上 下
206 / 252
第七章 異変

第九話 甲羅の中は

しおりを挟む
「ギィヤアァァァ」 

 亀の甲羅が割れるとそこには人面のような肌が露出した。その人面が叫び声を上げて部屋中に響く。

「あう....耳が痛い」

 僕ですらこのダメージ、HPが30ほど削られています。これはフローラちゃんの一発を大きく超えるもので一発のダメージとしては最高の一撃。

「二人は大丈夫かな?」

 僕は心配になってタスク君とガリアさんを見た。二人は気を失って扉の縁に体をあずけて倒れてる。

「取りあえず[ヒール]しておいて。さあ今度こそ君の最後だよ!」

 甲羅がなくなった事で防御力の低下を起こしているであろうレジーに僕は[ダークスラッシュストーム]を叩きこんだ。

 部屋を削り過ぎて土埃が舞う、レジーに動きがなくなり頭を垂れるのが見えたので僕は二人を介抱する為に戻る。

「二人共大丈夫?」
「あう....ジーニ。終わったのか?」

 タスク君が僕に気付いて声を上げた、僕が頷くと辺りを見回した。

「まだ生きてるぞ!」
「動きがないから先に二人の安否を確認しに来たんだよ」

 僕は微笑んで答えるとタスク君の顔が見る見る青ざめていく。

「レジーは自分の身に死が迫るとさっきの咆哮みたいなスキル、[断末魔]を使ってくるんだぞ!」

 タスク君は青ざめた顔で僕に訴える。

「じゃあ、とどめを刺さないと」

 僕がレジーを見やるその瞬間、レジーの人面がにやりと笑い[断末魔]を僕らに向けて放った。音速の壁が僕らへと押し込まれる。

「ハ~~ッ!!」
「わ~...」

 僕は気合で音速の壁と競り合う、タスク君は僕の背中に隠れて叫び声をあげてる。

 う~ん強がっていてもまだまだ子供なんだな~。でも大丈夫だよ。この程度なら!、

「グリード!君の限界を越えちゃうかもしれないけどいくよ~」

 僕はグリードに通常の剣を使った時よりも大きくマナを纏わせた。通常はこの時点で剣は粉々になっちゃうんだけどグリードは何とかもってる。

 マナを圧縮して纏わせてるからどうしても剣を壊しちゃうんだよね。でも圧縮している分とても強くなる。

「よ~し、いい子だね!決めるよ![エタニティーダークウェーブ]!」

 漆黒の斬撃の連斬が波のように音速の壁へと打ちつける。波は連続して衝突の音を奏でレジーの[断末魔]を破壊し、レジーを飲み込んでいく。

 漆黒の波はレジーを飲み込み部屋を大きくえぐって消えていった。

「う~ん、すっごい威力だね。広範囲に使えそう。それに何と言ってもカックイ~」

 僕は魔剣グリードを見やる。少し刃こぼれしているみたいなので[リペア]を唱えて整える。何とかもってよかった。流石に粉々になったら治せないだろうからね...たぶん。

「ジーニ..凄すぎ。だけど今度こそ終わりだよな」
「ええ、流石に7階はないはずです。これ以上の魔物が生まれる魔窟など聞いた事がありません」

 ガリアさんも起きたみたい。

 これでお終いか~、なんだか名残惜しいな~。最近の戦闘はこれほど力を使わなかったから気持ちよかったんだよね。MPは100万ほど使ったけど、どんどん回復してるから問題無いし。

「あ!レジーも何か落したのかな?」
「魔石は必ず落とすはずですよ。ただ....」
「装備はなんだろう..」

 二人は怪訝そうな顔で僕へと話す。また僕が装備をいらないというかと警戒しているのかもしれない。ふ~ん、そんな顔するんだったらあげないよ~っだ。

 案の定、魔石の横に20インチ位の盾が落ちてた。僕が手に持つと盾の幅が更にひろがって40インチ位に大きくなった。

「レジーの盾なんて聞いたことない...」
「国宝どころか神宝かもしれませんね..」

 って言われても盾なんて使わないしな~。

「いらないぞ!そんな物騒な物」
「確かにこの宝を狙ってどんなことが起きるか考えただけでも...」

 二人はやっぱり僕に押し付けられると思って僕から離れてく。

 しょうがないので僕は盾もしまい込んだ。家に帰って色々いじってみよう。

「穴が開いてるぞ」

 タスク君の指さす方を見ると出口が開いてた。穴を少し下ると10畳ほどの部屋があった、中央の魔法陣が輝いている。

「あれは転移陣ですね」
「転移ってあるんだね」
「ありますよ。ガザードの賢者にこれを研究している人がいるとか聞きましたが」

 転移があると便利だな~。僕は転移に近い移動能力をもっているけど転移ではないから時間はかかるんだよね。

「ほしいな~」
「魔法陣は特殊な物ですからね。マナがあっても作り方を知っていなければできませんね」

 魔法陣はとても複雑な文字で彩られてる。とても僕の知識じゃ出来なさそう。所々魔道具の時の言葉があるけどそれだけで何もわかりません。

「そろそろ戻ろうぜ」

 タスク君に急かされて僕らは転移陣でワープ。魔窟を無事攻略。
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

処理中です...