上 下
209 / 252
第七章 異変

第十二話 メリアお母様

しおりを挟む
「メリア、元気ないが大丈夫か?」
「え、ええ、大丈夫少しジーニ達の事が心配なだけ」

 私はメリア、ジーニの母にしてアステリアの王妃。

 今日もライとレイは深淵の森へ行っていてツヴァイ様と2人っきり。二人にこのお城は流石に気が滅入るわ。

「メリア、あまり無理するなよ」
「ありがとうあなた。でも大丈夫です」

 私は何もできないけど怠けている訳にもいかないわ。

「畑のみんなを手伝いに行ってくるわ」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫、あなたは書類整理があるのでしょ」

 ツヴァイは王になった事でこういう書類整理をすることが増えた。ツヴァイは辟易としているが王として大事な仕事である。

「ああ、しかしアルサレム王もしていた仕事だからな。しっかりとやらないとな」

 アルサレム王の横で見ていた事もあり、この仕事の大切さを知っているツヴァイは書類をちゃんと読んでから印を押していく。丁度この時押した印はジーニアス商会のものだった。

 ツヴァイ様はとても熱心に読んでる。私が入るスキはないわね。

「じゃあ行ってきます。あなたも無理しないでね」
「ああ、君も無理するなよ」

 私はツヴァイ様に手を振って畑へと歩いて行く。

 城壁と城壁の間にある畑はとても収穫量が多い。それは一重にライとレイのおかげ、ジーニがいたころはジーニのマナで強制的に成長させていたらしいけど今は腐葉土というものを用いて成長させているって言っていたわ。よくわからないけど私の子供達は博識よね...。

「あの子達は本当に私の子供なのかしら...」

 メリアは自ら産んだにも関わらず首を傾げる。それもしょうがない事であろう。自分が産んだ子供達は産んですぐに自立して自分で稼いでしまっているのだから、世の親がみたらとても羨ましい事だが何とも寂しいものである。

「もっと子供達を愛でたいのだけど、忙しそうなのよね。ハァ、思ってみればジーニが一番可愛がれたのかしら....また一緒に寝たいわね」

 メリアは一人ため息をついてジーニと一緒に寝た夜を思い出した。

「そんな事言ってもしょうがないわね。ジーニは加護なし達をどうにかしようと頑張っているんですものね。でもやっぱり寂しいわ」

 親の心子知らず、ジーニはメリアの寂しさに気付かなかった。ジャンヌ達もまたそれに気付かずメリアを寂しがらせていたのだった。

「クヨクヨしていられないわ」
「メリア様、今日も手伝ってくれるのかい?」

 キーファの母ルーがメリアを迎えた。いつもメリアは健気に畑仕事を手伝っている。その為メリアも健康的なアステリア人になりつつあるが今日のメリアは少し様子がおかしかった。

「フゥ...」
「メリア様大丈夫かい?....ってメリア様、身籠ってるんじゃないの?」

 ルーは女の勘という奴でメリアの体調に感づいた。メリアはライとレイに続いてまた身籠っていたのだ。

「え。確かに体調はおかしいけど、まさか...」
「いいからお医者さんに調べてもらいな。付き添うから行くよ」

 強引にルーに引っ張られてメリアは医者の元へ。






「おめでとうございます」

 ウィーリーさんの紹介でアステリアに医者としてやってきたドーターさんがメリアを祝っている。しかしメリアは浮かない顔。

「子供は嬉しいのだけど。またとんでもなく優秀な子供が生まれるのかしら...」

 メリアは不安で不安でしょうがない。何といってもすぐに巣立っていく子供がまた生まれるんじゃないかと不安なのだ。何とも羨ましい悩みである。

「メリア様、そんな事言っちゃ世の中の親御さんが泣きますよ。優秀な子ってだけでも羨ましいのに、生まれて一か月で自分達よりも強くなるんだから最高じゃないか」

 ルーはそう言ってメリアを励ます。

「そうよね。でもあの人は何て言うかしら」
「喜ぶに決まってますよ。ツヴァイ様ですよ!」

 メリアは要らぬ心配をしている。ツヴァイは子供が生まれる事に何の抵抗もないのだから。

「じゃあ今日はもうお城に帰ってツヴァイ様に報告しな」
「..そうね」

 メリアは少し寂しい気持ちでお城へと帰っていく。





「ただいま帰りました...」
「おお、メリア。今日は早かったな。何かあったのか?」

 ツヴァイ様は忙しそうに印を押しながら話した。私は少し言いにくかったけど正直に話した。

「あなた、実は」

 私の言葉にツヴァイ様は俯いて考えてる。私はドキドキしながらツヴァイ様の言葉を待った。

「子供か、女の子だったらクレアで男の子だったらクレスにするか?」
「...そうですね」
「ん?どうしたメリア。子供が生まれるんだろ。嬉しくないのか?」

 不安そうな顔のメリアを不思議がってツヴァイは声をかける。

「嬉しいんですけど...また優秀な子が生まれてすぐに私達を置いて行ってしまうんじゃないかと思うと..」
「おいおい、何とも贅沢な悩みだな。こんなに寂しく思っているとは俺も気づかなかった。すまない。今度ジーニ達を呼んで家族団らんで何処かにいくか」

 メリアを寂しくさせている事にツヴァイは気付きイベントを開くことを誓う。

「そうよね。今からこの子は生まれてくるのだものね。笑顔で迎えてあげなくちゃダメよね」

 メリアは力強い目でツヴァイに言い放った。ツヴァイはメリアの手を取って頷く。

 またアステリアにジーニの家族が増える。また英雄が生まれるかは神のみぞ知る。
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)

丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】 深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。 前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。 そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに…… 異世界に転生しても働くのをやめられない! 剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。 ■カクヨムでも連載中です■ 本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。 中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。 いつもありがとうございます。 ◆ 書籍化に伴いタイトルが変更となりました。 剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~ ↓ 転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る

処理中です...