れてた。...指輪の交換を..」

 ライ様が二つの指輪を慌てて取り出してる。本当はそっちが先だったみたい。

「全くお兄ちゃんは締まらないんだから」

 レイ様に怒られるライ様は申し訳なさそうに俯いてる。それを笑顔で見てたジー二様は指輪を受け取って私の手を取った。

 ジーニ様の持つ指輪はピンクのダイヤが散りばめられたリングに大きな黄色のダイヤがはめられていた。とても綺麗で私は目を奪われた。

「このリングには名前を付けました。このリングの名前はアステリア・シリカ。あなたの名前です」

 ジーニ様の言葉と笑顔で前が見えなくなった。私は嬉しすぎて涙が出ている事に気付いて涙を拭おうと思ったら後ろからハンカチが私の目へと添えられた。

「シリカお姉ちゃん、お兄ちゃんをよろしくね」

 ジャンヌ様が私の涙を拭ってくれた。私は嬉しくてしょうがない。だけどこれは夢、私は死んでしまったのだから。

 私は静かに目を瞑った。









「シリカさん、シリカさん?」
「え?」

 私は目を瞑って夢の終わりを待った。だけどそれは来なかった。ジーニ様が驚いた顔で残っている指輪を差し出してた。

「え?これは夢じゃないんですか?」
「そんなわけないじゃない」

 私はきょとんとして話すとジャンヌ様に怒られてしまった。
 
 本当にこれは夢じゃないの?。

「じゃあ、ライ様とレイ様が話しているのは?」
「二人は最近話せるようになったのよ」

 ええ!、ジャンヌ様もそうだったけど早すぎるのでは?。

 夢の可能性が無くなってくると共に私の心は弾んでいく。私はジーニ様の妻になったのだと実感がわいてくる。

「シリカさん、僕にも指輪を」
「・・・いやです」
「「「ええ!!」」」

 さっきまで私はとても嬉しかった。だけどジーニ様はこれを終わらせると帰ってこないかもしれない、そう思った私は指輪を奪ってそう言ったの。

「私と結婚をしたかったらもう一度ここでプロポーズをしてください。世界を平和にしてから」

 私は涙しそうな顔でそう言った。ジーニ様が諦めるほどに今回はあぶないものなんだと分かっているのに私はジーニ様を困らせる。だけどジーニ様は微笑んで私に抱きついた。

「わかりました。僕は世界を平和にして帰ってきます。だからシリカさんも元気でいてください」
「..はい」

 私はもう一個の指輪を右手人差し指にはめて返事をした。

 右手人差し指にはめた指輪のおかげでジーニ様は私を見つめてくれているような気がして嬉しかった。

 





 私はベッドと一緒に家に帰るとララに泣いて抱きつかれた。

「お腹すいたのね、すぐに食事にしましょう。私もお腹が空いたから」
「え?...うん!!」

 ララは子供みたいに喜んでいた。その姿を見ていたみんなもリビングに集まってくる。復帰早々に大仕事だわ。でも体が軽い、またジーニ様の悪い癖で指輪が凄いものなんだと思う。

 [エンゲージリング] ペアリングであるこの二対のリングが近くに存在する時、全ステータスが2倍に跳ね上がる。

 やっぱりね。
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

聖なる幼女のお仕事、それは…

咲狛洋々
ファンタジー
とある聖皇国の聖女が、第二皇子と姿を消した。国王と皇太子達が国中を探したが見つからないまま、五年の歳月が過ぎた。魔人が現れ村を襲ったという報告を受けた王宮は、聖騎士団を差し向けるが、すでにその村は魔人に襲われ廃墟と化していた。  村の状況を調べていた聖騎士達はそこである亡骸を見つける事となる。それこそが皇子と聖女であった。長年探していた2人を連れ戻す事は叶わなかったが、そこである者を見つける。  それは皇子と聖女、二人の子供であった。聖女の力を受け継ぎ、高い魔力を持つその子供は、二人を襲った魔人の魔力に当てられ半魔になりかけている。聖魔力の高い師団長アルバートと副団長のハリィは2人で内密に魔力浄化をする事に。しかし、救出したその子の中には別の世界の人間の魂が宿りその肉体を生かしていた。  この世界とは全く異なる考え方に、常識に振り回される聖騎士達。そして次第に広がる魔神の脅威に国は脅かされて行く。

処理中です...