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第七章 異変

第十話 またねベントス

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 魔窟からの転移で僕らは滝の洞窟に戻ってきた。魔窟は音を立てて崩れていく。

「転移陣が壊れる合図になってるのかな?」
「その様ですね」
「早く帰ろうぜ」

 タスク君が疲れた顔で訴えた。

 僕らはすぐにベントスへと戻って行く。






「おお、無事に戻ってきたか、それで魔窟は?」

 ベントスのお城に帰ってきた僕らにタリス王が声を上げた。

「一応崩れるのは確認しましたが...」
「では大丈夫だろう。それで中はどうだった?」

 タリス王は興味津々に聞いてきた。だけど僕は早くシリカさんに慰めてもらいたかったから、

「詳細は二人から聞いてください。僕はあなたを回復して帰ります」
「ああ、すまなかったな。この恩は必ず返すぞ」

 僕はタリス王に[ヒール]をかける。驚いた顔で欠損部位を見るタリス王、みるみる回復していく腕に嬉しそうに顔を輝かせる。

「おお、凄いな」
「じゃあ僕は帰るよ」
「ちょっと待ちなさい」

 最初に王に扮していた大臣のダンさんが僕を引き留める。最初の印象が悪いから僕はあまりこの人と話したくないんだよね。

「街にも同じように戦闘で傷ついている者達がいるんだが治せないだろうか。この通りだ」

 ダンさんは僕に深く頭を垂れた。民の為に頭を下げられる人はいい人だと思って僕は頷いた。

 思ったよりもイケテルおじさんだったね。

「ふふ、あんまりいい人じゃないと思ったけどダンさんは優しい人だったんだね」

 頷いてそう話すとダンさんの顔が赤くなった、照れてるみたい。僕はお城の出口に歩く。

「どこに?」
「帰るついでに魔法をみんなに送るよ。気になるならついて来て」

 僕の後ろにその場にいたみんながついてきた。

「じゃあ皆さん、またどこかで会いましょう!」

 僕は空に舞い上がっていく。

「これからはみんなにいい事がありますように....[エリアヒール]」

 暖かな光がベントスに降り注ぐ、光は街全体を包み込み全住民のあらゆるケガを治した。

「古傷まで治ってる...」

 ガリアさんが嬉しそうに呟いてる。

 嬉しそうで何よりだね。

 僕は笑顔でみんなを見てブラウディアの方へ飛んでいく。

「って俺を置いて行くなよジーニ~」
「ああ、忘れてた。ごめんごめん」

 昔のコメディーみたいにみんなズッコケてる。

 しばらくタスク君に睨まれました。

 カッコよく決めたかったけど締まりませんでした。








「あ、そろそろジーニ様が帰ってきますよ」
「え?シリカ、わかるのか?」

 ブラウディアの屋敷のリビングでシリカがふと呟いた。ローズはそれを聞いて驚く。

「ふふ、ジーニ様の事はすべてわかるの」
「ん、じゃあお仕置きの準備しなくちゃ」

 シリカの言葉を聞いてララが縄を集め出した。そして玄関やリビングに罠が設置されていく。

「ん、みんな気をつけてね」

 とララが言っているそばから、

「キャア!、何ですの~」

 第一被害者はアウローラであった。アウローラはぐるぐる巻きにされてミノムシのように吊るされている。

「ん、アウローラ、罰としてしばらくそのまま」
「ええ~助けてくれないんです?」

 ララは不満顔で吊るされるアウローラを見て、すぐに罠を張りなおした。

 アウローラは泣きそうな顔になっていった。

「ララは意地悪、シリカー助けて~」
「ふふ、はいはい」

 シリカはまるで母のように微笑みアウローラをおろして縄をほどいて行く。

「ん、シリカはやっぱり甘い」
「これに関してはララの方が悪いような気がする」

 ララの言葉を聞いたデシウスが呆れながら答えた。

「ささ、みんなジーニ様が帰ってくるんだから食事の準備しましょ」

 ジーニの家族たちはジーニの帰りを心待ちにして食卓を彩っていく。









「ふふふ、やっと..やっとです...」

 フェイクがほくそ笑む。

 フェイクが立つ場所は世界の果て、エンドと言われる氷河の大陸。

 フェイクはこの地でジーニ達に気付かれずに計画を実行していた。

「人とはなんと愚かな者なのでしょう。しかしそのおかげで...くっくっく」

 フェイクは人の心に入り込み力を蓄えていた。

 元々フェイクの使う水晶は人の負の心。水晶によって人の闘争本能に火をつけて更にステータスにも影響を与える。

「あとは待つだけですね。ふふふ、ジーニ様の驚く顔が浮かびますね~」

 フェイクの顔は歪み不気味な笑みをうかべて笑う。

 闇は動き出している、ジーニの知らない所で。
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